○吉川春子君 私は、
日本共産党を
代表して、
テロ対策特別措置法案及び
自衛隊法改正案に
反対の
討論を行います。
まず、私は、
憲法違反の
自衛隊海外派兵を一気に実行に移すという戦後史を画する重大
法案であるにもかかわらず、
参議院でわずか四日間という短期間の
審議で
委員会採決を強行したことに強く抗議いたします。
ニューヨーク、ワシントンなどへの
同時多発テロ事件は五千人以上のとうとい命を奪い、家族や友人等多くの人生を狂わせました。私は、この
テロに対して心から怒りを禁じ得ません。
テロ行為は、いかなる宗教的心情、政治的見解によっても絶対に正当化できない卑劣な
犯罪行為であり、
テロの根絶は、二十一世紀の
人類の生存にかかわる問題です。それは、国連を中心に
国際社会が一致団結して、
テロリストの逃げ場が地球上のどこにもないという
状況をつくることによってこそ可能です。
ところが、アメリカの軍事
攻撃は、イスラム諸国の中に報復戦争を認めるかどうかで亀裂を生み出すなど、国際的団結を壊す全く逆の作用をしているのです。小泉
内閣は
自衛隊をただ戦場に送りたいということに終始し、
自衛隊海外派兵と戦争参加の道を一気に切り開くために
提案されたのがこの
法案であると言わざるを得ません。
以下、具体的に
反対の
理由を述べます。
第一は、
自衛隊がアメリカの
軍事行動に参加するものだからです。
その結果、
自衛隊が戦後初めて他国の人を殺傷し、日本人の戦死者が出る危険が現実のものとなるのです。
法案は、
小泉総理が無限定だと認めたように、
米軍の
軍事行動への
協力は、地理的にも
米軍の
活動内容の面でも全く限定していません。
米軍が
テロ根絶のためとして地球上のどこでも
軍事行動を起こせば、日本はその戦争に参加することになります。しかも、
米軍が行う軍事作戦は日本に
事前には知らされていないのです。
米軍の報復戦争に日本がいわば
白紙委任で参戦する
法案です。こうした
法律を対米関係で全く自主性を持たない日本
政府が手にすることの
危険性ははかり知れません。
第二は、
自衛隊が行う兵たん
活動は、
憲法違反の
武力行使そのものだからです。
小泉総理は、
武力行使とは
戦闘行為だけで兵たん
支援は含まないと繰り返し
答弁をしてきましたが、
米軍への
武器弾薬の輸送、燃料の補給などが
武力行使と結びついたものであることは
国際社会の常識です。NATOは、
自衛隊が行う
米軍への兵たん
活動と同じことを集団的自衛権の発動、すなわち
武力行使として行っているのです。
そして、重大なことは、
自衛隊の輸送、補給がどこへでもどんなものでもできるということです。例えば、米空母や護衛艦などに洋上補給することも含まれています。さらに、
防衛庁長官は、大型爆弾から二百個以上の子爆弾をまき散らし、多くの市民を巻き添えにする無差別殺傷の残忍な兵器であるクラスター爆弾を輸送することまで認めています。
また、
政府は、
自衛隊の
活動は戦闘区域では行わないという空虚な説明を繰り返してきました。しかし、我が党の追及に、
米軍が指定する戦闘区域、コンバットゾーンにまで
自衛隊が入り込むことを認めました。アメリカと日本は戦闘区域の定義が違うなどとおかしな理屈まで持ち出しましたが、何の弁明にもなりません。
政府の説明によれば、この戦争を行うのがアメリカであって、戦闘区域を設定するのはアメリカ以外にはあり得ないのです。しかも、ミサイル
攻撃の発射地点でも、発射されている瞬間は戦闘区域だが、発射と次の発射までの間は戦闘区域ではないというとんでもない理屈まで持ち出しています。これは、欺瞞以外の何物でもありません。
武力行使はしない、戦闘
地域には行かないというのは、
政府がこの
法案は
憲法の枠内だとする二つのよりどころです。この二つとももろくも崩れ去っているのです。そうである以上、この
法案は廃案以外にないということを指摘せざるを得ません。
さらに、
自衛隊の
武器使用の拡大も重大です。
政府は、突発的な
テロやゲリラの発砲に応戦することもあり得ると
答弁しており、
自衛隊の
武器使用による交戦状態が生まれることを想定しているのです。
第三は、難民
支援を口実に
自衛隊を
海外に
派遣しようとしていることです。
難民
支援は
もともと軍隊の仕事ではありません。しかも、
米軍の空爆は、病院、民間
施設、赤十字の倉庫などを破壊し、罪なき
人々に危害を加え、新たな難民をつくり出しています。一方で
米軍への軍事
支援を行いながら、
他方で難民
支援のために
自衛隊を送るなどということは、甚だしい矛盾と偽善です。
また、
米軍の側に立って参戦している日本の
自衛隊が難民
支援に出動することは、相手側の
攻撃対象とされ、逆に難民を危険にさらすだけです。
政府は、初めに
自衛隊派兵ありきという
立場で難民問題を利用するだけだと言わざるを得ません。
なお、
民主党の
修正案は
憲法違反の
自衛隊の
海外派兵という本質を何ら変えるものでなく、
賛成できません。
次に、
自衛隊法改正案は、
米軍基地への
警護出動の新設、
治安出動下令前の
情報収集出動や
武器使用権限の拡大など、
テロ対策を口実に
自衛隊の
行動と権限を大幅に拡大するものであり
反対です。
改正案は、
憲法の
もとではあり得ない
防衛秘密を
規定し、
防衛庁職員、
自衛官、その他の国家公務員だけでなく、民間人まで厳罰に処す漏えい罪を設けるなど、
国民の基本的人権をじゅうりんするものです。さらに、報道機関の取材までもが教唆、扇動に該当する
可能性があります。このような重大な
法案を
テロ事件に便乗して押し通すことは、
憲法と議会制民主主義の
原則を踏みにじるものであり到底認められません。
先日、
アフガニスタンの情勢を伝えるテレビに、縫いぐるみを抱いた幼い女の子が両親と一緒に険しい山道を越える姿が映り、私は胸が締めつけられました。この光景が、五十数年前、満州の荒野をさまよった満蒙開拓団の
人々の姿とダブったからです。
あの侵略戦争の痛苦の
反省の上に立って、
日本国憲法九条は、国際紛争を解決する
手段としては
武力による威嚇、
武力行使を禁じております、交戦権も放棄しています。こういう世界に例のない徹底した平和主義を宣言したのです。こういう
憲法を持つ国だからこそ、第二次大戦の終結以来、日本の兵士の
軍事行動によって殺された人は一人もいないという津田塾大学のダグラス・ラミス元教授等の指摘に見られるような評価も生まれてくるのです。
ところが、
国会の
審議の中で小泉首相は、最高裁判所が
自衛隊は合憲だと判決を下しているなどと発言し、追及されて訂正せざるを得ませんでした。また、
憲法前文と九条にはすき間があるとか、
憲法前文と九条を政治的に考えたなどと
答弁していますが、このような
憲法改悪を目指す発言は絶対に許せません。
日本共産党は、小泉
内閣と
与党の自民党、公明党、
保守党と違って、反戦平和を貫いてきた政党として、
憲法九条を日本が
国際社会の一員として生きていく上での障害、制約とは考えておらず、それどころか二十一世紀に進む羅針盤だと考えています。そして、これは必ずや近い将来、世界の流れとして証明されるときが来るでしょう。
我が党は、
日本国憲法の理想を現実のものとし、安全に生存できる二十一世紀にするために
テロ根絶に全力を尽くす決意を申し上げて、
討論を終わります。(
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