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参考人(
山田能伸君)
メリルリンチ日本証券、
山田と申します。
きょうは、
市場関係者がこういうところで
発言する
機会は大変少ないと思いますので、
市場の
見方をお伝えしたいと思います。
御存じのとおり、
日本の
経済、これは全世界的に同じですけれ
ども、
市場の
動きがその国の
経済を決してしまうというのは確かな
動きになっております。じゃ、今、
市場が
日本の
金融システムについて何を思っているか、それから、
政治、
行政あるいは
銀行経営者について何を思っているかについて、簡単に御説明申し上げたいというふうに思います。
この一枚紙ですね、
先生方から比べると非常に少ないですが、一枚紙で御説明していきたいというふうに思うんですが、
最初からちょっと非常に刺激的なことを申し上げますけれ
ども、
市場の
コンセンサス、つまり多数
派意見は、このままだと
日本は崩壊する、
日本はもたないという
意見が大半であります。
どういうことかというと、その
不良債権の
処理の
部分もありますけれ
ども、
不良債権と
デフレ経済が相互に影響し合って、このまま、ちょうど
格付機関は
日本国債の
格付を下げておりますけれ
ども、そういう出口が見えない
閉塞感の強いところで
日本という国はどうなっていくんだろうと、こういうことであります。
私は、
外資系証券会社ですから、お客さんの三分の二は
外国人投資家でありますが、
外国人投資家の
日本を見る目は極めて冷ややかであります。彼らが
日本に投資しようとする気は今ほとんどありません。どんなそのサーベイを見ても大変低い割合になっているということであります。
さて、今の政府の
改革先行プログラム、これ
市場から見た骨格ってどういうことかというと、意外と、非常にその
不良債権問題というのはこじれてわかりづらいんですけれ
ども、私が見るところだと非常に単純化されておりまして、
不良債権問題を実は三分割して考えているというふうに考えます。
御存じのとおり、
不良債権といいますか、
銀行の
資産分類というのは、上から
正常先、
要注意先、それから
破綻懸念以下と大ざっぱに
三つに分かれるんですけれ
ども、今の
先行プログラムというのは、
破綻懸念以下については
最終処理あるいはこの
最終処理の促進に
RCCの
機能強化を加えると、こういうことだと思います。それから、
大口要注意先については
特別検査を加えていく。
特別検査の結果
破綻懸念以下に落ちたら、これは
最終処理をしなさいと、こういうことでしょう。それから、
中小企業を中心とする
小口要注意先については、これは特別な方針は示されておりません。したがって、時間をかけた
対応になる。それから、現在の
破綻懸念以下の
最終処理あるいは
大口要注意先の
特別検査は
主要行でありまして、地銀は対象になっていないということであります。
こういう
枠組みで今進められているのでありますけれ
ども、現在の
日本の
金融システムに関する
市場の
見方はいろんな
意見があります。したがって、ここでは多数
意見、
少数意見ということで御紹介したいと思います。
まず、多数
意見というのは、現在の
状況というのは
危機そのものであると。先ほど
高月先生からお話があったとおり、幾らやっても
不良債権が減らない。まして、
デフレがさらに加速するという
状況は
危機そのものではないかと。そして、
公的資金の再注入なしに問題の
解決は困難。それから、
小口要注意先、今、時間をかけた
対応になっている
小口要注意先あるいは
正常先の一部もいずれ
景気が悪ければ劣化していくでしょうと。したがって、ここでは
政治、
行政の果断な決断が必要であるということがマーケットの
コンセンサスであります。
この
コンセンサスからさらに進んで、極端な
意見にいきますと、もう事ここに至っては、
主要行を含めて全
銀行を
国有化すべきだと、こういう
意見もあります。
それで、
少数意見の二というのは、これは実は私の個人的な
意見なんですけれ
ども、
不良債権問題を
三つに分けた場合、
破綻懸念以下については、私の持論でありますけれ
ども、
RCCに一括売却するぐらいにして、とにかく残高を減らす必要があるということだと思います。
大口要注意先までであれば、
銀行は今のところ自力
解決可能だというふうに考えております。
市場の
見方あるいはこれまで
世界各国の
金融危機のポイントなんですけれ
ども、要するにアクションは早ければ早いほどいい。早くしない限り、
金融システムに対するコストがますます膨れ上がっていく。つまり、例えば最終的に
国有化にもしたどり着いた場合は、長銀や日債銀の
国有化の費用というのはもう既に七兆円確定しています。そうやって考えると、これどんどん膨れ上がっていくんですね。早目に手を打たないと、
日本国全体として損失がさらに広がるというのが今までの世界的な
金融危機、
アメリカとか北欧で起こったことの答えかなというふうに思っています。
現在の
銀行株はどういうふうになっているかというと、いろんな議論がありますけれ
ども、要するに、先ほど
村松先生からお話がありましたけれ
ども、マイカルの経営破綻が大変大きかったです。マイカルというのは、
要注意先に分類されて引き当てがなかったんですね。引き当てがなかったのに、
銀行は、メーンバンクは、ある貸し出しを破綻の直前に膨らませて破綻してしまったと、マイカルは破綻したと。したがって、これによって
銀行や当局への信認が大幅に低下しています。
この三十社問題と俗に言われておりますけれ
ども、その
見方というのは、その三十社という、よくわかりませんけれ
ども、そういった大口の
会社というのは、みんなマイカルと同じで、いずれ破綻するだろうというのがマーケットの実は
見方であります。
ここに見るとおり、株価下落率、きょうも
銀行株相当下がっていますけれ
ども、マイカル破綻以降の下落率はこういうことで、
銀行業に目立っているということです。
実は、これに対して
銀行側は、実は実態的に自己
資本を今期取り崩します。
資本準備金の取り崩しというふうに言っておりますけれ
ども、
銀行によってはこれまで営々と築いてきた準備金、法定準備金を取り崩して
対応するということであります。よしんばこれ
対応ができたとしても、来期以降本当に裸になってしまうわけですから、
銀行は本当にちゃんとやっていけるんですかということであります。
外国人投資家から多い質問というのは、もうここにあるとおり、本当に現在を危機として認識していただいているんでしょうかと、それからもっとひどいのになると、
国有化はいつですかとか、それから重要なのは、例えば
大口要注意先が
再生する方法はあるんでしょうか、あるいは広い
意味で
不良債権を
銀行から切り離す手段はないのか、そういう
意味で
RCCの
機能は実は重要なんじゃないか、それから株式取得機構は有効に
機能するか、こういう質問が最近多いということでございます。
次に、
RCCの
機能拡充に対する私の考え方を申し上げますと、少なくとも
破綻懸念以下の残高を激減させるために有効に活用すべきだと思います。
景気の気持ちの
部分、少なくとも
破綻懸念以下がなくなる、あるいはゼロに近くなることによる気分、
景気全体の気持ちの
部分は随分違うのかなというふうに思います。
価格決定は、これは諸外国の例を
参考にして、案件によって清算案件は清算価値、不動産の担保価値です。それから、キャッシュフローと言っていますけれ
ども、収益を出している
会社については割引現在価値ということで、実際に
不良債権の流通価格がありますから、これを
参考にすべきだというふうに思っています。
二次ロスの問題がよく言われますけれ
ども、これは幾ら価格を精査に決定しても
景気が悪い限り多分発生する、発生せざるを得ないというふうに思います。ただし、
アメリカやスウェーデンの例を見ても、三年目以降は黒字化しております。先ほど申し上げた
銀行の
国有化コストと比較すれば、けた違いに小さい額になると、こういうふうに考えています。仮に
RCCが一兆円の
不良債権を例えば一千億円で買い取った、ここで二割のロスが出ると二百億円のロスです。このロスと先ほど申し上げた長銀、日債銀の
国有化コスト、もう既に確定しているだけで七兆円、もっとふえますけれ
ども、これと比べると、国民
経済全体あるいは納税者の本当の
利益から見ればどちらの方が
利益があるかという判断ができるんじゃないかというのが普通のいわゆる
市場原理をもとにした
見方であります。
それから、
RCCについては、既に大口用サービサーはおりますけれ
ども、
RCCは多分小口案件に強みを出すんじゃないか、それから、担保が集約化されますから、流動化に有用じゃないかというふうに思っています。
当然、買い取り法も、常時買い取りをしたり、とにかく目先の問題を少なくしていく方策が必要なのかということでございます。
最後に、この問題に関連して、最近スウェーデンに行きまして取材をしてまいりました。スウェーデンは、九二年、九三年、
銀行の
不良債権比率が二三%を超えて、四大
銀行のうち二つまでが
国有化されたと。大変な
金融危機に遭った国でありますけれ
ども、その九二年、九三年の
状況というのは、国家全体が、とにかく
金融危機というのは危急存亡のときであるということで、国が全体としてまとまっております。
それから、非常に印象的だったのは、こういう場でお話しするのもややそぐわないかもしれませんけれ
ども、そのときの
政治家とか大臣の
先生に伺うと、
不良債権問題を政争の具としない、つまり国全体の問題である、国が一致して考えようと、こういうようなものが大変強く印象に残っております。
結局、スウェーデンの
金融危機を
解決したのは
経済原理です。先ほど申し上げた本当に悪い
銀行の
国有化、それからセキュラムという、これ
日本の
RCCに相当する機関ですけれ
ども、これを大変
機能強化していったと。この税金を使うことに関して国民の理解があったということであります。税金を使うことによって将来の
経済がよくなるという理解が進んだのはスウェーデンだったと、こういうことでございます。
以上です。