○
本渡参考人 本渡です。
私は、こういう問題で
意見陳述をするということは初めてなものなので、きょういただいた
法律案の概要に即してちょっとコメントをさせていただきます。
まず、
監査役の
機能の
強化ということですが、まず、
監査役の
取締役会への
出席義務及び
意見陳述義務ということは、現時点においても、
権利は
義務を伴うということで、
監査役は
取締役会へ
出席して、違法だとかそういうことがあれば
意見を言わないといけないという解釈になっておりますので、現在の運用を明文化するということで何ら問題がないと考えております。
次に、
社外監査役の員数につきましては、これは、
商法特例法上の
大会社において、現在三人中一人が
社外監査役じゃないといけないということになっておりまして、それに対して、私の知っているような
会社は、大体
社外監査役を二名
選任しております。したがって、大体四名
監査役がいるという形になります。それはなぜかといいますと、もしかの場合に、
社外監査役を
選任するために
臨時株主総会を開くということが非常に大変なことなので、前もって
社外監査役を二名
選任しているということになります。
そうすると、今回の
改正で
半数以上ということになると、
法律上、二名は
社外監査役が強制されるわけですから、そうすると、結局は三名
社外監査役を
選任しておくという
会社がふえるんじゃないかなという気がいたしまして、その点は
会社にとってかなり負担になるという気がいたします。
それは、今、
中間試案が出されておりまして、
大会社については
社外取締役を一人
選任しないといけないという案が出ておりまして、それに対して経団連の方は反対しております。それは何で反対しているのかなと思いますと、
上場会社においては、日経の新聞なんかによっても、大体四〇%の
会社がもう
社外取締役を入れているわけですね。それなのに何で反対するかというと、やはり法で強制されれば、もしかのことを考えて二人ぐらいは入れておこうとかいうことになるんじゃないかなという気がしておりますので、その点、この
半数以上というのも厳しいかなという気が私はしております。ただ、別に反対するわけじゃありません。これはこれでもいいと思います。
ただし、この
中間試案の方で、
取締役会を活性化して、
社外取締役を入れて、先ほど
岩原先生もおっしゃっていたように、
違法性監査、
会計監査だけしかできない
監査役による
監査ではなくて、
妥当性監査、
経営をちゃんとやっているのかどうかの成果も
監査できる
社外取締役によって
コーポレートガバナンスを充実させようという
考え方はかなりよいと思われますので、来期の
通常国会のときには、この
監査役の点と
あと社外取締役の点でまた検討しなくてはいけなくなるかもしれません。別に反対するわけではないですけれども。
あと、
監査役の任期については、三年から四年に延長するというのは、
監査役の
権限を
強化する、身分を保障する
意味からもよいのではないかと思います。
また、
監査役の
辞任に関する
意見陳述権、これもよいと思います。
あと、
監査役の
選任に関する
監査役会の
同意権及び
提案権、これについては、何か、
社内監査役と
社外監査役が同数だから
意見が対立して
デッドロックに陥るんじゃないかというような
指摘もございますが、そんなことをやっているような
会社はどうしようもないということで、別にこれでもいいんじゃないか、こういう
規定があっていいと思います。
次に、
取締役の
責任の
軽減のことなんですが、
取締役というのは、
会社と
委任契約を結びまして、
委任契約に基づいて
会社のために
仕事をしているわけです。
会社のために
仕事をして、まあ、悪いことをやろうと思ってやったんだったらそれは全
責任を負わせていいと思いますが、
会社のためを思ってやったにもかかわらず、その
判断が不適切であって
責任を問われるという
事態になった場合にも、大体、一生懸命
仕事をやって
利益が出た場合、それが何千億と仮に
利益が出ても、それは
会社の
利益になって、それで
社長とか
取締役の
報酬というのは何千万というような形ですから、
利益だけ
会社に行っちゃって、
損害が出たときは全部
賠償しろよというのではちょっと公平じゃないと考えております。こういうのを
報償責任の理論といいますけれども、そういうような考えがありますので、
取締役の
責任を
軽減するという基本的な
考え方は、私は賛成しております。
そして、今回の
免除のやり方で、
代表取締役は
報酬等の六年分、
代表取締役以外の
社内取締役は
報酬等の四年分、
あと社外取締役は
報酬等の二年分というのは、大体、仮に
社長の
報酬が六千万だとすれば六年分で三億六千万ということですから、今それ以上の
賠償が認められたというケースはほとんど、
大和銀行の第一審は別として、ないんじゃないかと思いますので、これ以上はもう
賠償させないよというようなことが決議できるというのはいいことだと思います。
ただし、これは
司法の
立場からいいますと、まずは
経営判断の
原則というものがありまして、ビジネス・ジャッジメント・ルール、大体
会社の
経営というのは危険を伴うのは当然のことなんですね。したがって、こうやって
判断して実行したらそれで損失が出てしまったといっても、それは
会社のためにやったことですから、普通の人がこういうこともあり得るなというような
判断であれば、これはもう
経営判断ですから
過失がないわけです。それはもう
判例でもちゃんと認められております。
したがって、だれが見てもこれはちょっとおかしいよというようなときに初めて
過失が認められるわけで、そうなったときにも、やはり
会社のためにやったのであって、法令に違反していることをわかっていてやっただとかそういうことじゃなければ、この
程度の
責任にとどめるのがいいと思います。
あと、
事前の
免責ですが、
社外取締役に関して、
社外監査役も同じですが、二年分の
賠償以上は
請求しないよという
契約ができるという
改正は、私にとっては非常にいい
改正だと考えております。要するに、仮に
社外監査役だとか
社外取締役になった場合に、
会社の
内容をすべて把握するなんということはほとんど不可能でして、
取締役会に月に一回ぐらい出ていって、その場で聞いたときに何か問題があれば
指摘はできますが、その場に出ていかなければ全くわからないわけですから。それなのにもかかわらず、仮に何か問題があって
責任追及されて、もう全然
支払い能力がないぐらいの
責任を追及されて破産しちゃうなんというのだと、ちょっとやれないということになりますので、
社外取締役が
報酬の二年分と
契約で決めて、それ以上は
請求できないよというのはいい
制度だと考えております。
あと、
株主代表訴訟制度の
合理化について、もう時間がないので簡単に述べますと、
提訴権者については、
与野党間というか、合意によって前と同じになりましたが、やはり
提訴についてはそれほど制限する必要はなくて、
提訴した後で、こんなのは主張自体失当じゃないかということであれば、
被告が
担保提供命令の申し立てをして、
裁判所の方ですぐに
担保提供命令を出せば、それでまず
担保を提供する人はほとんどいません。それで、それにかかった
費用は
役員賠償責任保険でてん補されるでしょうし、また、それが
保険に入っていなければ、これは
取締役としての職務に関して生じた
費用ですから、
会社にその
費用は
請求できるということになりますので、それほど問題はないのじゃないかと思います。
あと、
監査役の
考慮期間の延長については、一応、訴えを提起しろということで
監査役に
請求が来れば、
監査役は一生懸命事実
関係を調べますので、二カ月ですか、六十日間に延長するというのもそれほど悪くはないかなと。ただ、ちょっと、
原告になる
株主にとっては待たされるから嫌かなとは思いますが、まあこれぐらいでいいのかなという気はしております。そのときには
監査役の方もちゃんと調査して、これはこういう理由で
取締役に
責任はないよというような回答を出すようにすればいいなと思っております。
次に、
訴訟上の和解なんですが、これはもう現実に和解は多くやられていまして、裁判上で和解するというのをよくやっています。私も和解した経験もあります。ですから、この裁判上、
訴訟上で和解できるよという
規定は非常にいい
規定で、今まで、何で
会社の
権利なのに
株主が勝手に和解できるのかとかいうような議論がありましたので、この裁判上の和解の
規定が設けられることによってそういう疑問がなくなりますので、いいと思います。ただ、実際には、裁判上の和解をするときには利害
関係人として
会社も入れているというのが普通だと思っております。
次に、
取締役を補助するために
会社が行う参加の申し出ということですが、これは補助参加なんで、これはもう最高裁の
判例で、
取締役会でちゃんと決議をして行った行為がだめだといって
責任を追及されているとかいうような場合には、
被告、
取締役方に
会社が補助参加できるんだというのが
判例であります。したがって、補助参加をするんですから、それは
会社の
利益になるから補助参加するんで、
会社の
利益になるということで補助参加ができるんであれば、それはそれでいいわけで、もう
判例でも認められている。そうすると、この
規定は、
監査役全員の
同意が必要だということになりますので、もしかすると補助参加を制限する
規定なのかなというような気もいたしております。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)