○山内(惠)
委員 大変重要な項目ですから、後のところでもまた触れていきたいと思います。
諸外国で、
芸術や
文化にかかわった
基本法があるかということを調べて、研究された方がいらっしゃいます。それによりますと、
文化領域に属するものは法とか
法律とか規制という
言葉になじまないというふうに
考えてきた歴史があるというふうにおっしゃっています。その
意味で、
文化領域は国家からの自由が保障されなければならない、そのことによって精神的自由権をしっかりと守っていくのだという
考え方があるというふうにお聞きしています。
余り
基本法がないその例の中で、オーストラリアの
芸術振興法では、
芸術家の
生活を支える物質的な諸条件の
改善をするということに重点を置いて、
振興法があるそうです。
基本法がなかなかないようですけれども、ドイツの連邦共和国
基本法、特にボン
基本法と言われている中には、
芸術表現の自由を保障する条文をのみ置いているということです。
芸術表現の自由を保障する。なぜここのところを保障するための文章をあえて
法律としたかというと、ドイツ、御存じのように、ナチスによる一元的、統制的
文化政策が
国民の
表現の自由を圧迫したという歴史的事実から導き出されたというふうに、この研究をなさった方が書いています。
その
意味で、今回の
振興基本法の中で
表現の自由をしっかりと、前文なり一条、二条、ずっとこの辺で、今お答えにあったところに、あえてこのことを書かなければならなかったのではないかと私は思っています。憲法が前提だというのであれば、その憲法が前提であるということを前文に書くべきであったと思います。ここのところは、
質問としてではなく私の
意見として申し述べておきたいと思います。
ところで、今回、国が
芸術文化をどのように扱うか、二十一
世紀、どのような理念を持ってこの政策に取り組んでいくかということでこの
法案をつくられたとしたら、今おっしゃったように、
表現の自由を保障するんだ、憲法にのっとっているんだということを強調されたお答えからいうと、国が
芸術や
文化に対して一定の
価値観を
教育するべきではないということにそのお答えはつながると思います。
そのことでいえば、この
法案の最後の三行の部分の中で、特に最後にかかわりますが、「国際化が進展する中にあって、
自己認識の基点となり、」というのは、アイデンティティーの基点となり、「
文化的な伝統を尊重する心を育てる」というふうに書かれている。これは相当無理な記述だと思います。
表現の自由を保障すると一方で言っていながら、このことを、
子供たち、大人の
自己認識の基点に、伝統を尊重する心を育てるという、これは大変問題だと思っていますので、このことを
指摘して、
質問したいと思います。
伝統にはプラス面とマイナス面があると思います。プラス面は相当文章の中にも書いてありますので、マイナスの点についてどのように押さえていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。