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鮫島委員 私は、もうちょっと
厚生省の方が敏感なのかと思いましたら、
薬害エイズから何も学んでいないような御
答弁で大変驚きましたが、イギリスがなぜ一九八八年十一月、非常に早い時期に人畜共通
伝染病に指定したかといえば、その一カ月前にマウスを使った実験で、
狂牛病にかかった牛の脳の
組織をマウスの脳に注入する実験で、うつることがわかった。
つまり、今度
発生した
異常プリオンは、これまでの羊のスクレーピーの
発生の
原因だった
異常プリオンと違って、種の壁を超える極めて危険なプリオンだということに基づいて、まだ人間にそれがうつるということは全く予見されていない、あるいはそういう患者も出ていなかった
段階で、
予防的に人畜共通
伝染病に指定したわけです。これが一九八八年。
それを追っかけるようにして、その一年おくれあるいは一年半おくれでフランスもドイツも、人間の患者の
発生がない
状況下でも、種の壁を超える
異常プリオンが出たんだということを非常に重く受けとめて、人畜共通
伝染病に指定し、
家畜伝染病予防法の指定病にも加えていった。
ところが、今の
厚生省の御見解にもあったように、九六年の四月まではそういう
考えをとらずに、つまり、人間で患者が出るまでは、このプリオンは非常に危険なプリオンなんだという
認識がないままに放置したということは、私は大変大きな
責任だろうというふうに思います。
私は法律の
専門家ではないのですが、後ほど
専門家の筒井さんも
質問するかもしれませんが、
薬害エイズ事件の松村被告判決要旨というのをお読みだと思いますが、この
薬害エイズの問題と同じようなことが、今のこの七年間の放置したこと、つまり、九〇年七月から、
ヨーロッパで
BSEが
発生し始め、さまざまな手が打たれているにもかかわらず、
日本の
行政組織だけが、厚生労働省も
農林水産省もこれを重大な問題と受けとめずに、
家畜伝染病予防法の指定病に加えなかった。
したがって、この指定病に加えておけば、化製工場の立入
検査で
肉骨粉の処理方法について具体的な条件を
指導したり、あるいは
飼料安全法も適用になり、さまざまな法律事項に基づく措置が可能だったわけですが、この
家畜伝染病予防法の指定病に加えなかったために、全部が法律外の、
行政指導の世界で終わってしまって、一切強制力のないままの
予防行政が行われた。私は、このことが
日本でついに
狂牛病を
発生させ、先ほど、私
どもの推定でいえば四千五百億の
損害を生ぜしめた、大変重大な、ある種の
行政犯罪ではないかというふうに思います。
薬害エイズの判決要旨の論旨に沿って言えば、既に一九九〇年の初頭から、健全牛に汚染
肉骨粉を投与し、家畜に
感染させ
死亡させるおそれがあることは十分予見されていた。つまり、九〇年の初頭から予見可能性はあったはずだ。ところが、不要不急の
肉骨粉の給餌を控
えさせるような注意義務を怠った。そして、投与を漫然と放置した
責任が
農林水産省にはある。
なぜこういうような、漫然と放置したかというと、
狂牛病の
発生が極めて深刻な
影響を及ぼすこと、これは畜産
農家の
生産段階から
流通、
消費の
末端まで極めて重大な
影響を及ぼすという自覚が欠如していたために、このような緩んだ
行政が行われていた。九六年の四月に一片の
肉骨粉給与禁止の通達を出した以外、何らの強制的な措置もとろうとしなかったことは、国の
行政責任者として欠けるところがあった、つまり、
農林水産行政の
最高責任者としての欠格条項に該当するということです。
それから、もちろんこれは
農林水産大臣ひとりの
責任ではなくて、
審議会に参加していた
専門家にも大いに
責任がある。
審議会で
家畜伝染病予防法の指定病にすべきだというような
指摘をした
専門家はいない、あるいは、
えさの給与について法律で制限すべきだということを強く主張した
専門家もいない。いずれも全体の空気に流されて、漫然と注意義務を怠って放置した。
こういう
状況があって、そういう
専門家としての
責任も、もちろんエイズにおける安部教授のような
責任はあるわけですが、あるいは
諫早湾における戸原教授という方も私は大変大きい
責任があると思います。ところが、こういう
専門家たちが
判断をできない、
審議会でめり張りのある結論が出ないときに、
行政の
最高責任者はむしろみずからのイニシアチブで行動を起こすことが求められていた、これが
農林水産大臣に負わされる
責任のはずであります。
ところが、
行政レベルで醸成された危険が、種々の過程を経て、ついに去年になって
BSEの
発生という現実化の方向へ進み、重大な
損害を与えた。このことによって生じた被害はまことに悲惨で、重大であって、
行政の
最高責任者としての
農林水産大臣の
責任は極めて重大であるというのが、恐らくこの問題を司法の場に持ち上げたときの判決の趣旨ではないかというふうに思います。
実際、これだけの被害が出て、しかも対策のおくれでいまだに
消費が回復しないということで、私は、
農林水産省は近々、あるいは
農林水産大臣になるかもしれませんが、恐らく幾つかの団体から告発を受けるのではないかと思います。
大臣は、今私が申し上げたような要旨に基づいてお白州の場に引き出されてきつい判決を受けるよりも、むしろ一人の政治家として、ここは今私が累々と申し上げた、一九九〇年から一九九七年まで、この七年間の無作為の
責任を御自覚されて、私はむしろ政治
責任をとって
大臣がおやめになる時期が今来ているのではないかという気がいたします。
新聞紙上でも報道されているように、かねてより
大臣の座右の銘は、おれがやらなきゃだれがやるということが座右の銘だということが、十一月二十七日の
委員会でも表明されましたが、私は、年が明けたことですし、
大臣もそろそろ座右の銘を変えられて、おれがやめなきゃだれがやめるというふうに変えていただきたいと思いますが、ひとつ、今私が延々と申し上げた
行政の不作為
責任、そしてそのことによって生じた極めて深刻かつ重大な
責任、そして畜産
農家に悲惨な
影響を与えたことをどういうふうに自覚されておられるのか、そのことについてどう
責任をとろうとしているのかをもう一度お願いしたいと思います。