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高木参考人 金融
再生改正案は、特定協定
銀行は、
当該資産に係る
債務者企業の
再生の
可能性を
早期に見きわめ、その
可能性のある
債務者については速やかな
再生に努めることと定める五十四条一項一号の二を付加することを
提案しておりますが、これに賛成いたします。
赤字を垂れ流しております不採算
企業を整理しなければ
日本の経済の
再生は望めませんが、その一方で、過剰
債務の負担に苦しんでおる
企業でも、適切な
再建策を講ずれば再び活力を回復させることができることがあります。その収益性を回復させることによって、
日本経済再生の一端を担わせることができます。
破産的清算による倒産
処理をするたびに、何とかして救えなかったのかと胸が痛みます。解体清算はむだが多いからでございます。何億円も、何十億円もかけた工場や機械設備がスクラップになって
社会資本がむだになりますし、雇用が失われます。従業員一万人の
企業が再起不能となったとしますと、従業員の家族が平均三人といたしますと、三万人を路頭に迷わせることになります。さらに、下請
企業や取引先
企業が連鎖倒産しますと、その数は何倍にも膨れ上がります。従業員一万人の
企業倒産は、数万人の生活を脅かすことになります。
窮状にある
企業を
再建するには、その
企業が収益性を回復できるように
事業再構築をすることが必要になります。それと、負債規模を
資産規模に見合うように圧縮すること、この二面からの対策が必要でございますが、その前提として、どの
企業が
再建可能かということを見きわめなければなりません。また、その前に、その業界が過当競争に陥っているときは、適正な競争が行われるような規模になるまで業界全体を縮小することも考えなければならないでございましょう。
それでは、どうやって
再建するのかという問題でございますが、
企業の
再建は病気と同じでございます。
早期発見、
早期治療、特に外科手術が必要になります。手形不渡りの直前になってから
再建策を考えても手おくれでございまして、危険な兆候を早く読み取りまして、早目に対策を立てなければなりません。治療は大胆に早くやることでございまして、ちゅうちょして手術に時間をかけますと、それだけ体力は衰え、回復に要する時間が幾何級数的にふえてまいります。
再建可能かどうかを判断するには、まず、窮境に至った原因を正確に把握しなければなりません。
対象企業の
経営者や経理担当者から
事情を聴取しますが、
企業の
経営者は、自分が窮境に陥った原因を正確に認識していないか誤解していることがありますし、本当の原因を隠すこともありますので、過去十年くらいの比較
財務諸表をつくって、数字の変化などの原因を問いただして、
財務分析の
手法も使いながら、数字の裏にある隠れた真実を探ります。
簡単な例を挙げますと、売り上げに比べて在庫品がふえたのは、デッドストックが多くなったからでございますし、売掛金や受取手形が多くなっていれば、
回収不能の
不良債権が含まれていることが疑われます。また、粗利益が悪くないのに下請や取引先に対する仮払金などが多くなっているときは、コスト隠しが行われていることがあります。下請代金や買い受け代金を支払うかわりにお金を貸した形にして損を隠す、そういうようなことも行われます。
窮境に至った原因がわかれば、治療
方法を見つけることができます。損益分岐点までコストを削減できない不採算部門は閉鎖します。そのために痛みを伴うのもやむを得ません。採算がとれる適正規模にまで圧縮できれば、再び利益を生むことができます。
確実に
再建するには、
経営者を入れかえることも必要です。終身雇用制が残っている
日本では、長い間その
企業の
経営手法に手なれた
経営者にやり方を変えることを求めるのは無理でございます。窮境に陥ったのは、
経営者の体質によることが多いからでございます。七転び八起きで、またもう一回転ぶことになります。
経営者責任をとらせるためというよりは、
再建のためには首をすげかえる必要があります。そのためには、MアンドA、合併、新資本の投入、営業譲渡などが効果的でございます。
過剰
債務に苦しむ
企業を救済するためには、負債総額を
資産に比べて適正な金額まで減らさなければなりません。それが
債権放棄でございます。しかし、
債務を減らしても、
事業再構築をして利益を生むように体質改善をしなければ、またすぐ
債務がふえ始めます。
資産、負債のつじつまを合わせただけの
債務整理を、傷口にばんそうこうを張るだけのバンドエイドプランといいます。それでは活力は回復しません。再度の
債権放棄がまた必要になります。痛みを伴うリストラプランが必要です。抜本的なリストラ計画とともに、
債務を必要なだけ削減して、早く活力を回復させ、その利益をとることを楽しみにできるような、そういった計画が必要です。
そのためには、
債務の株式化であるデット・エクイティー・スワップが有効でございます。
債権放棄だけですと残った
債権しか
回収できませんが、将来のアップサイドもとれますし、
対象債務者企業もやる気が出てきます。
欧米では、早目に不振になった原因を調べて
再建策を立てるファイナンシャルアドバイザーの活躍が盛んでございます。また、
企業再生のための資金や人材を供給するファンドも、大切な役目を果たしております。ファンドは、
民間投資家などから資金を集めます。ターン・アラウンド・スペシャリストと呼ばれる
再建の専門家が職業として成り立っておりまして、ファンドと連携して
企業を
再建します。日産のゴーンさんのような方が次々と
企業を
再建することを御想像いただければ、おわかりと思います。前歴は、
企業経営者、会計士、
弁護士などさまざまでございます。ファンドは、大
企業だけでなく中小
企業な
ども再建して、利益を生む体質に戻してから株式を
売却したりして、
投資家に還元します。こうした専門家の活用も必要になってまいります。
欧米では、こうした
手法を駆使して
企業の活力を回復させ、景気の回復を助けて、経済を
再生させました。我が国でも、先ごろできましたガイドラインによる
私的整理により、デット・エクイティー・スワップで取得した株式を現物出資して、このようなファンドを設立する新たな動きも見られます。
これまで
企業を
再建する
方法といたしましては、法的
再建手続、
会社更生、民事
再生、法的
再生手続でございましたが、それにガイドラインの
私的整理が加わりました。今回の
再生法の
改正によりまして、さらに
整理回収機構がこれに加わっていただけるということは、大変結構なことでございます。
日本の窮境
企業のあるいは破綻
企業の
処理、この
手法は、欧米の影響を受けて、また
外資の影響を受けて、どんどんと急速に最近変化しておりまして、
合理化しております。そのことによって、また
整理回収機構がこれに加わることによって、一層
企業の
再生が促進されます。病人がどんどん治療されている、これがどんどん治るということになりますと、世の中の雰囲気が変わってきて、
日本の経済の
再生が一層早められるのではないかと信じております。よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。