○永田
委員 今非常に大きな声でつぶやきが聞こえたと思いますけれ
ども、まさにそこのところの意識改革をやっていただきたいと思っているんです。これはまじめな話ですから聞いてくださいね。
革新官僚という言葉を聞いたことがありますか。革新官僚というのは、一九四〇年前後、ちょうど戦争が始まるかどうかの時期にばっこしたある官僚のグループであって、これは
一つの思想を持っていました。どういうものかと要約しますと、まず
企業は国有民営、国が持って民間人が経営をする、そして
企業はみずからの利益を追求してはならない、株主は利益を追求してはならない。
企業というものは、
企業活動というものは、すなわち国家の力を、主に軍事力ですけれ
ども、軍事力を最大にするために存在するのであって、身勝手な利潤追求はしてはならない、こういうような発想でやってきました。それが何と主流派を占めたんですね。
それで、何が起こるかというと、どんどん事業法を、何とか事業法という
法律をどんどんつくって、それでは国家が特定の
企業に対して直接に経営上の命令を下すことができるようになっていました。増産計画、減産計画、設備の拡充とか、そういったものまで国が、これは国益の最大化のために必要である、こういうような命令を直接下せるようになっていました。しかし、
企業の方としては、そんなことに国が口を出されたら困っちゃうわけですよね。ひょっとしたら損が出るかもしれない、どうするんだという話になった。
何をやったかというと、国家が命令をして
企業行動に制約を加えた場合には、その結果生じた損失は税金で補てんするという項目が
法律にあったんですね。しかも、この思想が今でも生きている。だから、今でも一九四〇年体制というのは生き残っていると言われるのはそういうことなんですよ。
いいんですよ、
銀行がつぶれたって。そんなことの責任を金融庁はとる必要はありません。金融庁はマーケットだけ見ていればいいんです。マーケットが生きているように、システミック
リスクが起こらないように細心の注意を払っていればいいのであって、個別の
銀行がつぶれようが何だろうが、そんなものは税金で補てんする筋合いはないんです。この発想の転換、思想の転換をしていただかないと、
構造改革は全く進みません。そういうことを
構造改革というんですよ。
表面的に、
銀行が持ち過ぎている株をどんなに売ったって、そんなものは
構造改革と呼ぶに値しない。そうじゃなくて、
銀行がちゃんとした、透明で公正な
環境の中でまずプレーをするように
環境をつくってあげる、そしてそのプレーをした結果つぶれたら、そうしたらそれはつぶれた
銀行そのものに責任をとらせる、それがシステミック
リスクにつながりそうだったら、そこには
セーフティーネットを張ってあげる、これが筋というものですよ。
どこをどう勘違いしたのか、
企業に対して、当局が
銀行に対して口を出したら、そこから先の損失は全部税金が穴埋めしなきゃいけないなんという、そういう思想に立っているんですよ。この思想はぜひやめていただきたいんです。(発言する者あり)今のつぶやきも聞いていただきたいんですけれ
ども。
それで、この
セーフティーネットはまた全然おかしな話なんですよ。
まず、
株式市場が低迷をすると、悲しいことに
銀行の
自己資本が毀損をすることは、これは事実なんですよ、避けがたい事実。もう
バーゼルでしばらく前に四五%までは
自己資本に認めてよという話をしたものだから、それはそのときはハッピーだったかもしれないけれ
ども、今はもう全然ハッピーな
環境じゃないので、今度は株を持っちゃいけませんよという、当時とは全く逆のことを言っているわけですよね。それで
自己資本が毀損をする。
順番としては、まず
自己資本が毀損をして、
BIS基準を満たさなくなって、ひょっとしたら
銀行がつぶれるかもしれないという事態になって、
銀行がつぶれたら今度はシステミック
リスクが起こるかもしれない、こういうような順番を踏むはずですよね。
ところが、途中の
BIS基準を満たさなくなるかもしれないというところで、我々は既にとてつもなく大きな
セーフティーネットを持っているんですよ。預金保険
機構はまだ十五兆円の枠を持っていますよね。資本の強制注入というのはできる形になっていますよね。そのときに十五兆円をフルに使っておけば、
BIS基準は満たし続けるし、もちろん
銀行がつぶれるなんということにもならない。であるならば、こんな
セーフティーネットは不要なんじゃないですかというお話なんですよ。
だから、例えは悪いかもしれないけれ
ども、金融庁のお役人さんとの話で使った例えなのでわかりやすく申し上げれば、ビルの十階に、今にも人がおっこってきそうで、そこに立っている人がいる。そこから落ちてくる。じゃ、そこで助かるように
セーフティーネットを張ろうと。一階までおっこっちゃったら、これはぎりぎり命が助かるかどうかわからないようなところに
セーフティーネットを張る、これが今のお話なんですよね。
しかし、五階にもっと大きな、トランポリンみたいな非常にふわふわした
セーフティーネットが既にあるわけですよ。そこを突き抜ける可能性はほとんどない。なぜ一階に
セーフティーネットを張る必要があるのか僕には全然わからないんですけれ
ども、御
説明してください。