○阿部
委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
本日の、
インフルエンザを
対象として
予防接種法の
改正を行う論議に当たって、もうきょう私の
質問が終われば採択ということで、私から見れば極めて拙速の感を否めません。
と申しますのも、実は、私が小児科医になりましたのが一九七四年でございまして、
インフルエンザあるいは
予防接種被害による、さまざまな子供たちの
健康被害あるいは
死亡という
状況を私自身も経験してまいりましたし、やはり
予防接種ということの
対象者をどこまで広げるか、あるいは
安全性をどう
確保していくのかということにおいては、ちまたでもうたくさんの論議がございます。
そして、恐らく本当に必要なことは、そうした論議を幅広く組み込んで、この
厚生労働委員会が、本当に、
国民に安心と
安全性ということをきちんと伝えながら次のステップを踏むことかと思いますが、残念ながら私は、きょうの討議を聞いていても非常に問題が残りますし、強いて言えば、この
法案には反対の立場からの
質問をさせていただきます。
先ほど私が申し上げましたように、一九七七年から九四年の間、実はこの
インフルエンザは義務
接種ということで、小中学生を
対象に義務として行われてまいりました。延べ三億二千九百三十三万九千五百十五人の、延べですね、一人が大体、一生のうちというか、小中学校で三十回受けますから、延べとして三億三千万人弱の子供たちが受けて、
ワクチンによる被害認定が百十五人ございました。
御承知のように、被害認定というのは、確実に
ワクチンとの因果関係が強く疑われるものを認定いたしますので、実は氷山の一角であるとも言われておりますが、とりあえず認定された方が百十五人でございます。そういたしますと、単純計算で、百万人につき九人は
予防接種禍が生まれておる。
この
ワクチンは、先ほどの小沢
委員の
質問にもございましたが、現在も同じ
ワクチンである。もしもでございますが、今
予防接種が六十五歳以上の御
高齢者に拡大されるとすると、
高齢者率をどれくらいにとるかによりますが、二千万人から二千五百万人という方に一挙に拡大した場合、全員が
接種するわけではないから半分が
接種するよと見ても、一千万人として九十人の
接種禍が生まれることも含めて考えていかなければならない。
過去の
データというのは消すことができない貴重な資料でございますから、
ワクチンにも変化がない、そして母集団をふやせば、当然それだけの
予防接種禍はある意味では覚悟しなくてはならないかもしれない
事態を論じているということをまず最初に御認識いただきまして、そしてその上で、きょう私は、
坂口厚生労働大臣はもともと公衆衛生が御専門ですから、かなり的確な御答弁をいただいているかと思います。
そうした御答弁も踏まえながら、実は一九九四年に
インフルエンザの
予防接種の
対象から小児が除かれたときに、厚生省の保健医療局エイズ結核
感染症課というところに当時所在しておられた課長と係長の方が大変よい文章を書いておられます。私が厚生省の方をこのように褒めるのは余りないのですが、しかし、これはとてもすぐれた文献だと思います。
九四年の
改正と申しますのは、大きく言えば、それまでの集団
接種というものをもっと
個人の側に引きつけて、個々人の体調を見て、
個人防衛の観点から
予防接種を考えようという、
日本の
予防接種行政上の大きな転換点でございましたが、それにのっとって、
被害者への補償も含めて、よりよい方向に我が国の
予防接種行政はこれまで進んできたと私は思っております。
にもかかわらず、今回のこの一挙拡大、六十五歳以上、二千万人というのは、やはりステップを踏んでいない。逆に言えば、学問的に明らかになったことと明らかになっていないことの現実を踏まえた上で、ここまで拡大してしまっては大きな災いを生むだろうと思う次第であります。
当時、子供たちへの
接種が取りやめられた経緯は、先ほど
坂口厚生労働大臣もおっしゃいましたが、ウイルスの型別予測が難しく、
ワクチンの成分決定が困難であり、特殊な
インフルエンザということで、十分な
予防接種の
有効性も当該
疾病の
流行も抑制できない、これは九四年段階の認識でございます。そして、先ほどの
坂口厚生労働大臣も、現在もなおこの認識は、
流行の
予防はかなえられない、そこまでは認識しておると明確に何度か御答弁いただきましたので、この延長線上にある。ただし、
高齢者で見た場合に、あるグループについては
効果があるだろうと。
私は、その場合、
坂口厚生労働大臣が
高齢者ということのイメージをどこまで厳密にしておられるのか。先ほど、年齢のイメージ、六十五歳ということを政令で定められるように拝聴いたしましたが、実はそれだけでは極めて、先ほど言いました二千万人に
対象が一挙に拡大いたしまして、果たして、
個人の
重症化の
予防、あるいは
死亡率を下げることが本当に保証されているかどうかという問題がもう一方で生じると思います。
きょう私がお手元に配りました資料の、サインカーブが出ているような資料をちょっとお目通しいただきたいのですが、そこには、アメリカで行われております
予防接種で、アメリカは
インフルエンザの
予防接種を当初は六十五歳で同意の明確な方について行いまして、そのことによって、
予防接種の
接種率を上げていくことによって
死亡が減ったかどうかということをこれは示したグラフでございます。サインのカーブがあるのは、季節差が、冬には普通でも
死亡が多いということの当然のカーブですが、そこにスパイク状に乗っかったものが、超過
死亡と統計学的には申しまして、恐らく肺炎と
インフルエンザによる
死亡者がそのときはふえておるというのがスパイク状のところでございます。
これをずっと見ていただきますと、ここの横のこういうサインカーブと、そこにスパイクが出ておりますが、実は六十五歳以上の
接種率が六六%になってもなお超過
死亡は防げない、これがアメリカの百二十二の都市で出した
データでございます。
もちろん
坂口厚生労働大臣は先ほどおっしゃいました。
一つは、
流行予防にはならないと。超過
死亡については言明されませんでしたから、恐らくまだ確証的なものはないとお考えかもしれません。この点は、実は我が国がこれから
データをとっていかなければならない重要な時点ですし、それから、あえて言えば、
高齢者の
重症化を防げるか否かについても、私はきのう
厚生労働省の方から論文を取り寄せて、四つほどいただいたと思いますが、いずれを点検しましても母集団がふぞろいで、やはり統計学的な検証にたえ得ません。
本当にそれは各所で
指摘されておりますが、例えば、
接種群と非
接種群と分けた場合に、もともと
接種されない群の人の方が御病気が重かったり、例えば同意がとれなかったり寝たきりであったりするものも込み込みで、
接種群、非
接種群ととっているような統計が非常に多うございます。それで
接種群に何人
死亡、非
接種群に何人
死亡とやったとて、実は本来の科学的
データではございません。
ですから、私どもが立つ現時点は、
流行予防には確定的な
効果がない。超過
死亡率も、アメリカの
データでは
接種率を実は今八〇%まで上げておりますが、これによっても超過
死亡率は下げられない。そこで、施設の職員にも
予防接種を受けさせております。そこまで進んでおります。やはり物事は一歩一歩
データを残しながら行かなければいけない。そして、九四年から現在に、この
法案の
改正に至るまでに、本来は
厚生労働省として
データをそろえてこの
法案改正に臨まれるべきであると私は思っておりますが、それにたえ得る
データの提示がないということを極めて残念に思うものです。
そして、
坂口厚生労働大臣にお
伺いいたします。
私も、
議員になります数年前までは
老人保健施設をお預かりしておりましたので、やはりハイ
リスク群という方たちに、例えば心臓病がおありとか、慢性の肺疾患がおありとか、こういう方への
インフルエンザワクチンについては、ある程度発熱率を下げたり、
効果はあるものという立場に立っております。
それで、繰り返し言いますが、一挙に六十五歳に母集団を全拡大するというプロセスが余りにも非科学的で乱暴だという私の趣旨として聞いていただきたいですが、私が厚生省からいただきました資料の中で、一番
インフルエンザによると思われる
死亡者が多かった
平成十年十二月から十一年の四月にかけて、千三百三十名が亡くなられた。まずは在宅であったか施設であったか教えてくださいと言いましたが、これはわかりませんとおっしゃいました。では、せめて
死亡診断書を見れば年齢がわかるでしょうから、年齢区分を教えてくださいと申しました。後期
高齢者、七十五歳以上と前期
高齢者を分けますと、後期
高齢者、七十五歳以上が九百七十五人、七三・三%でございます。
今、
高齢者医療を何歳からにするかということは、他の方面では盛んに後に後にとずらしておりますが、はて、なぜかかる段階で六十五歳というところに今とりあえずの線をお引きになったのか。この点について、
厚生労働大臣としての御見識を
伺いたいです。