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国務大臣(柳澤
伯夫君) ちょっとお時間をいただきますが、
日本でバブルが崩壊しまして、
日本の金融機関の持っている不良債権をもっとディスクロージャーしなきゃいけないんじゃないかというふうなことが始まったのは
平成五年、一九九二年、三年と、こういったような時期であったわけでございます。その後、
平成八年の四月でございましたか、ディスクロージャーというか、もっと徹底したディスクロージャーというようなことをやろうということになりまして、そこが不良債権問題についてのもう一つの節目だったというふうにとらえていただきたいわけであります。
その後の推移は先生御
承知のとおりでございまして、
平成十一年の三月期には再生法、健全化法が発効を見た上での年度末でございまして、そこで大幅な不良債権の処理が進んだということでございます。ちなみに、いきなり数字を言っても全体の中での位置づけはなかなかわかりにくいかもしれませんけれ
ども、十三兆六千三百九億円というような、十三兆円、十三兆六千億の不良債権処理というのは、
日本のこの間の推移の中では最高の金額であったわけです。それが可能になったのは再生法、健全化法のおかげであったということが言えようと思います。
そういうことで、その後におきましても、不良債権の処理は十二年三月末で六兆九千億、十二年九月末で二兆三千億と、おおむねの数字でございますけれ
ども一応進んできたわけですが、他方、そういう処分が進みながら、不良債権の残高、これはいろんなメルクマールというか物差しがあるんですが、ここでリスク管理債権残高というようなものではかってみますと、この十三兆六千億の不良債権処理をやった十一年三月期は二十九兆六千億、それからその後十二年三月期は三十兆三千億、それから十二年九月期は三十一兆八千億、ほぼ三十二兆円、三十兆台ではありますけれ
ども、一兆円ぐらいずつちょっとふえかげんというか、そういうような推移を今不良債権の残高がたどっているわけです。そういう数字が一方にある。
他方、
日本の経済を見ますと、本当に活力が出ているか、あるいはその中で
日本の金融機関は金融仲介機能という本来託されている使命を十分果たしているか、これを私は
考えたときに、確かに不良債権の残高があっても、昔のように不良債権でありながらこれをちょっと伏せてしまうというような、そういう自己査定というか評価がまずしっかりできてきつつあるということが一つある。
それからもう一つは、そういう不良債権を認識した上で必要な保全措置、担保をとってあるか、あるいは十分な引き当てがしてあるかというような観点で見ますときには、今、
日本の金融機関というのはこれをかなりしっかりやっている、こういう体制ができて、その
意味では健全性については
日本の金融機関は他から何か言われる必要はない、私はそのように認識をしておるわけであります。
しかし、他方、
日本の金融機関がこういう不良債権を片方で、不稼働の資産でございますけれ
ども、大きく抱えていれば、これはやっぱり収益力を圧迫せざるを得ません。そうすると、収益力が弱いとどういうことになるかというと、リスクをある程度とっても有望だなと思った貸付先に対して貸し付けていけない、そういうようなことが起こるのではないか、そういうことが
日本経済の活力をやっぱりそいではいないか、こういうことを
考えざるを得ません。
そういうことを
考えたときに、不良債権そのものの残高を圧縮していく、オフバランス化していく、こういう
努力をやっぱり始めなければいけないのではないか、このように
考えて昨今そういうことを私は呼びかけさせていただいているわけであります。
そういう中で、今、先生がおっしゃられたセーフティーネットは張ってあるのかというようなことでございますが、この不良債権の直接処理、オフバランス化といっても、何にも手当てがしていないところにいきなりオフバランス化すれば、それはそのオフバランス化に伴う損失というのはがばっと出るということになりますが、かなりの程度引き当てが既に積んであるわけですから、その上に償却をするということになれば、この引き当てに何がしかの損失というものがある程度乗る、マージナルなものだということは、これはもう先生おわかりいただけるかと思うわけであります。
そういうことを
考えてみますと、このオフバランス化に伴うマージナルな、限界的に生ずる引当金の上にさらに乗っかる損失というのはそれなりに限定的なものにとどまるだろう、私はそのように
考えておりまして、そういう
意味で新たなセーフティーネットというようなものが必要になるというようなことは実は
考えておりません。
したがって、その後まして資本を大幅に深刻な程度のほどに毀損していって、そのことによって毀損していって再注入が必要になるというようなことは目下私は全く頭にないという状況でございまして、そういう今間接償却をやっていることを、オフバランス化ということに進むことによって新たなセーフティーネットが必要になる、新たな資本注入が必要になるなんというようなことになれば、今の間接処理そのものの
信頼性がどれだけあるかということを逆に疑われるような話になってしまうわけでありまして、私はそのようには
考えていないのであります。