○
山下八
洲夫君 私は、
民主党・
新緑風会を代表して、ただいま提案のありました
法律案に対し、
昭和六十一年の
日本国有鉄道改革に関する
特別委員会の
委員の一人だった当時の審議を思い起こしながら、
関係大臣に質問をいたします。
扇国土交通大臣、あなたは
国鉄改革は本当に成功したとお思いでしょうか。
国鉄改革の意義は、歴代の
自民党政権によって無理やりに、政治的に
赤字路線をつくらされたことにより
経営破綻に瀕した
国鉄を、
交通市場の中でも
競争にたえ得る
事業体に変革することによって
国民生活の重要な手段としての
鉄道の役割と
責任を果たすよう、その再生を図ることにありました。しかし、
国鉄は解体され、幾つかの
事業単位への
分割・
民営化が行われた結果、六つの
旅客会社と一つの
貨物会社が現在の姿であります。
その評価を下すにはまだ時期が早いかもしれません。例えば、
駅構内が美化されたこと、毎年のように行われていた
運賃値上げが影を潜めたこと、
新規車両の投入で
高速化及び
旅客運送サービスの
向上したこと、さらには国の
補助金漬けの
状態から現在は納税を行っていることなどをもって成功と語る向きもありますが、御所見を伺い、私は、以下、
国民が期待した
成果が上げられていない
国鉄改革の現実の姿を検証いたします。
まず、
本州三社の純
民間会社化について伺います。
JR旅客六社のうち、上場している
本州三社の
経営状態は
増収増益基調にあります。その主たる要因としては、
鉄道事業において大量の
旅客需要を有する
大都市圏と、世界に冠たる
高速大量輸送を誇る新幹線を保有しているところにあります。しかし、その陰では多数の
在来線がモータリゼーション、少子高齢化などを背景に減収で苦戦をいたしています。
一昨年、
規制緩和を
目的とした
鉄道事業法の改正が行われ、同事業の運営が免許制から許可制に変わるとともに、廃止についても一年前の届け出で済むことになりました。こうした背景もあって、赤字に苦しむ過疎
地域等には
鉄道の廃止の動きが各地で表面化しており、この流れは日増しに強まっています。その結果、
地域の公共の足をいかにして
確保するのか、自治体を中心に公共交通の
あり方の議論が始まりつつあります。
こうした中で、本法案では
本州三社については
JR法の適用除外及び国土交通省の認可事項の撤廃をして、機能的な
経営を行えることになります。
今後、その純粋な
民間会社となるがゆえに、利益を重視して、ローカル線の廃止等をちゅうちょなく行うおそれが極めて強くなります。
振り返ってみますと、政府が
国鉄の
分割・
民営化の方針を決めたとき、同じような不安が
国民から上がったことは周知のとおりであります。このとき政府は、
分割・
民営化を行えば
地域と一体となった活力ある
経営が展開され、
鉄道を
地域の足として再生し、残していけるとされました。
国民に対してその約束した
責任は重いと考えますが、その点についての見解をお伺いいたします。
今回の
法律案では、新
会社がその事業を営むに際し、
鉄道利用者の利便の
確保及び適切な利用条件の維持、
地域経済及び
社会の健全な発展と
基盤の
確保を図るため、当分の間配慮すべき事項に関する
指針を定め、対処しようといたしております。果たして、
JR法の
適用対象から除外される
本州三社が
経営する地方線について、今後とも維持されるものと考えていいのですか、お伺いいたします。
また、
国土交通大臣が必要と認めるときは、新
会社に対して必要な指導、助言が行われることになります。その前提として、
平成十二年に提示された通達で、「現行
鉄道事業法の一部改正後における
鉄道事業の廃止に伴う調整の実施について」に規定されている地元協議会における調整、つまり
国鉄改革実施後の
輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえ、現に営業している
路線の適切な維持という視点を踏まえた政府の指導及び助言が行われると考えていいのですか。
さらに、現在、
本州三社は黒字
経営ですが、将来、人口減少等によりこれが極めて深刻な赤字
経営に陥った場合でも、
国民の財産とされた
国鉄の改革という
経緯を踏まえますと、死守すべきという理屈になると考えますが、政府の考えを確認しておきたいと思います。
三島
会社、
貨物会社について伺います。
三島
会社においては、
会社発足の当時から
経営環境が厳しいこともあり、積極的な合理化対策を柱とする生産性の
向上が行われました。その結果、
分割・
民営化当初と比較して営業収支の改善が見られるようにはなりましたが、
経営安定基金の運用益を必要とする
経営状況は一向に変わっていません。
それどころか、今後は営業
地域内における高速道路の
整備の進展により、自家用車や高速バスとの競合の激化が見込まれます。これまで以上の
経営努力が行われない限り、さらに厳しい
状況に追い込まれることは必至であります。その上で、純
民間会社化の見通しはいつごろになるのか、明確な答弁をお願いいたします。
JR貨物会社の場合、
鉄道貨物の特性を発揮できる分野に絞り込みを進めながら、営業力の強化や人員の圧縮に取り組んできたところではありますが、連続八期の赤字決算が物語るように、今や赤字体質の回避にも限界があり、
経営の根本的な見直しが不可欠という極めて厳しい
状況にあります。どのような再建策があるのか、また具体的にいつからそのような検討が行われるのか、答弁をお願いします。
第三セクター
鉄道と
JRバスの今後について伺います。
国鉄分割・
民営化以前から、地方営業線の中には、
輸送需要の減少により収支が悪化し、
国鉄の事業
経営を圧迫していたものが多くありました。このままでは
国鉄改革の足かせになることから、その改善のため適切な
措置が講じられ、まず収支均衡を
確保することが困難な営業線を
特定地方交通線として八十三線を選定し、そのうちバス輸送と第三セクター
鉄道として営業が開始されましたが、もともと赤字であり、開業当初から
経営は極めて厳しいことが予想されました。しかし、
国鉄再生とあわせ、住民の
利便性確保に対する地元の期待が高まる中、当初は各種補助等にも支えられ、赤字ながら
地域の足として新たな脚光を浴びたところでありました。
ところが、鉄路と並行する道路の
整備、あるいはモータリゼーションの進展に加えて、
地域の過疎化、少子化等の
社会環境の大きな変化や、当初の
地域の鉄路に対する熱気も冷え込むなど、利用客は年々減少し、今や
経営は予断を許さないところとなっています。また、
JRバス
路線の廃止
計画も各地で多数上っています。廃止によって
影響を受けるのは、子供や高齢者、障害者など、いわゆる交通弱者です。公共交通の
確保をどのようにするのか、答弁をお願いいたします。
JR鉄道の安全対策について伺います。
輸送の安全
確保は輸送機関の基本的な使命であることは当然です。しかし、
分割・
民営化のもと、生産性の
向上の一環として、安全対策を無視し、
JR会社の人減らし・リストラ優先は周知のとおりであります。
本年一月、新大久保
駅構内で起きたホーム転落事故は全国的にも大きな反響を呼び起こしました。しかし、
JRは転落そのものを防ぐ手段、例えばホームドアやホームさくの全面的な設置には踏み込もうとしません。新幹線の生みの親である島秀雄さんが、約二十年前にプラットホームに欄干をという提言を残されましたが、いまだに安全策は行われていない
状態です。ホームにおける転落事故は後を絶たず、痛ましい事故の教訓が生かされていないことは重大です。まさに商売のためには利用客の人命や安全は二の次かと思わせる
JR会社の安全対策のおくれに、
国民の批判が相次いでいることは御承知のとおりでございます。大臣、いかが考えますか。
また、政府は、交通のバリアフリー化やホームにおける安全対策のホームドア、ホームさくの設置を義務づけませんでした。政府は義務づけるつもりはありませんか、お尋ねをいたします。
JR商法は本当にこれでよいのかお伺いしたいと思います。
駅前商店街の中小零細商店は倒産の連続です。その
理由は、旧
国鉄の時代は公共の福祉を増進することを
目的とした企業体であり、事業
範囲の
目的を
達成するものに限られていたからです。しかし、
分割・
民営化された今日、
JR会社は関連事業の拡充を積極的に図ることが可能になりました。
自来、
JRは関連事業収入の
確保を
鉄道事業と並ぶ重要な柱と位置づけております。その保有するノウハウ、技術力、資金力、人材等を最大限に活用し、
鉄道以外の分野でも旅行業、不動産業、ホテル業などにも積極的に進出をしています。また、
駅構内のデパート化、駅前のラーメン屋さんや商店を倒産に追い込む
JR商法が現在でも行われています。こうした関連事業収入は、
分割・
民営化後に着実に増加を続け、今日の
JR経営の大きな柱になりつつあると思います。
現行
JR法に中小企業に配慮とする規定があるにもかかわらず、各地で大きな
地域問題になりつつあることを指摘しておきます。この
状況を大臣はどのようにお考えでしょうか。
現行法の
JR会社では改革に逆行するのかお伺いをいたします。
JR会社については、累次の
閣議決定により、できる限り早期に純
民間会社とすることが求められてきました。
本州三社については、
昭和六十二年の
分割・
民営化後、安定的に黒字
経営を続け、その結果、逐次
株式の上場を果たしました。政府は、純
民間会社とするための条件が整ったものとして、今回、とりあえず
本州三社を
JR会社法の
適用対象から除外し、一層の自主的かつ
責任ある
経営体制の確立を図るとしています。
法律案の
内容がこれだけであるならば、改正の
趣旨はよく理解できます。
JR会社については、一般の民間
鉄道とは異なり、
国鉄改革の中で誕生したという
経緯、例えば、
国鉄の
長期債務の大半を清算事業団に継承させた上で、
国鉄の
ネットワークを極力維持しつつ、
JR各社とも健全な
経営が行われるよう
事業用資産の継承を行ったほか、
運賃、
線路使用料等において
JR各社間の
協力・
連携体制がとられたことであります。こうした
国鉄改革の
趣旨に沿った
事業運営が現行の
目的と考えます。
JR会社に勝手な
経営はさせないために政府の関与を残そうとするなら、何も今
法律を改正することなく、現行法のままでよいということになりはしませんか。それを本
法律案では、
本州三社を適用除外しておきながら、
指針に名をかりて、政府の関与で縛りをかけている本改正案
提出の
理由には矛盾がありませんか。明快な答弁をお願いします。
旧
国鉄職員千四十七名の雇用問題について伺います。
この問題は、既に十四年を
経過したのにいまだに解決していません。当時の審議のとき、中曽根総理大臣、橋本運輸大臣は、一人も路頭に迷わせることがないよう万全を期すると力強く答弁されました。ところが、いまだに路頭に迷っているのです。この機会を逃せば永久に解決はできません。人道的観点から政治的な解決を行おうではございませんか。当事者及び
国民の皆さんにもわかりやすい結論を
国土交通大臣、厚生労働大臣に強く要求をいたします。
最後に、交通基本法の確立を提案いたします。
国土交通省が誕生したことにより、従来、縦割りとの指摘を受けてきた交通行政、国土行政が統合され、総合的な交通政策を確立することが可能になって、また
国民からも大いに期待されているところであります。
地球規模で環境が問われている中、環境に着目した交通政策の樹立は急務です。さまざまな交通モードの中で、環境面で
鉄道輸送が一番優位にあるということは異論のないところです。
鉄道と
自動車、船舶、航空の輸送特性に応じた効果的なすみ分けを積極的に推進すべきだと考えますが、いかがお考えでしょうか。
小泉総理は、「聖域なき構造改革」を唱えておられます。陸海空三位一体の総合交通体系は、新世紀の地球に優しいすばらしい構造改革になると思いますが、いかがでしょうか。
私たち
民主党は、
国民の移動の権利を明文化し、交通の特性に応じた役割分担、環境負荷の低減、交通利用者、とりわけ移動に制約を持つ者の立場に立った施設
整備を基本理念とし、総合的な交通
計画の集大成となる交通基本法の提案を約束し、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣扇千景君
登壇、
拍手〕