○寺崎昭久君 私は、
民主党・新緑風会を
代表し、ただいま議題となりました
住宅金融公庫法等の一部を改正する
法律案について、
関係大臣に
質問いたします。
快適な住まいは、健康で文化的な生活を送るための基本であります。
戦後の混乱期から高度成長時代を経て今日に至るまでの間、
国民生活が豊かであるかどうかの基準は、快適な住まいが確保されているかどうかにかかってきたと言っても過言ではありません。とりわけ、農村から都市への人口移動、大
家族中心の世帯構成から核
家族中心世帯への移行など、
我が国の社会や
家族を取り巻く環境が大きな変化を遂げる中、都市部における貧困な住宅環境の解消は極めて緊急な
課題でございました。そのような時代に、莫大な財投資金と
政府補給金に基づき、長期、固定、低利の融資を行う住宅
金融公庫は、
我が国の住宅投資の牽引役として、また、
国民の住宅不足解消の立て役者としてまさになくてはならない存在であったと言えましょう。
しかし、住宅不足の時代が過去のものとなり、住宅の量から質が問われるようになった今日、住宅に対する
国民のニーズはさまざまな面において転換点に差しかかりつつあります。また、
金融ビッグバン以降、
民間金融機関をめぐる
状況も大きな変化を遂げました。
今後の
我が国の住宅政策は、
国民の多様なニーズにこたえるという視点を第一に据えながら、
民間分野での競争を喚起しつつ、より市場に適合した方法で行われるべきであります。
しかし、現在の住宅
金融政策にその変化の兆しを見出すことはできません。それどころか、住宅
金融公庫の存在が住宅
金融市場の健全な発展を阻害している
状況さえ見出されるのであります。今や住宅
金融の供給総額に占める公的機関融資の割合はほとんど四割以上に達し、今後もその割合はふえる傾向にあります。諸
外国の例を見ても、公的
金融機関がこれだけ多くの住宅取得資金を供給している例はほとんどありません。
我が国の
金融市場の特異性がここにもうかがえるのであります。
我々
民主党は、住宅
金融公庫の直接融資を縮小し、
民間金融機関を中軸とする住宅ローン供給の体制に改めるとともに、それを補う形での利子補給、減税
措置などへ住宅政策の
あり方そのものを転換するべきであると
考えます。その結果、
民間の住宅ローン市場がより活性化すれば、
民間金融機関同士の競争の高まりによって、金利面における競争や新たな商品の開発など、ユーザーにとってより利用しやすい環境が整備されることでしょう。
しかし、本法案は、特別割増融資の期限延長や、はじめてマイホーム加算の増額など、住宅
金融公庫が直接融資を行う体制を
強化するものでしかありません。官から民への時代の潮流の中で、このような
措置が
民間の圧迫につながるとはお
考えにならないのか、国土交通
大臣の答弁を求めます。
さて、
金融公庫法第一条には「住宅
金融公庫は、
国民大衆が健康で文化的な生活を営むに足る住宅の建設及び購入(住宅の用に供する土地又は借地権の取得及び土地の造成を含む。)に必要な資金で、銀行その他一般の
金融機関が融通することを困難とするものを融通することを目的とする。」と記されております。
つまり、この第一条は、業務範囲を政策的に限定する旨が
規定されており、
民間の
金融機関が供給しにくい融資を行うことこそ住宅
金融公庫の存在意義があると言えましょう。しかし、現在の住宅
金融公庫は、この第一条の理念を超えて極めて幅広い融資を手がけているのが実態であります。
確かに、以前の
民間金融機関は、企業部門の旺盛な資金需要にこたえるのが精いっぱいで、個人向けの住宅ローンに対しては消極的でございました。そのような時代においては、住宅
金融公庫の存在意義は極めて高いものであったと言えます。しかし、現在では、貸し倒れ懸念の少ない個人向け住宅ローン
分野に対する関心は
民間金融機関の間にも徐々に高まりつつあり、また各種ローン商品の開発、供給も盛んに行われているのであります。このような観点から
考えると、住宅
金融公庫の業務範囲は徐々に縮小し、より政策的な
分野に業務をシフトしていくべきではなかろうかと
考えるわけであります。
今後の住宅
金融公庫は、真に
民間金融機関からの融資が受けにくい案件、例えば障害者、高齢者、低中所得者やシックハウス症候群患者など、特別な事情があり、かつ
民間からの融資を受けることが困難である案件に絞って、より優遇するものへと
改善していくことも一考であると思います。業務範囲の焼け太りを防ぎつつ、真に住宅を必要とする人たちへの
措置を講ずることこそ、住宅
金融公庫に課せられた社会的使命を改めて再確認することになるのではないかと私は
考えますが、国土交通
大臣はいかが
考えますか、明確な答弁をお願いいたします。
さて、来るべき高齢化社会の到来に備えて、高齢者のための住宅
対策は喫緊な
課題であります。本案件では、定期的な収入の少ない高齢者に対して、共同建てかえ、マンション建てかえにかかる費用を融資し、リバースモーゲージの手法を応用した償還方法の導入が盛り込まれております。また、今
国会で同時に審議される高齢者の居住の安定確保に関する
法律案では、高齢者向け優良賃貸住宅制度の創設や、終身建物賃貸借制度の創設などが盛り込まれており、これら高齢者の住まいを守る諸制度の創設は、私も一定の前進であると評価するものであります。
しかし、高齢者が安心して暮らすためには、これら建物などハード面の整備だけで本当に十分なのでございましょうか。高齢者が生き生きと老後を暮らすには、若いサラリーマンや地域事業者、ボランティアやNPO団体など、地域で生活するさまざまな人たちとの交流が欠かせません。これら各層各
分野の人たちと高齢者の
方々がともに地域コミュニティーを形成することで、本来の意味での高齢者
対策、ひいては高齢者が充実した老後を送れるための環境整備が図られるのだと
考えるのであります。
この
法律のとおり、たとえ共同建てかえ、マンション建てかえが進捗したとしても、それだけでは単なる建物の整備ができるだけでありまして、全く不十分であると言わざるを得ません。住まいというのは、ハードウエアを整備すれば事足りるという
考え方では、各層各
分野の住民が
協力し合うという本来の意味での高齢者に優しい社会の建設はおぼつかないのであります。このような視点と配慮が本案件には全く欠落していると言わざるを得ません。
本案件によって高齢者が生き生きと安心して生活を送ることにつながるとお
考えなのかどうか、国土交通
大臣の答弁を求めます。
最後に、特殊法人
改革に対する
政府の
姿勢について伺います。
住宅
金融公庫を初めとする特殊法人については、昨年末に閣議
決定された行政
改革大綱において、廃止、整理合理化、民営化などの
措置を講ずるとされており、すべての特殊法人はゼロベースから見直すという
方針が既に明らかにされております。
しかし、この
法律では、特別割増融資制度の期限延長や、はじめてマイホーム加算の増額など、既存制度を
強化こそすれ、整理縮小とは全く別のベクトルを指向しているのであります。高齢者
対策の美名にかこつけて既存制度の維持拡大を図るこのようなやり方は、まさに姑息としか言いようがございません。
私は、この
法律が、特殊法人
改革の流れに逆行するような事態を招くことを非常に危惧しております。この
法律にかかわらず、昨年末示された特殊法人
改革の流れがいささかの揺るぎもないことをここで明らかにしていただきたいと思います。
行政
改革担当
大臣の明確な答弁をお願いして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣扇千景君
登壇、
拍手〕