○
参考人(
佐藤幸治君) 大変根源的な問題で、だからどうお答えしていいものか非常に迷うのでありますが。
〔
委員長退席、
理事石渡清元君着席〕
ただいまの小学校からの教育の立て直しというのは、まさに中教審が今年度新しくその問題に教養教育、広い
意味での教養教育をどうするかというので取り組んでいるところでありまして、
審議会の中でもロースクールだけいじってもどうしようもないんじゃないか、むしろ下からつくり直さないとだめじゃないかという御
意見もございました。それは私も一理あることかと思いますけれ
ども、しかしそれは時間をかけてそういうこともあるんですけれ
ども、やれるときに上の方、上の方と言ったらなんですけれ
ども、上の方を変えることによって下の方も変わっていくということもあります。双方向で考えるべきで、今この機会に
司法改革を求められ、
法曹養成の
あり方を早急に考えろというときに、まず
法曹の育て方のところを我々としても真剣に考えようじゃないか、これによって全体の教育のシステムが変わっていくところもあるというように考えたわけで、結論的には皆さん、それでよろしいというようにお考えいただいたんだろうと思います。
それで、
法科大学院というのは何をねらいにしているのかということなんですけれ
ども、やはりなぜ自分が
法曹になりたいのかというように考える
期間を若い人たちに与えなければいけない。それはやっぱり、これはイギリスに行っておられる森嶋通夫先生な
どもそういうことをよく言っておられるんですが、高校二年、三年、それから十八、十九、大学の一、二年ですね、若いときのこの
期間が人間にとって極めて重要だと。一体、自分が何者であるか、何になりたいのか、何によって生きたいのかということを学問に初めて触れることによって、そこで自分をそういう自己発見する、そういう場として若いこの時期というのは大変大事なんだということでございます。
ところが、今の
司法試験、実情を見ていますと、もう高校を卒業して大学に入るとすぐ予備校に行っちゃうわけです、多くの人は、早く通ろうとすれば。そうすると、実際に大学の教養というか非常に大事な時期が、何となくそこで空洞化すると言ったら少し語弊がありますけれ
ども、そういう芳しくない状況にあることは確かです。
だから、
法曹になりたいという人、自覚を持ってやるというのは、大学の学部の
期間を過ぎて、場合によっては社会人でもいいんです、仕事されてから入ってきていただいても。本当の自覚を持って自分がなぜ
法曹になりたいかという人に入ってきていただいて、そしてそこで懸命に勉強すれば大半が
法曹になれるというその仕組みをつくらないといかぬ。一発試験だけで、出口だけでやりますと、さっきから、午前中申し上げているように、結局、効率的に試験を通ろうという、そうするとクリティカルに物を見たりなんかするよりもできるだけ無難な型にはまって、無難な答案でという、そういう方向で勉強するようになる。これはもうしようがないです、人間は。そうならないように、一種の強迫観念で勉強しているわけですね。そうならないようにするためには、なぜ
法曹になるのか、なりたいのか。そして、なりたいと決めた人には時間をかけて、そしてこの
法科大学院は決して物を詰め込むのではなくて、考え方を鍛えるところなんです。
私もアメリカに行ったことがありますけれ
ども、アメリカだけが唯一のあれじゃありませんけれ
ども、私は
憲法ですけれ
ども、あのケースブックを見ますと、あらゆる問題についてあらゆる角度からの設問があります。正解なんてありません。それによって考え方を鍛えるんですね。そういう
法曹をこの
法科大学院で養成する、そういう
観点から
法科大学院を考えたわけであります。ちょっと長くなりまして済みません。