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参考人(
速水優君) 前に述べましたように、去年の七、八月ごろからゼロ金利の解除ができるような状態になって私どもも解除したわけですが、それで十—十二月は御承知のようにGDPはプラスになっておるわけです。ところが、昨年の暮れ、ことしの初めからアメリカの経済が急速に悪化していくということが起こったわけで、IT産業というのがやはりそういうスピードを速めていくということを私どもも教えられたわけですけれども、従来の古い産業と違ってその効果が全世界に瞬く間に浸透していった。したがって、この一—三月の
日本は輸出の減少から生産もマイナスになり、今や設備投資もやや伸びがとまっていくんじゃないかという感じがしているのが現状でございます。
金融の方を申しますと、一月、二月、三月と
金融を緩めていきまして、三月には従来の金利で調整することをやめて量で調整しようと。特に
日本銀行の準備預金は四兆円ぐらい積んでもらっているわけですが、それにさらに一兆円加えて、五兆円の当座預金を毎日保っていくようにして、その分
資金を出していく。買いオペを中心にして
資金が出ていっているわけでございます。したがいまして、今、
市場は言ってみればじゃぶじゃぶというふうにお考えいただいて結構でございます。
この前、民主党の
峰崎先生にも申し上げたんですけれども、私ども
日本銀行が出しております
資金は、マネタリーベースという、うちから出る金は過去五年の平均で七・九%毎年ふえているんです。それが銀行の段階でマネーサプライになりますと、銀行の預金、CDになりますと三・三%、さらにそれが貸し出しになりますと五年間の一年平均がマイナス〇・四というふうに、私どもの方で出している金がこの数字を見る限り
企業に入ってないんです。これを幾ら私どもがこの調子で出していっても、
企業に流れていくわけにはいきません。それで私どもは三月の
政策変更をいたしますときにステートメントを出しまして、今度は思い切った
金融の緩和をするけれども、これは
構造改革によって経済自体が動いていかない限りその効果は出ませんよということを申したわけです。
と申しますのは、GDPで見ましても過去五年は御承知のように名目で毎年平均して〇・六%、実質GDPでも一・三%、
CPI、物価はほとんど動いていない〇・一%の上昇ということでございますので、経済はほとんど動いていないんです、
国債はふえていますけれども。そういう
状況の中で、今ここで
資金をさらに出してみても、
構造改革で、民間主導で
企業が動き始めない限り経済というのは伸びていかない。
よく経済学者などの言う言葉にリクイディティートラップ、流動性のわなといったような言葉がございます。これは私もよく知りませんけれども、毎年幾らリクイディティー、植物に水をかけていっても、さっきの毎年七・九%といったようなことでかけていっても木が大きくなっていかないんですね。木の置かれている
状況というのがそういうものを育てていくような
状況になっていないということがあるわけで、基本体力が育っていかない、トラップの中ではそういうことになってしまっておるわけです。
そこへもってきて、新政権がこうやって
構造改革をまず第一に掲げて、
構造改革なくして景気はよくならないということをはっきりおっしゃって、それに向かっていろいろ具体案がようやく動き始めている
状況でございます。そういうことを見ながら、私どもは、経済が本当に動き始めて
資金が必要になってくるときにはいつでも
資金の追加的な供給をするつもりでおります。
経済が育つ前にも、こういった
政策は、当面雇用のマイナス効果が出てきたり、あるいは
企業の破綻が起こったりといったようなことが起こるかもしれません。それから、海外で、今のアメリカの経済がもう少し時間をかけないとよくなっていかないということであれば、輸出は今までと同じようにさらに下がっていくかもしれません。そういった事態が起こってくるならば、そのときに私どもはその情勢を判断して新しい追加的な
措置も考えることができると思っておりますけれども、今の現状ではそういう
状況にはないというふうに思っております。
構造改革が動き始めて初めて次の手が考えられるんだということを私どもは今考えております。
以上でございます。