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国務大臣(
宮澤喜一君) それではお時間を拝借いたします。
このたびの不況というものがどれだけのいわゆるギャップを持っておったものかということは、何年かたちまして検証しないとわからないところでございますが、私は、
平成十年の夏ごろから始めまして、とにかく減税にしろあるいは公共
事業にしろ、
金融機関に対する
支援にしろ、あらゆる国力を挙げてこの不況から逃れなければならない、こう
考えました。そうでありませんと、
日本の
金融機関は幾つかのものは倒産いたしましたし、海外でも
ジャパン・
プレミアムが発生いたしましたし、もとより国内でも失業がふえてくる、こういう
状況でございますから、かつて経験したことのない不況である。しかも、東南アジアの不況もあったということで、二年続けて今おっしゃったようなことをいたしました。
三年目の秋ごろには、うまくいけば
企業活動が復活してくるであろう、その結果として
家計にもいい影響を持つようになるであろう、しかしそれまでは国としては
支援を続けるしか方法はない、こう
考えておりまして、昨年の秋と思いましたが、昨年の春過ぎには
企業活動の方は思ったよりもむしろ予想を上回って、今日まで設備投資等々の
活動は続いております。
問題は、それが普通でございましたら、
企業の高収益というものは当然労働にも分配されるということで、それが
家計をよくするということですが、その
部分が今日まで実現をしていないということでございます。これをGDPで申しますと、大体GDPの六割
部分が
消費でございますから、その
部分が欠落した
状況でございますので、今日
我が国の
経済成長というのはなお一%台であると。これは三%ぐらいは当然にあってしかるべきで、そういたしますともう余り文句を言うことはないわけでございますが、少し時間がかかっておると私は思っていまして、したがって、昨日通過させていただきました本予算におきましても、ややそういう備えをしております
部分と、それから国債をなるべく減らしたいと、
財政のこともございますから、そういう両にらみの予算を通過させていただいたわけでございます。
そこで、これからの指標で申しますと、先般、
平成十二年の十—十二月がプラス〇・八ということでございました。それで、一—三月が残っております。一—三月は恐らく私は、これまだわかりませんが、それよりはいい
数字が出るだろうと。これは六月の十日ごろでないとわかりませんが、それで、
政府の予定どおり一・二%という十二
年度の成長というものは、恐らく私は間違いないと思っておりますから、そういうふうに見ますと、今の
日本経済は、
家計がそういう
状況にあるということはございますけれ
ども、マイナスを続けておるわけではない。ただ、プラスの
状況が
家計の理由によりましてもうひとつ伸びないなと、こういう
状況でございますから、決して悪いというわけではない。
株価は確かに非常な暴落を最近いたしまして、少しずつ回復をいたしておりますけれ
ども、そういうことでございます。
他方でしかし、それだけの
債務を負いました。これは、私はむだをしたという思いはございません。これも何年かたって検証していただかなければ言えないことでございますけれ
ども、
一つ一つは生きておった、それだけ不況が深かったと。おまけに、新しい産業といったようなものが、二十一
世紀からの問題がございますから、それへも対応いたしておりますから、むだをいたしたとは私は思っておりませんけれ
ども、しかしいかにも大きな
債務であって、これはこれから我々が一生懸命成長を積んで、そして払っていかなければならない
債務ではございます。
ですから、全体を総括いたしまして、
国民の側からお
考えになって、随分金を使ったなと、もっと早くいかなかったのかなという御疑問はあると思います。これはしかし、何年かたって検証をしていただきませんと何とも申しがたいことであるし、こんなに金を使わなくてもよかったということも、これも検証をしていただかないと何とも言えないことだと思っておりまして、
政府としては全力を尽くしてここまでいたしましたと。今の段階では
家計に
企業のプラスがシフトしていかないということが残念なことですが、恐らくこれは、いわゆる
IT革命によって、
アメリカではレイオフで労働
関係を片づけてしまいました。
日本はそういうことのできない国でありますから、いろいろ
労使関係等々に、いわゆる年功序列であるとか生涯
雇用であるとかいうことはいろいろに変わってきつつあっておって、それが
一つ労働側の事情にあると思います。
それからもう
一つは、
企業はかなり
利益を得ておりますけれ
ども、かなりの
部分が古い
債務の返済に充てられていて、
労働側は
雇用の不安がどうしてもございますので、
賃金要求というのがその分だけやっぱり鈍りがちになるということはやむを得ないことかもしれませんが、それらのことがあって
家計というものが予想どおりには盛り上がっていないと。それは私
ども今でも心配をしている出来事でございますが、大体総括いたしますとそのような事態であった。
よく、
政府は無策であった、大変借金をしたと。そのうち大変借金をしたことはそのとおりですが、無策であったかどうかは、実はこのたびの不況の深さというものが果たしてどのぐらいのものであったのかということとの
関連において、やはりやがて時間が参りましたら検証を受けなければならないことであろうと、長くなりましたが、そう思っております。