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西山登紀子君
日本共産党の
西山登紀子でございます。
最終報告をまとめるに当たりまして
幾つか御
意見を申し上げたいと思います。
党の基本見解は畑野理事が述べたとおりでございます。
私は、
少子化問題の解決の第一歩というのは
社会全体がこの問題を正面に据えて取り組むことだと痛感をしてまいりました。本
調査会が
少子化問題をテーマに設定をいたしましてさまざまな角度から客観的、科学的、また実践的な
調査を重ねた結果、昨年五月の提言を発表することができましたけれども、これは大変時宜を得た取り組みであったというふうに思っております。
私たち各地で
少子化シンポというものに取り組んでまいりましたけれども、私はこの提言をまとめました
委員の一人として、党の立場と完全に一致するものではありませんけれども、国会の超党派の努力が実ったものとしてこの提言を積極的に紹介をしてまいりました。いろんな方に後で感想文なんかを出していただきますと、例えば産まないのは自由だけれども、産みたいのに産めないのは問題だねとか、
子供に優しい政治はだれもが安心して暮らせる世の中そのものです、
少子化は政治の問題、解決できないのは
個人の責任ではないのですねというふうな、改めて
少子化問題についてその背景だとか、あるいは
原因などがよくわかったというふうな御
意見をたくさんちょうだいしております。
国会がこの問題を正面に据えて取り組む姿勢を示すことによって、政治の問題として広く受けとめられ、解決に前向きに向かおうという力が生まれているということを実感しております。三年間の報告をまとめるに当たって、本
調査会がこうした
国民の願い、とりわけ若い男女の願いとエネルギーにこたえ
少子化問題を深く解明して、その真の
国民的解決方向を示す責任があるというふうに考えます。
その立場に立って
幾つかの
意見ですが、この一年間の本
調査会での
調査は、とりわけ家庭と
仕事の
両立、それが
少子化対策のかぎを握るという観点で深められたというふうに思います。二十一世紀は男女ともに
仕事も
子育ても
両立できる
社会でこそ
希望が持てるのではないでしょうか。問題は、では、そのような
社会をどのようにして実現をするかという道筋です。
一方で、昨年、男女共同参画基本法が成立をいたしました。昨年の暮れには国の基本計画もつくられまして、これから地方でもこういう計画が義務づけられる、こういうことになりました。この法案や行動計画の中に本
調査会で
調査をしてまいりました
少子化対策をきちっと位置づけていくということが大事なことではないでしょうか。とりわけ、本
調査会で明らかにもなってまいりましたが、
日本の
雇用と労働の国際的に見ましても異常な
実態、こういう問題について私は深くメスを入れていかなければならないというふうに思っております。
端的に特徴づけますと、たくさんありますけれども、私は
二つ女性の側から言いますと、いわゆる
労働力率というのがM字カーブになっているという問題。男性の側から言いますと、これは総務庁の
調査でも
育児の時間は一日
平均二十三分、こういうふうに出ているんですけれども、こういう事実に端的に特徴づけられますように、やはりこれは極めて男女いずれもが働くことと、
出産、
育児が
両立できないという厳しい
雇用や労働
実態を示しているのではないかと思うのです。これは、いわゆるグローバルスタンダードという言葉を政府は好きですけれども、こういうグローバルスタンダードというものからは非常に極端にかけ離れたような
実態というものは私は国際的には通用しない、早くこういう問題を解決しなければいけないのではないかというふうに思っています。
具体的に申し上げます。
一つは、男性の働き方を変えて
育児に参加するようにすべきだという
意見が多く出されました。これは新しい時代の流れにしていかなければならないと思っております。
調査会で育時連の田尻
参考人の御
意見というのは、私はとりわけ大事ではないかというふうに思っております。
日本の男性労働者が声にするかどうかは別にして、このような思いを持っているのではないかと思うわけです。
中でも、田尻
参考人の御
意見ですけれども、例えば今の
育児休業法、短時間勤務のところにフレックスタイムでも可というふうにあるけれども、
育児時間の短時間
制度というのはやはり独立させて義務化していただきたい。そうでなければ
女性だけがずっと
育児をやっていて、男性はもう毎日企業戦士で遅くなっているという例がありますけれども、一歩進んでやるにしても、きょうはお父ちゃんがいて
子供に食わせる、お母ちゃんはずっと残業をしているという繰り返しのようで、母子家庭と父子家庭が繰り返されるようなことになっては困る、やはり短時間勤務にあわせて
夫婦がいて
子供がいてという団らんを組めるようなものでないとだめじゃないかという御
意見も述べていらっしゃるわけです。
さらに田尻
参考人の御
意見では、会社の中で男性が
育児に参加をするということで上司の理解を得るということは極めて難しい、どうしても会社だけの論理じゃなくてそこに国としてのもの、やっぱり企業の前に立ったら
個人は弱いですから、そこに国の意思を入れていくという必要性がある、こういうようなこともおっしゃっておりますし、
育児休業を男性がとる場合にも男女の賃金格差をもっと埋める、こういうことが必要だというように御
発言をなさっているわけです。私は、こういう点の
参考人の
意見をやはり真摯に受けとめていきたいと思っております。
これにはやはり法的なルールがどうしても必要でありまして、企業の都合を優先させるという
両立の道ではなくて、本当に労働者、家族の人間らしい営みを保障する、そういう観点が必要ではないかと思います。
二つ目の問題として、
女性の働き方の問題でも深められた問題がございます。それは、
経済的な保障の問題なんですけれども、いわゆる機会費用の問題がこの
調査会で提起をされまして、私も大変勉強になったわけでございます。将来
女性が
出産、
育児によって損失する機会費用、これは
国民生活白書などでは一人四千四百万円もの損失になるという数字が出ているわけですけれども、
女性の生涯の自立の問題として極めて重要な問題ではないでしょうか。いまだに
女性の賃金は男性の約六割という差別賃金に加えまして、この
出産、
育児によって
女性が損失をこうむるという機会費用の問題。では、この
女性の損失は結局一体だれのもうけにつながっているのかといいますと、結局
出産、
育児という形を終えて
女性を再
雇用する場合には安いパート労働者として、無権利な状態で企業は
雇用をするわけでございます。ということで、これは
日本の企業のもうけにつながっているのではないかとすら思うわけですけれども、この
女性の機会費用をこのまま放置しておいては
少子化の問題は解決しないではないかと思います。
清家
参考人も私の質問に答えて、
女性の機会費用というものは政策的に減じることができるというふうにも述べられました。また、八代
参考人は、かといって企業
負担をふやさない方向で解決をする方がいいというような御
意見もございましたけれども、私はこの
少子化対策の問題として、
保育所などの充実はもちろんのことですけれども、こういう企業責任で必要な経費をきちっと
負担をさせる、つまり労働者を
雇用する場合にはその一人一人の労働者の、例えば
労働力の再生産という場合にはやはり家族を育てるということも含めての
労働力の再生産費用、これはやっぱり企業がきちっと
社会的な責任として負わなければならない。もちろん、企業だけで十分でない場合には、広く国の
制度として
負担を分かち合ってこそ、これからの二十一世紀、
女性が働きながら
結婚も
子育ても選択して安心だなというふうなことになるのではないかというふうに思います。
例えば財源の問題ですけれども、私は今
経済産業
委員をしているんですけれども、この間、産業再生法というものが通りました。この一年間で調べてみますと、上位十社で二万三千人の縮減、いわゆるこれは首切りでございますが、二万三千人の労働者が縮減をされた。そういう企業に対して、政府は二百二十億円もの
支援をしております。ちなみに、一人縮減、首切りをするのに百万円の
支援をしているということになるわけです。
私は、企業のもうけのためにリストラ協力金を出すというぐらいなら、
子育てを可能にするためにこそ
支援をすべきではないでしょうか。抜本的な予算の組み替え、つまりいわゆるゼネコンや大企業や、あるいはむだな公共事業に
お金を使うのではなくて、もっと
子育てやあるいは男女の労働と
育児が
両立できるような方向にこそ
お金を使うという抜本的な政治の改革というのがやはり不可欠ではないかというふうに思っています。
最後に政府の姿勢について一言、少し厳しいですけれども、御
意見を申し上げたいと思うわけです。
乳幼児
医療の助成
制度につきまして、昨年五月の提言の中には、
子育ての
経済的
支援の項の第一項に位置づけております。ところが、本
調査会で政府のその提言の実行
状況についての御報告がありましたけれども、その報告には、
検討する意思がないといいますか、やらないという報告であったわけです。それでも試算をしてくださいと言えば、千二十億あればできるという試算も出したわけでございます。六歳までの無料化ですね、やれば。
ところが驚いたことに、東京新聞の四月十六日の夕刊に載っているんですけれども、政府は、各都道府県が自主的にやっているわけですけれども、窓口で無料にしている自治体に対しては国庫補助を減額するという、まさにこれはペナルティーをかけております。もちろん東京都だけではありません、私が質問のときに取り上げました岐阜県の笠松町、こういうところでも、窓口で直接無料にしているようなところには国庫補助を減額すると。
理由は、「窓口で無料化すると、その影響で(安易に子どもを病院にかからせる人が増え)
医療費の出費が増えてしまう。」、これが
理由だというのですから本当に聞いて驚くわけでございます。
この乳幼児
医療の助成
制度というのは、地方自治体が厳しい財政の中でも、しかし
少子化対策として、生まれてくる
子供たちの命、あるいはこれから
出産しようとする若いお父さんやお母さんに安心してもらうために一生懸命努力している
制度でございます。国がやるべきは当然であるにもかかわらず、やっているところにペナルティーをかけてそれを邪魔するというのは一体どういうことでしょうか。
本
調査会で真剣に
議論をしている、こういう
調査会の姿勢に対して政府の態度が余りにもひど過ぎるのではないかというふうに、これは
委員の皆さんも与党の皆さんも含めて一致する思いではないかと思うので、ぜひこういう点につきましては政府みずからがしっかりと改めていただいて、できるところからもちろん一緒に力を合わせてやっていくということで、ぜひ私たちも頑張りたいと思います。