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参考人(標
博重君) 初めに、私のレジュメの一部をちょっと訂正いたします。
一ページ目の十二行目、十三行目のところに「漸く公開したデーターによれば八四年には」という、これは九六年に御訂正ください。
それから、次の行の「地下水汚染の指標である電気伝導度が一万九千二百マイクログラム・パー・立方メーター」になっておりますが、これはマイクロジーメンス・パー・立方メーターですので、マイクロジーメンスというふうに御訂正をいただきたいと思います。
それから、四ページ目の一行目、「
事業決定には
住民はつんぼ桟敷です。」、まことに障害者の人には申しわけなかったと思いますが、つんぼ桟敷は差別語でございますので、これは障害者の皆さんにおわびをして、この言葉は削除して、
事業決定には
住民は阻害され続けましたというふうに訂正をお願いいたしたいと思います。
それでは、初めから申し上げます。
私は
日の出の森・ト
ラスト運動共同代表ということで、当事者として本日は
出席をいたしました。なお、そのほか首都圏道路問題連絡会の
代表幹事もやり、それから今、
収用がかかっております圏央道あきる野の、それからこれから次に来るんじゃないかと思います高尾の、それぞれのトラストの
地権者にもなっておるという意味での
立場でございます。
初めに申し上げたいことは、私どもは好きこのんでトラストを仕掛けたわけじゃございません。こういうことを言っちゃいけないのかもしれませんけれども、先ほど
稲城の
市長さんが組合の
管理者という
立場でもって私どもの
運動を妨害者というふうに
お話になりましたけれども、一々先ほどの
お話に反論する時間がございませんから反論はしませんけれども、私は好きこのんでトラストをやっているんじゃないということですね。
では、なぜやったのか、これをまず第一番に皆さん方に御
理解をいただきたい。それから二番目には、この
改正案の問題について御
意見を申し上げる。それから三番目には、
公共事業のあり方ということについて見解を申し上げる。こういう順序でいきますので、
日の出のことだけ申し上げるわけにはいきません。
日の出の場合で申し上げますと、その発端は、一九八四年に谷戸沢の
処分場で
埋め立てが始まったんですが、その三年後あたりから既に
処分場の地下にあるシートが破れて、そこから汚染された水が漏れ出したんじゃないかと疑われる証拠が
周辺地域に出てまいりました。それが発端であります。
そのことに対して
地元の
住民や、それから
多摩の
市民、
多摩の
市民というのは谷戸沢に
ごみを捨てている当事者ということであります。私も小平の
市民ですから、谷戸沢や
二ツ塚に
ごみを捨てている当事者の一人でございます。
ところが、そういうことで私どもは
処分組合の方に、汚染データの公開をしてくれ、それから原因を調べてくれ、それから対策をちゃんと立ててくれということを
要求したのでございますが、
処分組合はすべてこれに対しては拒否をするという態度でございました。
地元の
公害防止協定を結んだ
住民に対しては情報は提供するけれども、それ以外の
多摩の
市民や、それから同じ
日の出の町民でありましても、
自治会以外の町民に対しては
情報公開をしないという態度でございました。そして、シート破損は絶対あり得ないんだということを強く主張されました。もっとも谷戸沢の
処分場は厚生省御推薦の管理型
処分場のモデルであるということの宣伝がされておりましたから、シートが破損しては大変なことになるわけでございます。
それで、私ども
住民の方は
情報公開を求めて
訴訟を提起しました。閲覧権確認という難しい名前でありますけれども、その
訴訟には勝利をいたしました。したがって、私どもは
処分組合に公開しろというふうに言いましたが、
処分組合はそれもまた判決にも従わないという態度に出たわけです。そして約六百日の間、間接強制金という、いわば罰金みたいなものがありますね、裁判に従わない場合の、民事ですけれども。これを約一億九千万、
処分組合は支払い続けました。
その中でやっと一部のデータを公開しましたけれども、その後でだんだんにデータが公開されてまいりましたが、その中で電気伝導度という地下水の汚染を象徴するデータがあります。本当は
処分場はシートが張ってありますから、シートの下は何も漏れてこないことになります。したがって、シートの下を地下水が流れた場合はその地下水は汚染されてはおかしいわけです。地下水の場合の電気伝導度は、大体五十ないし百マイクロジーメンス程度が通常の地下水です。ところが、
処分組合が後から公表したデータによりますと、
埋め立てを開始してから六年目、一九九〇年ごろにはもう電気伝導度のデータが一万を超えております。一番ひどいときは、一九九六年に一万九千二百マイクロジーメンスという大変な電気伝導度の汚染というものがわかったわけでございます。そうなっても、なお汚染の原因はないんだ、シートは破れていないんだということを強硬に突っ張られて、そうして第二
処分場の
建設が始まったと。
それで、私どもとしては、ではどうしたらいいんだろうということになりました、
処分組合は一切
話し合いに応じないということですから。それで、同じような構造の第二
処分場がまたできたんでは困る、そう思いましたので、私どもはやむを得ずトラストというものを第二
処分場の予定地の中に設定して、そうして
処分組合を
話し合いの場に引き出す、そのためにトラストを設定したということでございますので、そこら辺の経緯については十分に御
理解をいただきたいと思います。
なお、菅厚生
大臣、小泉厚生
大臣が在職のときに
東京都に対して、
住民と話し合え、それから
住民と一緒に共同調査をしたらどうだということを勧告していただきましたが、これも
東京都や
処分組合は拒否をいたしております。こういう経過があることを
日の出については御
理解いただきたい、そういうふうに思っております。
それから、次は圏央道の問題でございますけれども、圏央道もやっぱり同じようです。
行政の皆さんの態度は同じようであって、全く情報非公開、
話し合い拒否という不公正と不透明な
住民対応というものを十六年間これはずっととり続けてまいったわけでございます。
そして、特に現在
収用がかかっておりますあきる野地区の場合は、圏央道以外に新たに新滝山街道という四車線の道路、それから新五日市というまた四車線の都道、これが圏央道と同じ地区にさらに二本のそういう四車線の道路が加わりましたから、合計十万台の車が狭い
地域に通ることになった。ところが、
アセスメントは圏央道だけしかやっていないわけです。そこで、私どもとしては十万台をまとめて総合
アセスメントをしてくれ、そういうふうに旧
建設省と
東京都に要請をしましたが、アセスはもう終わっているということで調査はしないということになりました。これではあきる野に住む
住民たちは、道路が三本、十万台の車が入ったときは大変なことになります。これがあきる野地区の
住民たちがやはり圏央道の予定地の中にトラストを設定せざるを得なかったという
理由でございます。
そういうことが
トラスト運動の契機である。もし、
日の出にしてもそれから圏央道にしても、
処分組合やあるいは旧
建設省が
住民との間に早くの段階から
話し合いを持つということをして、そして
住民からのいろいろな提案があります、提起があります、質問があります、そういうことに誠実にこたえていたならば私たちはトラストは設定しませんでした。その点を御
理解いただきたいと思っております。
次に、法案の内容についてでございますが、
事業認定者の問題、それから
事業認定の
手続のことが大分話題になっております。私は衆議院も二日間傍聴しました。おとといの参議院も傍聴いたしました。その中で、
事業認定の
手続を手厚くしたからいいじゃないか、したがって
収用委員会の
収用手続の方は簡素化してもいいじゃないか、これが政府側の論理でございますけれども、この
事業認定の
手続は全部一方通行です。つまり、
住民側が参加をして
議論をするという場じゃないんです、これは。あくまで
説明に終始しているという状況であります。今までの
行政側の対応を見ておりますと、この
説明というのはすべてもう限られた時間の中で一方的に
説明をして、それから
住民側の
質疑その他等も時間が来たら打ち切ってさっさと帰ってしまう、こういうのが今までの形でございます。
扇
大臣は、この点は反省する、今までの
住民への対応についてはまずかったから反省すると何回もおっしゃっておりました。それを私はよく聞いておりましたが、それを担保するものがなきゃ困ります。言葉だけでは困るんです。制度的にそれではどうやって
住民の
意見を尊重するのか、それから
合意形成にどうやって努めるのか、それを法的に担保していただくということが必要なわけです。だけれども、
住民合意については、
大臣は、
住民合意の上で
事業化する場合には迅速にというふうに、ちゃんと
住民合意ということをおっしゃったんですが、
局長はそれを否定されたんです。
法律的に言うと今のところ
住民合意はできないというふうに。多分それは
行政手続法の問題だろうと思います。とすれば、
行政手続法を変えてそういう形で
住民合意というものが法的にあり得るようにしていただければいいわけでございます。
そういう点で、政府案の中のこの
事業認定
手続というものを改善したことは私どもは認めます。今までは
公聴会も専門家の
意見聴取もしなかったわけですから、確かに手だてとしては当然のことを当然におやりになるということで、これは私どもも認めますけれども、残念ながらやはりそれが本当の
住民合意を得るための手段になっていないというところに大きな欠陥があるわけでございます。
最後に、ではどうしたらそういう
住民合意の手だてができるのか。これは衆議院でも参議院でも、入り口から出口という論議が大分されました。あるいは上流、中流、下流という
議論がされました。つまり、上流、一番大事なことはその
収用というのは出口の問題です。同時に
収用というのはこれは事件なんです。ですから、
収用委員会では例えば
日の出の問題ならば
日の出の問題は第何号事件というふうに言っております。つまり、これは紛争事件なんです。今まで
住民側と
行政側がいろいろ
話し合いをしていた、だけれども
行政側がもう
話し合いを打ち切る、打ち切って
収用申請したわけですから、つまりそこからはもう
行政側から
住民側に紛争にするよと、あとは
収用委員会にやってもらうんだ、そういう宣言をしたのが
収用なんですね。皆さんにこれは事件だということを考えていただきたい。
とすれば、その事件についての中の
事業認定をするのに、当事者である
大臣や
知事が
事業認定についてするというのは、これはおかしな話で公正さがありませんよ、それでは。したがって、私どもは、この
事業認定という問題は、
国土交通省やあるいは
知事から離して、
行政上の
第三者機関ですね、独立
行政法人、私どもの仲間ではこれを
収用裁定
委員会という名前にしたらいいだろうと呼んでおりますが、例えば公害等調整
委員会とかあるいは公正取引
委員会のような独立した
第三者機関、ここで
事業認定と同時に補償金以外の
収用の公開審理に当たることをやってもらう。そうすれば、一番公正で中立でかつ
透明性のある扱いができることになります。
大臣は盛んに強調されましたけれども、自分が自分を認定するという
立場に固執したのでは、これはもう絶対に公正ということは期待できません。
そこで、最後にお願いを申し上げます。それからもう
一つは、入り口から出口までの問題がありますから、
収用法だけを
改正しても意味がないんです。したがって、
都市計画法から始まって、この入り口のところの
手続が今いいかげんです。
住民がほとんど参加できないんです。
私が資料として「
土地収用法と関連法の
問題点」というものを差し上げてありますが、これを後でごらんください。ごらんいただきますと、バツがいっぱいついているということは
住民参加をしていないということなんです。したがって、
都市計画法、河川法、そういうものからきちっと
住民参加というものを
法律上担保するように
法律を変えていただく。そして、そういう
事業法と、それから
行政手続法と、それから
収用法と、もう
一つは
行政事件
訴訟法、この中の執行不停止の問題と総理
大臣の
異議申し立て、これも間違っておりますから、この四つの
法律を全部一括して修正していただきたいと思っております。ですから、
収用法だけの、そう言うと申しわけないが、食い逃げ的な修正、
改正というものはおやめいただいて、もう一遍今の四つの基本法から全部を一括してやっていただきたい。
それまで、今の
収用法じゃ困る、何かまた
住民が今の
収用法を悪用するんではないかという懸念はありません。
行政側がきちっと誠実に
住民側に対応するならば、現行法の中でも私どもは常識的な対応というものをやっていくつもりでおります。それはもう
行政の出方いかんということでございます。
そういうことで、ぜひこの
収用法の
改正については一たん取り下げていただいて、改めてすべての関連法というものを
改正する観点からお願いしたい、そういうふうに思っております。よろしくお願いいたします。
以上です。