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参考人(
荒木襄君) まず、御質問の第一点であります再
保険が
廃止された場合の
効率化というのはどういうことかという御質問にお答えをいたします。
政府の再
保険制度が現在あるわけでありますが、例えば
自賠責保険の
保険契約の件数というのは一
年間に大体三千六百万件ぐらいございます。保有台数と比べると少ないのは、二年
契約とか三年
契約があるからであります。この三千六百万件について全件
政府再
保険をお引き受けいただいております
国土交通省にデータを、明細を
提出するわけであります。それから、事故を処理いたしますのが大体
年間百十万件余ございますが、これも全件
支払いに関連した明細を再
保険を引き受けている
国土交通省にお届けするということになります。そのためにいろんな事務が発生するわけでありますし、当然のことながらコンピューターな
ども使いながらデータを整備して、そういう作業をするわけであります。
それから、そういうデータをお届けしますと、これは当然のことながら
チェックが行われますから、
チェックをいただいた後でいろんな御照会だとか、ちょっと御不審な点などについてお問い合わせがあったりいたします。そのことに対して一件一件お答えをしなけりゃならないということが当然ございます。
それから、再
保険の
仕組み全体をより円滑にといいますか順調に運営するためにいろんな御調査の御依頼が時々ございます。それは必要なことなんですが、そういうことについていろいろ調べたり、お答えしたりするというようなことがございます。
そういうもろもろの再
保険にかかわる事務の負担が再
保険制度をやめればなくなるということがありますので、これにかかわっております従業員の人数というよりもむしろ工数と言った方がいいと思いますが、そういうものを調査いたしまして、それからコンピューターに関連した
コストとかいろんなことを調査いたしまして、なかなかこれは正確に測定するというのは非常に難しいのでありますけれ
ども、少なくとも二億円
程度の節約効果があるであろうというのが私
どもの結論であったわけであります。
それから、第二点の御質問であります第三者的な、あるいは中立的な調停
機関ということでありますが、これは設立をいたしますのは
民間で設立をいたしますから、今のところ財団法人という
考え方のようでありますから、基本財産について
一定の出捐をいたしますとか、あるいはその後の運営について経費が出てまいりますから、そういったものの応分の負担は
業界で行わなければならないと考えております。
しかしながら、この法人の設立の目的はあくまで中立的、第三者的な
立場で
被害者あるいは被
保険者と
保険会社との間の
保険金支払いをめぐる
紛争の解決ということでありますから、この法人の運営、つまり
理事でありますとか評議員でありますとか、そういう法人の運営にかかわる役員については
損保業界から出すという
考え方はございません。一口で申し上げれば、資金は応分の負担をいたしますけれ
ども、その運営については一切口出しはしないというふうに考えております。
当然のことながら、この新しい
機関が事故の事実関係をいろいろ調査なさるとか、あるいは調停案をつくっていく上でいろいろと技術的な御質問等もございますから、私
どもとしてはそういう技術的な面でいろいろ御
協力するのはこれはもう当然の話でありまして、その点は十分やっていきたいと思いますが、事運営に関しては一切
業界から口出しはしない、それからそこで出されました調停案については
業界としてはこれを受け入れるということを
原則的に申し上げているわけであります。
それから、自賠責の再
保険制度が
廃止された場合に、そういう
廃止されたという状態でこの
自賠責保険というものが国際的にどういう
評価になるかということでありますが、まず第一点は、
政府が再
保険を引き受けるという
政府再
保険制度、かつ
政府が再
保険について
保険会社に義務づけをする、強制的な再
保険制度というものを
政府がやるという例は大変国際的には珍しい、皆無ではございませんが珍しいわけであります。どちらかというと発展途上国にそういうことが時々行われているということであります。
かねてから実はOECDはこの問題を大変重要視しておりまして、損害
保険の再
保険取引はもともとかなり国際間で行われるということが、これはもう明治の初めからあったわけでありまして、OECDとしても再
保険取引が国際的に広く自由に行われるということが望ましいと考えておりますので、
我が国の
自賠責保険の
政府による強制的な再
保険制度はOECDの
立場からいえば問題があるということで、OECDに
我が国が加盟して以来たびたび
審査の対象になり、たしか四度ぐらい
審査の対象になっておると思いますが、そのうち二度ばかり
廃止の勧告も受けている。
我が国はそれについて保留をしているということがずっと続いてきたわけでありますが、これが今度は
廃止されますので、というか
廃止されますと、その点ではOECDの指摘あるいは勧告に沿った解決になりますから、国際的には大いに
評価されるのではないかと考えております。
それから、
自賠責保険と
任意保険との関係というのは、これも国際的にはかなり珍しい
制度でありますけれ
ども、やはり何といいましても
基本補償である
自賠責保険について、車検とのリンクでありますとか解約の制限等によって
日本では無
保険者というのが極めて少ないわけであります。これは国際的に見て大変すぐれた点であると私は考えております。
ただ、一方において、商品がどうしても画一的になってしまいますので、
基本補償ですから、それを補うものとして
任意保険があって、これはいろいろと多様性のある商品を
保険会社が提供している、それから昨今では
自分自身が
被害者になったときの保障も
任意保険の中に入っているというような
保険も生まれてまいりました。そういう
意味で、
自賠責保険と
任意保険との二重構造というのは、これは実は国際的に見て、ちゃんと
説明しますと比較的好評といいますか、それはなかなかいい
制度じゃないかと言う人が私は多いと思います。
そういうことで、かねがねOECDで問題にされておりました再
保険制度がなくなることによって、
自賠責保険というものは国際的にも大いに高い
評価を受けるんじゃないかと、私はそう思っております。
以上でございます。