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2001-06-12 第151回国会 参議院 国土交通委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十三年六月十二日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  六月七日     辞任         補欠選任      大門実紀史君     筆坂 秀世君  六月十一日     辞任         補欠選任      筆坂 秀世君     井上 美代君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         今泉  昭君     理 事                 野沢 太三君                 山内 俊夫君                 寺崎 昭久君                 森本 晃司君                 緒方 靖夫君     委 員                 泉  信也君                 木村  仁君                 坂野 重信君                 中島 啓雄君                 松谷蒼一郎君                 脇  雅史君                 北澤 俊美君                 佐藤 雄平君                 山下八洲夫君                 続  訓弘君                 井上 美代君                 渕上 貞雄君                 田名部匡省君                 戸田 邦司君                 島袋 宗康君    事務局側        常任委員会専門        員        杉谷 洸大君    参考人        成城大学名誉教        授        岡田  清君        四国旅客鉄道株        式会社代表取締        役社長      梅原 利之君        西日本旅客鉄道        株式会社代表取        締役社長     南谷昌二郎君        弁護士      岡田  尚君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に  関する法律の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付)     ─────────────
  2. 今泉昭

    委員長今泉昭君) ただいまから国土交通委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る七日、大門実紀史君が委員辞任され、その補欠として筆坂秀世君が選任されました。  また、昨十一日、筆坂秀世君が委員辞任され、その補欠として井上美代君が選任されました。     ─────────────
  3. 今泉昭

    委員長今泉昭君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会成城大学名誉教授岡田清君、四国旅客鉄道株式会社代表取締役社長梅原利之君、西日本旅客鉄道株式会社代表取締役社長南谷昌二郎君及び弁護士岡田尚君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 今泉昭

    委員長今泉昭君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 今泉昭

    委員長今泉昭君) 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  参考人方々から忌憚のない御意見をいただき、今後の審査参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  それでは、本日の議事の進め方について申し上げます。  まず、岡田清参考人梅原参考人南谷参考人岡田尚参考人の順序でお一人十分程度意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  また、御発言は着席のままで結構でございますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おき願いたいと存じます。  なお、恐縮でございますが、時間が限られておりますので、なるべく簡潔に御発言くださいますようお願い申し上げます。  それでは、まず岡田清参考人からお願いいたします。岡田清参考人
  6. 岡田清

    参考人岡田清君) ただいまから、JR会社法の一部改正に関する件につきまして、賛成の立場から意見を述べさせていただきます。四点ほどお話をしておきたいと思います。  基本的には、交通市場というものを明確にしながら、どのような経営形態で運営するのが最も望ましいか、これが基本的なテーマでございます。そこで、第二番目に、経営形態の変遷について、若干気のついた点をお話しさせていただきます。  御案内のように、明治三十八年に国営化が行われまして、幹線は全国一社体制になりました。それが昭和二十四年に公社になりまして、これまた全国一社体制で運営してまいりました。当然、運賃全国一律運賃ということでございました。その都度、明治三十年代に、民営にすべきかあるいは国有化すべきかということの大論争が展開されております。同じように昭和二十三年の段階でもやはり民営論国営論の大論争が展開されております。言いかえれば、鉄道業経営というものを民営でいく方が望ましいかあるいは国営の方がいいかということは常に論争の種になったということでございます。  そのことをまず御確認いただきまして、第三番目になりますけれども、しからば国鉄民営化というのは、昭和六十二年に行われまして以来、果たして成功であったと言えるのかどうかという確認をしておくことが必要であります。  何が契機民営化は行われたのか。経営形態の変更の場合には必ず労使関係が絡んでおります。昭和二十三年まではストライキ権がありました。ところが、それに危機感を覚えましたマッカーサー司令部ストライキ権の剥奪を命令いたしました。それを契機に、昭和二十四年、公共企業体として政府から鉄道を切り離す、こういう形で公社という形態に移行したわけであります。  こうして見ますると、やはり、詳しいことは控えますけれども昭和二十年代の労使関係というものが、大きな企業体である鉄道労使関係きっかけ公共企業体に移行いたしました。  続きまして、昭和五十年十一月二十六日から実に百九十二時間というスト権ストが行われました。当時、国鉄ストライキを打てば日本交通体系は壊滅的な打撃を受けるだろうと推測しておりましたが、これは労使ともにそういう見方をしておりました。ところが、スト権ストを打ちましても日本交通体系はびくともしない。これを契機にして、公社制度というのがいかに無理な制度であるか、言いかえれば交通市場変革に十分に対応し切れない制度であるということであったわけであります。それをきっかけ民営化され、かつ分割されたのは昭和六十二年のことであります。  こうして民営化されましたものが果たしてうまくいくのかどうか。公共性企業性の調和とかいろいろ言われましたけれども、そのバランスがうまくとれたのかどうか。これは先生方の御判断もあろうかと思いますが、私は、経営体質の抜本的な改善が行われたという意味におきまして、この民営化という経営形態変革シナリオは大成功であったと理解をしております。  しからば、二十一世紀にかかって、果たして鉄道というのはこれほど多様化した交通市場の中で生き残れるかどうか、これが第四番目の課題であります。  経営形態というものを考えます場合に、この点は我が国だけではありませんで、各国とも鉄道の生き残りのためにどれほど多くの精力を果たしたかわかりません。しかしながら、日本の場合には、民営化によって本州三社体制が成立し、これを契機に二十一世紀は必ずや生き残っていけるだろうというふうに思っております。  その条件とは何か。お手元にございますシナリオに四点ほど挙げております。  戦略的な総合経営という観点が大変重要である。鉄道業というのはどうしても関連事業が非常に多いわけでありますから、関連事業とのバランスをどうとっていくのか。これは鉄道業における二十一世紀型のビジネスモデルだと理解をしております。  第二点は、交通市場における競争力をいかに高めていくか。これは非常に厳しいことでありますけれども、低運賃高サービス、非常にすぐれた技術あるいは施設、そういうふうなものを今後とも国民に提示する、そういう経営が行われれば必ず鉄道は生き残ることができるというふうに理解をしております。  第三番目であります。民営化ということは株主が生まれることでもありますし、現に生まれているわけでありますから、その株主責任というものを、現在、日本の商法でもコーポレートガバナンスの問題が大変注目を集めておりますが、このインベスター、つまり投資家との関係というものをいかに密接にしていくのか。情報公開を初めとしまして、言いかえれば資本主義的な言い方をすれば資本家になるわけでありますけれども、現代では資本家とは言えないような非常に大衆的な投資家鉄道に期待をしているわけであります。ならば、やはり個人投資家を初めとしてそういうふうなコーポレートガバナンスの新しい体制確立することは極めて重要だというふうに認識をしております。  あわせて、分割されておりますから、各社間の情報交換、その他連携体制強化ということも鉄道業においては忘れることのできないテーマであります。  詳しいことは控えますが、以上で私の陳述を終わりにさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  7. 今泉昭

    委員長今泉昭君) ありがとうございました。  次に、梅原参考人にお願いいたします。梅原参考人
  8. 梅原利之

    参考人梅原利之君) JR四国梅原でございます。  平素より当社業務に対し深い御理解を賜り、厚く御礼を申し上げます。また、本日は参考人として意見を述べさせていただく場を設けていただき、まことにありがとうございました。  さて、今回のJR会社法改正につきましては、本州三社が完全民営化を果たすものであり、これは国鉄改革の大きな成果であると考えております。いわば三島貨物は残された形となりますが、今後とも他社との連携協力確保しながら、当社国鉄改革完遂に向けて経営基盤強化に努めていかなければならないと決意を新たにしている次第であります。  せっかくの機会でございますので、本日は、国鉄改革以降の当社経営状況及びこれまでの経営基盤強化に向けた取り組みについてお話をさせていただくとともに、今後の見通しと要望事項につきまして述べさせていただきたいと考えております。  さて、当社昭和六十二年四月の国鉄改革によりまして、四国地域における旅客鉄道事業を効率的に運営するよう設立された会社でございます。設立に当たり、三島会社においては、営業収入だけでは収支が償えない状況が想定をされましたために、経営安定基金が設けられ、その運用収益営業損失を補てんすることになりました。当社においては予想された営業損失はおよそ百五十億円であります。これを補えるよう、七・三%の金利を見込んで、基金は二千八十二億円となっております。  さて、会社発足以来、当社国鉄改革の目標であります完全民営化に向けて全社員一丸となって経営基盤強化に努めてまいりました。当初は好景気や昭和六十三年に開通をしました瀬戸大橋効果に支えられたほか、経営安定基金につきましても、国鉄清算事業団からの七・三%の利息を中心に安定的な運用益が得られました。平成年度までは経常黒字確保することができたわけであります。  しかしながら、当社を取り巻く経営環境はその後急速に変化をしてきたわけであります。会社発足時にはわずか十一キロしかなかった四国島内高速道路は、平成六年ごろまでには、当社の主な線区であります予讃線、土讃線と並行する形で本州高松方面から松山、高知までほぼ開通しました。このころから自動車輸送との強烈な競争が始まったわけであります。また、バブル崩壊後の景気の低迷などによりまして、十年物の国債の利回りが平成年度には三%前後になるなど、低金利状態となりまして、経営安定基金運用収益減少し始めたのもこのころであります。  さらには、平成七年一月のいわゆる阪神淡路大震災影響四国に相当ありました。平成年度、七年度、そういったことで二期連続の赤字を余儀なくされ、その結果、平成八年一月には平均六・七%の運賃改定をせざるを得ない状況となったわけであります。  その後、平成年度からは、固定資産税等軽減措置の延長や、経営安定基金運用益確保のための措置など国などの御支援もいただいておりますが、四国におきましては、先ほどの高速道路、これに集中的に公共投資がなされ、当社にとってはいよいよ厳しい経営環境となっております。  ちょっと具体的に申し上げますと、四国島内高速道路のさらに延伸に加え、いわゆる本州四国連絡橋三つのルートがすべて開通をし、四国のいわゆる四県都相互間及び京阪神との間が高速道路で直結をしたわけであります。なお、三つの橋のうち鉄道が通っているのは瀬戸大橋だけでございます。このため、平成年度には三百七十億円ありました鉄道運輸収入平成十二年度には三百六億円と、大幅に減少をしてしまいました。  また、経営安定基金に関しましては金利がさらに低下をいたしました。現在では十年物の国債でも一%台という状況が継続をしており、経営安定基金は本来の機能を果たせない状況となっております。  このような中、平成年度から十二年度にかけまして、私どもは、駅業務体制の見直しや、保守、修繕業務効率化を行った上で、早期退職制度を実施することによりまして約五百人の人員を削減いたしました。この結果、社員数会社発足当時四千五百人であったものが現在では三千四百人と、約二五%減少をしました。その結果、各種生産性を示す指標を大きく改善してまいりました。例えば、社員一人当たりの車両キロ、これは一両の車両が何キロ走ったかということの総計であります。それを車両キロと申し上げておりますが、この車両キロ昭和六十二年度の約二倍となっております。このような経営努力の結果、平成十二年度まではおおむね辛うじて黒字を計上している、こういった状態でございます。  続きまして、この間の経営課題に対する取り組みにつきまして述べさせていただきます。  まず、安全は鉄道事業根幹をなすものであります。鉄道事業者にとって安全なくして会社が成り立たないものということを十分認識しております。こうしたことから、毎年総額七十億円程度設備投資規模のうち、約三割に相当する二十億円程度を安全・安定輸送のために投入をしてまいりました。さらにソフト面での安全対策についても継続的に行ってまいった結果、いわゆる事故件数昭和六十二年度の三分の二程度までに減少させております。  一方、当社鉄道施設JR他社と比較しても極めて脆弱でございまして、会社発足当初の電化率は六・四%、複線化率は二・九%にすぎませんでした。さらに、車両についても老朽化したものが大部分となっていました。このことから、異例の措置ではあるんですが、自己資金予讃線の観音寺から伊予市間を電化するとともに、振り子式特急車両開発、投入するなど、都市間輸送都市圏輸送双方においてスピードアップ、フリークエンシーアップ、利便性快適性向上など、サービスレベル改善に全力を挙げて努めてまいった次第であります。  また、当社国鉄改革の趣旨に基づきまして地域に密着した鉄道を目指しており、地域発展なくして当社発展なしという基本方針を掲げております。それに基づき、例えば四国四県とともに四国観光立県推進協議会を創設しました。地域と密着した増収施策観光振興、さらに交流人口の拡大に資するキャンペーンなどを実施しておりますほか、駅周辺開発などについても積極的に協力をし、四国における基幹的輸送機関として、また地域に根差したサービス企業として地元からも一定の評価をいただいているものと自負をしております。  こうした取り組み、並びに先ほど申し上げました経営効率化などによりまして、発足後十四年間における実質的な運賃値上げ平成年度の一回だけであり、国鉄改革時の計画では毎年度値上げを見込んでいたことを考慮すると、大きな改善ではないかというふうに考えております。  しかしながら、今後を見通したとき、当社を取り巻く経営環境はさらに厳しさを増すことが想定されます。少子化や四国島内人口減少傾向に加えまして、今後五年間程度高速道路がさらに整備が進んでまいります。自動車輸送との競争はいよいよ激しくなると考えられます。  また、当社経営に重大な影響を及ぼす金利につきましても、先行きは不透明な状況にあり、現在の支援措置も本年度をピークとして効果減少していく、こういうことになってまいります。このままの金利水準が続けば、経営安定基金運用収益は、当初は百五十二億円でありましたが、その約半分の七十億円台を確保できるかどうか、こういうふうなところになってしまうわけであります。  こうした中、経営効率化につきましては、さらに進めてまいりますが、既に計画を先取りする覚悟で取り組んでまいりましたことから、さらなる効率化にも限界があります。大きな効果は期待できない状況であります。  また、鉄道収入確保につきましては、ありとあらゆる知恵を絞りまして、きめ細やかな施策を積み上げていく考えでありますが、しかし、高速道路や航空機との競争がさらに激化する中、鉄道輸送競争力を抜本的に強化するためには、整備新幹線計画のない四国におきましては、いわゆるフリーゲージトレーンや複線化電化短絡線など大規模輸送改善が必要でありますが、これらにはもちろん多額の費用が必要であることから、経営環境が極めて厳しい当社が独自で実施することは極めて困難な状況であります。したがいまして、国及び自治体等の御理解もいただきながらこれらの諸施策を推進していきたいと考えている次第であります。  さて、当社は今後とも完全民営化を目指すという基本的認識には変わりはなく、引き続き安定的かつ継続的な収益性確保に向け取り組んでまいる所存であります。当社を取り巻く経営環境を御賢察いただき、当社自助努力を超える部分につきましては、本年度で期限切れとなる税制特例措置恒久化や、経営安定基金機能維持のための措置、並びに輸送改善に資する助成制度などにつきましてぜひとも御支援をいただきますようよろしくお願いを申し上げます。なお、このような厳しい経営環境は、多少の差はあれ、JR北海道、そしてJR九州も同じであることを申し添えさせていただきます。  最後に、本州三社が完全民営化されても、全国に広がるJR鉄道網基幹的輸送機関として果たすべき役割は何ら変わらないものであることから、今後とも、連携協力を図りながら良質な輸送サービスの提供に努めてまいるとともに、あくまでも四国に根差した鉄道としての使命を果たし、四国とともに発展すべく引き続き努力する所存でございますので、今後のさらなる御支援をお願い申し上げ、私の意見とさせていただきます。  ありがとうございました。
  9. 今泉昭

    委員長今泉昭君) ありがとうございました。  次に、南谷参考人にお願いいたします。南谷参考人
  10. 南谷昌二郎

    参考人南谷昌二郎君) JR西日本社長南谷でございます。  本日は、当委員会におきまして私ども意見を申し上げる機会をちょうだいし、まことにありがとうございます。  当社といたしましては、国鉄改革基本フレームである完全民営化を一日も早く実現していただきますよう強くお願いしてまいったところでございますが、このたび、JR本州三社をJR会社法の適用から除外する法案を御審議いただく運びとなりましたことは、国鉄改革完遂に向けて大きな前進であると受けとめております。国土交通大臣を初め、関係皆様方の御尽力に対しまして心より感謝申し上げます。当委員会におきましても、迅速かつ十分な御審議を賜り、一日も早く本法案を成立させていただきますようお願い申し上げます。  さて、本日はこのような場をちょうだいいたしましたので、国鉄改革以降における当社取り組み成果についてお話し申し上げるとともに、本法案に関する若干の意見要望を申し上げたいと存じます。  初めに、国鉄改革以降今日までの当社取り組みについて申し上げます。  鉄道の再生を目的として実施された国鉄改革におきましては、JR各社競争の激しい交通市場の中で、多様化する利用者ニーズに速やかに対応するとともに、企業性を持った活力ある経営を行うために民間企業と同様の経営の自由と自主性を持つことが必要とされました。また、改革当時の閣議決定によって、経営基盤確立等条件が整い次第、逐次株式を処分し、できる限り早期に純民間会社とすることが明らかにされ、この方針についてはその後も国会等の場において繰り返し確認されてきたところでございます。  当社といたしましては、こうした政府方針にのっとり、経営基盤確立に向けて精いっぱいの努力を積み重ねてまいりました。発足当初には当社本州三社の中で最も厳しい経営基盤であると言われておりましたが、厳しい環境変革へのチャンスであると前向きにとらえ、良質の危機感をばねとして企業体質強化に努めてまいりました。  この十四年間には、平成七年一月の阪神淡路大震災により山陽新幹線及び東海道本線の一部区間が不通になるなど未曾有の困難にも直面いたしましたが、皆様の御支援のもと、全社一丸となってこれを克服することができました。その後、平成八年には念願の株式上場が実現するなど、安定した経営成績をおさめることができました。  ここで、少し具体的な事業運営について申し上げます。  まず、私ども鉄道事業者にとりまして、事業根幹は安全の確保であります。このため、保安設備整備などハード面での対策を進めるとともに、社員一人一人の実務能力向上を図るなど、さまざまな取り組みを行ってまいりました。その結果、運転事故は着実に減少し、昨年度件数では発足初年度のおおむね六割となるなど、大幅に減少いたしております。  次に、サービス向上について申し上げます。  国鉄時代には、列車ダイヤを初めあらゆるサービスが東京を中心とした全国画一の考え方により設定されておりましたが、分割民営化によりまして、地域に密着した経営が可能となり、また市場競争のもとで切磋琢磨することによってお客様ニーズにおこたえしてまいりました。  具体的には、山陽新幹線におきましては、国内で最も速い時速三百キロ運転車両開発し、都市間の所要時分を大幅に短縮したほか、最近では、普通車にゆったりとした四列座席を配置した新型車両を大量に投入し、お客様から大変御好評をちょうだいしております。  また、京阪神圏在来線におきましては、発足時には都市型のダイヤとは申せないような状況でございましたが、列車の大幅な増発やスピードアップを行うことで、輸送サービスを飛躍的に向上させるとともに、通勤通学の可能な都市圏が拡大するなど地域発展にも大きく貢献できたものと考えております。  こうした努力の結果、当社を御利用されるお客様会社発足時と比べて二割程度増加いたしました。これは関西の大手私鉄一社分の輸送人員に相当する規模でございます。  なお、運賃につきましては、国鉄改革時の政府試算では毎年運賃値上げを行わないと経営が成り立たないと想定されておりましたが、努力を重ねました結果、発足以来十四年間にわたり、消費税に関するものを除き、一度も値上げを行うことなく今日に至っております。  次に、いわゆる地方ローカル線の運営について申し上げます。  国鉄改革の際には、線区の活性化、効率化に努めるという方針のもとでローカル線も含めて事業全体で経営が成り立つよう措置されたという経緯もあり、当社といたしましては線区の維持、活性化に最大限の努力を行ってまいりました。そのため、線区ごとに鉄道部という運営単位を二十七カ所設け、地域に密着したきめ細かな営業施策を展開するとともに、効率的な運営に努めてまいりました。  なお、こうした努力にもかかわらず、沿線人口減少や自家用車の普及、道路網の整備などの状況変化から、残念ながら御利用が極端に減少し、鉄道としての特性が発揮できなくなった場合には、より効率的な輸送モードに転換することもあり得るものと考えております。もとより、その場合には地元と十分な協議を重ねてまいることは当然のことと考えております。  また、安定した経営を維持できる体質を築くため、仕事の仕組みを見直し、業務運営体制効率化やコスト削減にも努めてまいりました。特に、社員数につきましては、発足当初は五万人を超えておりましたが、平成十二年度末には四万人を下回る体制にまで縮減してまいりました。  ここで、長期債務について申し上げます。  国鉄改革に際して処理すべきとされた長期債務の総額約三十七・一兆円のうち、JR各社は、経営が成り立つぎりぎりの額として合計で約十四・五兆円の債務を背負ってスタートいたしました。当社におきましても、発足時に約一兆円の債務を負担し、平成三年には新幹線鉄道施設の買い取りによりさらに約一兆円の債務を負いました。長期債務を縮減し財務体質の改善を図ることが当社にとって最も重要な課題の一つであることから、これまで、利益の確保や効率的な設備投資の実施、また保有資産の売却などにより返還財源を生み出し、着実に債務を縮減してまいりました。この結果、長期債務残高は平成十二年度末には一兆三千億円を下回るまでに至りましたが、依然として売上高を大きく上回る状況であり、金利情勢に左右されない安定的な経営を維持するためにも、引き続き債務総額の縮減に努めてまいりたいと考えております。  以上のように、当社といたしましては、発足以来、お客様ニーズにおこたえし、また株主の御期待に沿うよう精いっぱいの経営努力を行ってまいりました結果、こうした成果をおさめられたものと考えており、この点はJR各社に共通のものであると考えております。  次に、完全民営化後の経営について、当社の考え方を御説明申し上げます。  当社は、これまでも民間企業としての経営努力を行ってまいりましたが、このたび本法案が成立しJR会社法の適用から除外いただきました後には、特殊法人としての規制である役員人事や資金調達、重要な財産の譲渡、新規事業展開といった経営根幹にかかわる事柄について、国土交通大臣の認可が不要となります。これにより、これまで以上に機動的な事業展開や業務運営が可能となりますので、お客様株主皆様の御期待により一層おこたえできるよう努めてまいりたいと考えております。  なお、規制の撤廃と同時に、これまで以上に自立と自己責任に基づく経営が求められることになり、より厳しい経営環境に身を置くことにもなりますが、国鉄改革の目的である鉄道の再生を本当の意味で実現していくためには、いつまでも国の庇護のもとにいるのではなく、甘えの気持ちを断ち切っていく必要があると考えております。一日も早く完全民営化を実現していただくことで、明確に生まれ変わったという意識を持ち、これまでの努力を社内に着実に定着させて、より一層前進してまいりたいと考えております。  ここで、今回の法案に関しまして、お願いを申し上げます。  法案の中では、JR事業運営に関する指針が定められることとされております。当社といたしましては、完全民営化後におきましても、これまでと同様、国鉄改革の趣旨を踏まえた事業運営に努める所存でございます。指針の具体的内容は今後検討されることと存じますが、完全民営化の趣旨に逆行することのないよう、必要最小限なものとしていただきますようお願いいたします。  次に、株式の売却についてお願い申し上げます。  今回の法改正によってJR会社法の適用から当社が除外されることとなりますが、当社といたしましては、これに加えて株式の完全売却が実施されることによって初めて本当の意味での完全民営化が実現されるものと考えております。平成八年の株式上場に際しましても、逐次株式を処分し、早期に純民間会社とするとの政府方針を明示し、それを前提に多くの株主皆様から当社株式を購入いただいております。法案成立の暁には、ぜひ一日も早く日本鉄道建設公団が保有する当社株式をすべて売却していただきたいと存じます。  最後になりますが、当社といたしましては、今後とも、鉄道の再生を目指した国鉄改革の理念にのっとり、激しい環境変化と多様化する市場のニーズに迅速かつ的確に対応することによりまして、お客様株主を初めとする皆様方の御期待におこたえしてまいりたいという決意を申し上げ、私の意見表明を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  11. 今泉昭

    委員長今泉昭君) ありがとうございました。  次に、岡田尚参考人にお願いいたします。岡田尚参考人
  12. 岡田尚

    参考人岡田尚君) 一九九一年の夏に、私は北海道の紋別に、私の事務所でオウムに殺害された坂本堤弁護士のお母さんの坂本さちよさんと行ったことがあります。当時、坂本弁護士一家救出活動を訴えて全国を回りまして、紋別に行って訴えた集会の後、紋別の地で、いわゆる千四十七名の中の人たちと奥さんたち、家族の人たちが坂本さちよを激励する夕食会というのを催してくれました。  そのときに出てくる言葉は、飲んだりしていますから、とにかくうちの父ちゃんはあほやなと。何でもう少し国鉄労働組合を早く脱退しなかったのか。この間まで一緒に働いてきて、そして中には国鉄労働組合の役員をやった人がいて、その人のもとについてきていたのに、土壇場になってその役員も国鉄労働組合を脱退する。脱退しようしようと毎日毎日思いながら何となく日々を過ごしているうちに脱退し切れなくて、そして不採用になってしまった。あなたばかな目を見るよというふうに私はずっと言ってたんだと、お母さんたちが一生懸命愚痴をこぼされました。  そのときに坂本さちよさんが、自分がどんなに不幸な人間なのかということを嘆き合うなら、皆さんたちより私の方がよっぽど不幸だろう。やっと弁護士にした息子がある日突如いなくなり、嫁さんもいなくなり、初孫の一歳二カ月の子供も全部いなくなっちゃう。その事件の半年後でしたか、お父さん、つまり自分のだんなが労災でほとんど口もきけない。そういう事態になっている自分を嘆いて嘆いて、私はどうしてこんな目に遭うんだろうかということを最初はずっと思っていた。でも、結局自分は生きていかなきゃいけない。そのときに、何て運の悪い人間なんだろうかということを悩んでいるだけではどうしようもない。やっぱり、可能な限り自分の中でいいことを見つけたり、明るいことを見つけたりしていくことで生きていくしかないんだというお話をされて、それまで何て自分は運の悪い運命をしょわされたのかと愚痴ばっかりこぼしていらっしゃった、いわゆる千四十七名の奥さんたちも、本当に逆に激励されたという夕食会でありました。  一千四十七名の人の問題でよく国会でも、衆議院でも、一人平均七十四回に及ぶ職業相談をし、三十四回の職業あっせんをしましたという話が出ました。それを全部拒否して、そして今日に至っているんだろうか。何か一つのイデオロギーというか思想というか、そういうことをしょって立ってみんなが生きてきたんだろうか。  私は、多くの人たちと北海道の稚内から鹿児島まで本当にいろんなところを回りました。国の一つの政策、法案、それは大きなところで判断を下していかなければならないと私も思います。しかし、その中に、巻き込まれると言っては表現が適当でないかもわかりませんが、その中に一人一人が生きているわけです。それは自分が選んだ人生かもわかりません。しかし、その旅立ちのときには自分が選んだ人生ではありません。国の政策、法案、その中で一人一人の人間の生活というものに影響を及ぼし、その人生の何分の一かをそのことのためだけに生きていかざるを得ない事態になっていることを、私は本当に弁護士として具体的な人間と接している中でその思いを強くしております。  私がこれを申し上げるのは、今度の法案が中身としていいとか悪いとかという御意見もあるかと思います。しかし、やっぱり問われているのは、三社が完全民営化することがいいのか悪いのかというだけの議論で、それで済むんでしょうか。十四年に及ぶ国鉄の分割・民営化の中でさまざまな問題が発生をしている問題をきちんと手当てもしないで、けじめもしないで、それで出発していいのでしょうか。  累積債務の処理の問題も、当時は六千億円の国民負担というふうに橋本運輸大臣がおっしゃいました。分割・民営化後はそれにさらに加わるような国民負担はあり得ないと。しかし、御承知のとおり、三十五兆円の処理しなければならない長期債務、これはもともと、本当は国鉄の債務というのは二十五兆五千億円だったんですよね。御承知のとおり、本四架橋公団だとか年金の負担だとか上乗せされて三十七兆円になりました。  清算事業団が引き継いだ二十六兆円も、結局は平成十年に二十八兆円に株を売ったり土地を売ったりしても膨らんでいて、二十四兆円を一般会計にして、結論からいえば国民負担。先ほど四国社長さんもおっしゃいましたように、経営安定基金として、いわゆる持参金と言っていいのか、つけた。しかし、当時七・三%の金利は維持できない。四・何%かの金利を前提にしながら、しかしその不足分をどこが手当てしているんでしょうか。何百億円に及ぶ負担をやっぱり国がしているわけです。固定資産税の優遇措置も五年間延長しました。  そうすると、債務の問題もあるいはいわゆる三島の問題も本当にどういうふうに今なっているんだろうか。できのいい長男三人が、もうおれたちはそれぞれ独立していくよ。できが悪いと言うと怒られるかもしれません。その会社そのものができが悪いわけではありません。そういう構造を持っていた三島の将来というのは本当にどうなるんですか。  扇大臣が衆議院で、新しく三社を、子供を育てるんだというふうにおっしゃいました。しかし、よく考えれば、国鉄時代に一つだったものを、三島も含めて貨物も含めてどういうふうに育てられるんだろうか。そういう意味では、トータルに考えて、国鉄の分割・民営化の現実やそれが今も引きずっているものを見ないでというか、それを切り離して、できのいい息子だけが行くということでいいんでしょうか。  私は、大きな流れとしてこの民営化の流れをもとに戻せと言うつもりはございません。しかし、今言ったように、労働者の問題も債務の問題も三島貨物経営の問題も、それなりにこの際具体的な点検をしながら、検証をしながら、そして新しく生きる道を選択するなら選択しなければいけないんじゃないかと思います。  いわゆる一千四十七名問題でILO勧告というのが出されました。衆議院でもいっぱい議論をしていただきました。四党合意という線で政治解決という舞台に上っております。ILO勧告をよく読めば、委員会はすべての関係者に対し、当事者にとって満足でき、関係する労働者が適正あるいは公正に補償される解決に早急に到達するという目的で四党合意を受け入れるよう勧告しています。ILO勧告は、御承知のとおりそれぞれの関係当事者に対する勧告ではありません。政府に対する勧告であります。ILOが政府に対し何を勧告しているのか。それはやはり当事者にとって満足でき、関係する労働者が適正公正に補償されるということを政府が後押ししなさいということを言っているわけであります。そういう中身のものとして、四党合意をつくり上げるように勧告していると思います。丸裸のままの四党合意、そのことをILOが勧めているわけではありません。  ぜひそういう面では、その後押しというものをやはりしていただくのがILO勧告の趣旨にのっとった国の態度ではなかろうか。条約遵守義務を国が果たさなければならないとするならば、その根本のILOが言っていることをきちんと踏まえた解決にやはり乗り出すべきなのではないんでしょうか。  私は、結局、さまざまな国が決めていくことで、それは大きな道筋の中で正しいこともいっぱいあるだろうし、しかし、その中で具体的に一人一人の人間がどういう現実になり事態になっているかということをやはり視野に入れながら国の施策は進められていくべきだというふうに思います。もちろん、たった一人の人のことにすべてがかかわっていたらそれは全体の政策は進まないということもありましょう。しかし、やはりそこに目を向けた、そこにちゃんと手の届く気配りをした政策、その実行というのがきちんとなされることによって政治というものがあり、人間の生き方や尊厳というものに対する思いというものがその当事者に伝わるならば、この国はもっとすばらしいものに、一人一人の国民が、やっぱりこういうものなんだ、国の政策はという確信を持って進めるのではないでしょうか。  私は、この十四年、恐らく大半の時間、坂本救出活動と国鉄労働組合や全動労の組合の人たちのこの現実の中でどういうふうにやっていくかということを全国を歩きながら考えました。私は、日本の国で行っていない県は徳島県だけであります。オウムのときもやはり国会の先生方にお世話になり、最終的な特別立法もつくっていただきました。何もないところから、そこに現実に発生している問題に対して先生方の御助力でさまざまな法案をつくり、それが具体的な人間を救済するという道も初めてわかりました。  私は、今回の民営化法案について、法案のどこそこがいいとか悪いとかという議論もあるかもわかりませんが、やはり国鉄を解体して幾つかの会社に分けて、そして出発をしたそのもとを抜きにしては本当の評価、本当のこれからの道筋を示すものにはならないだろうという思いを持ってきょう意見を述べさせていただきました。  ありがとうございました。
  13. 今泉昭

    委員長今泉昭君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 中島啓雄

    ○中島啓雄君 自由民主党の中島啓雄でございます。  本日は、参考人先生方には大変お忙しい中を御出席いただきまして、大変ありがとうございます。  まず、岡田清参考人にお尋ねさせていただきたいと思いますが、岡田先生は、分割・民営化という方式でここまでJRが育ってきたというのに積極的な評価を下していただいたと思いますが、同時に、鉄道経営の今後の課題というようなことで何点か御指摘をいただいております。  一つは、本州三社は今まで黒字を続けてきたわけではございますけれども岡田先生の論文でもシンマーケットとシックマーケットというようなことで、やはりローカル線問題等については内部補助の仕組みで今まではもってきたということだと思うんですが、今後そこがどこまでもつのかという意味で、今後の政策的な課題としてどういうふうにお考えになっているか。  それから、特に貨物がいろいろ苦闘をしておるわけでございますが、今後の競争市場における戦略という意味で、何か特に貨物などについての経営戦略のヒントなどがございましたらお聞かせいただければと思います。
  15. 岡田清

    参考人岡田清君) 二つの質問をいただきました。  交通市場というのは、非常に需要の少ない市場、こういうものをシンマーケットと、こういうふうに言える。それから、大都市あるいは東海道新幹線のような割に需要の濃いマーケットはシックマーケットと、こういうふうに申します。  その境界が割に難しい問題がありますけれども公共企業体の場合には全国一律運賃でこれを全部べたっと経営するという体制で来まして、これが崩壊をしまして、経営形態の変更に移ったわけです。そこで、分割・民営化の前に地方交通線の第三セクターへの転換だとか非常に血の出るような努力をされて、これが分割・民営化を可能にする土俵になったと理解しております。  しかしながら、これは今後とも、まだまだ過疎化が進むとか、国土の崩壊と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、どんどん都市化が進めば進むほど実はそれがもろに鉄道の需要にはね返ってまいりまして、これが経営を非常に悪化させてしまう。そこで、政策的にこれをどういうふうに救い上げるかという問題がございます。この点は、イギリスのパブリックサービスオブリゲーションという言葉がありますが、公共サービス義務というふうに、どの点までが公共的な義務としてこれを果たしていくのか、こういう整理をやる必要があろうかと思います。  ところが、我が国の場合は、分割・民営化してそういうものを十把一からげにして一社に全部責任を負わせてしまっておりますから、各社がそれをどうしようかということをこの十四年間悩んでこられて、北海道のような場合には大胆に深名線を取るとかそういうことが大きな問題になりましたけれども、一応成功したわけです。この状態は今後とも続くと思いますので、これに対して国の政策は一応簡単にはとらないよということが今回の指針の中に出ておりますけれども、これから私は、新全総を初め、国土の均衡ある発展という物すごい大きな公共投資分散論でやってきたわけですが、これが救済できなかったということは非常に大きな問題だと理解しておりまして、これが鉄道にはね返ってきますので、これに対するしっかりした方針確立することが必要だと理解しております。これが第一点でございます。  第二点は、貨物について、先生は大変専門家でおられますので私が言うのもいかがかと思いますが、貨物市場がこれほど崩壊した背景というのは二つあろうかと思います。  第一点は、昭和四十年代に労使紛争過程の中で、貨物輸送というのは大企業奉仕であるという国労の物すごいキャンペーンが行われまして、これによって荷主はすうっと逃げる、どんどん逃げていった。昭和四十三年、二億トンあったものがもう今ではほんのわずかになって、収入規模昭和四十年代、千三百億円ぐらいあったかと思いますが、これは今でも全く同じ、何十年たっても一千三百億円と。こういう状況でありますから、貨物の弱さというものをどういうふうに救い上げるといいますか醸成していくのかと、これは大きなテーマでございます。  しかしながら、私は、まずトラック、内航海運などの関係の中から、自立的に物流市場に対抗するという経営姿勢をはっきりと打ち出して荷主に訴えていくことが第一歩であるというふうに理解をしているんです。この十四年間、いい時期もありましたけれども、ここ数年、八期連続赤字でありますが、私はやがてこれも復活してくれるだろうと理解をしております。ただ、線路費用の負担問題というのはこれまた大きな問題が別にございますので、そういう方向性だけちょっとお答えをさせていただきたい。  どうもありがとうございます。
  16. 中島啓雄

    ○中島啓雄君 ありがとうございました。  では、梅原参考人に伺いますが、時間もございませんのでごく簡潔で結構でございます。  先ほど、高速道路の急速な発展とか経営安定基金収入の減とかいう非常に厳しい環境の中でいろいろ努力しておられるというお話がございましたが、今後、完全民営化に備えて四国鉄道経営を維持するために政策的にどういうことを御要望なさるか。  それからもう一つは、岡山からフリーゲージトレーンというような話もございますけれども、これを四国鉄道独自の投資でできるという問題ではとてもなかろうと思いますので、そういったフリーゲージトレーン導入のための条件といいますか、その辺どうお考えか。簡潔で結構でございます。
  17. 梅原利之

    参考人梅原利之君) お答えします。  さらに私ども経営環境が厳しくなってまいりますが、そういった中で私ども鉄道を維持していくためには、我々の必死の努力を前提としまして、次の点について御要望したいと思います。  まず、固定資産税の減免措置であります。現在、十四億円の減免をいただいています。昨年度の決算で八億円の経常黒字、本年度努力を前提に一億円の黒字であります。そういうことを考えれば、十四億円というのは大変大きな意味を持っていると思います。さらには、経営安定基金運用益、四・九九で回してもらっておりますが、これの下支えですね、そういったこと。  さらには、先ほど申し上げましたように、四国経営基盤といいますかインフラが非常に脆弱であります。これについてライバルが強過ぎます。そういうことで、それに伍していくためにいろんなインフラの整備が必要でありますが、これについての助成でございます、いろんな公的助成。こういった状況は、程度の差こそあれ三島会社は基本的に同じでございますので、それについて御理解をお願いしたいと思います。  さらに、フリーゲージのお話がございました。これについて、地元では大変これに対する期待が大きい。先ほど申し上げましたように、整備新幹線計画がありませんので大変期待が大きいものがあります。  このための条件として幾つかあります。まずは、本州四国を結ぶルートの岡山県から四国へ結ぶ首根っこのところ、宇野線、これが単線であります。現在でも二百本の列車が走っておりまして、現在でも複線が必要でありますが、当然これはフリーゲージになれば複線化は大前提であります。それから、徳島と高知については電車が走っておりません。これを電化する必要があります。さらに、島内において既に在来線の特急は最高百二十ないし百三十という速度で、さらに振り子がついております。そういうことで、島内におけるフリーゲージだけでは島内においては時間短縮効果がありません。したがって、このフリーゲージが導入されると同時に、あわせて短絡線をつくるとか線形改良するとか構内改良するという在来線の改良が必要であろうというふうに考えます。  こういった在来線の改良にもそれなりのお金がかかりますので、上下分離方式などいろんな公的な支援をお願いしたい、かように思う次第であります。
  18. 中島啓雄

    ○中島啓雄君 ありがとうございました。  それでは、南谷参考人にお伺いしたいと思いますが、先ほどの最後のところで、指針の運用については必要最小限なものにしていただきたいというようなお話があったかと思いますが、もう少し具体的な問題として、どんなことを御要望なのか、お聞かせいただければと思います。
  19. 南谷昌二郎

    参考人南谷昌二郎君) ただいまの御質問にお答えしたいと思います。  指針の運用でございますが、法案の中でJR事業運営に関する指針が定められると伺っております。先ほど申し上げましたとおり、当社といたしましては、完全民営化後におきましてもこれまでと同様国鉄改革の趣旨を踏まえた事業運営に私どもとしては努める覚悟でございます。  そういう意味で、指針の具体的な内容、一応あらあらの方向性はお伺いしているところでございますけれども、これが実際の細部の制定、あるいは特に運用に当たってそれが過大なものになりますと、やはり完全民営化の趣旨にもかなわないところもあろうかと思いますので、そういう意味では必要最小限のものにしていただけるようお願いした次第でございまして、やはり国鉄改革の経緯を踏まえたものがこの指針にあらわれていると私ども思っておりますので、そういう精神の中で運用していただけるようにという趣旨でございます。  よろしくお願いをしたいと思います。
  20. 中島啓雄

    ○中島啓雄君 ありがとうございました。  これは、政府側の要望事業側の要望というのは若干矛盾するところがあると思いますが、やはり国民のために鉄道があるんだという見地で双方のよき運用を期待いたしたいと思います。  岡田尚参考人に一つお伺いいたしますが、千四十七人が雇用されないまま残ってしまったということは大変不幸なことでありますが、ただ、ちょっと私の経験から申し上げますと、実は六十二年四月の発足当時、かなりの不採用者が出たということでありましたけれども本州三社と貨物会社については予定された人員に満たない部分があった。私は貨物会社におりましたので、一万二千五百の採用予定のところを一万二千五人というようなことで、その定員に満たなかった部分については、その後三回にわたって運輸省のごあっせんもあって、不採用になった方々の採用をしなさいというようなことがございまして、もちろんいわゆる国労の組合員も含めて三回採用試験をいたしまして、全員を採用させていただいたというふうな経緯もございます。  ただ、北海道、九州は仕事が縮小の傾向にございましたから本州で勤務してくださいというようなこともございましたので、そういったような経緯を踏まえますと、千四十七人が残られたというのはかなりやむを得ない面があるのではないかなという気もいたしておりますが、御感想をお聞かせいただければと思います。
  21. 岡田尚

    参考人岡田尚君) 今、先生がおっしゃるように、いわゆる広域採用、北海道や九州から本州へ追加採用という形で募集があり、その中に国鉄労働組合員も応募したりして、多くの人たちが本州へ来ております。  幾つかそういう具体的な手だてを講じていただいたことも客観的に事実ですし、そのことを評価していないわけでも全くありません。ただ、どうしても広域採用に応じられない事情というものもそれぞれが抱えていたり、それから全員が広域採用で人数としても来れるという事態でもありませんでした。ですから、今、先生がおっしゃるような形で、どうしても何が何でも地元で仕事をしたいという形で残った方もいらっしゃるし、それから本当は行きたいけれども人数枠はとても枠がないという形で残った方もいらっしゃいます。  そういう面では、確かに一つ一つの個人の中の事情というものがどこまで大きな政策や流れの中で考慮されなければならないのかという問題はおっしゃるようにあると思います。ただ、私も今現実に十四年間こういう事態に置かれてきて家族ともどもいるという事態については、やはりどこかで政治的な解決というものが、一つの施策の中で起きた出来事であり事態なので、解決を図っていただきたいというお願いとしてございます。
  22. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 きょうは、参考人の皆さん方には、お忙しいところありがとうございます。民主党・新緑風会の山下八洲夫でございます。どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。  貴重な十五分しかございませんので、簡潔にそれぞれお尋ねさせていただきたいと思いますが、まず最初に南谷参考人さんにお尋ねをさせていただきたいと思います。  この「データで見るJR西日本二〇〇〇」というのを見させていただきました。この中で私は、本州三社は現在のところ大変堅調で比較的優秀な経営をなさっているというふうには思うわけでございますが、そういう中で、JR東海、東、西と比べますと、比較的地方ローカル線を抱えていないのはJR東海かなと。東と西につきましては、随分地方ローカル線を持っていらっしゃいます。確かに、この本州三社の経営がいいというのは、一つは大都市網、大都市圏をそれぞれお持ちになっているということ、もう一つは高速大量輸送できる新幹線をお持ちになっていること、これが大きな原因になっているだろうというふうに思う次第です。  そういう中で、もう一つよく見てまいりますと、地方ローカル線を中心にしまして、在来線の幹線もございますけれども、大体北側はもうほとんど非電化である、電化されていないというような状況も見受けられるわけなんです。そういたしますと、これからの経営効率化を考えますと、もう一つは非電化のところも電化にしたいだろうし、だからといってそういうところは多分乗降客の効率も低いんではないかなというふうに思うわけでございます。  そういう中で、特に私が強く感じますのは、何といいましても地方ローカル線の件で、先ほどの参考人意見陳述のときに、地域、地元の皆さん方ともいろいろと話し合いをしていい結論を出していきたいというような発言もあったわけでございますが、それは当然地域の足を守るという立場からいたしますと、私はどちらかといいますと、バスに転換するんではなくてレールで行うのが一番やはりいいだろうと。そういうことを考えますと、現在、バスにつきましては補助金制度が、自治体を中心に出すようになっております。  そういうことを含めて、地方ローカル線を今後どのようにしていけばしっかり守っていけるか、同時に株主にも迷惑をかけないで守っていけるかということについて、何かお考えがございましたら御発言いただきたいと思います。
  23. 南谷昌二郎

    参考人南谷昌二郎君) 今、山下先生からの御質問でございますが、ローカル線問題につきましては、私どもにとって大変経営上重たい問題でございまして、実はJR西日本、営業線のうちで約五〇%が国鉄時代の定義に従いますと地方交通路線、いわゆるローカル線と言われる線区でございます。ただ、私ども国鉄から分割・民営で誕生をいたしましたこの仕組みの中で、不採算路線も含めて事業全体で採算が確保できるようにということでいろんな措置が講じられたという経緯もございます。  そういう経緯からすれば、私どもとしては、基本的には私ども国鉄から引き継いだ路線網は基本的には維持すると、私どもがあらゆる努力を払って維持するというのが基本ではないかというふうに考えております。そういう意味で、私どもとしては基本的にはローカル線につきましても、先ほど申し上げましたが、それぞれの地域ごとの鉄道部という組織もつくったりしまして、存続のための効率的な事業運営ということを徹底的に追求するというのが私どもの今の当面の方針でございます。  ただ、そういう中でも、残念ながらまことに交通事情が変わったとか、あるいは地域の事情が変わったということで、ここはむしろ維持するよりもバス転換した方がいいという部分に関しましては、これは具体的には可部線で今協議をしているところでございますけれども、そういったケースもごくまれにはございますが、基本的には私どもは、あらゆる徹底した効率化を進める中で、まず第一義的に維持していくという方向で考えている次第でございます。
  24. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 ぜひこれは要望しておきたいと思いますが、例えばいろいろな知恵を絞っていただきまして、レールで維持できるようにこれからも御奮闘をいただきたいというふうに思う次第でございます。  梅原参考人にお尋ねさせていただきたいと思います。  先ほどの意見陳述をお伺いしておりまして、私の率直な気持ちとしまして痛々しい感じを受けました。本当に血の出るような努力をなさっているんだなというふうに感じたわけでございます。四国四県でたしか四百万人ぐらいの人口でございますし、私の岐阜県が二百万でございますから、うちの倍の人口かと。面積がちょうど岐阜県のまた四県で倍ぐらいだなと。岐阜を二つ足したようなところが四国かというふうに想像をしながらお聞きしていたわけでございます。  そういう中で、もう高速網もどんどん四国発展しておりますし、私は昨年の十一月の質問で、ちょっと駄じゃれ的に、JR四国の場合は、もう線路は全部めくっちゃってバスに転換した方が効率でかえってもうかるんじゃないかと。その証拠に、四国だけがいまだにバス会社を別会社にしないで一社制で頑張っていると。あとの五社についてもみんな分離したわけでございますから、そういう状況じゃないかというようなことを申し上げたんですが、これは地域の足を守るために絶対そんなことをしちゃ困るわけでございますし、そういう中でお聞きしておりますと、経営安定基金にいたしましても低金利になっている、もうこれも大変厳しい状況になっている。また、固定資産税の減免措置も何とかやってもらわないと生きていけないというように率直に申し上げて私は感じました。特に経営安定基金運用益というのは、もう金利が大変悪いわけでございますから、相当なダメージを受けていらっしゃると思います。  そういう中で、私自身は、先ほどこれはどなただったかちょっと忘れましたが、中島委員だったか、上下分離方式、これを考えたらどうかなというふうに率直に感じているんです。特に四国の場合と北海道の場合は、九州は将来フルの新幹線が入ると思いますので、新幹線もいつ入るんだろう、その見通しもないというような状況を考えていきますと、それこそ先ほどもちょっと触れましたように、バスに対しては補助金が出るわけでございますから、また整備新幹線とこれから上下分離方式で運営をするというような方向もだんだん出てきているわけでございますから、特に四国のような大変足腰の弱いところは、いろいろな補助金をもらうより、あるいは固定資産税を減免していただくより、もっと胸を張っていけるのは、逆に上下分離方式で線路以下その他全部国か自治体でやってくださいよという方が経営はより安定して、また地域の足もしっかり守れるんではないかというふうに考えるわけですが、いかがでしょうか。
  25. 梅原利之

    参考人梅原利之君) バスの話がございました。  私ども高速道路の延伸と同時にバスをどんどん減らしておりまして、バスは分社化しようと思ったらいつでもできます。そういう状況にありますが、やはり規制緩和などをにらんで今はまだ本体の中に取り込んでいるということで、バス事業については順調であります、その分鉄道が苦労しているわけでありますが。しかし、鉄道もその特性は十分にあります。環境に優しい、それから定時性、そういうことで私どもはハムレットの気持ちもありますが、鉄道を十分認識し、これを残していきたい、かように考えます。  その中で、先生の方から上下分離の話がございました。私どもも先ほども申し上げましたが、非常にインフラが脆弱でありますので、このインフラについて、例えば複線化なり電化、それから短絡線、これらについてぜひ上下分離方式などを前提に公的な支援をよろしくお願い申し上げたい。将来、島全体、四国全体についての話はこれはさておきまして、とりあえずいろいろ今投資していくものについて上下分離方式をぜひぜひお願いしたいというふうに思います。  以上です。
  26. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 岡田清参考人にお伺いしたいと思います。  純民間会社化賛成の立場でいろいろとお話を伺わさせていただきました。そして、比較的成功しているのではないだろうかというような趣旨で私は受けとめさせていただいたわけでございますが、特に現時点で見てまいりますと、本州三社というのはかなり成功していると現時点では思えるわけです。  ただ、鉄道の場合は若干ほかの企業と違いますのは、一つは、今ちょっと四国も出しましたけれども、東にいたしましてもローカル線を随分抱えていらっしゃる、そういう中で今、少子高齢化社会の中で仮にどんどん人口減少していく、あるいはあと二十年後にはひょっとして五%ぐらい人口が減ってしまった、そうしたら鉄道利用者も五%ぐらいは当然減るだろうというふうに考えないといけないと思うんです。  そういたしますと、たしか今、JR東で鉄道部門で約二兆円ぐらいの売り上げをしておりまして、二千億円ぐらいの経常利益を上げているわけですが、五%利用者が減るともうそれで一千億円ぐらいあっという間に飛んでいってしまう、簡単に言いますとそういう感じになってくるんです。当面はよく見えるんですが、将来、人口減を考えた場合、当然大都市部の利用者が多いところは残っていけるでしょうけれども、その周辺がどんどんなくなっていくんではないかなという、そういう危機を一つ持っております。そのことについて、またちょっと後ほど御発言いただきたいと思います。  二つ目は、今私が一番気になっておりますのは、鉄道事業だけではだめですから、あらゆる多角経営をせざるを得ません。たしか東だけでも七十八社ぐらいございますしね、連結決算だと。あらゆる部門やっていらっしゃいます。それはそれで生き残るためにはやむを得ないと思います、自由経済でございますし。ただ一つだけ、私は大変気にかかっていることがあるんです。東京駅です。東京駅は私は日本の表玄関だと思っているんです。一JR会社の東京駅ではなくて、日本の表玄関、すべてのJRをカバーしているというふうに理解していいと思うんですが、昨今、私はあそこというのは、駅周辺じゃなくて、外側じゃなくて構内。構内で、デパートも顔負けするようなもう煩雑であらゆるお店をやっていますね。回転ずしまであるんですから、もうそういう状況であるんですね。上野駅も似ているわけですし、赤羽駅も似ているわけですが、そういうことは別にしまして、東京駅だけはやはり鉄道の駅としてふさわしい状況にしていただかないと、私はどうも世界に恥ずかしいなと思うんですが、その辺についての感想をひとつお尋ねしたい。  同時に、そのようにいろいろと多角経営をなさっていらっしゃいます。そうしますと、多分、東京駅の構内でお店をつくるんですから、八重洲側の地下街の商店街の皆さんといろいろな話し合いなんか私はなさっていないと思うんです、正直言いまして。あるいは上野駅にしたって、上野駅の周辺の駅前商店街の組合なんかと話し合いしていないと思うんです。現行法ですら、第十条の中小企業者に配慮というのが随分欠落しているんじゃないかなというふうに思うんですが、その辺についてお尋ねさせていただきたいと思います。
  27. 岡田清

    参考人岡田清君) 地方交通線問題の認識におきましては、先生と私は完全に一致しているかと思います。  御案内のように、JR日本の収入の八割は首都圏でございます。JR東海は新幹線収入が九割で、あとはもうつけ足しのようなもので、地方交通線が崩壊することは、東日本におきましては東北方面、JR東海はローカル線が割に少ないわけですからその点は有利になっておりますが、これは南谷社長のところは山陰本線と和歌山線が問題を残しているんです。それを補うだけの新幹線収入が十分にございませんので、ここら辺を総合的にどう手当てしていくのか。これは南谷社長の腕の見せどころだと理解をしております。  第二番目でございますが、東京駅は御案内のように大正三年にできておりまして、文化資産的な意味でこれは日本の駅だという御認識は私も全く賛成でございますが、ただ、大駅主義というのはもうこれは不可能ではないか。と申しますのは、あれほど大きくなりますと、中の配置その他の利用パターンが、その中に出入りしております事業者が、物販店がありますが、物販店に競争政策を導入すれば同じような業種を導入しなければいけない、さりとてデパート主義でいけば大丸とかそういうふうに割に限られたものになっていく、そういうことです。  ただ、現在の国際的な雰囲気といたしましては、例えば空港の例ですが、フランクフルト空港にしましても、BAA、イギリスの空港にしましても、やはりあの駅の中、つまりターミナルの中の活性化というのは非常に大きな課題になっております。したがって、利用者が非常に使用しやすいような物販機能をあそこにしっかりと根づかせるということが大切ではないか。ただ、その場合に、先生の御指摘のように近代性と日本の玄関だということとどういうふうに結びつけていくのか、この点に対する感覚はちょっとやはり鈍いのかなというふうに、この点も全く先生と同感であるということだけを申し上げさせていただきます。
  28. 山下八洲夫

    ○山下八洲夫君 最後に、せっかくでございますから岡田尚先生に一言だけ、千四十七人問題でお伺いさせていただきたいと思います。  私も岐阜県の鉄道の町に住んでおりますから、率直に申し上げまして、何と申しますか、割と国鉄には優秀な人が採用されているんですね。高校でもクラスで一、二番の子じゃないとなかなか入れない、ほかに行くような企業がないんですから。それと、長男坊で家を跡取りしないといけない、そういう人は役場か国鉄かというのが大体相場だったんです。  そういう中で、国鉄改革であのような状況になったものですから、私はあの千四十七人の皆さんの気持ちというのはよくわかるんです。昭和六十一年、六十二年当時は行けなくても、十四年たちましたから、今は広域配転で行ける環境になっている方もあろうかと思うんですが、その時点ではなかなか行けなかったというような事情等があるものですから、私もこの問題というのは早く解決してあげたいなというふうに思っている一人でございます。  そういう中で、やはりこの千四十七人の皆さん方、不幸な状況にいまだに置かれているわけですから、私は本会議でも、これはもう政治的に決着をすべきだというふうに申し上げたんですが、どういう決着の仕方が一番早道か、もし考えがございましたら最後にお聞きしまして、終わらせていただきたいと思います。
  29. 岡田尚

    参考人岡田尚君) ありがとうございます。  先ほども申し上げましたように、一人一人の思いは千差万別なんだけれども、政策で出てきた出来事である、やっぱり政治の場面で解決するしかないというのが基本的なことで、ただその場合に、それは全員の思いをすべて吸収できるような解決にはなかなかならないであろうということは、私たちもあるいは本人たちもそこは理解していると思うんです。十四年の自分たちの苦しさや闘いの中で、どのくらい自分たちの要求が解決できるならば満足なんだという線は、やっぱりそれなりに皆さんが考えております。  ですから、いわゆる公正な補償というその補償というのは必ずしも金銭に限らない、むしろ金銭ではないんだというのがILOの委員会の基本的な考えでありますから、雇用の面とお金の面等々について政治的に今見て、妥当な線が出れば皆さんがそれなりの対応をしていただけるというようなのが、私も現実にさまざまな人たちとおつき合いをする中で感触としては非常に持っております。
  30. 森本晃司

    ○森本晃司君 参考人の皆さん、きょうは大変御苦労さまでございます。ありがとうございます。公明党の森本晃司でございます。  まず最初にお伺いしたいわけでございますが、きょうは私が絶えず利用させていただいているJR西日本社長さんがお見えでございます。この十四年間、随分経営努力をしていただきまして、利用する我々にとってもサービスの部門とかあるいはスピード性の部門とか、そういったことが大変便利になったということを私も実感しているところでございますし、その点についての経営努力に感謝しますし、同時に、これはまた先ほど社長がおっしゃっていただきましたように、一日も早き完全民営化へというお話もちょうだいいたしまして、私もそのとおりだと思っておるところでございます。  ところが、完全民営化という形でJR法が外れていくということの流れの中で、政府が持っている株の売却の問題でございますが、政府が持っている株を売却という形になります。このタイミングはどのように考えておられるのか。それから、三社がございますから、この三社がそれぞれ自分の都合でそのときに売却という問題があっていいのか、あるいは三社が同時に売却という形をとるのがいいのか。もしそういう順番があるとすれば、どんな順番がいいと考えておられるのか。株の売却問題についてお尋ねしたいと思います。
  31. 南谷昌二郎

    参考人南谷昌二郎君) ただいまの御質問にお答えしたいと思います。  まず株式の売却の一番基本の部分になりますと、売却当事者は実は政府あるいは日本鉄道建設公団の清算事業本部ということになるわけでございますので、当社の立場としましては、これはあくまでも、株を売却するぞ、おまえのところ準備大丈夫かと、大丈夫でございますということで、私どもがいつでも立ち上がれる体制を整えておくということが私どもの基本的な立場ということになります。  そういう意味では、私どもはまないたのコイでございますので、私どもから積極的にこういう切り方をしてくれということを余り申し上げる立場じゃないかもしれませんが、あえてせっかくの御質問をいただいたものですから希望を申し上げさせていただきますれば、私どもとしましてはもう既に残った三一%の株の処分につきまして売却できる体制を整えておりますので、これはいつおまえたち出てこい、出せというふうにお呼びがかかっても大丈夫なように準備を整えております。  その上で、証券会社等にいろいろ伺いますと、三社同時というのはなかなか、投資家の方あるいは個人の株主も含めて、実際に買う場合に混乱が生ずる可能性もあるということで、やはり何らかの形で順番にやるということが必要ではないかなというふうには私ども伺っております。これは、いずれにしても政府がお考えなり指示なさることだろうと思います。  順番でございますけれども、これは三社三様それぞれございますので、私どもから私どもを一番にしてくれということはこの場で申し上げるわけにもいきませんが、私どもとしては準備は万端整っておりますということだけお答え申し上げさせていただきたいと思います。
  32. 森本晃司

    ○森本晃司君 これからいよいよ高齢社会に入っていきます。我が党はバリアフリーの問題について今日まで取り組んできたわけでございますけれども、今までは旧建設省、旧運輸省という省庁のバリアがむしろあって、なかなか駅及び駅周辺のバリアフリー化は進まなかったというのも事実だと思うんです。けれども、今、国土交通省となって一体と進めていく、それからバリアフリー法が昨年成立いたしまして、いよいよこれからそういったことについて拍車がかかっていくんではないかと思っております。  先般、JR日本の方では、二〇一五年に向かって具体的なバリアフリー化の方針を出されました。二〇一五年が恐らく一番高齢のピークになってくる、人口も大きくなってくるわけでございますけれども、こういった点に、JR日本としてバリアフリー化にどう取り組もうとされているのかという点。  もう一つは梅原参考人にもお尋ねを申し上げたいわけでございますけれどもお話を伺いますと、また現実に見ますと非常に経営の厳しい状況の中にあると思います。殊に高速道路が誕生したことによってますます厳しくなるんではないだろうかというふうな思いも私は持っておりますが、そういう厳しい中でバリアフリー化についてどのようなお考えをお持ちなのか、両社の社長さんにお伺いしたいと思います。
  33. 南谷昌二郎

    参考人南谷昌二郎君) ただいま御指摘のバリアフリーに関しましては、これはこれから少子高齢化社会に向けまして非常に重要な施策であると私どもも考えております。  実は一昨年、私どもも今後のバリアフリー化の問題につきまして一定の方針を明確にさせていただいたところでございます。その方針にのっとって現在着実に整備をしているところでございますが、この内容を御紹介申し上げますと、大体二〇一〇年ごろまでに私どもとしましては乗降人員五千人以上の駅、おおむねすべての駅に、これは私どもの御利用客の九〇%の方がここでカバーできるわけでございますが、五千人以上の乗降の駅につきまして、今後十年間でエスカレーターかエレベーターを設置するということを一昨年の四月に発表させていただいたところでございます。  現在、その方針にのっとりまして着実に進めておるところでございますし、またこのたび、バリアフリー化法で非常にこの問題に関して助成も明らかになっておるところでございますので、そういった公的な助成もちょうだいしながら、今後とも自治体とも十分協議しながら着実に進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  34. 梅原利之

    参考人梅原利之君) 私どもも基本的には一緒でございますが、交通バリアフリー法に基づきましてエレベーターなどの設置が義務づけられている駅は、私どもにも実は七駅ございます。そのうち整備済みの駅は高松、坂出でありますが、残りの三駅、高知、松山、徳島でございますが、これにつきましても高架化計画に合わせて整備してまいります。さらに、残りの丸亀、今治でありますが、これについても地元と常時、これから協力をしていきながら進めていきたいと考えています。  ちょっとPRじみて恐縮ですが、先般、ついこの間開業をしました新高松駅でありますが、これは私どもバリアフリーのモデル駅にしようということで、ハートビル法の認定基準をクリアする設備、そういったものをつくりまして、いろんな身障者の皆さん方の団体ともヒアリングを行いまして、ハード、ソフト両面から最新のバリアフリー駅にしたつもりであります。ぜひ、ここに大勢の方に来ていただいて、鉄道収入も上げたいなというように考えている次第であります。  いずれにしましても、これからも積極的にそういったことを進めてまいります。ただ、先ほど来申し上げていますように、私どもの使えるお金は限界がございますので、そういった設備にかかわる補助率、補助対象などを広げていただきたい、かように思う次第であります。
  35. 森本晃司

    ○森本晃司君 四国さん初め三島は大変厳しいかと思っております。いよいよこれから、先ほど申し上げましたように、高速道路四国整備されるわけですが、私も去年四国へたびたび行ったわけですけれども、やっぱり四国というのは四つの国だなというのは感じます。鉄道の便も極めて悪かったものですから、余計そのことを自分で実感したんじゃないかなと思います。ことしの連休にまた四国へ行きまして、そのときは車で行きました。そして、高速道路整備されていますから、ちょっと社長には厳しい話なんですが、やっぱり車の方が便利がよかったかなというふうな感想として持ったわけです。  その上で、これから四国経営をしていかれることについて、四国だけじゃなしに三島は大変厳しい、どういう形での経営の合理化あるいは効率化についてしようとされているのか、このことについてお伺いしたいと思います。
  36. 梅原利之

    参考人梅原利之君) 今、先生おっしゃっていただきましたとおり、高速道路の伸び率といいますか、ここへの集中的なお金の投資はもうこれはすさまじいものがあります。そういったことで我々は非常に苦戦しているわけでありますが、そうはいっても始まりませんので、私ども増収活動をいろいろやりながら経営効率化を図るということで、効率化には人件費と物件費がありますが、人件費については、先ほど来申し上げておりますように、早期退職制度などによりまして発足の当時から比べて千人の要員縮減をやりました。  鉄道だけでいうと、先ほどは車両キロと申し上げましたが、列車キロ、一本の列車が何キロ走ったかという総計で見ても、三割ふやしておる中で千二百人の要員縮減をやっているということです。そういったことをやって、開業当初約百五十億円の営業赤字がありましたものを九十億円にまで減らしました。しかし、その分、全部それは経営安定基金運用益減少で吹っ飛んでしまいました。そういうことで、これからも増収活動と同時に、全力を挙げて安全を担保しながら経営効率化を図ってまいります。  しかしながら、これは、先ほど来申し上げておりますように、労働組合の協力も得ながら、むしろ計画を先取りした形になっておりますので、もうこれは限界があります。これからも頑張りますが、限界があります。そういうことで、いつでもここに集約するわけでありますが、こういった中で私ども経営努力の及ばないところ、いわゆる今の経営安定基金の運用の下支えの問題とか固定資産税の減免の問題について、何とぞよろしくお願い申し上げたいということであります。
  37. 森本晃司

    ○森本晃司君 今、梅原参考人から安全面という問題等々についてもお話がございまして、そして労働組合の協力を得ながら今日までやってきたというお話がございました。  先般の委員会でも私は申し上げたんですが、今日の国鉄のこの民営化に至るまで経営陣の大変な努力があったように、これは間違いないと思います。同時に、もう一つの大きな要因は、私は何といってもそこに働く人たち、誇り高きかつての国鉄マンの誇りを持っておられた人たちの民営化への協力なくして実現はできなかったのではないか、そのことを痛感しているわけでございます。  今度、民営化になりまして、さらにまた効率化、それから利益優先ということになると、安全という面で、サービスという面でこれからどうなっていくのかということを考えるわけでございますが、私は客への鉄道の最大のサービスは安全であるということを思うわけでございます。この安全は、先ほど南谷社長は、ハード面は相当整備できたとおっしゃいました。私は、安全という面については、ハードとそれからヒューマン、経営者と働く人たちの人間関係がスムーズにいっていないとこれは非常に厳しいのではないかなというふうに思っております。  私の住んでいる奈良県のいろいろな関係では、JR西日本関係者の方々がお住まいでございますけれども、時々雑談で、あるいはそういう昔の仲間と、学校時代の友達としゃべりますと、時々一杯飲みながらやっていますと、その辺の話が出てくるわけです。もう経営効率化とかになってくると、ちょうど私の世代が今五十九歳ですから来年定年を迎えるわけですけれども、ここ数年さんざん、あれは意図的な肩たたきであったのではないだろうかという話とか、ささいなミスでも、極端に言うと、寄ってたかってしかられて、それで何となくやめなきゃならないような雰囲気に持っていかれるのではないだろうかと、こういう話があるわけです。  私は、ささいなミスを、これは人間ですから起こしますが、それに対する指導性の問題、再び事故を起こさないということは、ただ単に経営者の方から厳しく言っただけでいいんだろうか。  この前、帽子を忘れたということで空の、これは西日本の話ではありません、あるところで、帽子をとりに行くために運転席から離れていったという例もございました。個人の問題かもわからないけれども、そういったところにも、何かもうこれ以上ミスするとリストラの対象にされるんだという思いで、むしろ安全という面よりもそっち側の方にいろんな方々が気をとられるというようなことが私はあってはならないと思うんですが、労使関係についてどのように考えておられるか、お尋ねしたいと思います。
  38. 南谷昌二郎

    参考人南谷昌二郎君) 御指摘のように、安全が最大のサービスであるということは、輸送機関にとっても常に念頭に置いてやっていかなければならないというふうに考えております。そういう意味で、ハード面整備ということとあわせて、御指摘のように従業員に対して十分な訓練と、そして会社側の施策についての理解を求めるという意思疎通というのは非常に重要であるというふうに考えております。  実は私ども労使関係という観点で言いますと、私ども会社には主な労働組合で四つの労働組合が実はあるのでございますが、それぞれの労働組合と個別に安全問題を議論するのではなくて、共通のテーブルを設けまして、労使安全会議という形で各労働組合の代表者と会社側の代表者が一つのテーブルに着きまして、安全問題に限って共通のテーブルを持って、そこでそれぞれの組合が立場を超えて安全について真摯に話し合うという、そういった議論の場も実は設けております。  そういった中で、今御指摘のような、現場におけるさまざまな問題も個々具体的に指摘されることもございます。そういうことを含めまして、私どもとしてはある意味では厳しく、しかしやはりこの厳しさが次の安全の向上に役立つような施策を私どもとしても常に心がけてまいりたい、今後ともそういう形で気をつけてやってまいりたいと思っております。
  39. 森本晃司

    ○森本晃司君 終わります。
  40. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。参考人先生方には、大変貴重な機会をつくっていただきまして、心から感謝する次第です。  まず、分割・民営化の評価に関連して岡田清参考人にお尋ねいたします。  国鉄が分割・民営化されて十五年目に入りました。先ほど、国鉄改革は大成功とおっしゃられました。一般論でいっても、物事には光と影があると思います。確かに本州三社は経営黒字です。でも、これは当然のことで、もともとそういう仕組みをつくったからそうなっていると思うんです。国鉄時代でも、貨物を除けばそれなりの経営状態でした。問題は、赤字の重荷と言われた北海道、四国、九州と貨物は我々が懸念したとおりになっております。  先ほど、梅原参考人からもその点でお話がありました。二度と国の補助は要らないと国会でも公約していたわけですけれども、現在さまざまな支援をせざるを得なくなっております。こうした国民や自治体になし崩し的に負担を求めるやり方でいいのか、この問題があると思います。  そこでお尋ねしますけれども本州三社にも協力を含めた対応を何らか考える必要があるのではないかと私なんかは思うわけですけれども、先生のお考えをお聞かせいただければと思います。
  41. 岡田清

    参考人岡田清君) 先生の御指摘は二点あったかと思います。  私は、もし三島会社が補助は要らないというふうに言ったとすれば、鉄道の将来に対して全く見識のない発言であるというふうに理解しております。これは既に分割・民営化のときに、新幹線収入が総収入の四割に至っているんです。ローカル線は生き残れるような状態ではなかったわけです。ましていわんや、北海道に至りましては、札幌圏のJR交通体系は決定的におくれておりました。それで、ずっと全島的な意味で赤字線を全部抱えておりました。確かに基金をもらったということがきっかけかもしれませんが、恐らく皆さんは非常に不安を抱いたはずなんです。そのときにこれでやっていけるというふうに判断されたとすれば、私は非常に甘かったと理解をしております。  そういうことで、ではしからばどうするか。本州三社がこれを補助をするかということは、これは間違いだと思います。もう一度昔の一社体制に一歩近づくことを意味しますので、財政補助、御案内のように企業は生き物ですから、補助が出ればモラルハザードが必ず起こります。ですから、本州三社がこれを助けるということは絶対にやってはいけないと思っております。  以上でございます。
  42. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 次に、千四十七名の早期解決の問題について岡田尚参考人にお伺いいたします。  先ほども御指摘がありましたけれども、千四十七人問題については、私たちは、国鉄の分割・民営という国の政策に基づいてその実施途上において発生した問題であって、政府の責任で早急に解決することが重要である、このように考えております。  ILO勧告では、関係する労働者が公正に補償される解決に早急に到達することを目的とすると政府に指摘しております。しかし、政府は四党合意を受け入れることが結論として、公正な補償に左右されないかのような答弁をしております。この点についてどのように受けとめられるか、一点お伺いします。それからまた、公正な補償とはILOではどういう形態を指しているのか、その点もお伺いいたします。
  43. 岡田尚

    参考人岡田尚君) 最初のあれですが、ILO勧告は、先ほども申し上げましたように、これは政府に対する勧告なわけで、そうするとILOは政府に何を期待して何をやってほしいと言っているのかということだと思うんです。それで、現実には四党合意という形で解決に向けた政治的な動きというものがこれは現実にあるわけで、それを政府が見守るとかという表現をしていただいておりますけれども、本当を言うと、見守るのでは私は足りない。  どうしてかというと、四党合意の中身というものが、ILOは公正な補償というところを要求しているわけですから、その公正な補償というところが担保されるような四党合意をつくってほしいということをILOは政府に勧告したり要請しているわけですので、率直に申し上げれば、見守るということじゃなくて、四党合意の中身を公正な補償たり得るものにするための努力政府に求められている。公正な補償という日本語の訳がなかなか難しいわけですけれども、補償という以外にちょっと訳文がないわけです。  しかし、これはILOの方で出している解説と申しましょうか、その中には補償というのは可能な限りその人たちの原状に近いものをきちっと与えることが補償なんだと。つまり、原状回復することが最大の補償ということになりますと、これは決して金銭的な補償というような意味合いではなくて、この場合にはいわゆる雇用の確保、具体的に働き場所を確保してあげるということが最大の補償であると。  これは私が言っているわけではなくて、ILOの委員会の中で補償というものはこういうものであるということをちゃんと文章的にも明らかにしておる。それで申し上げているので、私の個人的な見解ではありません。
  44. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 これに関連してもう一問ですけれども、ILOの中間報告が九九年に出されました。その中で、日本政府に対し追加情報を求めております。政府は六カ月後に追加情報を提出しておりますけれども、その情報が万が一にも予断的な情報であってはならないものであって、客観的に公正になされているかどうか、大変重要なことだと思います。  政府の追加情報についてはどのようにごらんになっているのか、それが一点。同時に、政府が提出した追加情報の公表をすべきだと私は思うんですけれども、その点についてもお伺いいたします。
  45. 岡田尚

    参考人岡田尚君) まさに今お話があったように、追加情報がどういう内容であるかということを検証するすべが今の段階ではありません。これはILOに政府が出す文書でありますから、公文書で、公表が原則ではありません。ILOがその文書を公表するという前提にはなっておりません。  ただ、私はこの問題について言うならば、外交関係の文書であったとしても、それは他国との間で何か微妙な関係を発生させるとかそういう文書では全くないわけです。国内の出来事について政府がどのように考え、どのような情報をどのような趣旨でILOに出したか。これは私は、ですからILOが公表するのではなくて、政府みずからが追加情報についてこういう中身で出したんだと。しかも、中間報告が出た後の追加情報なんです。何もないところへ出した情報ではありません。私は、まず公表をむしろ要求したいし、公表を拒む根拠というものはありません。  それから、追加情報が出された最終勧告の中身からいって推測ができる。基本的には、やはり差別があったことについて否定的な評価の加わった情報が送られているということが想像できます。それは、中間勧告から最終勧告に至る文書を両方比較してみれば、政府の追加情報によって一定の、私たちからすれば後退的な表現になっております。それは、政府の追加情報があったからというしかありません。もし政府の追加情報の中身が私たちの方に知らされておるならば、政府の追加情報のここは間違いですよ、あるいはここの事実は数字としてはあるかもしれませんけれども、それはこういう経過の中で出てきた数字ですよとか、さまざまな反論ができたはずであります。  ですから私は、速やかに追加情報は公表されて、むしろそういう検証に付して、その中で本当の具体的な真実というものをみんなで議論し合えるような、そういう場にしてほしいというふうに思います。
  46. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 次に、南谷参考人にお尋ねいたします。  ILO勧告では、すべての関係者に対し公正に補償される解決に早急に到達する、このように求めております。私も国連人権委員会とかILOに、ジュネーブによく通っておりました。ですから、こうした勧告を出した背景とかあるいはILOの中でどんな議論が行われたかということも仄聞しております。しかも、これまで十五年という長い歳月が流れているし、人道的にも限界だと思うんです。  ですから、こういうことを見て私は、JR西日本として労働組合とも十分話し合いをしてこの問題はいっときも早い解決をすべきだ、そういうふうに考えるわけですけれども、その点での御所見をお伺いいたします。
  47. 南谷昌二郎

    参考人南谷昌二郎君) この千四十七人問題というのは、まさに私どもが当事者であるのかないのかというところをめぐって裁判でも争われているところでございまして、そういう意味では、私どもはこの問題に関して一貫して、既にこの問題は解決済みの問題であって、なおかつ私どもにつきましては、私どもは当事者ではないということを実は主張してきた関係がございます。なおかつ、地裁段階あるいは高裁段階でも私どもの主張が認められたという経過がございます。  そういうことからいたしますと、この問題に関してILO勧告がございますけれども、この勧告自体もこれは日本政府に対して出されたということもありまして、ILOの勧告に対して、私どもがこれにどういう形で対処するかということについては、なかなか私どもとしての立場を申し上げる筋ではないんではないかなというふうに基本的には考えるところでございます。  いずれにしましても、国内におきましてはこの問題はいろいろな経過の中で四党合意という合意文書が国労に対して提示された。それに対して、国労サイドでこれをいろんな経過の中で最終的に大会において承認されたというふうにも私ども伺っておりますけれども、これも実はその後もなかなか姿として見えてきていないということでございますので、私どもとしてはこの辺のところもこれからの経過も十分見守ってまいりたいというふうに思っております。
  48. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 南谷参考人、もう一問お伺いしたいんですけれども、先ほど本州三社からJR三島への協力云々ということをお尋ねいたしました。例えば、JR西日本からそうした協力を検討する用意はあるのかないのか、それについてのお考えをお伺いします。
  49. 南谷昌二郎

    参考人南谷昌二郎君) この問題に関しましては、先ほど岡田先生の方から非常に明快なお答えがありましたけれども、実は私どもも隣の会社であり兄弟会社であるという立場の中で、私ども例えば営業を増進するとかあるいはダイヤを相談するという中で協力できるところは積極的に協力をしていくと。相互に送客をするという形での協力はこれは十分考えておるところでありますし、これまでもやってまいったところではございます。  ただ、実際に財政的にこれを支援するということになりますと、私どもが財政出動する合理的な理由がしっかりと明示されなければならないわけでございまして、そういう意味では、株式会社という仕組みの中で私ども株式会社としての意思決定をする中で一方的に財政的に支出するということは、これはなかなか難しい問題であろうかというふうに思います。  したがいまして、私どもとしましては、やはりさまざまな営業施策の中での御協力であるとか、あるいは将来に向けてのいろんな、三島会社にもプラスになるし私どもにとってもプラスになるということの中で、いろんな施策をこれからも考えながらそういった協力関係は維持していきたいなというふうに思っておるところでございます。
  50. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 梅原参考人には、ちょうど時間になりましたので聞く機会が持てませんでした。大変失礼いたしました。  以上で終わります。ありがとうございました。
  51. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 参考人方々、大変お忙しい中、きょうは御苦労さまでございます。社民党の渕上貞雄でございます。  まず、岡田清参考人にお伺いをいたしますが、国鉄民営・分割化、既に十五年がたとうとしている。十五年の意味は一体何かというところが大きな問題でございますが、やはり民営化については、きょう四人の参考人の方のお話を聞いて、大体当事者二人ですからそれは民営化を進めることになると思うんですが、賛成ではないか。  そこで、国鉄民営・分割化と言ったときに、民営までは理解できるんだけれども、分割化のところで私はこの十四年さまざまな問題が出てきたのではないか、こういうふうに思うわけでございまして、国鉄民営、そして分割というのは少し意味合いが違うのではないかというふうに思っているわけです。  それは、例えば北海道、四国、九州、貨物という問題をなぜ分割しなきゃならなかったのか。もう少し分割をしていく過程の中で、国土の均衡ある発展、同時に公共事業としての国鉄の役割、そして民営になった場合のサービスのあり方、そして国民の移動の自由の保障などということを考えると必ずしもそういう分け方をしなくてよかったのではないか。そういうふうに分けた結果が十四年の歳月というものがかかったのではないかというふうに思うのですが、その点、どのように理解すればいいのか、御所見をお伺いしたいと思います。
  52. 岡田清

    参考人岡田清君) 分割の是非につきましては、実は私の個人的な心の揺れ動きでちょっと申し上げさせていただきたいんですが、当初は私は分割に反対だったわけです。その場合に、本州三社の一体化、つまり三島分割はかなり独立性が高いということで、各島ごとに一つの会社でやるのは構わないけれども、さらにこれを分割するというのはかなり問題だという認識をしておりました。  しからば、なぜそうなのかということでありますけれども、あくまでも分割しましても企業でありますから、企業としての独立性が保障されなければいけない。そこで常々言ってまいりましたのは、一本の列車が二社、三社にまたがるとこれは必ず精算問題が起こります。精算問題は、今コンピューターでやっておりまして、いかにもうまくいっているようですが、これは実は本当は、鉄道の歴史の中で、イギリスでもクリアリングハウスというわざわざ精算所のようなものを設けましてやっておりました。だから、この精算問題というものを余り軽く考えるのはちょっと危険だということで分割に反対しておりました。  ところが、その後の流れで、イギリスでもやはりこの点がかなり論争になりまして、企業規模が大きくても構わない、あるいは大きい方がいいんだという説と、それからそうではなくて企業規模の経済はない、したがって小さくても構わない、つまり独立企業体として存続可能かどうか、あるいは経営体制でいいかどうかということをメインに分割問題を考えるべきであるという方向にずっと思想的な転換と申しましょうか、考え方の変化が起こりました。その結果、私自身もこれは結果的に分割の方がベターだったかなということで、私の考え方もだんだん揺れ動いて分割の方に変わったという経過がございますが、そのことを申し上げさせていただきます。
  53. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 同じ参考人のお名前で岡田尚さんの方にお伺いしたいのでありますが、同じく十四年間経過する中でやはり今日の問題を抱えている、そして特徴的な問題は先ほど千四十七名問題等でお話しございましたけれども国鉄民営・分割化の持つさまざまな要因、そのことが今日までこういう状況になってきているというお話をお伺いいたしましたが、分割・民営にかかわる問題についてどのようにお考えでしょうか。
  54. 岡田尚

    参考人岡田尚君) 例えば、本当に何のための国鉄民営・分割だったのかというところで考えてみれば、累積債務を解決しなきゃならぬ、あるいは全国公社一社制ではそれぞれの地域の具体的なニーズに合った鉄道体制がとれないというようなことが言われて、そういう流れでいきますと、今お話が出たように、北海道、九州、四国等々がまさにある面では見放された形できて、最終的には恐らく国が一定の補助をせざるを得ない事態がしばらくは続いていってしまう。だから、最初のいわゆる目的といいましょうか、そこを基準に考えた場合には、私にはとてもバラ色というふうには映りません。  その本州三社の経営そのものの数値というものは事実でありますし、そこに対する努力に敬意を表するものでありますけれども、しかし本当の目的のところからもう一回尺度として考えた場合には、やはり積み残した問題点、積み残した解決しなければならない遺産を依然として引き継いでいるというふうに思います。
  55. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 もう一度岡田清参考人にお伺いいたしますけれども、ヨーロッパの鉄道のことを考えますと必ずしも民営化じゃありませんね。不完全民営化と言っていいと思うのでありますが、いわゆるイギリスの場合もサッチャー政権ではああいう形で民営化していく、しかしもう一度少し行き過ぎたのではないかというようなことが言われて不完全民営化みたいな感じで動いているわけですけれども、今回の場合は新たに完全民営化で一歩を踏み出そうとしているんですが、政策のそういう判断について、世界の流れと我が国とのかかわりについてどのようにお考えでございましょうか。
  56. 岡田清

    参考人岡田清君) 企業分割問題というのは、逆の言い方をしますと、例えば上下分離的な考え方、それと上下一体化したのをこれは垂直的統合と申します。それに対して、横で例えばJR東海さんとJR西日本さんが合併するなんというのは、これは水平的な統合でございます。したがって、我が国の場合には水平的分離、それでヨーロッパの場合は垂直的分離、こういう選択をしたわけでございます。  垂直的分離、つまり上下分離の問題というのは財政の問題があって、インフラは輸送量が非常に少ないために収入をカバーすることができないということがヨーロッパの場合には根底にあると思います。ところが、日本の場合は、幸いにも線路を一社で維持してもなおかつ経営が成り立つということを前提に垂直的統合で水平分離という展開をねらったわけですけれども、この問題というのはまだ結論は出ておりませんが、垂直的な分離というのも物すごい問題を抱えております。つまり、上下分離というのは大変多くの問題を抱えているんです。  これは輸送量がヨーロッパの場合は非常に希薄、スリムマーケットといいますか非常に少ないわけですから、もともと線路費用まで鉄道会社に負担させることが絶望的に困難だと。幸いにも我が国の場合には、大都市であるとか大幹線、特に新幹線の場合にはこれは圧倒的に輸送量が豊富でありますから、いわゆるシックマーケットになっておりますので、十分に線路費用を負担して経営が成り立つ、これが原点になっております。
  57. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 次に、南谷参考人にお伺いいたしますけれどもJR東海の葛西社長が執筆をしております「未完の「国鉄改革」」という中に、完全民営化が内包する問題点として四点挙げられております。葛西社長の個人的な見解なのか、JR東海全体の見解なのかは、恐らく個人の見解だろうと私は本を読みまして思っているところなんですが、一つは労使関係の不安定、一つは民営・分割の際の分割作業の不完全性、三つ目には政策的配慮、特に新幹線鉄道施設の譲渡価格にかかわる本州三社間の収益調整の非合理性、四つ目が完全民営化が行われた場合。一から四点まで指摘をされておりますが、どういう御感想をお持ちなのか、お伺いしたい。  立ったついでに申しわけないんですが、完全民営化後もこの法案によっては指針制度が導入されているわけですね。そうしますと、やはり経営自主性を損なうのではないか。これからの審議の過程の中でそこらあたりが少し問題になってくるのではないかと思うんですが、同時に効率性の問題等々も出てくるのではないかと思うのでありますが、その指針制度についてどのようにお考えなのか、二点についてお伺いいたします。
  58. 南谷昌二郎

    参考人南谷昌二郎君) JR東海の葛西社長の著作におきまする国鉄改革の内包する問題点というような御指摘がございました。幾つかございますけれども、これは多分葛西社長の個人的な御見解でもあり、また今般の法案策定過程でもしばしば報道されました、特にJR東海さんにおける新幹線債務の大きさという問題に関しての御説明ではないかなというふうに私は思っております。  私どもの立場からいたしますと、それぞれが今回十年前に行われました国鉄改革、やはり一つの政策的な割り切りといいますか、が行われたということで、私どもはそれを所与の条件といたしまして、やはり将来に向かってこれを全きものにしていくという努力がこれからむしろ必要であろうというふうに考えているところでございます。  それから、指針の問題でございますが、これにつきましては自主性を損なうのではないかなという御指摘がございます。実は指針につきまして、私どもといたしましては、本心からいいますとないにこしたことはないのではないか。と申しますのも、実は指針に書いてあることは、国鉄改革の精神をおまえたち十分尊重しろよということをもう一度念を押されているものだということでございますので、それは十分私どもはわかっておりますということで、私どもとしてはこれはなくてもいいのではないかなということがございます。  しかし、いや、なおかつやはり世の中に対して完全民営化に当たりこういう指針ということを明示して、それをJR本州三社がきちっとこれを守っていくということをやはり担保するという御趣旨であろうと思いますので、そういうことであらば、私どもとしましても国鉄改革のこれまでの経緯を尊重するという中で、この問題は十分私どもの日常の経営の中でクリアできるというふうに考えている次第でございます。
  59. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 最後に梅原参考人にお伺いしますけれども、先ほどの御説明と各委員の質問に答えてお話がございましたが、聞けば聞くほど四国民営化できないなと。ここはもう民営化されずにそのまま国のものでやった方が、社長もそう苦労せぬでいいのやないかなというふうに思います。  同時に、それは高速道路との競争であり、いろんな他の交通との競争関係をやっていく場合に、果たしてこれから先、民営化をやっていこう、今さまざまな努力のことを言われましたが、もうそれは限界が来ている、それは財政上明らかだというお話もございました。その場合に、なお民営化をしなければならない、やっていかなければならないというプロセスを明らかにしていただきたいと思います。
  60. 梅原利之

    参考人梅原利之君) 改革法の精神は、効率的な輸送を行うために適正な規模に分割をして、そして地域に根差した経営を行うということであったわけでありまして、私どもも、北海道も九州も一緒でしょうが、そういうことで四国とともども発展しようという基本方針のもとにいろいろやってまいりました。  そういうことで、四国のいろいろな情報を素早くキャッチして、輸送需要をキャッチして列車もかなりふやしてまいりました。ローカル線についても配慮をしてまいりました。その間四国と一緒になっての観光キャンペーンとかいろんな都市計画JRになってからうんと進んだというふうに思っております。そして、その間経営努力をしながら、効率化を図りながら、先ほど申し上げましたように今まで毎年運賃値上げをする前提であったものが、消費税のときに一回しかやっていないということであります。  これはいろいろ議論もあろうかと思いますが、やはり私ども本社を四国に置いて、そして四国という地域地域と一緒になって運営をした成果であろうと。それはやはり非常に情報が素早く入る、温かい情報が入ってくる、そして我々もそれを素早くキャッチして素早く判断できる、自己責任で運営ができる、こういったことであったというふうに思います。そういう意味では、もちろん民営化成功でありますが、それ以上に分割が成功であったというふうに思うわけであります。  では、なぜ私が先ほど申し上げておりますように、これから苦しいので支援支援ということを申し上げているかということでありますが、それはやはり幾ら頑張っても営業赤字が出るんだよという前提で、七・三%の金利を見込んで経営安定基金をいただいているわけでありますが、それが昨今のような超低金利でまだ先行きが不透明であるということ、これは恐らく国鉄改革のときだれも予想できなかったことであろうと思いますし、JR四国そのものも、九州も北海道もこういう状態になるとは夢にも思わなかったということであろうと思います。  したがって、私は、この民営化、そして分割化はなお成功である中で何としても、また同じことを申し上げますが、我々が地域と一緒になって本当に頑張っていくために何とぞ支援をよろしくお願い申し上げたいということであります。  以上です。
  61. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 終わります。
  62. 田名部匡省

    田名部匡省君 私は、無所属の会という党をつくっております田名部匡省でございます。よろしくどうぞお願いいたします。  最初に岡田参考人にお伺いしたいんですが、私は、少子化・高齢化時代の日本の国というのは一体どういうふうなのだろうなと。この間も宮澤大蔵大臣にお伺いしました。財政も含めてどういうふうに想定されますかと。がっかりした答弁でした。若い人たちもちゃんとその時代にはやってくれるんでしょうと、こういう答弁でしたが、私はもう何ともならぬ状況になってきているなと。  この前も新聞を見ておりましたら、去年亡くなったお年寄りと生まれた子供で推計すると、二十一世紀日本人口が四千何百万人減りますと、これは推計ですから。しかし、小泉総理も三十五年後にはお世話になる方と世話する方がもう半分になっちゃいますよということをよく国会で話をされているのを見ると、一体鉄道というものはどういうふうになるのかなと。参考人にその辺のことをちょっとお伺いしたい。それから、公共的義務とは今どこまで考えればいいのか。  それからもう一点は、全国一律運賃は守るべきだとお考えか、これはもう一律ではだめだというお考えがあるのか、これをお伺いしたい、こう思います。  それから、基盤整備は先ほども上下分離方式が山下委員からあったんですけれども、それだけ必要であれば国がやっぱり基盤整備は責任を持つべきなのかなという感じがするんですね。この辺について、私も真に必要なもので国民が合意するものは、それは認めてもいいのではないかな、こんな感じを持っていますのでお願いします。
  63. 岡田清

    参考人岡田清君) 大変適切な御指摘をいただきまして、これから恐らく世代間の所得分配問題、つまり高齢者とそれから働き盛り、そういう所得再分配問題というのが大問題になってくる。それにもう一段、地域間の所得再分配問題が起こってくる可能性があります。地域間の所得再分配問題を余り激しく、例えばかつてフランスで地方の電力料金を安くした、つまり地域間の料金体系を分けるというやり方をとったことがあります。  現在の大勢の流れとしまして、我が国の場合にはむしろ地域ごとにそれは負担すべきであって、大都市は当然需要が多いわけですから運賃も下がりますね、その計算をしますと。しかしながら、これがどこまでもつか。裏返せば、地方の運賃をどんどん、これは梅原社長会社なんて間もなくもう上げざるを得ない状況に必ずなるんだと思います。その場合に、運賃値上げしてしのぐのか、あるいは国から補助によっていくのかというふうな選択問題が起こってまいります。  その一方で、補助の仕方として御指摘のように上下分離という選択があり得る。私は、三島会社については上下分離もあり得ると理解をしております。当然これは経営の能率問題に絡んでまいりますから、財政面の補助と、それからヨーロッパ型の上下分離というのはオープンアクセスで、だれが線路を使っても構わないという形のオープンアクセス方式をとっているんですが、これは日本にはなじまないと理解しております。あくまでも三島会社に対して財政的な補助体系としての上下分離というのはあり得ると理解しております。そこら辺の政策の発動をいつのどの時点でやるかという点が非常に難しい問題だと理解しております。  長い話になって恐縮ですが、同様に公共サービス義務の問題というのは、これも実はイギリスの例で大変恐縮でございますが、一括補助金とそれから線区ごとに補助金を出すという選択があります。  一括補助金は地方交付税方式と申し上げていいかと思います。今、交付税問題は大問題になっておりますが、イギリスの場合はこれは一括方式でまいりましたから、道路に使っても構わない、鉄道に使っても構わないというので、一括補助方式をとったために鉄道に回らない、あるいはバスに回らないで、道路の方にお金がどんどん使われてしまったという経過があります。そこで、特定補助方式をとるのかどうかというあたりはこれからの政策のかなり大きな選択問題だと理解しております。  同様に、全国一律運賃問題は、これはもはや成り立たない。問題は、地域住民と常に経営問題について、梅原社長のところは例えば大変よくやっているという認識地域住民に高まれば、我々も運賃値上げしても出そうではないかというふうな雰囲気がだんだん盛り上がって運賃値上げに期待が持てるようになるということで、単純に全国一律運賃という問題を軽々に考えるべきではないと理解しております。
  64. 田名部匡省

    田名部匡省君 梅原参考人にお伺いしますが、私もよくわかるんです、この大変な状況貨物というのは。私の青森県も一部第三セクターで今度やるということになって、私はこれはもう大反対しておるんですね。東北本線の青森から盛岡まで、きょうは副大臣も来ているけれども、盛岡までは我々が負担して、盛岡から先、鹿児島の方までは負担しない鉄道というのはあるんですかということで話をしておるんです。  いずれにしても、経済がおかしくなって今金利が安くなっているんですから、これは我々の責任ですよ。しかし、いつかは上がっていくかもしれませんが。ただ、他の民間会社競争をやっているわけですね。貨物同士の競争というのは、バスとかあるいはトラックとかいろんなものとの競争をしている。  この間、北海道のクロネコヤマトをテレビでやっていまして、営業するのに、規制緩和があって、なかなかどうにでもできる状態でなくて、もう最後には雪の中、山に荷物を背負ってうちを探して、とうとう探しあぐねて帰ってきたと。ああいうのを見ていると、やっぱりもう少し民間の会社になったんだという意識を持たないと、何か困れば、頼みたい、頼みたいということではなかなか国民の理解が得られないだろう。特に、道路整備によって競争がどんどん起きてきまして、私のさっきの第三セクターの、鉄道を利用するために残したんですけれども、バス会社は喜んでいるんですよ。一・四五倍か何かの運賃に設定して、上下分離にし、県も地域も負担しないとやっていけないと。それを聞いてバス会社が、今度は競争になれるぞといって一方では喜んでいるんですね。  あれだけ混雑しながらもお盆とかお正月に車で行くのは、やっぱり目的地に着いてからタクシーを利用しなくてもいい、それで全部やって、あの混雑の中でもこっちの方がいいという選択だと思うんですね。そういう世の中が変わってきているのに対してどうされるかということを、お聞かせいただきたいと思います。
  65. 梅原利之

    参考人梅原利之君) 先生のおっしゃるように、やはり民間会社ですから意識の問題、国鉄改革はある面で意識改革であったというふうに思います。私どもも、そういったスキームの中で、やはり民間会社としてこれから競争していくためにまず取り組んだのは意識改革であります。国鉄時代と比べて、それは百点ではないでしょうけれども、随分それはよくなったと。そういう中で、先ほど来申し上げていますように、労働組合の協力も得て増収活動もやる、そして合理化もやる、こういう形で来たわけであります。  先ほど来、運賃値上げの話も出ておりますが、私どもは現在、実質的には運賃値下げをしている状況、要するに、飛行機なり高速道路と、またマイカーも含めて熾烈な競争をしておりますので、今簡単に運賃値上げをすればむしろシェアを落として実収入を落とすという、こういう状況であります。  そういう中で私どもは、民間意識を持って、大変厳しいですけれども、それにめげず頑張っていきたい、このように考えています。それで、それについては何回も同じことを申し上げますが、やはり当初のスキームが大きく崩れていますので、そこのところをよろしくお願い申し上げたいということであります。
  66. 田名部匡省

    田名部匡省君 南谷参考人にお伺いしますが、指針については、私もやる必要があるのかと、これ。もう民営化しろしろといっては上からまだ何かごちゃごちゃ、しかし言ってみてもこれ独占企業みたいなものですから、民間になっても。ある程度はやっぱりそういうことが起きたときに、国民が不当に不利益をこうむるときにはこれはやむを得ないのかなと思ってこの間も質問したんですけれども、規制緩和の時代ですからなるたけ我々もその方向に持っていこうと。  それからいま一つは、空港と道路と鉄道が国土の均衡ある発展だというのでばらばらにもうどんどんやったおかげで猛烈な競争が起きた。これはいいことかもしれません、国民の立場から見れば。しかし、環境に優しいし大量に鉄道は物を運ぶしということからいくと、鉄道というのはやっぱりまだまだ国民の足になっていかざるを得ないだろう、こう思うんです。  そこで、私は最近、新幹線によく乗るんですけれども、お年寄りの人が非常に多くなっているんですね。もう定年になって御夫婦でしょっちゅう旅行する姿を見る。ただ、やっぱり簡易なエレベーターか、エスカレーターはどんどんできていますけれども、もう少しそういうのを、立派なエレベーターなんか要りませんよ、駅でちょっと上へ上がるだけですから。ああいうものをやってあげたらもっともっと旅行に行く人がふえるのかなと、体がちょっと悪くても、そんな感じを持っております。  もう一つは情報公開。いろんな事業展開をして、これはもうけなきゃならぬですからそれはわかるんですが、若干、旧国鉄時代のなにを少し引っ張ってやられておってはだめだなと。特に特殊法人が今見直しだというときに、やっぱりあの中だけでいろいろ会社をつくって、子会社をつくって、そこに天下りをして、そうやって結果的に高いものがついてそれが国民の負担につながるということだけはもう絶対やめていただきたい、こう思うのが一つ。  それから、国鉄の長期債務、私はこの間、反対したんですよ。六十年かかって四千億ずつ返済するというから、ことし生まれた赤ん坊が六十歳で返済になるような、自分たちでその赤字を負う。私は、運輸委員長か通信部会長のときですよ、株を早く売っちまえといって、篠沢局長ですよ、当時。何で持っているんだと、国が。随分、私と吹田代議士と近藤元次代議士と三人でやったものですよ。まあ、もう遅まきながら、今度はそういうことになったんですけれども。  いずれにしても、そういう国鉄の長期債務を私は運輸委員長のときに、新橋のあれを、バブルで高いときでしたから、売って借金をなくせと。いや、党の部会で反対されまして、土地が周りが上がるとか下がるとかといって、とうとうあのころは十一兆円ぐらいだったのがもう二十何兆にまでなって、金利が一兆円払えなくなって、たばこ一本一円取るとかなんとかといってこの間やりましたけれども、いずれにしても、皆さんの努力というのは、私は本当によく値上げせずに今日まで頑張ってきたと、こう思うんです。  そこの部分だけが僕はまだ役所の感覚でおやりになったら困る部分だなと、情報公開してきちっとやってほしいなということですので、そこについてお伺いいたします。
  67. 南谷昌二郎

    参考人南谷昌二郎君) 今の御質問に対してお答え申し上げたいと思いますが、まず指針の件でございますけれども、これは私どもとしましても、こういった指針が策定されるということにつきましては、これはない方がよろしいんではないかなという意見を持っておるところでございますが、ただこの指針の内容自体は、国鉄改革の精神をやはり完全民営化後もおまえたち十分考えていけという御趣旨だろうというふうに思います。  そういう意味では、私どもは、これは国鉄改革を今満十四年経過いたしまして、もう私たちはこれで独立会社なのでもうそれは昔の国鉄のことはおれは知らぬということは、これは言えないわけでありまして、やはりあくまで私どもはやっぱり国民の財産を引き継いだ、国鉄という営業路線を引き継いでその中で仕事をさせていただいているという立場の中で、やはり御利用者の御期待にこたえるということは私どもにとっても非常に重要な使命であろうと、こういうふうに思っておりますし、これはやはり社会的な公器であろうというふうに思っておりますから、そういう観点で私どもも、もちろん経営するつもりでございますので、そういう観点からすれば、指針に書いてあることは私どもも当然心がけなきゃいかぬ事柄であろうというふうに思っておりますので、そういう意味では、こういう指針の策定というのもやむを得ないのかなというふうに思っておりまして、なくても私どもはちゃんとこれはやるということでございます。  もちろん株式会社でございますから、やはり株主が貴重なお金を投資されたお金を預かっているというところは、私どもはこれは常に念頭に置きつつ、安全を留意し、利用者に対しておこたえするという経営をしたいと思っております。  それから、お年寄りの御旅行に対してのいろんなバリアフリーの設備でございますが、この点につきましては私どもも、特に関西で仕事をしておりますと、関西の大手私鉄に比べますとやや私どももおくれておるという事実は否めないわけでございますが、幸いにいたしまして、もう交通バリアフリー法が策定されましたし、また補助制度も明確にされましたことでもございますので、私どもが一昨年四月に公表させていただきました策定の考え方、つまり五千人以上の乗降のある駅につきましては少なくともエレベーターかエスカレーター、現在エレベーターを中心に実は進めておるわけでございますけれども、こういった整備を十年以内に完遂したいというふうに思っておるところでございます。  それから、情報公開でございます。これは、私どもも身内だけですべてやるということをやっていますと、これは子会社であっても、例えば流通業なりホテル業であっても競争に敗れてしまいます。そういう意味では、外の血も入れ、アイデアをちょうだいして、やはり独立企業としてきちんとやっていかなければ、親会社の補助を受けてやるような子会社はこれは役に立たないわけでありまして、こういう連結経営の時代でございますので、それぞれの部分部分がすべて強くなるということをこれからも心がけてまいりたいと、このように考えておるところでございます。
  68. 田名部匡省

    田名部匡省君 時間ですから、終わります。
  69. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 国鉄改革以降の諸問題につきましては、今ここで取り上げるまでもないことだろうと思いますが、きょうは参考人方々、本当に忙しい中御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  議論も大分進んでまいってきておりますので、なるべく重複のないような形で御質問を申し上げたいと思います。  一番最初に、岡田清参考人にお伺いしたいと思います。  岡田先生、本当に長い間国鉄問題についていろいろとお骨折りいただいてきておりまして、私自身も仕事上お世話になったこともありますし、非常に感謝している次第であります。先ほどのお話の中で、鉄道経営の今後の問題ということで交通市場における競争力強化の問題、これを指摘しておられました。各社それぞれについて相当違った感じで受けとめなければならない問題だろうと思います。特に三島各社の場合には、そうはいってもなかなか難しい点がありますなと、こういうことではないかと思います。  まず、三島の場合についてお伺いしたいと思いますが、三島の場合に、先ほど運賃をどうしていくか、それからもう一つは上下分離の問題も先生は言及されておられました。特に三島の場合で大きく問題になりますのは、ほかの交通機関との競争、これがかなり大きな問題ではないかと思います。バスそれから自家用車、こういったところで一つの大きな壁があると言った方がよろしいかと思いますが、そういった前提で、三島の場合の競争力の問題を岡田参考人はどう考えておられるか、お願いしたいと思います。
  70. 岡田清

    参考人岡田清君) 戸田先生も大変専門家でいらっしゃいますので答えにくいんですが、御案内のように交通政策の歴史というのは、四つの交通手段がイコールフッティングで同じ土俵の上で競争したらどうかという歴史がございます。  この点は日本昭和四十年代に大問題になったもので、御案内のように田中角栄自民党幹事長のときに自動車重量税が導入されまして、それの根拠はもう完全にイコールフッティング論で、俗に七五三と言われました。道路は建設費の七割しか負担していない、航空は五割しか負担していない、海運は三割しか負担していない、これを週刊誌で俗に七五三とこう言ったんですね。そういうことになりまして、ここでだんだん受益者負担主義がずっと貫徹するようになりまして、その一環として重量税が導入された。それから空港整備特別会計も、これも着陸料が倍にはね上がった時期もございます。しかし海運については、これはなかなか競争力はないということで、らち外に置かれました。  こういう歴史の中で、道路投資その他からいって、果たして上物であるバスの競争力をそういうふうな競争条件が果たして阻害をしてきたのかどうか、この検証はできておりません。ただ最近、公共投資のパラドックスという考え方が出まして、特に道路の場合で、実は地域開発のために道路建設を進めるんだという大義名分があります。これは国土の均衡ある発展論の延長線上で、そういう理解です。ところが、地域に道路がどんどんできますと、マイカーが普及して、マイカーでどんどん遠くまで買い物に行くようになる。そうすると、実は村が崩壊をするんですね。町、村が崩壊をします。そういうことで、地域開発地域の町、村をよくするために公共投資としてどんどんやってきたことが、実は、あなたの町は死になさいというふうに、やって逆効果が出る現象のことを公共投資のパラドックスというんです。これが全国かなりのところで出かかっております。  病院なんかの場合には、むしろ遠くのいい病院に行くという通院のサービスのような場合は、これはむしろ道路があった方がいい場合もありますので、パラドックスを余り金科玉条にするのはいかがかと思いますけれども、その意味で道路投資が今ちょうど行き詰まってきた。今までは地域開発に非常に貢献していたのがそうではなくなったと。これはもう地方議員の方々が深刻に意識し始めているんですね。  これは、ODAパラドックスの場合も本質は同じです。あの国に対していいと思ってやったことが裏の、別の効果が出てきちゃった。こういうことで、公共投資パラドックスが起こらないようにしませんと、実はこれは交通体系をゆがめてしまうんですね。そのことを、専門家の先生に対して大変恐縮ですが、まずは申し上げておきたいと思います。
  71. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 大変難しい問題を御指摘いただいたと思います。  私は、そういう点では、現にJR四国などの場合にはそういう点を切実に感じているんじゃないかなと、こう思っております。運賃の問題がありますが、運賃を上げようと思っても上げられない。バスその他との競争下に置かれているから、そこは一つの壁になっていると。  そこで、梅原参考人にお伺いしたいと思いますが、JR四国の場合に、たしか私の記憶に間違いがなければ、鉄道以外の他部門で余剰人員を支えてきております、この部門は大体軒並み赤字です、赤字だけれどもそれだけの人間は抱えていかなければならない、しかし何年かたてばこの余剰人員を解消できるでしょう、そうすれば経営的にはかなり楽になりますというお話があったかと思います。  一方で、先ほどのお話じゃないですが、経営安定基金の利子、これが非常に低くなってきてしまっているというようなところで、これからの見通しをどう考えておられるか。あらゆる努力を払ってやりますということだろうと思いますが、見通しをどのように考えておられるか、お伺いできればと思います。
  72. 梅原利之

    参考人梅原利之君) 私どもも、関連会社が二十四社ございます。先生がおっしゃいましたように、当初は赤字の会社が多うございましたけれども、最近、そちらの方もいろいろ、本体に体力があるうちにということで経営改善をやりまして、今、数社を除いて黒字になっております。  そういう中で、先ほど来申し上げておりますように、経営合理化をする中で、鉄道本体の方にも、合理化で人が少なくなりましたので、関連事業の方へ行っている人間を大分鉄道の方に戻しております。そういう中で、関連事業に行っている人間もかなり少なくなっているということで、いわばそちらの方にも含みは余りなくなってきたということであります。これは、やはりそういいながら、連結決算の時代ですから、我々は、二十四社と本体入れて二十五社が一緒になって黒字になるように頑張っているというところであります。  先ほど来の岡田先生の話にもありますが、四国の実情をもう一度しつこいようですが申し上げますと、高速道路は現時点、平成十二年度において全国整備率と並びました。そして、十三年度全国を抜きます。そのままずっと四国の方が全国より上回っていると。それから空港については、四つとも国営空港でありまして、松山と高松は二千五百メーターの滑走路でジャンボが離着陸可能、そして徳島と高知は現在二千五百メーターの工事をやっていると。そして船は、周りじゅう海でありますから、大変に効率的であります。  そういう中で私どものインフラが、もうしつこいようでありますけれどもJR六社の中で極めて低いということで、いろんなことで努力をします、そして支援も、何回も申し上げておりますようによろしくお願いしたいのでありますが、基本的にはここのところはイコールフッティングになっていない。やはり鉄道のインフラが非常に弱いというのが基本的なところじゃないかと。  これにつきまして、やはり上下分離方式も含めてここのところに公共的な助成をぜひお願いして、私どもも対等に競争ができるように、これは長期的な話になるかもわかりませんが、よろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。
  73. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 経営の前提として、一つ先ほどから要望が出ておりましたが、税制上の優遇措置、特に固定資産税の減免の話がありますね。これもいつまでもということではないんだろうと思うんですが、しかしそうは言いながら、今差し当たっての経営を考えると、これがなくなれば黒字経営はとてもとても難しいと。  そこで、その固定資産税の減免などについて、やはり経営が難しいからだけではいけないような気もいたしておりまして、その辺、その理由立てといいますか、何かしかるべき理由をはっきりとさせて主張していくというようなことが可能なのかどうか。その辺はどんなふうにお考えでしょうか。
  74. 梅原利之

    参考人梅原利之君) 何回も申し上げておりますように、JR発足のときのスキームは、もうどう頑張っても赤字が出るので、七・三%を見込んで経営安定基金が置かれる、いわば持参金をいただいていると。それがいわば担保できておればこの減免措置はもちろん要りません。ところが、この金利が今のような状態でございますので、これについて五年間延長していただきましたが、これについても、金利があのような形になると想定できませんので、恒久化についてよろしくお願いをしたいということを申し上げているわけであります。  なお、そういった法的なことにつきましては私が申し上げる立場にありませんが、私どもとしては、四国における鉄道というものは四国の皆さんに大変必要なものだというふうに思います。十四年間の経験を踏まえて、やはり四国の皆さんもここでレールが外されてしまったら大変だということを認識していただいたと思います。そういうふうな中で、こういったものについてお考えいただければいいのじゃないかなというふうに思います。
  75. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 そこで、上下分離の問題も関係ありますので、もう一つ新たな問題といいますか、別の問題をちょっと申し上げたいと思います。  実は、国鉄民営化のときに、将来、多分負担になるであろう、あるいは地方自治体その他が工夫すれば何とか経営が立ち行くのかというようないろんな物差しはあったかと思いますが、地方交通線の問題です。これは、今JRが抱えている赤字ローカル線とは全く別の問題でありまして、あのとき国鉄から切り離して、大体が第三セクターで地方自治体が受け継いだ形になっておりますが、そういったところが大体軒並み赤字になっております。  私が関係したといいますか、知っているところでは、例えば三陸鉄道。これは最初はパイロットプラント的に非常にいい成績を上げた。しかし、今やはり自治体のお荷物になっている。それから福島県に野岩鉄道というのがあります、新藤原から会津高原まで。それから会津鉄道というのがありまして、会津高原から会津若松まで。いずれも累積赤字で、何億円か、金額は大したことないと、こうおっしゃられるかもしれませんが、黒にならないんです。  そういった地方交通線、これについて、やはり上下分離とかなんとかいうことを考えますと、特に心配なのは、災害復旧を自分たちでしなければならない。そうなりますと、上下分離の話が出ておりますから、そことのバランスといいますか、そういう点から考えると、これは相当の配慮が要るんじゃないかと思います。そういった点について岡田参考人はいかがお考えか、お聞かせいただければと思います。
  76. 岡田清

    参考人岡田清君) 戸田先生の非常に行き届いた御質問をいただきました。  まず、福島県につきましては、これは会津鉄道の問題であるとかいろんな問題を私も随分取材を受けました、どういうふうにアプローチしたらいいのかということで。今、具体的に申し上げるあれはございませんけれども。  地方交通線問題というのは、今第二段に入っているかと思います。第一段と申しますのは、先生の御指摘の三陸鉄道のように、もう一度国鉄から分離して立ち上げて独立してやれるかどうかということで、政府もかなり応援してスタートさせた。それが、先生の御指摘のように三陸鉄道もかなり厳しいと。  私もせんだって石川県輪島線の撤去問題に協力してまいりました。これも、輪島高原鉄道ということでいわば第三セクターでやれば、あの辺の、能登半島をカバーできるということでスタートいたしました。ところが、そこでなかなかうまくいかない。穴水から輪島間を取るという、県としてはやむにやまれぬ断腸の思いで、それでおやりになったわけで、これが恐らくこれからぽろぽろ出てくると思います。そのときに一体どうするかということで、先ほど来話がありましたのは、補助の問題とか上下分離の問題とかということで、いろんなアプローチがあります。そこら辺の方針をやはり早く確立することが非常に大切だということを思っています。  そこで、先生の御指摘いただいた点で大変重要な問題が災害問題です。一たん災害が起こってしまうともう復旧はできない、それだけの負担力がない。それを契機にしてやめてしまうのか。筑豊線とかあの辺にもいろいろ問題がありましたが、そこら辺についても、今後とも政府方針としてどうするのかということをしっかりと確立すべきではないかと理解していると。お答えになりませんけれども、とにかく全く先生と問題意識としては同じでございます。
  77. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 ありがとうございました。
  78. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 二院クラブ・自由連合の島袋です。  本来であれば、JR七社が完全に今、純民営化されるということが望ましいと思います。しかし、営業、企業関係の格差が出てきたというふうなことでやむを得ない措置かと思いますけれども、そこで南谷参考人にお伺いいたします。  国鉄改革の趣旨にのっとった経営という要請とそれから純民間会社としての採算性重視という要請の、二つの要請が調和されなきゃならないと思いますけれども、この点についてどういうふうな形で今後進めていかれるのか。もう一つは、これは可部線の可部—三段峡区間四十六・二キロメートルの存廃問題についてはどのように御認識されているのか。この二点についてお伺いします。
  79. 南谷昌二郎

    参考人南谷昌二郎君) 国鉄改革の経緯と企業としての採算性の問題という御質問に、まずお答えしたいと思います。  民間企業である以上は利益を上げるのは当然であろうと思いますが、その一方で、あらゆる企業が、どの企業であろうとも多かれ少なかれそこにおいてやっぱり社会の公器としての存立の意義というか、役割とか使命というのがあろうかと思うわけでございまして、そういう観点の使命なり役割という考え方の中に、私どもはやはり国鉄改革の経緯の中で私どもが誕生したんだということはやっぱり原点としてこれは消えることのないものだろうというふうに思っております。  そういう意味で、それを尊重しつつ、やはり民間企業でありますから、利益をとにかく稼ぐというよりも、やはり利益、黒字を出していくということが民間企業としての存立のあかしであろうというふうに思います。これは義務であろうと思いますので、そこのところは私ども経営を預かる者として、株主の負託にこたえてそれをきちんとやっていくと。そのためにもやはり御利用の皆さんにきちんと御利用いただかないと、選択していただかないとこれは利益もないわけでございますので、そういうことを追求していけば必ずこれは、私どもはいろいろな皆様方の御期待にこたえ得るのではないかなというふうに考えておる次第でございます。  それから、もう一点の可部線の問題でございますけれども、実は可部線の可部以西につきましては、JR発足以後、急激に実は御利用が減っていったわけでございますけれども、その背景には、やはり高速道路のインターチェンジができてマイカーが大変普及したというようなさまざまな事情がございます。私どもも、鉄道部というものをつくりまして、徹底したコスト削減をやりながらやってまいったわけでございますけれども、かなり事情が厳しいと。  その一方で、広島—可部間は電化区間でございますし、都市化が著しく進んでおる。そこで、可部との境目で極端に様相が変わっているという中で、ここは私どもとしてはバス転換にふさわしい、むしろ鉄道の特性が発揮しがたいところだと。実は、並行する道路もその後かなり整備されたということもございまして、私どもとしてはこれはバスに転換する方がなお地域の足として機能的になるんではないかなということを考えまして地元に提案をしたところでございまして、実はいろいろと協議を重ねまして、地元に提案をさせていただいたのは平成十年九月でございますのでもう三年近く前になるわけでございますけれども、その後地元との協議を重ねまして、地元からも、ダイヤが減ったから、不便になったから客が減ったんじゃないか、だから何とか試行をしてみないかという御提案もありましたので、実は百四日間、昨年臨時のダイヤを組みまして試行をいたしました。この際に、私どもとしましては、JR発足当時の輸送密度の八百人というラインでもって、これを一つのメルクマールとして試行を行ったわけでございます。  結果といたしましては、私どもが目指したメルクマールの八百人には至らないで七百五十九人という数字だったわけでございますが、そういうことからすれば、やはりもう一度ここはさらに期間を延長して再度御利用の実態を見るというテスト期間を今回設けて、現在試行中でございます。  いずれにしましても、このような努力を重ねまして、地元と円満な解決を図ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  80. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 丁寧な御説明ありがとうございました。  それでは、梅原参考人にちょっとお伺いします。  まず、純民営化を希望しておられるようでありますね。そこで、どのような条件整備されて純民営化ができるとお考えなのか、そしてその条件整備は可能なのか、そしてもし可能であればいつごろまでにその可能性というものを見出していくのか、その点についてお考えをお聞きしたいと思います。
  81. 梅原利之

    参考人梅原利之君) 私ども国鉄改革の精神に従って完全民営化を目指しております。改革はそもそもそういうものであります。  そういうことで、平成九年につくりました中長期計画において十三年度完全民営化を目指すといって頑張ってきたわけでありますが、その間のいろいろな増資活動とか経営合理化その他によりまして、平成十二年度までは完全民営化についての一応収支目標は実は達成していたわけであります。  しかし、平成十三年度を見送ったということは、まず先ほど来申し上げていますようないろんな高速道路などとの競争、そういった中で収入の見通しが少し立たない、下げどまりの見通しが立たないと。もう一つは、何回も申し上げておりますように、金利の動向ですね。金利が七・三であれば我々は文句ないのでありますが、金利の動向が非常に不透明であると。そういうのと連動していますが、固定資産税の減免措置が本年度で切れる、その来年度以降の見通しが立たないということで、平成十三年度完全民営化、上場を断念したということであります。  しかし、私どもの気持ちはあくまで完全民営化であります。それについては、まず私どもができる努力を全力を挙げてやるということ。だから、先ほどと裏返しの話になりますが、そういった中での、もともとそういうスキームでありますから、そういうスキームの中で御支援をいただきたいということを繰り返し申し上げておりますが、そういった御支援についてよろしくお願い申し上げたいということ。そういう中でもって十四年前に発足したJR、その中で我々も含めて完全民営化をするべきであるという、そういった規定が盛り込まれておりますし、我々もその前提で頑張っているということであります。  したがって、そういうふうなことが見通せた段階で、一刻も早く私ども完全民営化を果たしたいというふうに考えております。
  82. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 次は、岡田清参考人にお伺いします。  先生の資料に、JR七社のうち三島会社JR貨物は苦しい経営に見舞われたと。三島会社は赤字と黒字の境界ぎりぎりのところにあり、平成八年一月にはやむなく運賃値上げに踏み切った。その理由は、言うまでもなく、各社とも需要の薄い市場をベースにスタートしたことに加え、バブル崩壊以後の低金利によって一兆四千億円の基金から上がる金利収入が大きく目減りしたことである。低金利時代に入って基金機能が失われてしまったことは全く予想外のことだったと。他方、貨物会社は、平成三年のバブル崩壊以後、平成五年から赤字に転落し、既に三年に及ぶ赤字が続いている。平成年度決算も赤字を回避する見込みは立っていない。深刻な経営危機になっているというふうな御指摘、そのとおりであると思います。  そこで、JR貨物の健全運営ですね、それが成り立つためにはどういうふうな方策が必要なのか、その辺について、もしおわかりであれば御説明願いたいと思います。
  83. 岡田清

    参考人岡田清君) 先生の御質問、大変難しい問題でございますけれどもJR貨物の内容というのは昔から、大量輸送系の車扱い輸送と、それから雑貨系の昔は混載輸送と呼んでおりました、こういう二つの流れがあります。二つの中で、中でも混載輸送系、雑貨系の貨物が相当トラックの方に行ってしまったと。それをコンテナ化で吸収しようとしたわけですが、これがなかなか思うようにいかない、そこにJR競争力の低下のかなり大きな原因があると理解しております。  あわせて、先ほどもちょっと申し上げましたように、昭和四十年代からストライキの頻発によって荷主の信頼を完全に失った、この点も、それはどの程度だと言われるとなかなか証明が難しいんですが、それは恐らく共通の認識になっているかと思います。  そこで、問題はこれからじゃどうするのかということになりますけれども、今は旅客会社の御協力のもとでアボイダブルコスト、つまり線路費用は負担しないという条件で、そういう条件下で黒字を出すことに今必死なわけです。既に八期、十二年度までは赤字が続きました。  問題は、今年度平成十三年度黒字転換して、社員がみんなでやる気を起こして、本当に黒字になってよかったということで、顔色がもう生き生きとするぐらいに企業としての活力をつけることが今最大のテーマだと理解しております。それが今年度、その意味で試金石で、ある意味ではJR貨物の生きるか死ぬかの分かれ道だというふうに理解しております。その後の問題は、別途やはり思い切った方策を考えるべきだと理解しております。
  84. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 ありがとうございました。  岡田参考人にお伺いします。  他の労働組合と異なる国労固有の問題というものは存在しておるのですか。存在するとすれば、それはどのように解決されるべきなのか、その辺についてお考えをお聞きしたいと思います。
  85. 岡田尚

    参考人岡田尚君) 企業内に幾つかの労働組合がいっぱい併存していてそれぞれの考えがあることは、これはいたし方ないことだと思うんですけれども、そういう意味で、国鉄労働組合固有で抱えている問題というのは、私は特別なものとしてはやっぱりないと思っています。ただ、現実的に、国鉄の分割・民営化のときに国鉄労働組合や全動労とかを中心に行われてきた現実というのは、やはり私は、客観的にいえばこれはやっぱり差別であったという認識を持っております。  ですから、国鉄労働組合が先に何かの問題を持っていたということよりも、そこに出てきた事象、これを解決するには、やはりそれは、今国鉄労働組合はそういう立場でやらざるを得ない、自分たちのそれぞれの組織の組合員が置かれた現実を解決するためにはやらなきゃいかぬ、そういうふうに思います。
  86. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 終わります。
  87. 今泉昭

    委員長今泉昭君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、長時間にわたり御出席をいただき、有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三分散会