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井上美代君
井上美代でございます。
ことしは二十一
世紀の冒頭の年であり、長期的な視野で今後の
国際関係を見る必要があります。今日の
国際社会の秩序維持をいかに確立するのか、そのかぎを握るのが
国連憲章であるというふうに
思います。
今、
国連憲章の目指す
方向を否定する者はだれもいないというふうに
思います。
国連憲章の実現の妨げとなったのは米ソ対決でした。ソ連が崩壊し、ワルシャワ体制もなくなった今、改めて
国連憲章の精神に沿った
安全保障体制を実現していく
重要性を強調したいというふうに
思います。
参考人は、「
国際社会に妥当する法秩序を見出す困難さから、人によっては
国際法の存在というのはいわば奇跡に近いんだと言う人もおります。」、こういうふうに述べられましたけれども、この奇跡に近い秩序の確立が歴史的にどのように確立され、これを今日どのように生かし、そして発展させていけばよいのかということだと
思います。
歴史的に見れば、戦争は秩序維持のための強制
手段で、戦争が合法化された
時代、さらに
大国が自国の
国内法や秩序を
世界に拡大しようとした
時代を経て、
国際連盟、さらには今日の
国連憲章、そして
国連がつくられました。
国連というのは、
国際連盟の失敗を教訓に生かして、そしてかつ第二次
世界大戦の苦い経験を踏まえて
国際連盟にかわる新たな
国際組織として創設をされました。今日の
国連の第一の目的というのは、
国際の平和及び安全を維持することです。
国連というのは主権国家間の約束を持った
国際組織、
国連憲章で武力による威嚇、武力行使を禁止し、その禁止に違反した国に対して制裁を加える集団的
安全保障の組織です。この集団的
安全保障ですけれども、
国際連盟時は規約に違反して戦争を行ったかどうか、その認定は個々の加盟国にゆだねられていました。しかし、
国連では
安全保障理事会が平和の破壊があったかどうかを認定し、集団的な措置の発動を決定するということです。
国際連盟と異なって集団的措置を組織的に発動される仕組みになったということです。
私は、湾岸戦争について振り返って問題点を述べてみたいというふうに
思います。
一九九一年、イラクがクウェートへの侵略を行いました。この侵略を糾弾し、イラクの無条件撤退を求める点では
世界の世論は一致していました。しかし、これを
経済制裁などの平和的
手段で
解決するのか、軍事的
解決に進めるのか、大きな問題になりました。
国際紛争の際、何よりも
国連憲章の第一章の「目的」、第六章の「
紛争の平和的
解決」などに照らして粘り強い
取り組みを行うべきでしたが、米国等は
国連の名を使い、実際には
国連から独立した戦争を行い、多くの人命の犠牲、国土と
環境の破壊等が行われました。このようなやり方には大きな問題があったと
思います。
さらに、ことし二月十六日、
アメリカはイギリス軍と共同してイラクの首都バグダッド周辺をミサイル攻撃いたしました。これはブッシュ大統領が就任後初めて許可した他国への攻撃でした。米英軍機へのレーダー照射を理由にイラクへのミサイル攻撃を行ったり、イラクの南部と北部に飛行禁止空域を設定したりしておりますが、根拠となる
国連の
決議も、そしてまた
国際法も全くありません。
アメリカはそのほか、九六年、九八年にも武力攻撃を行っております。
日本共産党は、九一年三月十五日に湾岸戦争からの教訓と平和・軍縮の提案を行いましたが、その内容は、
一つは
民族主権の侵略に対する厳格な対処、そして中東における公正な平和の確立のためパレスチナ問題の
解決を図る、そして
世界的規模での軍縮と軍事ブロック解消の
努力、
国連が平和機構としての
役割を果たす、そして憲法九条を持つ
日本がそれにふさわしい
役割を果たすことなどです。この中で
国連の
役割について触れていますが、今日、
国連自身が
国連憲章と
国連決議に照らして妥当な
活動を行っているのかどうかについての検証だとか検討を行うことが改めて重要になっているのではないかというふうに思っております。
コソボ問題に関連してですが、NATO軍はユーゴに対する空爆を行いました。この
調査会で参考人に対して見解をお聞きいたしました。多くの参考人からは、
国際法に違反している、問題であるなどの見解が述べられました。
私が問題としてとらえたい点は、浅井基文参考人が、
アメリカがユーゴ空爆に踏み切ればそれは明らかに
国連憲章違反という本質が露骨にあらわれる結果を招く、したがって、
アメリカは
安全保障理事会をバイパスしてみずからの行動を全く別の理由、すなわち
人道、人権、民主主義というような理由で正当化するという
手段をとったというふうに考えざるを得ないと、このように指摘しておられる部分です。
一方、元
国連大使の波多野敬雄氏ですけれども、波多野さんは「ユーゴの問題について言及すれば、もしかしたらば新しい
国際法ができつつあるのかもしれない。従来の
国際法からいえば、NATOのユーゴ・コソボ攻撃は明らかに
国際法違反でございますけれども、しかし人権の問題ということになるともう国の中がおさまらない」、こういうふうに述べられました。他国の
人道、人権、民主主義を口実に軍事介入することは明白に
国連憲章に違反していることであるにもかかわらず、これを新しい
国際法ができつつあるのかもしれないなどとして、
国際法違反の事実を絶対にあいまいにしてはならないというふうに考えるわけであります。
憲章の二条の一項、主権平等の原則との関連で、二条七項、
国内管轄事項に対する不干渉原則というのがあります。「これも
国内事項の中で例えば重大な
人権侵害の継続
状況は、むしろ
国際関心事項であるとして
国連が取り組むような解釈がなされてきている」との参考人の
発言がありましたが、まさにこの条項の具体化が今重要だというふうに考えております。
次には、
NGOの
強化の問題ですけれども、今日、
世界の
環境破壊、それから
地域紛争、
人権侵害、飢餓、
貧困、そしてまた
国際テロ、
難民、エイズなど、グローバルな
対応が本当に必要になっております。きめ細かい柔軟な
活動ができて、そして機動性に富んだ、国家や
国際機関とは違う
活動のできる
NGOの参加が重要になってきているというふうに考えております。
調査会に提出されました資料にある弓削昭子氏の論文ですけれども、ここの中で、「
NGOを含む市民
社会の
活動は近年めざましく、その
影響は国家や
国際機構を含めた
国際社会を動かすものとなってきている」、このように言っておられます。そして、「二十一
世紀にむけてさらに増大する」、こういうふうに述べておられます。
国連には、設立当初より、
国連憲章七十一条にあるように、
国連の
経済社会理事会は、「民間団体と協議するために、適当な取極を行うことができる。」、こういうふうになっております。
NGOの数は、一九九九年、合計で一千七百一が
NGO協議資格を与えられ、
活動をしております。
安保理では
NGOの参加は認められていませんけれども、
意見を求められた例はあります。
国連では、
国連と
NGOとの
協力関係を
強化することを目的として、一九七五年に、
国連事務局内に
国連NGO連絡業務部を設置、そして
NGOとの連絡、交流をより緊密にするために、
国連事務局の多くの部局では
NGO連絡調整員や担当官が任命をされております。
一九九〇年代の
国連世界人権
会議や
世界女性会議など、
政府代表で構成する
政府間の
会議と並行して
NGOのフォーラムが開かれ、
NGOレポートが
提言として
政府間
会議に提出され、
NGOは大きな
役割を果たしています。これらの
会議に私も参加いたしました。
武者小路参考人は、人権をよりどころにして結ばれた南北の市民運動の大同団結には
一つの実例があると、このように言われて、
国連の
世界女性会議を例に挙げ、その
成果として、
国連を対話の場にして到達した統一見解、
女性の権利は人権であるという命題と、そして
女性に対する暴力は
人類に対する罪であるという、二つの命題にまとめられると述べておられます。
これらの
成果の上に立って、国家、
国際機関も
NGOも、また軍事
紛争中の組織的なレイプも家庭内の夫からの暴力もすべて禁止しなければならないと、このように発展してきているのであります。
ちなみにこの四月、
日本でも配偶者からの暴力防止及び被害者保護法、いわゆるDV法が超党派で成立をいたしました。今後さらに、国家や
国連が
NGOとの連携を強めて発展させ、
政策策定や
国連で提唱された目的への共同行動を進めていくことが重要であると考えております。
そしてもう
一つは、
調査会で
日本の
常任理事国入りの問題について質疑がありました。
私は、
日本の
安全保障理事会
常任理事国入りには反対です。参考人の
発言でも、今の
国連憲章の規定では、
常任理事国は自動的に軍事参謀
委員会のメンバーになるということになり、しかもその軍事参謀
委員会というのは、
国連が行う軍事行動において非常に重要な
役割を果たすことが予定されているという点におきまして、仮に今後の
安全保障理事会の
改革が第四十三条以降の軍事参謀
委員会のメンバーになる形での
安全保障理事会
常任理事国入りというのは、憲法に抵触する問題との
発言がありましたが、
日本は憲法上軍隊を持つことができない、その
日本が
国連の軍事力行使の指揮に責任を負うことになることは、憲法の平和原則に反するというふうに考えております。
PKOについてですけれども、自衛隊は
PKOということで米国の行う
紛争にかかわっていこうとしております。軍事力による
国際貢献は憲法上認められませんので、私、反対でございます。
そして、先ほど
国連のミレニアム・
サミットに向けての
井上会長試案を
報告書に盛り込むということを
発言されましたが、あくまでもあの
提言は
試案であり、公式の
調査報告に入れることには反対であります。
この間、
調査会をずっとやってまいりまして、私は非常にいろいろ勉強させていただきました。この
参議院であればこそこれだけのことができたというふうに思っております。
今後の問題も一言加えさせていただきます。
今後は、やはりこのようないろいろな
課題を抱えておりますので、ぜひ
調査を続け、しかも参考人などを大いに呼んで勉強させていただきたいというふうに思っております。
以上です。