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2001-02-21 第151回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十三年二月二十一日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  二月十九日     辞任         補欠選任         松 あきら君     沢 たまき君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         関谷 勝嗣君     理 事                 山本 一太君                 今井  澄君                 高野 博師君                 井上 美代君     委 員                 泉  信也君                 入澤  肇君                 亀井 郁夫君                 田中 直紀君                 畑   恵君                 松谷蒼一郎君                 山内 俊夫君                 山下 善彦君                 木俣 佳丈君                 佐藤 雄平君                 広中和歌子君                 本田 良一君                 柳田  稔君                 沢 たまき君                 緒方 靖夫君                 高橋 令則君                 島袋 宗康君    事務局側        第一特別調査室        長        鴫谷  潤君    参考人        ニューカッスル        大学教授     ラインハルト                 ・ドリフテ君        早稲田大学大学        院教授      川村 亨夫君        法政大学法学部        教授       鈴木 佑司君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際問題に関する調査  (「二十一世紀における世界日本」のうち、  国連の今日的役割について)     ─────────────
  2. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告をいたします。  去る二月十九日、松あきら君が委員を辞任され、その補欠として沢たまき君が選任されました。     ─────────────
  3. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 国際問題に関する調査議題といたします。  本日は、本調査会調査テーマであります「二十一世紀における世界日本」のうち、国連の今日的役割について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  本日は、ニューカッスル大学教授ラインハルト・ドリフテ参考人早稲田大学大学院教授川村亨夫参考人及び法政大学法学部教授鈴木佑司参考人に御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人におかれましては、御多忙中のところ本調査会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本調査会では、国連の今日的役割について重点的かつ多角的な調査を進めており、本日は、国連改革我が国対応について、参考人から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず、ドリフテ参考人川村参考人鈴木参考人の順でお一人二十分以内で御意見をお述べいただいた後、午後四時三十分ごろまでを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。  なお、意見質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まずドリフテ参考人から御意見をお述べいただきたいと思います。ドリフテ参考人、よろしくお願いします。
  4. ラインハルト・ドリフテ

    参考人ラインハルト・ドリフテ君) 参考人としてお招きいただき、ありがとうございました。  それでは、私の意見を述べさせていただきます。  日本常任理事国入り資格の有無にかかわらず、安保理改革にはさまざまな障害がある。  根本的な問題は、ほとんどの国連加盟国にとって安保理改革といってもそれほどの違いを生みません。現在のわずかな常任理事国からまたほんのわずかふえるというだけで、大半の加盟国にとっては特に何の利益も及ぼさないということです。  そして、次の細かい問題点がありますが、常任理事国は何カ国になるのでしょうか。そして、この非常任理事国のみを拡大するということについてはどうですか。そして、どの国がそれぞれの地域代表することになるのでしょうか。そして、拒否権改正可能性はどうですか。そして、この安保理政策作業慣行透明性問題点です。  ドイツ常任理事国候補になることは、日本のそれと比べればまるでもろ刃のやいばのように強力です。その意味で、ドイツ安保理改革の必要を挙げていますが、一方、国内外務大臣、緑の党のメンバー社民党連立政党など、公からは全面的な支持を得ていません。ドイツ人々は、ドイツヨーロッパ内での十分な使命があり、大きな役割を担うことができると考えています。例えば、ロシアの統合、バルカン戦争旧東ヨーロッパ諸国経済回復NATO拡大EU拡大という問題ですね。また、ドイツ常任理事国入りは、ヨーロッパから既に二カ国が常任理事国入りをしているため、他の加盟国にとって余り魅力的なものではありません。  さらに、イタリアドイツ常任理入りに反対しています。かわりに、イタリアEU加盟国の間に共通の外交政策安保政策がないこと、そしてフランス、イギリスが常任理事国権利を放棄しないということがはっきりしてから、牽制的な作戦行動EUの一議席確保を提案しています。  日本常任理事国入りは、他の国連加盟国からどのように見られているのでしょうか。  まず、PKO活動全面的参加常任理入り法的義務ではないとしても、政治的前提条件です。加盟国のどの国も、日本PKO全面的参加なしで常任理事国入りすることを認めることはないでしょう。アメリカの上院も容認しないでしょう。現在のところ、日本はゴラン高原のPKO活動PKO規制に違反しています。条件つきでのPKO参加は不可能です。金銭を出すことは自国国民の犠牲を覚悟することの代償にはなりません。これでは、いわゆる平和のただ乗りフリーライダーと見られてしまいます。  国内での長期にわたる議論の末に決断されたドイツPKOへの全面的参加は、日本国内では法律を改正すべきとのさらにネガティブな印象を与える結果となりました。しかし、中国ロシアのように、最小規模でのPKO参加は可能です。  日本財政的貢献を強調していることは、ほとんどの国連加盟国にも理解されています。しかし、それは常任理事国の席を、会社の株式を保有するようにお金で買おうとしているとの批判を買うこととなり得ます。日本自発的拠出金削減や、アメリカのように一方的に分担金削減するということは、例えば河野太郎衆議院議員の提案ですか、それゆえ逆効果です。さらに、来年度の三%のODA削減国連分担金比率一%の削減は、過去十年引き続いている日本経済低迷のイメージをさらに印象づけるだけでしょう。そして、二〇〇一、東京都の国連大学に対しての予算貢献の大幅の削減は同じ悪い印象を強調します。  日本常任理事国候補者としての地位は、政治的リーダーシップが乏しいため、国内で支持されてないように見えます。その地位は、日本外交官外務大臣のみによって支えられてきたように見受けられます。候補者となるべき政治姿勢が、国内でも、また国外に対しても示されてはいません。  日本常任理事国になればぜひ実現したいという具体的目的が明確でありません。あるいは常任理事国でなければならない理由もはっきりしていません。日本は国の内外に、常任理事国入りしないとなし遂げられない目的とは何かを説明しなければなりません。  日本立場は、いまだにアメリカに近づき過ぎているという印象があります。日本はまだ説得力のある日本的な外交の顔を示しておりません。日本は重要な国際的問題に関して、アメリカの見解に従っていると見られています。どの加盟国アメリカに対して、日本という第二の拒否権を与えたくないのです。  日本常任理事国入り可能性を高める要素には何があるでしょうか。  まず、ドイツのような国連PKO交戦規定に即したPKOへの全面的参加です。PKOミッションメンバーはすべて、攻撃を受けた際には、自分だけでなく、ともに行動する他の諸国部隊、歩兵、兵たんにかかわらず、の兵士を守ることが義務づけられています。  二番目は、政治トップ指導力によるさらに強力な政治的サポートも必要です。  三は、日本経済的に低迷しているという国際的認識が余り定着し過ぎないうちに動くべきです。  ドイツは、時として米国と意見の一致を見ないこともありましたが、これまでヨーロッパの中で指導的な役割を積極的に果たそうとしてきました。一つ前提として、ドイツは過去に立ち向かう意志がありました。これまで述べた理由によって、ドイツ常任理事国入り可能性は高くありませんが、このような理由ドイツ常任理入り立場は他の加盟国にとってより説得力のあるものとなっています。  国連に対する中期長期的戦略。  まず、日本は、ただ単に常任理入りすることや日本分担金に対する国外の期待にこたえるというためだけでなく、なぜ国連日本国益にとって重要なのかと国民に広く理解され支持されるような中期長期的戦略を組み立てるべきであります。そして、そのような国益に基づいた戦略と原理は、国内国外に明確に説明されなければなりません。  そして、国連に対する中長期的戦略は、日本常任理事国としての資格を支えるものとなるでしょう。こうした戦略が、単なるキャンペーンの事実を残すのではなく、日本国連のインディスペンシブルな加盟国である、つまり日本がいないとだめという説得力を築いていくものであるからです。  そしてそれは、もし日本常任理事国入りを果たして非常任理事国に選出される努力を必要としなくなった後でも、日本財政的支援削減するのではないかという多くの発展途上国の懸念を和らげることにもなります。  そして日本は、西洋的思考東洋的思考の間に位置する第三の道をうまく見出す戦略を練るべきでしょう。日本は、考え方の違いから国際的に存在する多くの問題に対する橋渡しを試みるべきではないでしょうか。しかし、ぐらぐらした橋ではだれも説得することはできませんが。  今度は戦略内容について。概念的貢献。  国際社会は、資金だけではなくアイデアや人を必要としています。PKO人的貢献財政的貢献と引きかえにすることができないことと同様に、貧しい国々発展世界規模の問題を解決するためのアイデアお金に置きかえることはできません。財政的貢献は、大変重要ではあっても一つ要素でしかないのです。アイデアや人的な貢献が、低減している日本財政を埋め合わせるでしょうし、過去の大国という印象をぬぐい去ることにつながるでしょう。  具体的な例は、人間安全保障。  日本は、経済的、社会的、政治的、そして安全保障を含んだ総合的な方法で、個人の要請に取り組むためのアイデア発展させたり、国連改革に当たるべきです。しかし、人間安全保障という考え方によって、日本PKO必要性から逃れる手段ではなく、全面的に参加することになるのです。飢饉で死にそうな人を救えたとしても、紛争で死んでしまったら何にもならない。つまり、輸送部隊銃撃戦でその行方を阻まれれば、国連は飢えている人々を救うこともできないのです。  結論として、国益を達成するために日本はただ単に常任理入りすることを望むのでなく、これにふさわしい適切な戦略を築いていかなくてはなりません。それによって、常任理入り可能性を高めるだけではなく、国益にもこたえることができます。そして、それは、建設的で積極的な国連加盟国となることによってのみ実現されることです。  これによって、日本憲法前文で示している内容に沿うことにもなります。「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」。  常任理入りの要望はそんなに早く実現は不可能かもしれません。でも、もしそのための努力の間、根本的な日本国憲法の精神が生かされることになればとてもいいことだと思います。  以上です。  ありがとうございました。
  5. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  次に、川村参考人から御意見をお述べいただきます。川村参考人
  6. 川村亨夫

    参考人川村亨夫君) 早稲田大学川村でございます。本日この場にお招きいただきまして光栄に存じております。  私の考えは一枚の紙にしております。「国連改革安保理改革)と我が国対応」ということで一枚にしておりますので、それを見ながらお聞きになっていただければと思います。  五つの項目に挙げておりますが、最初のⅠとⅡ、「二十一世紀国際社会が抱える課題」、「国際社会が示す四つベクトル」、これは実はサミット、二国間の会議ASEAN等リージョナル地域会議等で繰り返し話されている課題とその方向性というものでございます。  かいつまんで申し上げますと、「二十一世紀国際社会が抱える課題」、六つほど今挙げられております。  国際安全保障。これは、二十世紀反省を込めて、戦争が起きても局地戦に抑え込み世界大戦に広がらない危機管理を行うということで、国連本部の主たるコンサーンといいますか関心はこの点にあると。  では、具体的には何かといいますと、それぞれの紛争国で起きる宗教民族紛争をどう対応するか、そのために国連PKOをどうやって国連憲章のもとで整合性を持たせて展開していくか、そして近年求められております貧困の撲滅と予防外交ということ、そして難民が生じた場合にそれにどう対応するか、こういったことが問題でございます。  二番目は軍縮でございます。二つございます。核管理国際監視下に置くというプロセスNPT等でやっていく。そして、最近は生物化学兵器、イラクの問題等いろいろございますので、こうした大量破壊兵器が出てきましたから、これをコントロールするにはどうすればいいかということが国連でいろいろと論じられております。  開発は、南北問題解決には新しいアプローチが必要なのではないかということで、今までダム、道路等のインフラにとかく関心が来ましたが、最終的には女性の地位向上とか出生率問題等を含めまして、そういったソフト面でいろんな新しいアプローチが必要ではないか。  そして、南南問題というのは、この数年とみに関心が持たれる問題でございまして、南北問題ではなくて、実はアフリカの場合ですと旧宗主国アフリカ関係等で、例えば日本でもそうですが、日本と例えば北関東の関係等のようになかなか横の広がりができない。旧宗主国、また日本の場合ですと東京と地方の関係というように、そういった部分で縛りがある、横の連携ができないために発展がおくれているんじゃないかというようなことが開発の問題で言われております。  人権の問題は最近とみに関心が高まっておりますが、どういう考え方国連がしておりますかといいますと、人種、性別などのあらゆる差別に関し国際条約をつくり各国に批准させてその違いをなくしていく。つまり、ある国に入りましたらそれは人権と認められるが、隣の国に入るとそれは人権として認められないというようなことがあってはならないという意味で、国際条約をつくり各国に批准させてその違いをなくしていくということでございます。  環境は、申すまでもなく、環境開発の調和ということでサスティナビリティーというコンセプトのもとに地球温暖化等でいろんな国際会議が行われていると。  最後に国際通貨問題は、一九九七年のアジア通貨危機を機にヘッジファンドといったものについて何か規制があってもしかるべきではないかということ。それともう一つIMF世銀融資体制の見直し。つまり、構造調整政策途上国に押しつけて国内の引き締めをやる、ところが貧困拡大にそれがかえってつながっているのではないか。貧困拡大がその国内で三倍もの格差が開きますと、どうしても紛争が生じやすいという統計が出ております。ということは紛争が発生する。しかし、紛争が発生しますとIMF世銀は関与しない、それは一気に国連安保理の方に議題が持っていかれるという意味で、関連性がないということが今非常に問題になっておるわけです。  この国際社会課題をどのように解決するかということが、国際社会が示す四つベクトルという二番目でございます。  つまり、サミット、二国間会議リージョナルASEAN等会議で話し合われる場合に、この問題はグローバルな問題なのか、はたまたリージョナルな問題なのか、はたまた二国間で解決すべき問題なのかという、こういうはっきりとした態度が必要ということです。  二番目のフラグメンテーションというのは、価値観多様化をもって問題を解決しようとしているのか、自国価値観だけを押しつけていないかというようなことがいろいろ言われておるわけです。  三番目のデモクラタイゼーションというのは、民主化されたプロセスの国をつくっていくと戦争を生じにくいといういろんなデモクラティックピース理論という理論がこの十年ほど欧米で盛んになりまして、つまり議会のチェック、行政府のチェック等があれば独裁者を生まない、独裁者がいれば簡単に戦争のためのスイッチを押すと、こういった部分を防ぐために民主化された国々を援助するシステムはないかということを今模索しているわけです。  四番目は、マージナライゼーションというのは、マージナライズされた人々、つまり国内でどうしても宗教的、民族的にマージナライズされた、疎外化された人々が生ずると。それをどう解決していくかということがつまり紛争国宗教民族紛争にとって重要な問題であるということでございます。  ということで、このⅠ、Ⅱを挙げましたのは、いずれにせよ日本常任理事国を目指すからにはこういった部分について日本トップリーダー、そして一般国民も含めましてかなりの理解度を示した上で世論を形成して、その世論国益となってこうした国連の場で発揮されるというシステムとか、盛り上がりというのがどうしても必要なのではないかという気がいたしております。  三番目の国連の今日的役割というのは、ここに書いてありますように、上記の課題ベクトルを踏まえて不確実な未来に備えてそれぞれ国連加盟国共同作業を行う、こういう場であると理解していただければ当たっているのかなと思います。  その中でも、安保理国際社会オピニオン代表する中心的存在でありますから、日本がその常任メンバーという場合には、オピニオンリーダーとして存在感を出せるのか、そこの中で日本国益もあわせて実現できていけるのかという部分が肝要な点かと存じます。  四番目、じゃ実際に安保理改革、どの辺を改めていけばいいのかという四点のポイントを示しております。  一つは、先ほど申し上げましたように、貧困対策紛争予防のリンケージをどうするかということであります。IMF世銀構造調整政策による国内貧困拡大、そして一たん貧困拡大が生じますと紛争が発する、そうしますとIMF世銀はその時点ではもう手に負えない、いきなり安保理に入ってくる、こういった部分をトータルで防ぐには何らかの新しい機関が必要ではないか、こういう気がいたします。そこで、安保理改革というのがそのニーズに合わせた格好で行われないと二十一世紀型の紛争に対処できないのではないかということであります。  ところが、今、安保理自身も非常に悩んでいる問題がございます。紛争における人道介入国家主権調整でございます。学界部分も、人道介入をもとに国家主権を超えて国連が簡単に介入していいのかどうかということは学界の中でも欧米で非常に分かれているところでございますが、九〇年代、ボスニア、ソマリア、カンボジア等紛争を含めまして国連もいろいろ反省点教訓を学んでおります。  しかし、軍事介入する場合に、国連PKOの武力型の介入をする場合にどうしても、今教訓として言われておりますのは、人道的見地のみに起因する介入は結果的には政治的にも道徳的にも無責任なものにつながるんではないか、介入するからには代理政府役割長期的に担う必要があるんではないか。つまり、介入する国の財産権司法システム、腐敗していない警察、自由なメディア、経済管理といった国の運営にかかわるところまで国連が関与していく必要があるということ。そうなりますと、非常に大きな問題になってくるのではないかと思います。  三番目、二十一世紀国連のあるべき姿と地域機関との関係というのは、これは私個人考え方でございますが、今後五十年の間、国連はそれぞれの地域間の上に乗っかってコーディネーターの役割を果たしていけばいいのではないか。そして、五つ六つ地域間、つまりアジアでいいますとASEANとか、アフリカでいいますとアフリカ統一機構等の上に乗っかっていく格好でコーディネートしていく。ところが、国連憲章、この第八章に地域間との関係というのを規定はしておるんですが、実際その条項が働いていないということで、二十一世紀の第三世代国連というのは、このあたりをもう少しはっきりすべきではないかということであります。  四番目、メンバー構成安保理決議の効力ということでございますが、今、二十四カ国まで多くふやそうとか、地域大国も入れようというようなことを言っております。私個人としましては、日本だけが入るということに賛成でございます。九〇年代の初め、日本だけが入るという雰囲気があったにもかかわらず、日本政府がその当時消極的な発言をしたために少し流れてしまったというふうな部分があり、その後、グローバルパワーを持つ国々が入るべきだというふうに戦略が変わりましたが、その時点日本を入れようという部分が少し後退しまして、日本常任メンバーの加入はワン・オブ・ゼム、ほかの地域大国一つとして入れるというような部分になりましたが、この部分につきましては、私は日本だけと、こういうのがいいかと思います。  最後に、日本対応でございます。  日本国益安保理改革。当然アジア代表、そして日本の場合には、アジア太平洋地域もにらんだ部分でございますから、オーストラリアとも関係がいい、ニュージーランドとも関係がいいということでございますので、中国アジアということで今言われておりますが、アジア太平洋地域ということをにらみますと当然日本がその代表として入る資格は十分だと。財政負担も二番目の、実質払込額は一位という年がありますので、この財政負担というのもかんがみまして日本は当然権利があると。  もう一つ日本の場合には戦後五十数年間、戦争外交的解決手段として使ってこなかったという誇りある歴史がございます。これこそが二十一世紀の第三世代国連に最もふさわしい立場にある国として当然世界じゅうから認知、認識されるべきところでございます。ここの部分日本にとって一番世界にPRすべき大事な点だと思います。  もう一つ日本を取り巻く国際安全保障環境というのは、現在、ロシア、北朝鮮、中国等でいろんな課題日本は抱えております。その意味集団安全保障多国間安保北東アジアにおける多国間安保等でいろんな問題、議論が国会を中心議論されていくのではないかと思います。その際に日本安保理常任理事国というステータスのもとにこうした議論を展開していくということは非常に重みのあることだと思っております。  三番目の常任理事国入りの是非ということでございますが、繰り返し申し上げますと日本だけ入る。そして、日本が入りますと第三世代の二十一世紀型の国連、つまりこのⅠ、Ⅱに示しましたいろんな二十一世紀国際社会が抱える課題経済的にも十分解決していくということで、国連憲章の見直し等も含めまして、この部分日本が声高に主張していくという価値は十分あるのかと思います。  現在、日本国連外交とその客観的評価というのはよくわかりませんが、ニューズウイーク等によりますと、Bプラスというようなことを言っております。これをやっぱりAとかAプラスということになりますと、常任理事国として入った後どのような活動をすべきかということが問われるのだと思います。  私が考えますのは、やはり例えば日本の参議院はアメリカの上院にも匹敵すると思いますが、アメリカの上院の場合、外交委員会、軍事委員会等が最も権威のある委員会でございまして、そこにはやはり上院議員百名の方々の良識、そして国民から選ばれたという自負心、ここの部分が国際世論を築いていくといいますか、外交問題に関して世論を形成していくという一番のやっぱり重要な発信の場になっております。アメリカでいいますとそういった部分、マスコミも含めまして、国務省、マスコミ、こうした上院、下院の外交問題調査会等が三本立てになって外交政策を論じて、アメリカ国益、そして国連安保理での発言等が煮詰まっていくということでございます。  日本でもこの参議院でのこうした場を十分にこれから活用していただきまして、専門家集団としての外務省の意見、そしてマスコミの最新の情報ということ、そしてこの良識の府、選ばれた方々の判断というこの三本立てがうまいぐあいに機能していくと、当然日本のプレゼンスが上がっていって国連常任理事国ということで十分な活躍ができるのではないかと思います。  ありがとうございました。
  7. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  次に、鈴木参考人から御意見をお述べいただきます。鈴木参考人
  8. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) こういう機会を与えていただきましたことを感謝いたします。  私は、三ページにありますように、実はNGOの活動で国連に長くかかわってまいりました。特に、ニューヨークではなくてパリに国連のユネスコという組織がございますけれども、このユネスコを支える民間NGO活動は実は一九四七年に、つまり日本国連に入る十年ほど前に仙台市で初めて生まれまして、現在は世界に五千の兄弟がおります。そういう意味では日本の発信したNGOというのが実は私が長いことかかわりました運動でして、そこで見ました最も厄介な問題は実は先進国同士のすさまじい争いでありまして、ドイツの方がおっしゃったように、そう先進国同士は甘くない、嫉妬と権力をめぐるすさまじい争いこそ実は国連にとって非常に厄介な問題であるということをまざまざといたしました。  きょうお話しいたしますのは、少しそういう経験を踏まえて、五十年ぐらいのスケールで考えていただきたい問題を幾つか提出しておきたいというふうに思います。と申しますのも、日本を除いてでき上がった国連日本は明らかに敵国でありました。その敵国が実は国連の新しい担い手として、重要な担い手として登場するには五十年かかってまだやれていない、そういうスケールで考えたらどうかというのが一点目。  二点目は、軍事大国だから日本安全保障理事会の常任理事国になるとだれも思っていない、お金を出し、さまざまな協力をするからです。全く違う要因が実は日本をここに押し上げてきている。その意味でいうと、一体これからどんなことが起こりそうかを、やや学問的になるかもしれませんが申し上げてみたいというのがきょうのテーマであります。ただ、安全保障問題一点に絞って議論をさせていただきたい。  最初に、お手元にレジュメとして統計図をお渡しいたしました。これは一九四五年から九五年までの五十年間の千人を超える紛争の統計であります。死者が千人を超えるという紛争は大紛争です。  二番目に、紛争といいますのは戦争ではない。一方が国家、もしくは両方とも国家でない、例えば宗教団体同士、人種同士、こういうものの武力対立を紛争と申します。当事者が両方とも国家の場合を戦争といいますので、紛争という概念は大変広うございますが、三十九、千人以上の犠牲者を出した紛争世界にございます。そのうち十八が一九八九年、冷戦が終わってからの紛争であります。という意味でいうと、大きい紛争は冷戦が終わってから起こっているということになります。  それから、この図で見ていただきますと、アジア太平洋地域は十一、中近東七、アフリカ十二、中南米三、ヨーロッパ六とございます。千人以上死んでいる紛争はこれだけございます。しかし、私が注目してほしいのは死者の数の多さです。これだけの人が実は死んでおります。最近で一番大きい紛争はルワンダというアフリカにおけるツチ族とフツ族の戦いでございまして、一年半で八十万人が死にました。こういう巨大な紛争が起こっております。  しかし、もう一つ見ていただきたいのは死者と難民の数であります。第二次大戦までの戦争は大体死者が避難民の六分の一と言われていたんですが、ちょうど今のヨーロッパがそうであります。三十三万死者が出て、百八十八万のいわゆる避難民です。ところが、アジアアフリカ、中南米では避難民と死者の数が余り違わない。紛争の残虐性であります。人種対立、宗教対立という解きがたい原因が実は紛争の原因になってきている。これが実は今日の世界の特徴であります。  これをどうやって防いだらいいか、これが実は世界が直面している最も厄介な問題。これをどうすると、そして軍事力で果たしてこれが解決できるのかどうかということが問われているのが今の時代であろうかと存じます。  これに対して明らかに大きい変化が今起こっているというふうに私は読んでおります。それはどうしてかというと、こういう紛争戦争に、戦争地域戦争に、地域戦争が大戦争に、世界戦争発展しにくいメカニズムが既にあるというのが一点です。  二番目は、この紛争を現場で解くという方法に随分と開拓、方法、人材、金が動くようになりました。つまり原因の場所で解決をする、それどころか紛争が起こる前の対立の段階で予防的にこれを抑える。予防的措置と申しますけれども、川村先生が言われたとおり、予防的な措置についてもさまざまなメカニズムが登場してまいりました。  そして、それを集約したのが実はここ数年関心を集めております人間安全保障、国家の安全保障ではなくて人間安全保障という考え方であります。そして、これを実現する方法として、全く私どもがこれまで安全保障にかかわらないと見てきた自治体とかNGOというのが登場しているというのが現実かと存じます。  そこで、非常に短い時間でございますけれども、安全に関して、安全という機能をだれがどうやったらいいかと。十九世紀の中ごろから、御承知のとおりこれを扱うのは主権国家のみ、それも大国のみという形で世界は実は覇権秩序を求めてまいりました。この最後アメリカという国であります、どなたも御存じのように。しかし、そのアメリカは覇権的な立場になった途端に実はこの役割を担えないという変化を起こした最初の国であります。御承知のとおり、湾岸戦争のとき、私どもから一人当たり一万円以上のお金を取り上げたわけであります。覇権とはすべての人の面倒をお金でも軍事でも文化でも見るということが条件であります。これはキッシンジャーの本にも出ていますように、覇権とはすべての領域にわたる面倒を見る能力であります。見ることができなくなりました。  それにかわって出てまいりましたのが、多くの参加する国々が共通して出し合う、公共財を出し合う、お金を出し合う、軍隊を出し合う、知恵を出し合うというものです。その基準をグローバルスタンダードと言うふうになりました。しかし、これはしばしばアメリカ的スタンダードかどうかというのが非常に厄介な問題ですが、少なくともグローバルスタンダードを議論することになったことは明らかであります。  ということは、これはリヨンのサミットからわかったことですけれども、一たん決まると各国はそれにふさわしい国法をつくらなければならなくなりました。環境基準についてのアジェンダ21ができますと環境基本法をつくることになります。ところが、もっとおもしろいことがわかったのは、基本法を実施するための地方自治体における環境アセスメント条例をつくらないとこれは実効性がないということがわかった。つまり、国連と国家と地方自治体がそれぞれ役割分担をする、これを現在政府機能の三層化と呼んでおります。  このことは、安全保障世界でどういうことが出てきているかといいますと、国連安保理だけでは実は安全機能を十分に果たすことができない。となると地域、例えばAPECとかASEM、これはアジアヨーロッパ会議でございますけれども、こういう大きいメガリージョンという統合を遂げよう、こういうところで議論をしようと。その下に今度は、マクロリージョンと呼んでいますが、ASEANとかEUというかなり具体的な地域性がはっきりあって、平等の原則で、これだけお金を出し、これだけ兵隊を出しますよというメガ、マクロリージョンというのができてまいります。その下に、これを支えるためにどういう地域がどういうものを出すか。現在、日本では緊急援助隊が自治体から出ているというのは皆様御承知のとおり、消防署、警察官。実はこの重層的なメカニズム、これをセーフティーネットの重層性と呼んでおりますが、これがどうやら安全保障世界に登場しかかっているのではないだろうか、これが実は仮説であります。  先ほど、五十年ぐらいで考えていただきたいと申しましたのは、P5、つまり安全保障理事会の常任理事国になるかならないかではなくて、なろうがなるまいが大きな国である日本は必ずぶつかるであろう問題があります。それは、先ほど申しましたこの世界紛争にどういう格好でかかわるかであります。  P5になるというふうに私は思います。ユネスコで経験している限り、明らかに票の動きは先進国の票が少のうございますから、明らかに勝つと思います、ただし一点だけ除いて。最も近い大国の恐らく嫉妬、イギリスであり、フランスであり、中国であり、アメリカの嫉妬というものを解決する能力がなかりせば多分P5にはなれないと思いますが、票であれば絶対に勝つと思います。  問題は、勝つ勝たないではなくて、なった後に一体どうする。いや、ならなくたってやらなきゃいけないことがある、その手だてと能力を一体我々はどのように持ったらいいかということが実は一番重要なテーマではなかろうかというふうに思います。  そこで、どんな課題が重要かということを次に掲げてみました。三つございます。  これは川村先生とかなり重なるところでございますけれども、一つは、紛争の解決に私どもはかかわらざるを得ない。世界のGDPの一五%を一国で握り、世界じゅうとかかわりを持つこんな国が紛争が起こって知らんぷりは到底できません。これまで実は紛争の解決にさまざまな格好で既にかかわっております。これは後で申します。そのかかわったところは、紛争を軍事的に抑える、停戦に持っていく、こういうことはやっていないけれども、紛争原因の除去に対しては相当深く日本はこの五十年かかわってまいりました。経済協力がその一つであります。つまり、紛争原因の根本に戻ってこれを一つ一つ解決していくということが実は五十年、百年、最も重要なかかわり方だと仮にすれば、この点では日本は相当深くかかわってきているということは事実であります。しかも、相当深い貢献をしてきているように思います。  その限りでいうと、日本がかかわったアジア太平洋地域において、例えばASEAN諸国、私はこれは専門の研究対象でありますけれども、一体ASEAN紛争はどういうふうに変わったかと申しますと、一九六〇年代の後半以降戦争一つもありません。すべて経済成長しております。現在、人種対立、宗教対立はございますけれども、これについてもかなりの展望がございます。その限りで申しますと、紛争の防止から紛争原因の除去へと恐らく世界的には努力が動いていくというふうに思われます。  二つ目に、そういう紛争原因そのものを解いていくというふうにするには一体どうしたらいいかということが実は知恵の出しどころであり、この点が非常に重要になるわけでございますが、これには既に非常に明快な国連のコンセプトがございます。どちらもUNDPという経済社会理事会から出てきた新しい考え方でございまして、安全保障理事会ではないんですけれども、国連経済社会理事会は日本が最も影響力を持ち得る重要な理事会でありますが、ここのUNDPという組織が人間開発とか人間安全保障というコンセプトを既に出して五、六年、長いのは十年たっております。  こういう方法として、それぞれの人々まで行き届く紛争原因の解決の仕方というノウハウは、学会においても、そして国連のさまざまな機関においても経験が集積されてまいりましたし、実は日本の国家のメカニズムの中にあります、例えばJICAという組織は既にこれに深くコミットしておりますし、アメリカのUSAIDもこれにかかわっておりますし、さまざまな先進国の援助団体もこれにかかわるようになりました。  実は、方法として、国家にお金をつぎ込めば汚職が起こり、独裁体制が次々に出てきてしまうという矛盾を解決する方法として編み出された人間開発とか人間安全保障というコンセプトは明らかに長期的に効果を上げるだろうというふうに私は思いますし、日本にとって最も強いところであります。  実は日本が弱いし、これから恐らく重要になると思いますのは次の点であります。  それは、担い手が恐ろしく多様になると。ここにお見えの先生方は国会の、つまり国政にあずかる先生方でありますけれども、国家だけではなくて、実は自治体もNGOも地域のさまざまな組織も深くかかわる。ちょうどヨーロッパにおいてEU各国各国のいわゆる都道府県とNGOが縦型に協力する、それぞれ分担を決めて一つのことをやり遂げていく、こういうのを相互補完性と申しますけれども、相互依存と相互補完性を組み合わせるようなやり方が出てまいりました。NGOが重要な位置を占めてきておるというのはどなたも恐らく否定されないというふうに存じます。  ということは、私が一言で言えばというのは次の二つでございます。  一つは、国連改革というのはきょうのテーマであります。そして、その組織の改革は絶対に必要でありますが、私が見てきた途上国の組織改革は、つくったころには政権がかわり、また新しい組織案をつくって、でき上がったころはまた政府がかわってという、組織改革案だけが山ほどできて一つも実現できないというのがこれまでの実は途上国の欠陥でありましたし、恐らく国際組織の重要な欠陥であろうかと存じます。  私がかかわりました八年間のユネスコの改革は、八つの報告が毎年つくられましたが一つも実現できませんでした。それほど実は組織いじりというのは難しい。しかし、機能改革というのは日常的に可能であります。そうして、その機能改革において、ある面でいうとお金を出し、出し方を工夫し、これについてさまざまな専門家を育ててきたという点で日本貢献はこれから非常に注目を浴びると私は思います。  もう一つ、非常に重要なポイントがございます。これは、ここにお見えの国会の先生方が国連の場にほとんど行っていらっしゃらない、あるいはオン・ザ・ジョブ・トレーニングをやっていらっしゃらない、議場で発言をされていないと。もっとも、国会議員の先生方が行ってもNGO席しか座れないかもしれません。私どもと同格でございます。しかし実は、開かれた国連をつくる、国民に開かれた援助をするということをお決めになり、開かれた国民参加型の援助を実現することができた日本のあり方でいえば、国連をそれぞれの国民に開いていくということは十分可能なはずであります。  実は、どうやって開かれた国連にしていくかということなしに、今までのような、本当に閉じられたごくごくわずかな五カ国だけの国連というのは、これは二十一世紀には通用しない。六番目の常任理事国になったところで、秘密クラブだけでは恐らく意味がない。その意味でいうと、日本は初めてその秘密クラブをあけていく、オープンにしていく。軍事力ではない、違う経験であけていく最初の秩序あるおもしろい役割を、したがってそういう意味では、欧米とは違う新しい貢献ができるのではないかというのが私の申し上げたかったことであります。  ありがとうございました。
  9. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  これより質疑を行います。  本日も、各委員から自由に質疑を行っていただきます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。  それでは、前回の調査会で時間がありませず島袋委員が質問できなかったもので、きょうは私の権限によりまして、島袋先生にまず最初、御質疑をお願いいたします。
  10. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 この間発言できなかったのを会長の御配慮で、ありがとうございます。  御三名の方々、きょうは参考人としてお招きいたしましてすばらしい御意見を拝聴いたしまして、非常に感激をしております。本当にありがとうございます。  まず、ラインハルト・ドリフテ参考人にお伺いいたしますけれども、現在の国連改革における最優先の課題、そういったふうな点についてもしお考えがあればお聞かせ願いたいというふうに思います。  もう一点は、その際に日本の果たすべき役割といいますか、責任といいますか、そういったふうなことについてどういうふうなお考えであるのか、ちょっとお願いしたいと思います。
  11. ラインハルト・ドリフテ

    参考人ラインハルト・ドリフテ君) まず、国連改革のプライオリティーについては、これはまず国連組織のもっとうまく協力することだと思います。  例えば今、UNHCRとユニセフなど、いろいろのヒューマンセキュリティーにかかわっている組織は能率的に協力していません。だから、それぞれの組織の役割、協力制度をもっとうまく整理しなければなりません。今は、国連の中でむだのことは、ウエーストのことは非常に多いんです、残念ながら。この組織のいろいろの分野、協力の方法ははっきり決まっていないんです。これが今の予算のつくられるときは特に重要です。でも、もちろんこれは一般的国連のイメージをよくするために非常に重要だと思いますが、だからこの国連の組織の改革、協力方法を直さなければなりません。そして、この安保理改革も非常に重要だと思います。  私は今、時間のために言いませんでしたが、国連事務総長は、国際的、地理的安全保障に対する脅威となる状況が生まれた場合に、安全保障理事会に注意を喚起するだけではなく、これはこれまで国連憲章が認めてきた唯一の機能でありますが、さらに国内人間安全保障に対する脅威が生まれた場合にも安全保障理事会に注意を喚起するという考え方ですが、これも非常に重要です。だから、このセキュリティーゼネラルの役割拡大することです。  そして、第二番目の質問は日本役割。  日本はとても重要な国です。財政の面だけではないんです。もう国民、知識、大学のものが非常に多いんです。だから、日本はこのいろいろの国連役割にもっと積極的に貢献できるのだと思います。例えば今のNGOセクターの話がありましたが、これも非常に重要ですし、これからNGOセクターの役割はふえてきました。もちろんこれは、政府は自分の義務をなくする理屈なることはちょっと危ないのだと思います、これは私はちょっと危険に見ていますが。  そして、このNGOの関与は一つの民衆的の質問があります。NGOは、だれを代表しますか、だれが管理していますか、こういうことを答えなければなりません。でも、この日本役割に戻すと、意見を提案する。日本は、四百あるいは五百、大学を持っています。だから、いろいろの知識を持っています。この知識をもっと上手に全世界のために利用させることについて、もっと強く考えなければなりません。  いろいろの問題があります。例えば、言葉の問題、そして話し方の問題もあります、あいまいさ。でも、このことを意識してこの問題を越えることができます、日本役割、もっと大きくするために。  ありがとうございました。
  12. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 ありがとうございました。  川村参考人にお伺いします。  先ほどの御説明で、日本が五十年間戦争をしていなかったというふうなことについては、国連からも世界じゅうからも評価されているというふうに思います。  そこで、常任理事国入りについては、日本だけ入ればいいんじゃないかというふうな御意見と、それから九〇年代に日本常任理事国入りできるような状況になっていたけれどもというふうなニュアンスの御発言がありましたけれども、それはどういうことでこれができなくなったのか、それから将来の見通し、その辺について一点お伺いしておきたいと思います。  それから、いわゆる国連改革については我が国はどういうふうなアプローチをすればいいのかというふうなことをもし具体的にお聞かせ願えればというふうに思っています。  この二点について。
  13. 川村亨夫

    参考人川村亨夫君) 現在、国連の場で言われておりますのは、常任理事国及び非常任理事国をふやそうということでございます。その中で、常任理事国を現行の五カ国から十カ国にしようと。その五カ国新たに入る部分につきましては、日本も含めて、その他地域大国を入れていこうということでございます。  ただ、現状そういった議論になりますと、例えば中南米の代表をどこにするか、アジアの残る一つの枠をどうするか、アフリカをどこにするかといいますと、実態は非常にどろどろしたものがございまして、インドが入るとパキスタンが非常に強硬に反対する、アフリカでも南アフリカが入ろうとするとナイジェリアあたりとかエジプトあたりが反対するとか、その逆もございますし、中南米もブラジルがすんなり入るかというとやっぱりアルゼンチンとかメキシコあたりが反対するといったいろんな複雑な事情がございます。  結果的に、こうした拡大策をとっていきますといつまでたっても議論がまとまらずに、最終的に日本常任理事国入りがおくれてしまうというのがここ数年間の現状で本音の部分ではないかと思います。  そういったことを考慮しますと、日本メンバー国入りについては世界の大方の国がほとんど反対していないということはありますし、最近、首相、外務大臣が外遊されまして、いろいろ訪問された地で日本常任理事国入りを支持するといういろんな発言を取りつけていらっしゃいますので、そういうことを踏まえますと、本当は私は以前から日本だけが入ればいいと思っておりました。  私が国連におりましたころ、やっぱり当時の波多野大使、先週の参考人で御出席されたかと思いますが、波多野大使の懸命な御努力がございまして、日本常任理事国入りにつきましては大使の言い分もあり、おおむね反対しないという雰囲気が確かにあったのは事実でございます。  ただ、そのときに細川政権になりまして、総理みずから国連に来られたときに積極的なそういった部分についての願望といいますか、日本の意思表明をしなかったという部分がございまして、日本の場合、トップリーダー及びそういった政界の部分で果たしてコンセンサスがあるのかどうかというようなことについて若干国際社会がさめた目で見たということがございまして、結果的に盛り上がっていた雰囲気が少し引いたということがございます。  その後、日本は、先ほども申し上げましたように、グローバルパワーと言われる国々も入れてという方針に変えまして日本とかドイツということを言い始め、そしてそれならば地域大国も入れようということになって、結局拡大路線といいますか、になったんですが、そういった地域大国の争いがあって今現在袋小路に陥ってしまっているというのがございます。  ですから、こうした国会の場での御議論等踏まえまして、ある程度国民世論が形成されてきましたら、とりあえずよその国とかグローバルパワーとかそういうこととは別に、やっぱり先ほど来申し上げております日本の独特の位置、五十数年間外交的解決を軍事的なものによらずに世界貢献してきた国という独特の国家というものをやっぱり二十一世紀の第三世代の新しい国連が必要としているんだというこの論法で行くのが、個人的には私は一番世界の人を納得させ、日本常任理事国入りを早める一番の方法だと思っております。
  14. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 ありがとうございます。  私、名前を言うのを忘れまして、二院クラブ・自由連合の島袋宗康でございます。どうもありがとうございます。  それから、鈴木先生にお伺いします。  先ほど組織の機能改革と、それから国民が参加できる国連というふうな面からお話をいただいて、地方自治体、それからNGO、国と連携して相関補完性といいますか、その辺よくちょっと理解できないんですけれども、その辺のことが非常に国連改革にとっては必要だというふうなことで、いろいろごもっともだと思いますけれども、そういう日本における、先ほども参議院はアメリカの上院に値するわけだからもっと発言力をなすべきじゃないかというふうな話もありましたけれども、そういった地方自治体、NGO、国というふうな関連性を持たせて国連にどう発言していくかというふうなことをおっしゃっていましたけれども、そういうふうな具体的な内容。  それともう一点は、国連機関の設置場所が欧米に偏っているんじゃないかというふうなことを私どもは考えております。そこで、アジア太平洋地域にやはり国連機関を設立すべきじゃないかというふうな意見が最近非常に高まっております。  そこで、私は沖縄の出身でありますけれども、沖縄に、非常に地理的な立地条件もすぐれていると私は思いますけれども、そこに国連機関を持ってきたらどうかというふうな意見がありますけれども、その辺についてもし御認識があればお伺いしたいと思います。
  15. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) 組織より機能と申しましたのは、今、川村さんがおっしゃったように、私自身も、実はユネスコは世界五つ地域に割っておりまして、欧米と申しますと、これは北米、ヨーロッパ、旧ソ連プラスイスラエルという四十九カ国もあるんですけれども、アジア太平洋が二つ目、三つ目がラテンアメリカ四つ目がアフリカ五つ目がいわゆるイスラム国家というふうに割っているわけです。  何が難しいかと申しますと、一たんできた、五十何年前にできた割り振りを変えるともうけんけんがくがく、今、川村先生がおっしゃったように、私が経験したところで言うと、それぞれ地域には大国と称する国がございまして、大変なライバル意識があります。その足の引っ張り合いということもどんなところでも平気でおやりになる、もう恥も外聞もないというのが国益を争うゲームだというふうにつくづく思いました。逆に言うと、そのことで九九・九%はエネルギーとお金を使ってしまいますので、実は掲げられた目標をほとんど何も実現できないという大変な矛盾というものを本当に今まで経験してきたのではないかと。  その意味でいうと、組織いじりから入った場合に実は国連改革が大変難しいというのは、ベルトランという、川村先生よく御存じだと思いますけれども、国連改革をずっとやってこられたいろいろな方はみんなそれで悩んできたわけです。むしろ、先ほど申しましたように、例えば議員の先生方が呼びかけて、これはフランスが非常にうまいんですけれども、ユネスコなんかでやるときに、議員が来てあるパーティーをやったりキャンペーンを張ったりすることで理事会の意見ががらっと変わってしまうということがよくありました。先生方に圧力団体をやれというのは非常に難しいんですけれども、あるアピールを、メッセージをつくっていくという努力を、やっぱり国政を預かっている方々が、官僚とは全然違う役割でございまして、NGO的な役割もおできになるので、そういうことをやっている国というのが実は先進国であり大国ではないだろうか。  その意味でいうと、外務省は何をやっているんだ、外務大臣は何だという言い方だけで終わっている日本の議員の皆様方の国際的見識というのは実はまだ常任理事国入りするには足りていないのかなというのが一点でございます、皮肉を言わせていただければ。  もう一つ、実は非常に変わってきたと私が思いますのは、国連というのはお金がございませんで、例えばユネスコの予算は二年間で五百億円ぐらい、私の大学の一年分の予算しかないわけです。ところが、現実にはこれを意味あるものにしていくには、各国の予算や各地方政府の予算やNGOの人たちの参加があって何倍にもなって効果が出る。その意味で、島袋先生がおっしゃった、沖縄に国連を持ってくるということをおっしゃいますけれども、これも組織論なんです。持ってくれば何かなるというのは、もうちょっと私に言わせればそうではない。実は運動や成果がちゃんと見えてくるということの方がはるかに安くていいというふうに思われます。  その面でいうと、ソフトやネットワークをどうやって上手につくるか、これがIT時代のやり方だと私は思いますけれども、例えば非常にいい、おもしろい意味でのホームページをちゃんとつくる、その活動で世界に発信していくという努力があって初めて組織というのはじゃ必要だからあそこへ持っていこうかと。つまり、日本は何でも自分のお金でやる珍しい国なんですけれども、やっと今、北九州市というところは、中国環境汚染、大連市ですけれども、これを抑えるために世銀お金を、そしてUNDPのお金を、日本お金を使って、かつ北九のお金を使ってやるという知恵をつくり始めてきた。そういう知恵とネットワークというものをつくっていくことが実は一番大事で、その意味でいうと、国連というのは大変使いでがある枠組み、機能でございまして、組織を持ってくるよりは、そういうお金を持ってきたり知恵を持ってきたり制度を使ったりする人々をつくった方がはるかに沖縄のためにもなるのではないかと存じます。
  16. 島袋宗康

    ○島袋宗康君 どうもありがとうございました。
  17. 山下善彦

    ○山下善彦君 きょうは御三名の参考人の皆さん、お忙しい中ありがとうございました。  先ほど川村参考人、島袋先生とのお話の中に出ておりました、あの細川内閣のときに若干引けた演説、国連演説の問題がちょっと出ておりましたので、その点について実は御三人にちょっと御意見を伺いたいな、こういうことでございます。  ちょうどこの国連安保理改革問題、一九九二年に非常任理事国としての任期が始まってから各政権の代表者、外務大臣が演説に出る場合もあるし、直接先ほどのように総理が出て演説をされた。これをずっと見てみますと、例えば最初の国連総会、一九九二年十二月の国連総会決議を受けてその翌年、これは宮澤内閣のときでありますけれども、そのときの演説内容を集約しますと、「我が国として、安保理においてなし得る限りの責任を果たす用意がある。」と、こういう述べ方をしているんですが、その翌年の細川内閣の時代、国連での総会の演説の中で、ここにちょっとした微妙な言葉に変化が出てきた。「改革された国連において、」ということですね。そして、「なし得る限りの責任を果たす用意がある。」と。ここは文言としては同じ形、表現にはなっているんですね。  そういう意味では、細川内閣のときには若干一歩腰が引けた演説かなと、こんなふうにとられるわけでございますが、またその後の村山内閣に入ってから、これまた表現の仕方が若干変わってきている。河野外務大臣が、「憲法が禁ずる武力の行使はしない。」という前提をそこにくっつけて、「多くの国々の賛同を得て、安保理常任理事国として責任を果たす用意がある」と、こういう表現をしているわけです。  そういう意味では、この三つの演説を見ていっても、その時々の国内政治状況とかそういうものを勘案しての演説にはなっていると思いますが、ほかの外国から見た場合、我が国国連の中での安保理加入問題についての何か危惧をするような面も出てきているんじゃないかなというふうな感じもいたすわけですけれども、いずれにしても、こういう国連の演説そのものは、その時々の国際情勢とか、我が国国連をどのようにとらえているか、その表現の集約的なものがこの演説にあらわれてきているんじゃないかな、こう思うわけでございますが、国連演説に見る日本のこの微妙な演説の表現の変化をドリフテ参考人川村参考人鈴木参考人、おのおの若干御意見が違うようなことをお見受けしましたので、御三人に伺いたいと思います。
  18. ラインハルト・ドリフテ

    参考人ラインハルト・ドリフテ君) ありがとうございました。  この先生の質問は非常におもしろいんです。非常に中心的だと思いますが、私は特に今外国からそういう発言の変化をどう見られているかをちょっと話したいんですが、まず、この改革された国連に、これを聞くと非常に変な感じがします。もちろん、もし安保理改革すると、もし安保理に新しい加盟国に入れると、これはもちろん改革のことです。そして、多数の加盟国拡大にいろいろの条件をつけます。これは、例えば非常任理事国の数です。そしてこれは拒否権改正のことです。そして安保理作業慣行透明性ですね。だから、これは非常に当然です。改革された国連だけに日本が入ることができます。でも、外務省そして日本政府はそういう発言をすると、外国の印象は、まずこの安保理をきれいにしてください、後で私たちも入ってもいいんです、そういうちょっと変な感じがしますが、だからこの安保理改革の状態を余り理解していない印象を外国に与えます。  そして第二は、武力を使用しない、これもまた条件つき権利になりますが、これはできませんよね。安保理規制がありますが、そして法律的には、はっきり言えば全面的にPKO参加することは、これは法律上、憲章上では前提条件ではありません。でも、あくまでも政治的前提条件です。だから、日本は武力を使用しない、これはもちろん国内条件、憲法のことを考えるとよくわかりますが、でもこれは安保理加盟国になる資格になりません。そういうことです。
  19. 川村亨夫

    参考人川村亨夫君) 最初に御指摘ありました、九三年九月二十七日に当時の細川首相が演説された第四十八回総会演説での日本語訳というのは、確かに、改革された国連において日本はなし得る限りの責任を果たす用意がありますということでございました。  そのときの反応というのは、私も少し時間がたっておりますのではっきりしたことは申し上げにくいんですが、やっぱり当時から、現在でも日本安保理の非常任理事国を八回も経験しておりまして、ブラジルと並んで最多の国でございます。当時もかなり非常任理事国として経験を積んでおりまして、またナンバーツーの財政負担を行っている大きな発言力のある国ということで、その意味では、改革された国連という第三者的な言い方をしているということについて、少し腰が引けているのかなと。日本が積極的にやらないでだれが国連改革するんでしょうかというような質問はよく海外の国連外交官の間で言われたことは覚えております。  もう一つ、九四年九月二十七日の、翌年の四十九回総会で、当時の河野外務大臣が村山内閣を代表して、最初に、憲法が禁ずる武力の行使はしないという条件つき常任理事国入りの意思を表明されましたが、これは当然、当時の日本政治状況、特に九四年当時、一番世界で冷戦後の民族紛争宗教紛争が多発しまして、国連PKOが後手後手に回りまして、特に、どうやって対応していけばいいのかという、カンボジア、ソマリア、ボスニア紛争といった部分が、状況が非常に難しいところでございましたから、そんな中で外務大臣発言は、当時の日本国内政治状況を踏まえますと、PKFといった武力行使型のPKOには国民のコンセンサスが得られないということも踏まえまして、憲法が禁ずる武力の行使はしないということを前提常任理事国入りを果たしたいということでおっしゃられたのかと推測しております。  これにつきまして、日本のいろんな皆様方が、常任理事国入りを果たすと非常に義務が生じるんではないか、その義務の中に軍事的な貢献が一挙に国連サイドから出てくるんではないか、武力行使型のPKFを国連が行う場合に日本に対して軍事貢献を求められるんではないかということが、割と大きな関心一つかと思われるんです。これにつきましては、基本的には、外務省も国連の内部も確認しておりますように、日本常任理事国入りをしたからといってこの軍事的な貢献部分について新たな義務を生じるということは特にはございません。  その意味で、ただ、世界に知らしめる意味におきましては、この河野外務大臣の当時の演説にあらわれています憲法が禁ずる武力の行使はしないということを世界に発信したということは、それなりに意味があるのではないかと思っております。
  20. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) 非常にポイントをつかれた質問だと思いますが、二つほど実は切り口を用意させていただきます。  一つは、細川内閣のときに建議され発足し、村山内閣のときに完成をいたしましたのがあの例の安全保障懇談会でして、その安全保障懇談会の基本的な考え方地域的総合安全保障、これはアメリカが非常に強く反発をし、後々再定義、そしてある面でいうと今のような形に戻ってくるという例のジョセフ・ナイ報告が出ていった背景でございますが、日本がある面でいうと安全保障コンセプトを変えたのではないかというふうに言われた、実は非常にアメリカ側の反応が過剰に出てきたというのがあったと存じます。その意味でいうと、細川、村山内閣で一体どういう格好安全保障問題にかかわるかは揺れたのではないかというふうにだれもが思った。  二点目は、実は国連側にも非常に大きい変化があったと思います。それは日本とは別に、アフリカが出した非常に強力な事務総長、ブトロス・ガリという方が九二年に御承知のとおりPKO活動を大幅に活性化する「平和への課題」、アジェンダ・フォー・ピースというのをお書きになり、国連がかなり深くかかわるような紛争への解決の図式をお書きになって、御承知のとおりソマリアまで突っ込んでいったということがございまして、これは別に日本だけじゃなくて、世界全体が実は非常にテストされて、実際かかわって、クリントン政権もかかわりましたので、それで死人もたくさん出て国連も手をやいたという実に非常につらい経験をした時期であったかと存じます。  その意味でいうと、日本国内においても安全保障をめぐるコンセプトが変わりつつあるという時期でありましたし、国連役割についても非常に国連自身が変わっていく可能性があり、その両方が実は後ろ向きになってしまうということが一、二年のうちに起こってしまったという点で、今、川村さんが御説明になったのは私はこの二つがかなり大きい背景だったのではないかと。  ただ、例えばインドの方たちの主要な議論は、しかしあなたは日米安保条約で守っていてもらって、何で丸腰でやってくるということが言えるんですかと。これに対する理論武装がないんです。これを説得する能力がない。したがって、インドが核実験をやり核武装をやっていくということに対して、我々が被爆国として徹底的に言いにくい。そういう論理をぶち破るということをどこかで私どもは編み出していかないと、アジアの中でも説得力がないというのが一点。  もう一つは、常に実は憲法問題というのはどこの国でもあって、日本だけじゃないわけです。これはもう川村さんがおっしゃったとおりで、憲法を無視して国連に加盟するような国は一つもない。全部それで拘束されている。したがって、しばしば国内向けの発言をされる。これが、国内向けの発言を非常に悪意にとって奇妙に宣伝されてしまうということはしばしば私が見たところでございます。都合悪くやられちゃう。  もう一つありまして、G8とかG7と言われるように、大国中の大国が集まって、国連以上に決定をしてきた歴史があるわけです、サミットです。ここが本当に経済を動かし世界を動かしてきたと皆思っているわけですね。したがって、アジアの国はサミットで何が議論されたかを聞きたいという格好では日本代表的な役割を果たすということが幾つかございました。その意味でいうと、いよいよ日本はG8の、実質的に国連に入って大国化するのかという不安があるところに、こういう腰が引けるものですから、ほっとしたりどきっとしたりという、一体メッセージはどっちなんだという、恐らくアジアの国は思っているに違いないと思います。
  21. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 ありがとうございます。佐藤雄平でございます。  二件ほどそれぞれ参考人にお伺いしたいと思うんです。  一つは、ラインハルトさんの二番目の項目の②、「日本財政的貢献の強調は理解されてはいるが、嫌われてもいる。」、これは私はやっぱりどこの社会も同じだと思うんですけれども、これはともかく嫌われたら何もできないんですね。  それで、去年の五月、中国に行ってきたんですけれども、朱鎔基さん、それぞれいろんな方とお会いしてきました。そして、どこへ行ってもやっぱり日本に対する協力要請がさまざまあったんです。そして、帰ってきて非常に日中関係っていいなと思いましたら、中国から中国の子供たちの世論調査をしたら、一番嫌いな国はどこですかといったら日本だという話、これは本当にもう失望しました。これは冷静に考えてみると、私は戦争ということがあっていろんな歴史的な過程があるのであるなと。  そういう中で、日本中国との関係というのはなかなか容易でないなと思いながらも、きょう、その国連の話を聞いたときに、ラインハルトさんからの話の中で、嫌われてもいると。これはこれから日本世界でその活動をしていくについても大前提は好かれなかったらいけないと思うので、まずその嫌われている、さまざまなこれは理由があると思いますよ、私は。東西の問題、南北の問題、いろいろある。またアメリカ、ここにも書いてありますけれども、アメリカと近いというのもある意味ではこれは別な立場からすれば嫌いな理由になるかと思うんですけれども、今の段階で日本世界的に見てここだけは最も嫌われているんじゃないかなと思うところを、それぞれまた三人の参考人考え方があったらまずお聞かせ願いたい。  そして、もう一つは、鈴木さんからさっきG8の話があったんですけれども、先週も実はこの場で国連のいろんな話を聞いたんです。私は国連というのは極めて崇高な、約二百の国が参加しているわけですから、ここがすべてをある意味ではカリスマ的に決めてくれているところかなと思い、いろんな話を聞きましたら、残念ながらそうでもない。それは私は思うんですけれども、歴史の一つの流れの中で、そのときにやっぱり大事な国際的な課題というのがそれぞれあるんです。それは国連が決めることよりも、G8の方が大事な課題がある。あともう一つは、WTOにしてもこれはそっちの方が大事である。そして、この間のオランダのハーグの気候変動の会議にしてもそう。そのつかさごとに大事であるんだけれども、しかしながら今世界を見回してみると、一つのことではもう解決できない、極めて多面的な要素が入った中で解決しなきゃいけないという問題がたくさんあると思うんです。  そのときに私は、国連と今の例えばの話で三つの機構の関係、かかわりをどういうふうにしていくのか。本当にもう、G8で決まらなかった、WTOで決まらなかった、COP6で決まらなかった、これは最後国連が決めるんだというような形にしていかないと、私はもうそれぞれみんなばらばらになってしまって、それこそ地球がある意味では崩壊してしまうんじゃないかなと思うんですけれども、そういうふうないろんな各機関国連関係というものを今後どのように進めていけばいいのか。これもそれぞれ三人の参考人のお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。  ありがとうございました。
  22. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ドリフテさん、質問の意味わかりますか。
  23. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 日本が嫌われている原因です。
  24. ラインハルト・ドリフテ

    参考人ラインハルト・ドリフテ君) ああそうですか。これについてはコメントだと思いましたが、ごめんなさい。  もちろん、お金で信頼できる友達を買うことは難しいんです。臨時的友達を買うことはできますけれども、でも信頼できる友達はちょっと買いにくいんだと思いますが、そういう意味でしょう。  ある意味では国連日本に対してはアンフェアかもしれません。今の構造は日本貢献と比較すると、比べるとフェアではありません。確かにそうです。だから、そういうことはありますが、これはある意味では管理制度になりますね。一つの金持ちの国、たくさん力がある国が余り大きくなることを防ぐための一つの道具かもしれませんが、でも日本お金だけで地位を買うことはできないんです。国連加盟国はそういうにおいは大嫌いです。特にインドは、私は株式会社の例を挙げましたが、これは実はインドの代表発言からとりました。  これだけ答えることができますが、ごめんなさい。
  25. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 ということは、そういうふうに日本が見られているということですか。お金で買うような国だというふうなことで見られているということですか。
  26. ラインハルト・ドリフテ

    参考人ラインハルト・ドリフテ君) 部分的にそういう感じがありますが、でも本当はみんなが、日本はたくさん財政的に貢献することが、だからある意味である程度までは常任理事国入り権利、あることは認められていますが、まずお金で買うことはちょっと悪いにおいしますね。だから、そういう貢献財政的貢献を余り強調するとよくないんです。ある程度までわかっても、でも強調するとよくないです。格好がよくないんです。でも、日本が嫌われていることは、過去のために、これはある国だけのことだけです。例えば、北朝鮮はもちろん、そしてアジアのいろいろの諸国ですが。でも、日本が嫌われていることではありませんと思います。
  27. 川村亨夫

    参考人川村亨夫君) 私、嫌われているというのが、自分自身としてはそういう場面に直面したことがなかったのでよくわからないんですが、ただ、アジア諸国等で言われるのは、国連の場でもそうでしたけれども、嫉妬しているという方がより実態かなという気がいたします。  自分たちは太平洋戦争時代に侵略を受けて、しかし日本アメリカの援助を受けて急速に立ち直って、今や豊かな部分がある。今、日本の一万円は中国へ行けば三十万円という感じらしいので、そういった意味で、瞬く間に豊かになった日本に対する金銭面での嫉妬というのがいろんなところにやっぱり状況に応じて出てくるんではないかという気がいたします。  その一例としまして、今回も、昨年の九州・沖縄サミットで八百億円強のお金が使われたということでございますが、それ以前にいろいろ行われました各国の、例えばカナダが行いましたハリファクスのサミットとかその他のヨーロッパで行われるサミットは、大体三十億円から四十億円ぐらいの総経費でボランティアも含めて賄う、日本はそれに比べて八百億円ということで、一挙にサミットにかかる費用を高くさせるということでございますので、そういった意味で金銭面に対する違和感とか嫉妬の部分が時々顔をのぞかせるのかなという気がいたします。  それともう一つ、御質問の中の二点、例えば国連とか今後WTOとかG8の部分でございます。  これはほとんどの問題は人材の交流といいますか、そういうことで解決できるのではないかという気がいたしております。例えば、国連ですと外務省マター、WTOですと、以前は通産マター、現在ですと経済産業省マター、そしてG8ですと、以前は大蔵、今は財務ということで、そういうのをシェルパが出ていろいろやっておりますが、彼ら自身にしましても、二、三年のキャリアのローテーションで回りますと問題に精通しているということが余りなくなる。一方、国によりましてはエキスパートをずっとそのポジションにやっていますので、例えば何年の会議でこうした発言をどこの国はやったということをよく覚えているわけです。そういう人たちが実際の国際会議の場をリードしておりますので、そういった意味では、いろいろ言われますが、私は日本の場合もここに来まして省庁の再編等を含めまして、やっと民間の方が内閣とか行政府に入っていって活躍される素地ができましたので、ぜひ人材の交流を進めていただきたい。  特にWTOは交渉の場でございますので、日本は実は優秀な渉外弁護士というのを、国際弁護士というのを多数抱えております。そういう方がどんどんWTOの場で入っていって、特にパネル、紛争調停の場のところで日本問題についていろいろ発言されるとなると、非常に日本にとって国益が実現できる有利な状況が出てくるかと思うんです。その意味では、政府の方も民間のこういった優秀な国際弁護士をどんどん出していくと。  財務省関係も、伊藤隆敏さんという方が一橋の教授から副財務官に移られて御活躍されておりますが、やっぱりG8の世界も国際金融の非常に通貨問題に精通しないといけない部分がございまして、その道二十五年はたたないと外交では一定のスタンスが出てこないと言われる世界ですので、やっぱりそういった熟練した日本の人材、民間銀行、商社で活躍されたエグゼクティブの方々を五十代、六十代になったときに政府の代表として使っていただけるというシステムが出てくれば、日本のこうした外交上の宿題というのは一挙に解決していくような気がいたします。
  28. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 ありがとうございました。
  29. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) 嫌われるというのは大国、先進国のいわば特徴なんだそうであります。嫌われない大国一つもありませんし、嫌われない先進国は一つもありません。しかし、日本に関してはやや例外ではないかというのが私の率直なパリでの経験であります。物すごく頼りになるし、物すごく頼りにならないという両極端を常に動いている。  頼りになるというのは、何だかんだ言ってもお金を出してくれる。どこも出しません、今。自国以外にお金を出す国はありません。例えばアジアの国で、税法上海外にお金を出すということが免税されている国というのは日本以外ありません。ようやく韓国でNPO法ができて、恐らく海外に試験研究法人資格お金を出すことができるようになるだろうと予測をしておりますけれども、NGO関係で見ると、寄附金を免税で出せる国は日本以外にはございません。その日本だって、実は先生方にぜひやっていただきたいんですが、NPO法ができましたが、財政措置についてはおくれております。アメリカは一九七二年にこれをやっております。  そういう意味でいうと、実は、お金を出してくれる、どこかで苦しいときに頼りになる。けれどもメッセージがないんです、顔が見えないんです。なぜ出しているのか、どうしてほしいのか、だれがやっているのかさっぱりわからない。だれに領収書を出せばいいか、だれに報告を出せばいいか。湾岸戦争のときに領収書を要求しなかった国なんというのは聞いたことがない。  そういう意味で、小泉さんがアフリカに行かれたときに、金だけ出せばいいんだよと言われて頭にきたそうでありますけれども、それは本当に裏表です。頼りなくて頼りがいがある。恐らく、人の顔が見えない、対話能力がない、メッセージを伝えるという努力をしない、でも結構厳しい。出したら感謝しろ、手紙の一通欲しいと。どこかちまちましているんです。これが相手に伝わらないだろうというふうに思います。  問題は、実は佐藤議員に対して私がお答えしたいのは、多様と統合の問題です。国連機関が多様になるのは避けることができません。なぜならば、国境を越えて物も動き、人も動き、情報もべらぼうに動いてしまって国家がとめられなくなったときに、これをだれがコントロールするか。いわば物の流れでいえばWTOみたいなものが絶対必要です。  おかしなことに、例えばG8でいうと、パンクしたときにだれが救ってくれるかということを考えている国。ロシアは考えているわけです。しかし、日本経済危機になったときにIMFが来てくれるんでしょうか。不可能です。日本のスケールはIMFでは到底救うことができない巨大さです。  つまり、日本という国は、もはや国連機関によって救ってもらうことができないほどでっかい国。中国はまだIMFが出かけて助ける、あるいは日本が出かけて助けるということはやるでしょう。しかし、日本を助ける国はもはやない。恐らくアメリカ日本を助けることはできない。  その意味でいうと、実は、こういう国は既に一国でできておりませんので、例えば航空とか通信とか、農業もそうでありますけれども、さっき川村さんがおっしゃったように、ありとあらゆる官庁が世界的組織にいろんな格好でかかわってコントロールする側に立っている。こういうのをルールセッターと言います。日本人は、ルールセッティングされたもの、さっきの国連の話じゃありませんけれども、改革されたところに入ってうまく使うという天才です。だれかがつくったものを上手につくり変えして世界にばらまくと。  しかし、自分でルールをつくって自分でこれを広めていくということはとても下手で、実は今要求されているのはルールセッティングという能力ではなかろうかと。そのときに、覇権国家にならなきゃできないと思っているわけです。大国になって軍事力も持ってでっかい国にならないとできないと思っている。そうではない時代なんだと。  例えば、湖沼に関しましては根室、つまり北海道の沼地をやっている人たちが世界で一級のリーダーシップを発揮しています。湖、琵琶湖をやっているNGOが一番能力を持っているんです、世界じゅうで。こういうのを単一機能の世界的統合と申します。つまり、湖をきれいにする、洗剤で汚染されたものをどうやって除去するかという経験を持って、能力も持っている。この単一機能だけで世界的に貢献するというのを単一機能型機能統合と申します。これが実はNGOが非常に強い。  恐らく、ある国はこういうところが強い、別の国はああいうところが強い、フロンガスはどこどこ、CO2はどこどこ、こうやって分担されていく。多様な機能統合がばらばらに起こって一カ所の国に集まらない。つまり覇権的にならない。これがこれからの世界ではないだろうか。そういう意味では、多様と同時にそれぞれ統合していく、これが今の状況ではなかろうかなと存じます。
  30. 佐藤雄平

    ○佐藤雄平君 ありがとうございました。
  31. 高野博師

    ○高野博師君 最初にドリフテさんですか、簡単にお伺いしますが、ドイツ常任理事国入り国民関心を持っていないということなんですが、それはヨーロッパ内で安全保障の確保、これに貢献できればいいという、ここのところがちょっと僕ははっきりしていないんですが、国民関心を持っていないのは日本も余り関心を持っていないのは同じなんですが、ドイツ政府としては常任理事国入りに相当のいろんな活動をやっているんでしょうか。それをひとつお伺いしたいんです。    〔会長退席、理事山本一太君着席〕  それから川村先生に、常任理事国入りしたときに、要するに武力行使あるいは軍事的な貢献を求められることはないだろうと、こういうことなんですが、しかし、先般のイラクの空爆があったように、こういうイラクが反撃したとか、また湾岸戦争のようなことが起きたときに、日本安全保障理事会の常任理事国に入っていて、軍事的貢献はできませんということで本当に求められることはないのかどうか。これはもうケース・バイ・ケースなんじゃないかなという気がするんですが、その辺についての考えをお伺いします。  それから、鈴木先生がちょっといないので、とりあえずその二つだけ。
  32. ラインハルト・ドリフテ

    参考人ラインハルト・ドリフテ君) ありがとうございます。  じゃ、ドイツ立場をもう少し詳しく説明しましょう。  まず、CDUの政権のときは、チャンスラーと外務大臣の間に常任理事国入りに対して差がありました。チャンスラー・コールがこの常任理事国に対して非常にぬるかった。国連を一回だけ訪問したと思います。これは日本の総理大臣と比べるとずっと少ないんです。そして、まずゲンシャー外務大臣常任理事国に対しても興味がなかったが、でも九二年、キンケル外務大臣になったときは、急にドイツの外務省の立場が変わりました。積極的に常任理事国入りに対して興味を見せましたが、九二年国連総会で発表しました。日本は次の年だけでしたね、九三年です。これも非常におもしろかったが、ドイツ日本はちょっとコーポレートしませんでしたが、これはまた別です。    〔理事山本一太君退席、会長着席〕  そして今、シュレーダー政権になりましたが、シュレーダーは常任理事国入りに対しても余り熱心ではありません。ドイツの外務省は相変わらず熱心ですが、でも新しい緑の党の外務大臣はそんなに興味がないんです。コソボの後でちょっと興味が強くなりましたが、なぜならば、ドイツはユーゴの爆撃に参加しました。だからNATOの間で投票権を持っていましたが、でも、あとはコソボのことは安保理のものになりました。突然ドイツは投票がなくなりました。だから、やっぱり安保理メンバーになった方がいいじゃないですかと。これは非常に臨時的だと思いましたが、また非常に抽象的、パッシブな態度に戻ってきたと思います。だから、この原因はまずこの党の問題です。そして、人間の興味です。  そして、私が言ったのは、ドイツヨーロッパ内でのいろいろの使命がありますが、これは安全保障、狭い意味安全保障だけじゃないんですね。これはいろいろの、例えばロシアヨーロッパ安全保障構造にインテグレートすることです。そして、旧東ヨーロッパ諸国経済回復です。そして、もちろん東ドイツの回復がまずありますが、などなどで、アジェンダ・オーバーロードのようなものですが、そういう原因だと思いますね。  この二つです。
  33. 高野博師

    ○高野博師君 ありがとうございます。
  34. 川村亨夫

    参考人川村亨夫君) 今の高野先生の二つの御質問の中で、ちょっと後の方からお答えしてみたいと思います。  例えば、イラク等の中東情勢がホットになったときに、国連がひょっとして軍事行動等を起こす、その場合どうするかということでございますが、それはアメリカの現在の世界戦略にも深くかかわっていることでございますので、ちょっとそこを説明させていただきたいと思います。  キッシンジャーのスリーカテゴリー理論というのがございまして、これが今共和党政権を支える基本的な戦略でございます。それがスーパーパワーとしての米国の世界戦略というのを握っておるんですが、じゃ、キッシンジャーのスリーカテゴリー理論というのは何なのかといいますと、世界を実質的に三つに分けております。  まず、米国の権益が死活的に絡む地域、これが中東地域等でございます。二番目が、地政学上、キリスト教文明上保護すべき立場、これはユーゴ地域等が入ります。三番目が、権益も地政学的にも重要でないという部分でございます。これはアフリカ等が彼らにとって対象物ということになりまして、じゃ中東地域の一番の米国の権益が死活的に絡む地域では彼らはどう考えるかといいますと、基本的に米国の軍事力で片をつける、ただし資金は日本ドイツが資金援助をすると、これが本音の部分でございます。  ということであれば、今回もイラクの空爆の後、私はよくわかりませんが、国連安保理が開催されて活発な議論をこの週末やったかといいますと、そういうふうにはまだ新聞は報じておりませんのでよくわかりませんが、基本的に中東絡みになりますと、アメリカ国連を頼りにしないということで多国籍軍とか自国の軍隊で行うと。  二番目の、地政学上、キリスト教文明上の保護ということは、例えばユーゴ紛争なんかをいいますとケース・バイ・ケースで対応するということでございまして、時としてはNATO等と協力してこうしたヨーロッパ地域紛争を防止する、対応するということでございます。  それで、国連PKOが投入されるケースは、米国にとってはですが、三番目のカテゴリーの部分なんです。つまり、権益も地政学的にも重要でない地域紛争が起きると国連PKOを投入して対応すると。これが彼らの本音の部分でございまして、その意味では、日本が仮に常任理事国になって、さあ軍事力の投入、軍事的貢献をどうするかといった場合には、基本的には三番目の部分で問われるのかと思います。  しかし、こうした三番目のカテゴリーにつきましては日本の権益も国益もそう絡むところではございませんので、当初来申し上げていますように、常任理事国になったからといって法的に新たな軍事的貢献を求められる法的根拠等はございませんので、日本はその意味では従来のPKOタイプで、後方支援は行うけれども武力行使型には参加できないということを言えばいいんではないかと思うわけです。  最初の質問に立ち返りますが、その軍事的貢献といった場合に、以前、宮澤総理も一部、九二年当時か何かに触れられたと思うんですが、国連の軍隊を国際公務員にして各国からその要員を募ればいいじゃないかという案というのは、意外と国連内部でも根強いものがあります。  ブトロス・ブトロス・ガリ前事務総長はそういった構想を踏まえまして、最後に緊急展開軍ということで、三千人から五千人程度の緊急展開軍を国連が持つことによって、予防外交的に紛争が起きる前にそこに投入して兵力の、紛争勢力の監視を行う、その方がよっぽど対症療法的には効果が上がるんではないかということでございますので、この緊急展開軍の構想を進めていくということも日本にとっては一案かと思います。つまり、国連自体が緊急展開軍、ラピッド・ディプロイメント・フォースと言われますが、そういった兵力を抱えるということで、軍事参謀委員会の指揮のもと紛争地域に予防的に入っていくというのがあれば、日本にとりましても自衛隊の直接的な投入とかそういうことを考える必要はないのかもしれません。
  35. 高野博師

    ○高野博師君 済みません、鈴木先生に。
  36. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) 済みません。質問は恐らく想像いたしますに、今、川村先生のお答えを聞いていて想像いたしましたので、二つを一緒にお答えしてよろしいでしょうか。
  37. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) それでは高野先生、もう一回。
  38. 高野博師

    ○高野博師君 冷戦後の世界の動向として民族間の紛争が多発しているということで、これに対していろんな、先生のお話を聞くとかなり希望が持てるお話だったんですが、私は若干悲観的でありまして、例えばコソボとかあるいはルワンダの紛争の中で、コソボの場合はPKOを派遣したと。これは安保理あるいは先進国が相当関心を持っていた。これは先ほどの川村先生のお話だとキリスト文明圏の権益というかそれを守るという。しかし、ルワンダの場合はそのアメリカの三つのカテゴリーに入らない。権益もないし、地政学的にも関心ないと。したがって、ルワンダの問題が起きたときに国連各国に呼びかけたときに、五十カ国呼びかけて一カ国しか返事がなかったというのは、ほとんど関心を持っていない、民族的な問題、宗教的な問題。こういう問題をどうしたら解決できるのかというのは大変難しいと思うんです。  そこで、人間安全保障とかあるいは人間開発とかというこういう理念、考え方は非常に重要だと思うんですが、しかしそれがあったからといって何ができるんだと、ああいうところに対して。先ほど、自治体とかNGOが新しい国際貢献というか、紛争に対していろんなかかわり方ができるということなんです。例えばルワンダなんかにはかかわる自治体もNGOもほとんどないだろうと、ちょっと怖くて行けないと。こういうときにやっぱり国連がもう少し、安保理が特に、かなり強権的に介入しないと難しいんではないか。  先ほど先生が、紛争原因の除去に日本が相当深くかかわってきたと、特にアジアについてはということなんですが、そこはODAの問題との関係でいいますと、インドネシアなんかの場合にはスハルトのファミリー企業に相当利益を与えてきたんではないかと。あるいは中国にしても、円借款も含めて、中国がミサイルの技術を輸出しているとか中東に武器を輸出しているとか、あるいはチベットの問題、核開発とか、ODA大綱に沿わないことをやっている中でも円借款等をやってきたと。いろんな形をいうといろいろ問題があるんではないかと。  したがって、アジアについてそれほど、紛争原因の除去に日本が相当貢献したというのは、余りそういう認識は私はないんですが、簡単で結構ですので、その辺お話をお願いします。
  39. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) 実は私、ルワンダについてはかなり実地の経験がございますし、それから、実はフィリピンにおけるイスラムゲリラと中央政府とのかかわりについても経験がございまして、どちらもユネスコが提唱いたしました平和の文化のプロジェクトで実はかかわりました。  今お触れになったアジア紛争と申しましたのは、五〇年代まではほぼ毎年のように戦争がございました。これは領土問題が解決していないということも一つ理由でございまして、現在も実は、御承知のとおりフィリピンとマレーシアでは領土問題は解決しておりませんし、タイとマレーシアもできておりませんし、インドネシアとマレーシアの領土問題も残っております。しかし、その領土問題という伝統的な戦争原因がありながら紛争が起こらなくなったという点で何が一番大きいかというと、戦争以外の手だてで豊かになるということが可能になったという点で、やっぱり非常に経済協力が大きかったと私は思います。  しかし、これがまさに問題ですが、そのことは国家間戦争をなくすという点で非常に大きい役割を果たしたけれども、またそのための地域的な協力機構もできてまいりました。したがって、伝統的な敵同士がASEANという組織をつくり、お互いに信頼醸成をするという点で戦争が起こりにくいというのが出てきましたけれども、それぞれの域内や国内における紛争については全く話が別であります。そこがまさにお触れになった点でありまして、これは従来ですと主権国家に対しては内政干渉に当たるという点で国連すら手が出ない、ましてほかの国は手を出すことができない内政問題ということでございまして、一番典型は、恐らく中台関係はその一つだというふうに存じます。この内政上の問題にどうやってかかわっていったらいいかというのが九〇年代から国連中心に始められてきた試みだというふうに存じます。  その際に、ルワンダ、コンゴ、それからエルサルバドル、フィリピンで私どもが経験したのは、実はおっしゃるように、対立が武力紛争になった段階では、国連といえどもあるいはアメリカという大国軍であっても無力です。もう一たん始まってしまいますとこれはどうにもならない。今、キッシンジャー理論を御紹介されましたけれども、実はそう簡単にいかなくて、ボスニア・ヘルツェゴビナの場合にはアメリカはイスラム社会を支援せざるを得なかった。キリスト教社会であるセルビアをたたいてイスラム社会を維持するということをやらざるを得ない。そういう意味で矛盾というのは幾らでも起こるわけであります。カトリックとプロテスタントが戦っているところで、実はカトリックが非常に多い国がプロテスタントを助けなくちゃいけないということは幾らでもある。そういう矛盾というものに実はかかわるようになったことが非常に大事だと思うんです。  かかわり方は、ルワンダの場合もそうですが、私も見に行きまして一番びっくりしたのは、教室で子供が戦うと。それから、村で大人同士が殺し合うということが同時に起こるわけです。つまり、人種戦争の恐ろしさというのはこれです。もうすべてのところで起こってしまう。こういうものを防ぐ手だてというのは、実は今ちょっと申しましたけれども、それぞれの人々が戦わなくて得る利益というものが見えてくれば、恐らくそれに対するやっぱり考え方が少しずつ生まれていくと。そういう意味でいうと、即効の、あっという間に効くような妙薬はないというのは、おっしゃるとおり絶望的なところがあることはもう事実です。私が一番深くかかわっているインドネシアでも、実はこれほどすごい殺し合いがあるというのは本当にがっかりであります。  ただ、これまで見えなかったもの、公表されなかったもの、知らなかったもの、隠されたものが続々出てきた点も実は事実でございまして、アチェのように、ずっと殺されていたのにやっと最近わかるようになったというケースもございます。  その点でいうと、国際社会がかかわる格好紛争の原因というものに協力を始めますと、過去のこういう傷というものが見えてまいります。そして、それは南アフリカがやったように、裁くのではなくて、過去を宥和していくというやり方が実は有効であると。これがマンデラさんがとられた最も有効な、つまり白人を許していく。これがさっき申しました人間安全保障に非常に近いやり方でございまして、このやり方は、実はそんなにすごいけがを覚悟して、もう重武装して行くという必要がないと。その意味でいうと、アフリカで、武器を持って出かけるPKFが非常に人気が悪くて、NGOが入っていくというのが非常に人気があるというのは恐らくそうだと思うんです。  問題は、この間のコンゴ、キンシャサ・コンゴですけれども、あのカビラが殺された。あそこのようにNGOすら敵と考える、あるいは東ティモールのように国連軍すら敵だと考えるというときに一体どうしたらいいか、ここだと存じます。その点で、高野理事がおっしゃるように、最悪の場合に一体だれがだれを守ったらいいかというメカニズムはやっぱりどこかで考えざるを得ない。  私が参考に申し上げておきたいのは、パリで経験してなるほどと思いましたのは、アメリカ軍は三十三万人ドイツにいたわけです。NATO軍といったって、あれはほとんどアメリカ軍です。そのアメリカ軍が引いていくときに、バラックがどんどんあいてきます。ここをUNVボランティアセンターにするか、PKOセンターにするかでドイツは提案をユネスコでやりました。自分たちはバラックを提供いたします、ここで国連のボランティアとPKOの訓練センターにしてもらいたいと。もちろん、フランスやベルギーやオランダが反対してこれはつぶれましたけれども、大変おもしろい議論をされました。つまり、どこかでボランティアとPKFというものをセットに考えなければ、今お触れのように最悪の事態に備えることはできない。その意味でいうと、どこかでその決断をしなくちゃいけないことはおっしゃるとおりです。  ただ、そのときに、アメリカ軍、イタリア軍として行くのか、国連PKFで行くのか。この違いというものはやっぱりかなり大きい。その限りで、川村さんがおっしゃったように、宮澤さんがかつておっしゃった、一国軍隊であることを超えて、六章半と言ったらいいんでしょうか、七章と言うわけにはいきませんので、国連憲章六章半というPKFみたいなものをやっぱり日本が積極的につくっていくことが必要ではなかろうかと。そのことは一国軍隊というものの役割を小さくすることであり、その点で指揮権は国連に渡すという決断をせざるを得ない。そこを思い切らない限り、これはできない話ではないかというふうに思います。
  40. 高野博師

    ○高野博師君 ありがとうございました。
  41. 井上美代

    ○井上美代君 井上美代でございます。参考人の本当に貴重な報告をお聞かせいただきまして感謝申し上げます。  三人の参考人の方に質問をしたいと思います。  国連常任理事国入りというのが本当に大変なんだということも、いろいろお聞かせいただきながら考えております。ドリフテさんの、アメリカと余り近づき過ぎていて、そして日本にとって何をしていくのかということ、そして常任理事国入りするその理由というのが不明であるということを指摘されたと思いました。また、川村参考人は、軍事によらぬ日本独特のやり方で貢献をしていくということを言われたというふうに思います。また、鈴木参考人のお話を伺いまして、私は「平和の文化国際年」というのを目にしております。これは調査室がこういう参考資料を毎回出していただいておりまして、大変ありがたく思っているんですけれども、この中に鈴木参考人の「ユネスコの取り組み」というのが書かれておりまして、私はそれを目にいたしました。  そこのところでは、特に一九九九年九月十三日の国連総会で採択された平和の文化宣言というのが紹介してありまして、平和が単に紛争がない状態だけではなくて紛争を平和的に解決できる状態であるとした上で、この平和の文化とは九つの認識と行動によってあるんだということがありまして、価値観だとか態度だとか伝統、そして行動様式から成っているんだというふうに書かれておりまして、いろいろそこも考えさせられたんですけれども、二つ目のところに国連憲章との関係があるんです。国連憲章及び国際法に従って主権、領土の保全並びに国家の政治的な独立を全面的に尊重し、いかなる国家に対しても国家内管轄権に属する事項への不干渉を完全に遵守するというこのくだりがあります。私は、この国内的、国際的な連帯、協力、そして対立・紛争の平和的解決にあるというところ、ここのところは非常に重要であるというふうに思いました。  特に、鈴木さんの場合には、ユネスコのところで新たな挑戦が始まっているとして書かれているくだりがありますが、ここではユネスコとのかかわりは特に問題になっておりませんし、時間とテーマの関係でちょっとそこは触れることができませんけれども、私は、国連改革との関係でお聞きしたいことがあるんです。  これは三人の参考人にお聞きしたいんですけれども、二月十六日、ついこの間でしたけれども、アメリカとイギリスのイラクへの空爆がありました。これとのかかわりでお聞きしたいんですけれども、平和的解決ということが最も重要であると私は思っているんです。このままでは、例えば日本常任理事国になっても、国連憲章に基づく行動、そして発言が積極的にできない日本、やはり常任理事国に入っても本当に世界の平和に貢献できるんだろうかという深い疑問が私にはあります。アメリカに今のように追従していた状態では真に世界の平和への貢献というのはできないのではないかと、このように思っているわけなんです。  この十六日のことが起きて、日本政府対応についても見てみましたけれども、外国の場合には、このような爆撃は何らの法的根拠もないとかそういうふうに言われているんですが、福田官房長官は、支持か不支持かと言うのもなかなか難しいと、こういうふうに一般マスコミで書かれているんですが、そういうふうに言っておられるし、川島外務事務次官は、日本が当事者となった作戦ではない、米英両国が自衛のための行為、これは括弧してあるんですけれども、行為と説明していることは承知しているが、違法適法と言う立場にないと、こういうふうに言っておられるんですね。国際的には批判のあるこうした行動について、私はやはり日本独自の考えが言えないでいるというところに非常に心配をするわけなんです。今のままでは、だから常任理事国には入れないんじゃないかと、こういうふうに思っているんです。  この調査会で、前にユーゴの問題が起きたときに何人かの参考人の御答弁をお聞きしたんです。そのときに、やはりNATOの空爆については問題がある、国連憲章違反だというのが御答弁の中にありました。  だから、そういう意味で、今度のこの安保理の決議もなく国連の決議もないままで、相手に予告もなしにアメリカ、イギリスによるイラク空爆が起きたということ、これは国連憲章、決議に何にも根拠がないわけですから、そういう意味でも、国連憲章やまた国際法に違反しているという行為ではないかというふうに思っているわけなんです。だから、この面から見ても、日本常任理事国入りをするということは拙速ではないか、私はなかなか常任理事国入りするということは大変ではないかというふうに思っているんですが、三人の参考人にお聞きしたいと思います。  以上です。
  42. ラインハルト・ドリフテ

    参考人ラインハルト・ドリフテ君) 私は、アメリカとイギリスのイラクの空爆について今コメントをしたくないんですが、これは国連憲章に違反するかどうか、割に複雑な問題ですが、でも私は、日本常任理事国になると、そういうことについてはっきり意見を出すことが全世界のために望ましいことだと思いますが、今の御意見はちょっと、日本はそんなにきれいじゃない社会に入りたくないという感じがしますが、これは役に立ちません。これはとてもきれいな気持ち、よくわかりますが、でも、多分全世界に余り説得力がないと思います。日本世界のとても重要なメンバーです。とても関与していますが、いろいろの面で、貿易・政治面などですが。  だから、そういう難しい国際問題、紛争の問題について日本からの意見があれば、ただ批判だけじゃないんです、日本はとても重要な国だから批判だけじゃないんです。建設的な意見、イラクの問題はいろいろの要素がありますが、例えばイラクはバイオロジカル・ケミカル、ニュークリア・ウエポンズの疑問がありますから、だからこれをどうするか、ほかの国の国内介入することはどの程度までできるかなどなど、そういう貢献がとても欲しいんです。  私はただ、アメリカとイギリスに任せるとよくないと思います。だから非常に賛成です。でも、そのために何とか具体的な、批判だけじゃない、具体的な提案がとても必要でありますが、日本にとても知識がありますから、だからそういう知恵を世界貢献した方がいいと思います。私の望みですよ、ほかの国も多分そうです。  今、御存じのように、アメリカとイギリスの空爆は非常に批判されていました。イギリスの中でもそうでした。家内から私はEメールをもらいましたが、随分批判しましたが、ブッシュさんは新しいトイを世界に見せることじゃないんですか、そういう批判をしましたが。
  43. 川村亨夫

    参考人川村亨夫君) 最初にイラクの件でございますが、湾岸戦争が一応の終結を見た後、またその前後に国連安保理というのが幾つかの決議をしております。  その中で、対イラクについては三つの事柄を決めたように思います。飛行禁止区域、これは私もちょっとここに資料がないので確たることは言えませんが、これは割とアメリカとイギリスが勝手に設定したと解釈しております。ただ、その後、飛行禁止区域を設定して、そこ以外の部分でいろんな不穏な動きがあるとクルド族が弾圧されるということにつながるので、クルド人保護のためにも空爆を行うというある程度の正当化というのはあったように思えます。  二番目の経済制裁を行うということ、そしてUNSCOM、国連査察団を投入して生物化学兵器、特にサリン兵器で人類を何十回も殺せるような生物化学兵器を所有しているんじゃないかという疑いはぬぐえないところがありますので、この経済制裁とUNSCOMの国連査察団の部分につきましては、国連安保理決議というのが存在していると思います。  イラクに対するいろんな論調、個人的な感情というのは世界じゅう分かれております。こういうふうにいきなり空爆をすること自体がアメリカやイギリスの都合でということで国際法違反だとか許せないというのがございますが、基本的にはイラクというのは隣国クウェートにいきなり侵入して多大の被害を与えた国であります。そして、それがどういう形で行われたかといいますと、独裁者の一存で他国への侵入が決まると。こういった国というのは国際社会では非常に危険だということがありまして、国連安保理決議がいろいろされる格好でイラクの行動を制約していこうということがあったのではないかと思います。そこの部分を外して、単なる空爆だけを取り上げて米英のやり方がけしからぬというのは、全体を見ていろいろ考えた方がよいかなという気がいたします。  それよりも、今国際世論が問題にしております、特にアラブ諸国の人たちが問題にしておりますのはダブルスタンダードの問題でございまして、パレスチナ人をあれだけ弾圧するイスラエルには非常に甘くて、そしてイラクに対してはきついんじゃないかというこのダブルスタンダードがアラブ世界の中で非常にアラブの人たちの心情を傷つけているという部分があって、アメリカはやっぱりその辺に配慮をする必要があるのかなと思います。  それと、このイラクの問題と日本常任理事国入りの可否、是非といいますか、そういう部分でございますが、私は思いますに、日本は憲法九条が専守防衛ということを説いておりますので、どうしても、この五十年間その中で我々は生きてきたわけですが、攻められて初めて考えるといいますか、逆に言えば、専守防衛ですから外のことについては余り自分たちからはかかわっていこうということが、少し意識が欠けていたんではないかという気がいたします。しかし、二十一世紀を迎えて、一歩前に出る勇気というのが今の日本人に必要だと思います。  特に今、日本は、二国間の同盟はよくもって五十年と言われる世界史の答えがありますが、五十年以上良好な関係を続けてきた日米関係が今後良好な部分でいけるのか。しかし、あの歴史的な分岐点であったハワイ真珠湾を契機に、今回いろんな事件が起きまして、それが世界史の解答が示すようにこれから波乱の日米関係に突入するのかと、そういった時代のちょうど分岐点に立っておりますので、そういうところからしますと、一歩前に出る勇気を示しつつバランスをとっていくということは日本トップリーダーの責務だと思います。  つまり、日本は資源のない国で、世界じゅうから輸入をして加工をして、時としては外圧もうまく利用して国際社会と協調して生きていかなければならないという国の絶対条件がございます。その意味で、日米関係ばかり頼っていては非常にリスクが大きいという局面がこれから必ずやってきます。その意味で、ヨーロッパアジア、そして発展途上国、そして国連といったバランスのとれた外交を展開しないと、非常に外交の幅がとりにくくなるということがあるかと思うんです。  ですから、国連対応につきましても一歩前に出る勇気を持っていただければと思います。
  44. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) まず、大変難しい問題だと思いますのは、我々ではなくてアメリカにとってこの問題は非常に難しい問題だというふうに思います。なぜならば、攻撃をしても一向に展望が見えない。攻撃の仕方はなるべく犠牲がないように空爆だけに限ってロボット化していくということをやっているわけですけれども、実は空爆の効果、とりわけこれは軍事的な効果ではなくて政治的な効果。戦争とはもう一つ政治手段でありますから、政治的な意味がはっきりなければ空爆の意味というのは実はそれだけ薄くなっていくわけです。やればやるほど実は効果がなくなっていくというジレンマにアメリカは陥っている。  その限りでいいますと、実はイラクの問題は、二番目に申しますけれども、アメリカにとっても何らかの形で決着をつける方法をもう模索せざるを得なくなってきているというふうに私は見ます。その限りでいうと、空爆とか軍事的な攻撃の政治意味、これがはっきり伝わるようにするには一体どうしたらいいのかというのを恐らくアメリカは考えていると思うんですが、そのことは別の言葉で言うと、政治的なセツルメントは何かということを考えることだというふうに思います。それは、川村さんがおっしゃったダブルスタンダードをやめるとか、幾つか手があるというふうに思います。  その意味でいうと、私は、これはもうアメリカにとって最も厄介なジレンマになっているというふうに見ます。そのジレンマに対して一言言う国がいる。これは中国であり、ロシアなわけです。それも常任理事国です。したがって、アメリカと同じことをやらなくたって常任理事国にいるのは幾らでもいますし、何もしないというのも、常任理事国として幾らでも役割があるので、日本常任理事国になるという資格がないとは思いません。これは別問題だというふうに思います。むしろ、オプションというものを求めていくことがとても大事だと思います。  もう一面、非常に違う側面の問題をちょっと議論させていただきたいんです。  実は、私どもにとってイラクとかあるいは中東問題を考える際に、やや長期の歴史的な変化というのは無視できないと思うんです。御承知のとおり、イラクとクウェートは同じイギリスの植民地であり、クウェートにおける石油利権を守るためにイギリスは一年おくらせて分離独立をさせました。その意味でいうと、サダム・フセインのようなリーダーが故国を回復するという運動としてクウェートを併合するというふうに言ったときに、ナショナリズムをくすぐり、ある面でいうとアラブ民族主義の心琴に触れるようなアピールをすることだけは否定できない。脱植民地、反植民地というイデオロギーを出せばそれなりにやっぱり説得してしまうという論理がそこに潜んでいるということは忘れることはできない。逆に言うと、あの王族のめちゃくちゃな独裁制と富の独占でできているクウェートが民主主義だとだれも思わない。クウェートと同じようにイラクが独裁政権であることは間違いないです。  こういう形をつくり上げて残してしまったことが、西欧における石油利権を守るという格好に一番ふさわしいという時代が終わっている、だからこれはぎくしゃくが起こっていると私は長期的に見ます。したがって、これは守り切れない。何らかの形で実は本格的な脱植民地と独裁でない政治体制が重なるというプロセスをこの地域につくらなければ、いつまでたってもアメリカは空爆をし、だれにも愛されない。結局、問題は解決しない。そのアメリカに対して答えを出すには、独裁者が出ないし、かつ脱植民地化が遂げられるというシステムをそこにつくっていく以外ありません。  その前例はございます。例えば、私どもは、インドネシアという国にスカルノさんという独裁者を生み、物すごいお金をつぎ込みました。それは日本の利益にもなりました。しかし、その体制が矛盾に満ちていたことはインドネシアの歴史自身が示しましたし、また、それにかわったスハルトさんが同じようなことをつくったときに私どもは向こうの変化で思い知らされました。つまり、協力の仕方やあり方ということを教えているわけです。つまり、独裁的でないあり方というものはどうやってつくっていったらいいかという苦々しい思いを私どもは既に近いところでしている。中国日本が今うまくいかないというのは恐らくその問題だと思うんです。つまり、私どもはまだ方法を見つけていない。  ただ、一つだけ言えることは、これがおもしろいんですが、バグダッド市というのは横浜市と姉妹都市なんです。そして、空爆されたときに一番だれが水道に道路に電気に電話に力を尽くしたかというと横浜市の人なんです。一方は爆弾の費用を出し、他方はそれを直す費用を出している。日本って実に不思議な役割をしている国なんです。自治体と国が全く違う。しかし、どちらも日本として彼たちは見ている。そういう二重の役割をする不思議な日本という存在があっていいじゃないかというのが実は私が知っている限りで多くのアジアの人が日本に期待している点です。つまり、一方的な軍事的な処置だけではなくて救いの手も伸べているんですね。もう矛盾に満ちている。でも、その矛盾を抱えていけるという国が一つぐらいあってもいいじゃないかと。  そういう意味で、台湾に石原さんが行って外務省が怒らない時代が来たわけです。つまり、中国が何を言ったって行けるわけです、どなたが行くか問題が若干なかったわけではありませんけれども。つまり、自治体と国が違うということをやる二重、三重の腰、二枚腰、三枚腰でやっていくということをやり続けるということが多分アメリカに対する答えを見出していく、またその答えを見出すのは私どもの役割。やや理想的とおっしゃるかもしれませんが、実はこの努力をしない限りアメリカもイギリスも手がないと。
  45. 山本一太

    ○山本一太君 自由民主党の山本一太です。  まず、ドリフテ参考人にお聞きしたいと思います。  ドリフテ先生が最近、日本で出版された本の推薦文を見たら、仲のいい議員とかいって私の名前も書いてあったので、大変光栄に存じております。  私、国会議員の中で、国連シンパということでいうと、本当に数少ない国連シンパだというふうに自負しています。一時、国連機関で勤めていたこともありますし、自民党の中で国連貢献議連というのを呼びかけてつくって、いつも国連の方が来るとセミナーをやったりしていましたし、外務政務次官のときもニューヨークに行って、何十人という国連大使や国連関係者にお目にかかってきました。ただ、それがもう最近、常任理事国をめぐる動きを見たり、あるいは国連をめぐる新しい環境の変化を見たりしている中で、本当にこんなに国連に思い入れる必要があるのかというふうに真剣に考えてきました。  さっきドリフテさんが、日本のプレゼンスが縮小する前に常任理事国入りになることが一つ戦略だと言ったんですけれども、この間アメリカの議会の関係者の方々と話して、日本パッシングという、日本をパスしてほかの国を見るという傾向を解決する根本的な方法は何かと聞かれたので、それは日本という国が再生してチャーミングな国にもう一回なる、経済大国として将来もあるし、非常におもしろい存在だと言われた八〇年代のあの輝きを取り戻すしかないと思うんですけれども、例えば日本が再生に成功して、もちろん政治がしっかりやって日本を再生させなきゃいけないんですが、再生したとしてもそんなにもう国連に思い入れる必要はないんじゃないかというふうに最近思ってきて、今度、国連貢献議連で常任理事国入りを何かメーンテーマとするところを外そうかなというふうに最近真剣に考えています。  別に国連を通じてすべてをやる必要も最近ないんじゃないかと思っていまして、例えば援助だってマルチの場は国連だけじゃないし、バイの援助だってできるし、そういう中で国連離れといいますか、国連に思い入れないで日本国際社会でプレゼンテーションしていく、日本存在感を高めていくという戦略についてどう思うかというのが一点。  あともう一つ、簡単に申し上げますが、さっき川村さんがおっしゃったような、いずれにせよ国連というのは完全なシステムじゃないけれども、大国も小国も名目上は同じ資格を持って参加できる唯一のフォーラムだと。安保理は確かに国際社会オピニオンリーダーの役目を果たしている中で、ドイツ安保理常任理事国入りに興味を示していないという理由は何でしょうか。それはEUの盟主の一国としての自信なのか、あるいはヨーロッパとのつながりの中で果たせる役割で十分と考えているのか、そこをちょっと簡単にお答えいただければと思います。  それから、川村参考人にもお聞きしたいと思うんですが、私は、川村先生がおっしゃった、日本グローバルパワーとして、地域代表という観点からも、あるいは財政的な貢献という観点からも、あるいは戦後ずっと戦争という手段を使わずにまさに外交をもってやってきたという特異な立場、あるいはよく言われる唯一の被爆国みたいなそういう立場から、当然常任理事国入りをする資格も能力もあると思っています。さっきおっしゃったように、日本一国だけが入ればいいじゃないかというのは全く賛成で、戦略的にはこれはほとんど無理だと思いますけれども、私も、政務次官だったときも含めていろんな国連関係者に会いましたが、日本に問題があるという国はほとんどありませんでした。ですから、それについては大変賛成です。  しかし、よく日本常任理事国入りということが話題に上ると言われるのは、常任理事国として日本が何をしようとしているのか、そのイメージがはっきりしていないということなんですが、私はやるべきことは幾らでもあるし、はっきりしていると自分の中では思っているんです。この質問は、やっぱり川村先生は特に国連についてはお詳しいのでお聞きしたいので、先般、波多野大使にもお聞きしたんですけれども、日本常任理事国としてやれることは何か。例えば、核の面でイニシアチブをとるとか開発の面でさらに新しいイニシアチブを出すとかあると思うんですが、川村さんが総理だったら、川村さんが国連大使だったら最初に常任理事国として何をやるかということをぜひお聞きしたいと思います。  それから、これは簡単で結構なんですが、川村先生はアメリカ政治のまさに数少ない専門家のお一人なので、ブッシュ政権になってアメリカ国連政策がどう変わるかということもぜひあわせてお聞きできればと思います。  それから、最後鈴木参考人にお聞きしたいんですが、さっきおっしゃった日本という国はいわゆるルールセッターになることが苦手だというお話は、私は大変大切な話だと思っていまして、個人的なことになりますが、今小論文を書いていまして、首相公選の後の私の小論文なんですけれども、二十一世紀のルールセッターを目指せというタイトルなんですが、それは二十一世紀にルールメーカーになるために政治が何をするべきかというそういうテーマの論文なんです。金融の世界ではとてもルールセッターにはなれそうもないと、調べてみたら。だけれども、携帯電話とかアニメーションとか、あるいは、いわゆる感性の世界では十分ルールセッターになれるんじゃないかということで今一生懸命資料を集めて論文をまとめているんです。  私が先生にお聞きしたいのは、特に、国際社会におけるルールメーカー、ルールセッターになるということは日本は苦手だと。例えば、国連においても知的イニシアチブを出すというのは北欧の国なんかに比べるととても苦手なわけなんですね。これはどういうふうにしたら解決できるのか。根本的には教育なのか、あるいは外交戦略なのか。そこら辺のところについて、国連に必ずしもすべて関係がなくてもいいんですけれども、ぜひ先生の御意見を伺いたいと思います。
  46. ラインハルト・ドリフテ

    参考人ラインハルト・ドリフテ君) とてもおもしろい質問です、答えられるかどうかわかりませんが。  まず、日本パッシングのことですが、私は日本にあるフラストレーションをよくわかっていますが、安保理改革、そして国連改革は余り進んでいません。日本は、日本人から見ると適当な地位をもらっていない、そういうフラストレーションが出てきます。これ、私はよくわかります。  でも、二番目のことは、国連は重要か、これは自動的にそういう質問、疑問が出てくると思います。これ、私はここで非常に強い意見を持っていますが、バイでできることは限られています。国連は相変わらず重要です。国連は時々非常に能率の低い組織だと思いますが、でもしようがない、今の国連よりいいものがないんです。今の国連よりいい国際組織はつくられないんですが、今の国連を改正しなければなりませんと思います。日本はもちろん経済力が大きいから、ODAがあって、だからバイで非常に影響力を与えることできますが、でもこれは限られています。  一つの例を挙げましょう。例えば東アジア環境問題ですね。日本お金があります。中国環境問題の問題を持っていますね。でも、日本はUNエンバイロンメンタル・プログラムに通じなければなりません。なぜならば、中国の側にいろいろの政治的なセンシティビティーがありますから。だから、これを防ぐために、これを越えるためにやっぱり国連組織の利用が必要であります。これは一つの例だけです。でも、そういう例が多いと思います。  だから、日本はまず、国連はなぜ日本国益のために重要か、これは分析しなければなりません。これは感情的にアプローチすることはできないんですが、これは本当に深く分析しなければなりません。私は、結論として、国連組織は、国連の制度は日本国益のためにとても重要です。ないのはいけません。  そして、第三の質問はドイツの態度。  ドイツは、私が言ったように、EUの中で指導性を果たして、いろいろの問題で非常に忙しいんです。アジェンダ・オーバーロードの問題がありますが、でもこれは、ドイツ国連は重要じゃないと解釈することは間違いだと思います。ドイツは相変わらず予算的、人的、アイデアの面で国連貢献しましたと思います。これは事実だと思います。だから、ドイツ国連は重要じゃないという解釈はできないんだと思います。
  47. 川村亨夫

    参考人川村亨夫君) 山本先生、二つの御指摘、御質問がございましたので、まず最初の方でございますが、日本常任理事国としてやれるべきイメージといいますか、やれることは何かということでございます。  やはり、何よりもアジア太平洋地域代表としての声を国連安保理の場に届けるということは重要な任務の一つではないかと思います。特に、アジアといいましても、東南アジアASEANができておりますが、東アジア北東アジアというのはなかなか多国間の枠組みができてきておりません。そして、アジア全体につきましても、ASEANの下部組織であるASEANリージョナルフォーラムという、ARFが唯一信頼醸成のためのフォーラムという協議の場を提供しておりますが、実質的に安全保障の問題を話す機構、そしてOSCEとかNATOのような確固とした実行力を持つ安全保障の仕組みがアジアでできておりません。そういったことをやはり安保理常任理事国としてのステータスを得ましたら中国と対等に話し合いまして、日本を取り巻くアジア多国間安保について枠組みづくりをしていくということが日本国益にもかないますし、一番重要なことかと思います。  そしてもう一つは、先ほど来申し上げております国連PKOの問題でございます。  これは私、やはり先ほど申し上げました緊急展開軍というものをぜひ国連もつくっていくべきではないかと思います。鈴木先生も言われましたように、各国の軍隊の役割を少し制限するような形。それはどういうことかといいますと、実は国連PKOアメリカ軍が消極的ないし参加しないというのは、指揮権をとられるということが根本的な問題でございます。その意味アメリカ軍は非常に抵抗いたしますが、国連PKOの場合に、アメリカ軍から離れた指揮権を持って国際社会の良識が反映できる緊急展開軍を国連自体が持つということは必要かと思います。そのための訓練基地を沖縄に持ってくるということも一案かと思います。  いずれにせよ、最近の沖縄の問題、それから、ここ十年続いております沖縄と駐留米軍のあつれき等を考えてみますと、大きな国際情勢の中でも沖縄駐留米軍が撤退していく方向というのは避けられない状況かと思います。現にアメリカはそういった事態も想定しまして、自国領のグアムのアンダーソン基地の拡充、そしてグアムの港湾に原潜が寄港できるようにということで今一生懸命拡張工事をやっております。いずれはグアムが太平洋艦隊及び中東までにらむアメリカの兵力の中心基地になるという事態が想定されます。  そうしますと、沖縄にとっては非常に好都合ですが、一方で北朝鮮の圧力といいますか脅威が去らない。中国の海軍等、増強が進みまして、海洋部分で沖縄の存在が非常に中国の脅威下に入ってくるということになりますと、尖閣列島の問題もございますので非常に難しい選択を迫られる。その意味で、国際機関の誘致、特にこういった緊急展開軍の部分を沖縄が持てば、非常に安全保障上、割と有効に機能するのではないかという気がいたします。  二番目の御指摘のブッシュ政権の国連政策でございます。  ブッシュ政権のインテレクチュアル・クオーターバック、知的司令塔と言われるコンドリーザ・ライス安全保障担当補佐官の論文等を見ましても、いわゆる冷戦時代の力の政策というものに色濃く影響されまして、こうした多国間の部分、特に国連政策というものについて大きな進展があるということは少し期待薄かもしれません。その前の民主党政権でかなり影響を持ちましたブレジンスキー元補佐官も、日本につきましてはグローバルな部分貢献する方がいいということを言っておりましたが、これも安保理常任理事国入りを後押しするというのではなくて、いろんなグローバルイシューに金だけ貢献させるという意味合いが強い戦略でございました。  その意味で、本音の部分でいえば、常任理事国入りがここまで時間がかかっているというのも、アメリカの思惑として、果たして自分たちと同じような拒否権を持つ常任理事国のステータスを与えると、アメリカの影響下から次第に離れて、アジアでのパートナーという部分からそれていくんじゃないかというような危惧を内心ひそかに抱いているのではないかという気がいたします。  その意味で、ブッシュ政権の今後の国連政策というのは非常に注目すべきところがありますが、それもやはり日本の国論の統一といいますか、そういった部分でこの常任理事国入りというものをアメリカにはっきり意思表示して、その後アメリカのいろんな本音の部分まで含めまして交渉して、この実現に尽力していただきたいと、外務省のサイドにはそのようにお願いしたいところでございます。  以上でございます。
  48. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) 今の問題にも大変関心があるんですけれども、御質問いただきましたルールセッティングはなぜ私どもに難しいのかということについて、私なりの議論をさせていただきたいと思います。  実は、私どもも含めて、近代国家をつくるときに、おくれて百年程度で先進国の三百年の歴史に追いつくという経験をした、その最初が日本とかドイツとかイタリアという国々だったというふうに思います。こういうのを後発先進国と通常呼んでいるのは御承知のとおりであります。  それは御承知のとおり、百年たっても実はイギリスとかフランスのどこかをやっぱりまねしていると。したがって、例えば民法にしても刑法にしても商法にしても憲法にしてもさまざまな形、実は国の形を形どるようなもの、社会を形どるような仕組みというのは輸入しているわけであります。その意味でいうと、この国々は物まねということから実はスタートしていくという点でいうと、創造よりは、いかに早くうまく仲間入りするための物まねをするかということがこの百年間の重要なテーマであったという点でいえば、ルールセッティングではなくて、ルールをいかに習得し、いかにこれをうまく使っていくかという点では日本ドイツも物すごくまねがうまい。  実は、アメリカを調べてみると、大変おもしろいんですけれども、一九二〇年代に、御承知のとおり国連の前身であります国際連盟をつくって、実はつくったんだけれどもメンバーになれなかった。二十何年にわたる学習の時代、これはディーン・アチソンという後々の国務長官をやられた方の日記に出ておりますけれども、学習のプロセスが何と二十五年以上続いたと。日本はその学習をまだしている最中だというふうに思いますけれども、その物まねをしていくプロセスなんだと。  しかし、それは一面そのとおりかと思うんですが、もう一面、最近注目され、アジア国々からも、そしてアメリカからも注目されているものが幾つかございます。それは、まねをしたんですけれども、できたものがひょっとするとかなりの創造性というものを含んでできているのではないだろうかと。つまり、クリエーティビティーというか、新しいものをつくっていくということなしにはまねすらできない。  一番今問題になっているのは、例えば日本の民法というのはフランスの民法典を、ナポレオン法典をまねしてつくったわけですが、でき上がったものはまことに創造的な結果になっており、フランス民法典とは全く違います。日本的な状況に非常に適合されていると同時に、フランスのものを普遍的ではなくてフランスの法律にしたわけです。彼たちが普遍と呼んでいるものを実は単にフランス的なものでしかなかったというように、相対化する能力なしにはできない。つまり、ヨーロッパがそのままグローバルではなくて、ヨーロッパヨーロッパなんだと。それと同時に、私どももやっぱり日本日本であるということを生かすという能力。  その意味でいうと、大変おもしろいんですけれども、例えば最近注目されておりますのは、総論的な議論ではなくて各論的な議論で一番いい例は交番です。交番は、カリフォルニア州に輸出されましたし、シンガポールに輸出されました。これは、治安警察でない、行政警察でない、市民警察というふうに位置づけられているわけです。つまり、警察のコンセプトというものをやっぱり変えていったというふうに言われております。  もっとあるのは、権力的でない住民台帳。住民台帳を持っている国というのは本当に少ないんです。こういう伝統というのを実はどの国も非常に重要な技術、ノウハウという格好で注目するようになりました。なぜならば、実は医療にしたって教育にしたって保険にしたって食糧配布にしたって労働の確保にしたって、住民台帳を正確に持っていなければ、しかもこれを平等に扱う行政がなければ何もできない。そういう意味でいうと、政府の役割というのは政策を決めるだけではなくてサービスとグッズを国民に届ける、つまりお金をばらまきサービスをばらまくわけでございますけれども、これを担うのは実は自治体であります。  そういう基礎的な行政のメカニズムというような点につきましては実は非常に日本はすぐれたものを持っておりますが、日本の人は何と考えるかというと、日本のものは日本でしか通用しないと考える。日本日本人しかわからないと考える。日本語は日本人しかできないと考えてしまう。こいつはユニークなんだと考えてしまう。実はそうではなくて、ドリフテさんが日本語で説明されていますように、日本語も結構国際語になり得る。大国の中で公用語に要求しない最も珍しい言葉はと言われたら日本語です。御承知のとおり、大国でも何でもない国が公用語として国連で頑張っている。スペインがそうであります。それは非常に珍しい国なんですね。  したがって、そういう覇権的でないルールセッティングという点につきましては、恐らく二十一世紀、非常に重要になると思いますけれども、私どもは非常にたくさんのものを持っているに違いない。そういう各論的な世界でのルールセッティングに関しては、私どもはかなり貢献できるし、そこを発掘していくことがとても重要ではないかというふうに存じます。
  49. 沢たまき

    沢たまき君 三人の先生方、本当にありがとうございました。私は、きょうからこの委員会に在籍させていただきまして、本当に興味深く聞かせていただきました。  一つ鈴木先生に伺いたかったのは、紛争の千人を超えたこの表なんでございますが、一つはこの亡くなった方の数の中に子供が何人ぐらいいるのかなと。大分占めていると伺っているんですが、どのぐらいの子供の数がいるのかなと。  それから、私は、国連は、川村先生がおっしゃったように、とてもこれから二十一世紀は大事じゃないかな、人類の共闘する結集軸だろうかなと思っております。そうなりますと、国益だけではなくて、国連が、もっと一人一人の市民といいましょうか民衆といいましょうか、その顔をもっと見せてもらいたいし、逆に言うと一人一人の各国の民衆が参加できる国連、もちろんNGOが行ったりNPOが行っていらっしゃいますけれども、もっともっと行かれない人たちも参加できる、そういうシステムにしていただきたい。女性でございますので、本当に紛争という名の戦争もなくしていきたい、女性と子供がどこの国でも安心して暮らせる、難民は少なくしていきたいという思いであります。そうするためには、鈴木先生がいろいろと各論でとてもおもしろいことをおっしゃったので、ああそうだそうだと思いながら伺っておりました。  そういうものと、それからもっと大きなものもあるでしょうけれども、二十一世紀国連をそうしていきたいという私の心は、気持ちは間違っているのかいないのか。そうすることがもし間違っていないとすれば、日本はそれに向かってどういうメッセージを発信していけばいいのか。女性の連帯もありますけれども、そういうふうに一日も早くなってもらいたいという思いがあります。  それともう一つは、何かするのにもユニセフも国連もとてもお金がないと今伺いました。そういった場合に、NGOだとか企業だとか個人だとか、一人一人の民衆がかかわっていこうというときには、国連民衆ファンドみたいなのと、それから国連民衆フォーラム、社会フォーラムといいましょうか、そういうものの創設をぜひやりたいと思っているんですが、皆様方の御意見を拝聴したいと思っております。
  50. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) まず最初に、子供の犠牲がどのぐらいの割合であるかということでございますが、ここには掲上してございませんけれども、実はユニセフの統計を見ますとこれは非常にはっきりしているんです。女性、子供という非戦闘員の犠牲はもちろん非常に多うございます。  ただ、女性、子供以外に、つまり戦闘員になる可能性のある男性、成人、老人も実はひとしくやられておりまして、これが実は、今日における紛争の総力戦化と私ども呼んでおりますけれども、国と国がぶつかる場合も戦闘員、非戦闘員区別なく殺してしまうというのを総力戦と申します。これは二十世紀戦争に特徴的でございまして、原爆はその最たるものであります。その意味では、関係ない人も全部殺してしまう、そこにいる外国の人も死んでしまう。  つまり、そういう意味でいう国際化が遂げられた時代にすべての人が犠牲者になるという可能性が非常に高いわけでございますが、今起こっている紛争はその中で人種を宗教を区別しながら戦っていくということになりますので、私どもが知っている限りでいうと、女性と子供、社会的弱者の被害者が決して少なくないというふうに思いますが、実は単独の統計がございませんので、予測をユニセフの報告でしているにすぎないというふうに思います。  ただ、一つだけ申し上げますと、こういう紛争は現在途上国で圧倒的に起こっております。途上国の人口構成からいきますと、日本のように高齢社会ではございませんで、人口の半分近くが実は二十以下の若年層でできているということから考えますと、若年層の死者が非常に多いということは間違いないというふうに言ってよろしいかと思います。
  51. 沢たまき

    沢たまき君 アフリカ三百六十万のうちどのくらいというのは明確には出ていないということですか。
  52. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) はい、出ておりません。そういう統計はございません。
  53. 沢たまき

    沢たまき君 ただ多いということですか。
  54. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) 多いというふうにしか……
  55. 沢たまき

    沢たまき君 どのくらい多いんですか。何割という予測もできませんか。
  56. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) 予測はつきません。ユニセフからの予測でいきますと、先ほど申しましたように若年層の人口構成比が非常に高いので、四割程度ではないかという推察がございます。  それから、難民につきましては、次回緒方先生がここでお話をされるので緒方先生にお聞きになっていただければわかりますが、ここの報告書には実は詳しくは出ておりません。残念ですけれども、私どもはそこまでつかんでいないというのが事実かと存じます。
  57. 沢たまき

    沢たまき君 大変関心があるんですけれどもね。
  58. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) おっしゃるとおり、実は国連お金がないんですけれども、多くの専門機関はさまざまな形での、エクストラバジェットと呼んでおりますけれども、国連機関では全部政府の分担金で参りますけれども、それ以外に寄附とか、ビル・ゲイツが十億ドルでございましたでしょうか、ああいう国連に対する民間の基金とか、日本の企業の方も物すごくたくさんいろいろな格好でユネスコなんかには寄附をしてくださっておりまして、エクストラバジェットはかなり大きいし、多分こういう特別な、難民高等弁務官事務所とかユニセフとかユネスコもそうでございますが、専門機関はかなりの程度を分担金ではなくてそういう寄附に頼っている、あるいは頼らないと新しい仕事ができなくなってきているという意味では、財政的にも開かれつつあるというふうに言えるのではなかろうかと思います。  これは川村先生の方がよく御存じなので、お任せします。
  59. 川村亨夫

    参考人川村亨夫君) 今の鈴木先生のお話につけ加えて議員にお答えさせていただきます。  数年前、国連の将来像に関してフリーディスカッション的に世界の有識者が集まってシンポジウムが開かれたのがございまして、二十一世紀国連システムというタイトルで論じたんですが、そのとき三つのキーワードが最終的に出てまいりました。それが地球益、人権人間安全保障ということで、これからの国連というのはこの三つのキーワードを生かしながら組織をつくっていきましょうということでございました。  そういった意味では、従来の事柄とは違いましてもう少し幅広い、今、議員が御指摘になりましたように、幅広い人たち、グループが集まって自由な討議をする場の国連、そこに国連が場を提供する、フォーラムを提供するということがもう少しあっていいんじゃないかという深い反省がされました。  その中で興味深かったのは、やはり従来の外交官が行う議論とか政策の展開というものは、ある意味では失敗が許されないといいますか、官僚の方々はそういった意味では非常に縛りがあるといいますか、発言にも気をつけないといけないという部分がございますが、これが例えばNGOとかNPOの方々ですと、もう少し自由な議論ができて、こうしたキーワードにつきまして世界の人たちと認識を一つにできるのではないかということがよく言われております。  その場合に、私もここに書きましたが、いずれにせよ、不確実な未来に備えて加盟国共同作業を行うという、その不確実な未来ということを見ますと、そこには当然リスクもある、失敗もあるということが出てきます。その意味では、いきなり政府の人たちの交渉事で失敗が許されないという状況の前に、やはり多様なグループの、NGO、NPOの方々がフォーラムをつくってそういった不確実な部分について論じていくということで、国連もそういった方々に積極的に場を提供するということで、それは一つ方向性かと存じます。
  60. ラインハルト・ドリフテ

    参考人ラインハルト・ドリフテ君) 私は、参加できる国連、とてもいいアイデアだと思いますが、全世界の知恵、全世界の金銭をもっと能率的に利用することはとても重要だと思います。でも、いい人は足りません。だから、国連改革でとても重要なことは、今の参加できる国連の提案はよくあらわしますが、例えば予算の管理の問題になります。  横領を防ぐために、最近はいろいろのスキャンダルが出てきましたが、例えばUNHCRなどありましたが、そういうスキャンダルがあると、国連組織のイメージを悪くすることです。そういうことを防ぐことが非常に重要だと思います。  もう一つは、オーバーラップを防ぐことです。そして、もう一つ私の心配は、政府の責任を逃れる手段になります、NGOを使うと。だから、NGOを入れてもっと参加させる。参加が許されることは非常にいいんですが、でもこの予算の管理、オーバーラップを防ぐ、そして政府の責任を逃れる手段にならないように注意しなければなりません。  だから、結局、もっとよく成立している国連組織をつくらなければなりません。もし今のうまくない国連組織にどんどんどんどんNGOの力を拡大して入れると危険があります。うまく整理できないと逆効果になります。例えばアパシーのことが出てくるかもしれないんです。だから、参加できる国連は私は非常にサポートしておりますが、でも同時に国連組織を改正しなければなりません。
  61. 今井澄

    ○今井澄君 三人の参考人の皆様方には本当に有益なお話をありがとうございました。  それで、今もう大分私のお聞きしたいことも質疑の中で出てきたんですけれども、国連というのに私どもはかなり大きな期待をしているけれども、現実にはなかなかうまくいっていないと、さっき山本理事の方からもそういうお話があったんですが、にもかかわらず、私どもは世界の平和と世界人々の幸せのために、よりどころとして国連というものの改革を通じて、もちろんそれ以外にもいろんな組織があるわけですが、やはりそこに希望をつないでいきたいと思うんですね。  だから、そういう意味では、よきにつけあしきにつけ今国連を動かしている中心安保理だとすると、安保理改革一つのテーマとして我々が国連改革に取り組むというのもこれは常識なんだろうと思いますし、当然日本は、三人の参考人のお話でも、特にドリフテさんの最後のお話で日本がいないとだめなんだよというお話がある、そのぐらいの自覚を持って当然、常任理事国になってこういうことをやりたいというのはごく自然なような気が私はいたします。  しかし、そうはいっても、実は日本常任理事国になっていくというのは可能性としては非常に難しいようですね。しかも、現実に日本国連外交をやっている前線の人たちは外務省の官僚であって、その人たちの話を聞くと、どうも安保理に入っていないと情報が入らないからというか、要するにトップに入りたいというふうなことだからかえって難しいという意味で、むしろ私は、この間参考人のお話をお聞きしてきた中では、常任理事国に入りたいとかなんとかということは別として、入って何をやるかということが問題なんだから、何をやるか。  例えば、先ほどのアジア地域安全保障体制をつくっていくとか、あるいは開かれた国連をつくっていくとか、もし常任理事国に入るとすると、大国中心主義の安保理から開かれた安保理にしていくためには拒否権なんというものをまずなくしていくとか、そういうことでもやっていくような、そういう活動を常任理事国になるならないにかかわらずやっていく方がいいのかなと思うので、余り常任理事国入りだけを目的としてもどうもどうかなという気がするんです。  ところで、そのことに関連して、実はドリフテさんのお話の中で、やはり軍事への参加は非常に大事なんだということを、事前に配付された資料にも書いてありましたし、きょうも、平和へのただ乗りは許されないんだ、法的には常任理事国になったからといって強制されるものではないけれども政治的には常識だよというお話をいただいたんです。  私も、やっぱり今度の東ティモールの問題を見ても、あるいはかつてのルワンダの問題を考えても、血を流すことは一切嫌だよと、あるいは憲法の問題もあるわけですけれども、そういうことが通らないかなということはわかります。それに、先ほどからの緊急展開部隊というのをつくって、これはもう完全に一国の思惑ではなくて本当に国連PKO部隊としてやることについては、これは日本国民の中にもそういうことに参加したいという人もいるわけですから、それはそれでやっぱり将来的には行くべきなんだと思うんです。しかし、にもかかわらず、私は平和へのただ乗りは許されないという先ほどのドリフテさんの御発言についてはちょっとひっかかることがあるんです。というのは、それは一体どなたが言っておられるのかということなんですね。  例えば、湾岸戦争のときに百三十億ドル出した。百三十億ドル出してそれで済むと思っているのかいというようなことを私も言われていると聞いたんですけれども、一体どこでどなたがそういうことを言っておられるのか。そして、本当にそれは日本立場もお考えになった上で言っておられることで、日本に対して、いや、もっと積極的になれよというアドバイスも含めて言っておられるのかどうかがいま一つつかめないものですから、ちょっとその御発言が気になったんです。  これはドリフテさんにお聞きしたいだけではなく、川村参考人にも鈴木参考人にも、いろいろな国際的な場でも活躍されているわけですので、日本が戦闘部隊を出さないということについて、本当に日本立場もわかった上で忠告的にそういう意見があるとすると、どういうところでそういうのをお聞きになったか、また、それに対してどういうふうにお答えになったかということをぜひお聞きしたいと思うんです。  それからもう一つドリフテさんのレジュメの中で、これはちょっと御説明をきょうは受けていなかったような気がするんですが、ひょっとしたら私の聞き間違いかもしれませんが、日本語に訳した二ページ目、3の⑤ですけれども、ドイツの例では過去の罪を十分に認識した上でPKOの全面参加ということ。  私もかねがねドイツ日本の違いというのを感じてきているんですけれども、日本もそれなりに国際貢献をいろいろな形でしていく上ではやはりまだ過去の清算が済んでいないというふうに私は認識しています。その点、ドリフテさんからごらんになって日本はどういう点が過去の清算について不足しているとお考えになるか、それをお尋ねしたいと思います。  それから、全然これと離れますけれども、衆議院の予算委員長がまたいろいろな発言をされたということで今問題になっておりますけれども、鈴木参考人アジアの専門家でもいらっしゃる、日・アジア関係の専門家でもいらっしゃいますし、川村参考人は、先ほどアジア代表として安保理に入るべき、常任理事国になるべきだというお話があったんですが、衆議院の予算委員長の発言のように日本が本当にアジア代表になれるのかどうか、やはり過去の清算との関係で今度の野呂田さんの発言についてどうお考えになるか、もしお聞かせいただければと思います。
  62. ラインハルト・ドリフテ

    参考人ラインハルト・ドリフテ君) 私が言ったのは、政治的には完全なPKOへの参加は絶対必要だと思います。日本国内状態がわかっても、これは外国に得られないんですね。外国を説得できないと思います。そして、簡単にこの上に説明できないんですが、これはお金と血、だからこの引きかえでできないんです。  そういう外国で意見がありますが、私は、例えばロシア中国PKOへの参加にちょっとメンションしましたが、PKOに参加することは、大幅に参加する必要がないんです。少しだけ参加してもいいんです。問題点は、完全に参加するですね、条件つきの参加じゃないんです。  例えば、今、ティモールの例はとても悪いんですね、この印象世界に。ティモールはアジアのところです。でも、日本はわずかに三人だけ行きました、過去のことですね。これは外国では余り理解できません。そして、自衛隊はウエストティモールに行きました。日本の場合、いつもきれいな世界、安定している世界だけを参加したいというイメージが出てきます。  そして、この湾岸戦争の十三ビリオンダラー、これはすごいお金です。私は外国で日本貢献の説明をすると、これは非常に強調しています。でも、同時に私は相手の理解もわかっていますが、これはあくまでもお金だけです。これは血じゃないんですね。リスクがないんです。これはある意味ではアンフェアかもしれないんです。ほかの国はそんなにたくさんお金を出しませんでしたが、これはそういう印象ですが、でもこのフラストレーションはよくわかります、先生。  そして第三は、ドイツの過去に対しての態度が、ドイツは一九四五年以後、いろいろの苦しい過去のことを越えるためにいろいろの犠牲を払いました。いろいろ周りの国とのリコンシリエーションのために働きましたが、これは簡単ではなかった、苦しいこともありました、心理的には。でも、ドイツはそういうことをやってきました。歴史を越える、ドイツ語の言葉があります。歴史を越える努力をしましたが、今もやっていることですが、だから周りの国の信頼をもらいました。例えばドイツは国際教科書研究所があります。周りの国と一緒に歴史の教科書をつくります。あるいは、周りの国の歴史の中でどう相手の国を見ていますか相談していますが、そういういろいろの国も支援しているものです。日本では、いつも国は、これはプライベートなものです、国のお金は出しませんなど、そういう態度です。  だから、その努力の上にドイツPKOに全面的に参加することができましたが、周りの国の信頼性を受けてからそういうステップができました。ドイツ人として過去の問題に非常に興味がありますが、日本では自分の戦後の政治体制に対して余り信頼がないんです。これはまずおもしろいんです。そして、この歴史を越えることも余り努力していないと外国で見られています。だから、これはちょっと悪循環ですね。周りの国の信頼をもらえないんです。でも、ドイツのような努力もしていないんです。  そして、自分の政治安定にも十分信頼がないんです。だから、日本も自分の政治制度に対して十分な信頼がないのになぜ周りの国が信頼できるか、そういうことになります。だから、PKOに全面的に参加できない理由は、周りの国が日本に反対しています、もうこれは悪循環だと思いますが。これはどこかに出なければなりませんと思います。
  63. 川村亨夫

    参考人川村亨夫君) 今、理事の御指摘三点ほどあったと思いますので、手短にお答えさせていただきます。  湾岸戦争のときにいろいろ言われまして、小切手だけでいいのか、血を流す必要はないのか、それ以来、日本人は非常に強迫観念的に国際貢献疲れといいますか、みずからの問いかけに非常に疲れている部分があるかと思うんです。私も国際経験が長かったですので、実際、中国とかアジアの方々、アメリカロシアの人たちと意見交換することは多かったわけですが、特に軍事貢献とかそういうのを強く求めているということは特には感じませんでした。  各国の有識者と話しますときには、やはり日本の憲法の事情をよく承知しております。そして、ある意味では日本の憲法にあこがれを持っております。その意味でああいう憲法を持てた日本というのはやっぱりうらやましいという部分があるかと思います。  特に、カンボジアの場合でもああいう形で国連PKOにも参加いたしましたが、基本的にはカンボジアの将来にもかかわっていくというブループリント、国の将来を、設計図を描ける、ブループリントを描ける国、すなわち鈴木先生が先ほど来たびたび申し上げていらっしゃいますが、いざとなったら財政的に援助ができる、経済復興まで含めて国の将来にかかわっていける、そういった青写真を描ける、手助けできるという国はそうそう世界にはないんですね。その意味で、そういったブループリントを描ける日本に軍事貢献まで求めることの愚といいますか、そこまでは彼らは、やっぱり有識者ほどそういうことは考えていないような気がいたします。  そうしますと、やはり日本国内事情といいますか、湾岸戦争以来そういったことがどこからか聞こえてきて、常に国際貢献をしなきゃいけない、どこまでやれば世界的に満足できるかどうかというのは、これはひとえに日本人の心の持ち方だと思うんですね。  では、どこで日本人はそういった国際貢献に関して決着した態度をとれるかどうかというと、一点だと思うんです。それは、二十一世紀において日本という国がこの地球にあってよかったなと思える国になることが国際貢献の我々自身が見出す解答なんだと思うんです。ですから、いろいろ言われますが、世界の事情は意外とそういうところにあるのかなという気がいたします。  常任理事国に仮になった場合、情報がふんだんにとれるというのは、これはもう当然でございまして、湾岸戦争当時、常任理事国入りしておりませんでしたので、外務省の方々がどれだけ御苦労されて、アメリカ等から随分御苦労されて情報を入手して本省の方にお流しされていたかという御苦労は本当に見ておりますので、そういった意味では別の思いがございますが、先ほど冒頭で申し上げましたように、外務省が情報を独占する、その側面も非常に怖いものがございます。その意味では、常任理事国入りという国の政策の大転換につながるような、外交政策の大転換につながるようなことが仮に実現したとしましたら、こうした議会の、調査会等を含めまして議員の各位のそういった外交的な論議、そして専門家としての外務省、そして良質なマスコミですね、短気に走らず興味本位でなく、良質なマスコミというこの三者でもって外交政策を決めていくということだと思います。  地位が人を育てるということは我々の周りにたびたび見ることですが、安保理常任理事国の場合は地位が国を育てるということにもつながるかと思うんです。  そういう重さであれば、一番最後の御質問ですが、議事録からこれは削除していただきたいんですが、予算委員長という議会を代表するポジションにおられる方の発言もおのずとやっぱり重くなると。常任理事国入りの議会を代表する方の発言というのも重くなるという意味では、地位が国を育てるということにもつながるかと思います。
  64. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) 一番最後の一番厄介な問題から始めさせていただきます。  かつて多くの先生方に私もお願いをしたんですが、御発言をされるときにはできるだけアジアの中でやっていただきたい、日本の中だけでやらないでほしいと。理由は、今も先生御自身が「アジア日本」という表現をされました。その「と」は、アンドであれば別のものであるということを示す場合がございます。つまり、アジア日本は違うということを言っているように思われます。他方、アジア代表、なぜなんだという質問をされました。矛盾しているわけです。アジアでないと言いながらアジア代表であると。これは、近代百年ぐらい、脱亜入欧論の中でさんざん日本がつくってきた一種のイデオロギーだと存じます。  これをどうやって克服するかというのは随分いろんな格好議論がされておりますけれども、やはりこれからアジアの中で発言をしていくという勇気を先生方に持っていただきたい。御自身の歴史的な観点、価値観、評価というものを中国の方や韓国の方や東南アジアの方にぶつけるという勇気と、それだけの度胸を持って発言をしてもらいたい。日本でこちょこちょ言うんではなくて、やっぱりはっきりと、日本語で結構ですから言っていただきたい。それに対してお答えもしていっていただきたい。議員の先生方の発言を官僚が後でいろいろとびほうするという、川村さんがさっきちょろっとおっしゃったようなことはぜひやめていただきたい。堂々と中国の要人に向かって、北朝鮮の要人に向かって発言をするという能力を先生方自身が持つことが大事である、それがアジアの中での日本という恐らく考え方や見方をしていることが相手に伝わっていくということでなかろうか。  その意味でいうと、アジア代表という言葉は、実は日本が一九四二年に東南アジアを占領いたしましたときに、アジア代表、三A運動というのをインドネシアでやりマレー半島でやったわけです。それを聞くと、アジアの方たちは懐かしさと同時に恐ろしさをやっぱり感じてしまうんですね。そうではなくて一緒にやっていく、プリムス・インテル・パーレスと言うんでしょうか、みんなの中の一人という、そういう立場というものをとっていく、これがやっぱり大きい国、強い国が持つべき品性ではないかというふうに私は思います。  実は大変おもしろい、それと逆説的なことでございますけれども、初めて日本PKO活動をいたしましたカンボジアについて私自身も実はかかわりがございまして、参加させていただいたときの印象から始めます。  御承知のとおり、工兵でしたので軍事要員の非軍事的な使用でございました。しかし、大変おもしろかったのは、基地に行かれたらおわかりのように、どこの基地にもないすばらしい基地でした。おふろから水から衛星電話から何から何までが調っており、物すごい物量でございました。三分間でできる家までございました。これを見て多くのほかのPKOの方たちが、日本というのはアメリカ以上になったんだねという印象を持ったそうであります。つまり、物量作戦において圧倒的でありました。  ところが、非常におもしろいことがわかったのは、その日本の軍の方が私に言ってくださったんですけれども、我々が実は軍事顧問団としていろいろな議論をすると。守ってくれたのはフランス部隊が守ってくれたんですが、軍事顧問団にロシアの人がいたわけです。それで、自衛隊の方はロシアの人と一緒に晩さん会をやったり夕食したりすると。そうすると、敵というのと一緒に食事をして話をするという初めての機会を持ちましたと。自分たちはこいつらと戦うんだというふうに訓練を受けてきて、実際その場でいろいろ話をしてみると、軍人として共通していることがいっぱいあると。失礼ですけれども、政治家ってわかっていないんですよねという点では共通している。何せ宮澤さんは当時タイまでお見えになったんですけれども、カンボジアまではお見えにならなかった。堂々と視察をし、励ましてほしかったという御意見でした。政治家って、どこかで都合が悪いと逃げちゃうという点ではロシアの人も我々も同じでしたと。ああ軍人って同じなんだと。  同じことで、実はコンポントムというところに中国が送った工兵隊がございました。これを守っていたのがインドネシアの武装兵。それで、インドネシアの将軍に聞いたら、我々は中国と戦うという訓練を受けてきて何で中国人の兵隊を守らなきゃいけないんだと。恐ろしい敵と遭ったと思ったら、着ているものはひどいし食べているものはひどいし士気は低いし、だらしない軍隊だということがよくわかったと。  つまり、教育の過程として、PKOほど実は誤解を解き、ある面でいうと相互理解を進めていくという点でおもしろいことはないという共通の経験をしたんだということがございました。実は敵も味方も平和が欲しい、死にたくないということを発見したんだそうであります。  つまり、これまでの安全保障とか軍事貢献というのは敵に対して味方が集まっていく、これは敵と味方を区別して、味方がふえていくことで相手を圧倒する、これが伝統的な友敵区別というやり方なんですが、PKO活動というのは敵も味方も共通の枠組みを守っていく、これに縛られてこれを守っていくという点でいうと、敵も味方も入って合意をつくるということがとても大事になります。  カンボジアがあれだけ成功したのは、川村さんはよく御存じだと思うんですけれども、日本で、そしてパリで和平条約というものを、合意をつくった、こういう外交的な力こそ実は軍事貢献を最も意味あるものにするというふうに私はやっぱり見たわけです。その点で、今井理事がおっしゃった軍事貢献だけが問題ではないにしても、軍事貢献意味が全然違ってきている。敵対のための軍事貢献ではなくて、敵も味方も平和を守るための貢献というのはあり得ると。それが先ほどから多分川村さんがおっしゃっている緊急展開部隊だと思いますし、国籍を離れていく国連貢献のあり方、それはP5に入る入らないにかかわらず、日本のように大きな力を持っている国はかかわらざるを得ない、そういうふうに思います。
  65. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。  一つのテーマでお伺いしたいと思います。  日本安全保障理事国入りの問題とアジアの中での日本という、そういうテーマなんですけれども、例えば、私はおととしマレーシアに行ったときに、マハティール首相が、日本常任理事国入りについては日本アジアの一員として行動する立場をとるようになったら支持する、そういうふうに言われております。つまり、今は支持しないということですね。あれだけ財政危機の折に日本に感謝している、そしてまた親日的な国のトップがそういうことを述べている。私は非常によく考えてみる発言だなということを思っているんです。  その点で、一つドリフテさんにお伺いしたいのは、先ほど金をばらまく、配るということについて非常に言われまして、だから表立って反対する国もそうないんだろうと、そんなことを思うんですけれども、アジアに軸足を置いた日本外交というかかわりで見たときにどういうことが言えるのか、その点をお伺いします。  それから、川村先生に、平和外交は非常に私は大事だと思うんです、憲法をもとにした。同時に、国際社会オピニオン代表する中心的存在と言われたその点について、日本がそういう存在たり得ているのかどうか。日本に独自の外交ということを展開することが非常に求められていると思いますけれども、その点をお伺いしたいと思います。  それから、最後鈴木先生にお伺いしますけれども、先生の御著書はいろいろ、インドネシア、ASEANの問題については大変よく読ませていただいていまして、きょうお会いできたのを大変うれしく思っておりますけれども、私はパリにいたときにシュミットさんとハンブルクでお会いしたことがあるんですね、八〇年代。随分昔のことです。当時、首相でした、西ドイツの。彼が、日本にはアジアで友人が一人たりともいない、一国たりともないということを繰り返し言われたんですね。その意味が非常に私は意味深いと思ったんですけれども、先生のお立場から、その点で、アジア諸国の中での日本との関係ですね、私が設定したテーマのことで、そのことについてお伺いいたします。  以上です。
  66. ラインハルト・ドリフテ

    参考人ラインハルト・ドリフテ君) もし、質問がよくわかっていれば。日本アジアでの役割はどうでしょうか、そういう質問ですか。
  67. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 外交の軸足、アジアにあるのかと。
  68. ラインハルト・ドリフテ

  69. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 はい。
  70. ラインハルト・ドリフテ

    参考人ラインハルト・ドリフテ君) 私、この陳述の中で、日本は橋渡しの役割を試みるべきと思いますが、日本は東洋的な国ですけれども、でも同時に西洋に近いんです。だから、アジアとほかの世界との橋渡しを試みると非常に貢献的、建設的なことだと思いますが、これは今ちょっと抽象的過ぎるかもしれないんですが、一つの具体的な例を挙げますと、例えばODAの場合は、日本は自分の発展途上国の経験を持っていますが、アジアの国として、だからその経験をほかの国に伝えることは非常に利益があると思います。  だから、日本独特の経済発展経験をほかの発展途上国に、今の発展途上国に伝えることはいろいろの方法がありますが、例えば一つの非常にうまい、そして予算的に割に安い方法は、これは南南援助です。南南援助は、例えばアフリカの国、そしてマレーシア、そして日本。だから、アフリカの人は日本に来ないんですがマレーシアに行きます。日本は滞在費を払いますが、アフリカの国は適当な技術を勉強するためにマレーシアに行きますが、そういうサウス・サウス・コオペレーション、南南協力は非常にいいんです。これは非常に重要だと思います。  そして、日本外交面、もっと狭い意味外交面で東アジアの協力のテンデンシーを建設的にサポートしなければなりません。ARFがあります。ARFはただ信頼醸成措置だけではないんです。これは一つの段階だけですね。最後の段階は、これは平和的に、これはコンフリクトプリベンション、紛争を防ぐことですが、これは最後の段階ですね。国のために、今、鈴木先生がいろいろ具体的な例を挙げましたが、そういうことにもっと積極的に貢献しなければなりません。そして、全部の国をインクルードすることです。特に中国、北朝鮮をインクルードすることですが、日本はそういう地域協力を支援する、サポートする、アイデアでサポートすると非常に役に立つと思います。
  71. 川村亨夫

    参考人川村亨夫君) 日本外交は顔が見えないとよく言われます。二つの点で影響しているのかと思います。  一つは、人材の層がやはり薄いということだと思います。じゃ、どの点で人材の層が薄いかといいますと、やはり責任がとれる人が本来は大使にいてもいいんではないかという気がいたします。というのは、仮に常任理事国になった場合に、日本国益代表する、大きな政治的判断を任されるといった場合に、国連大使が政治家、特に外務大臣経験者とか、そういった人たちも含めて責任がとれる人を派遣してもいいんではないかという気がいたします。  それともう一つ、そういった人たちを支える人材層でよく言われることでございますが、どこの国でも常任理事国国々は八百人程度人材を養成していると言われています。つまり、国連の主な公用語でございます英語とフランス語について、みずからの立場を発信して、またよその国がこういうことを言っているということを的確に国内に伝えるといった人材を八百名程度養成するとそこの外交の人材層が一挙に厚くなるということを言われていますので、日本もどうか参考にしていただければと思います。
  72. 鈴木佑司

    参考人鈴木佑司君) アジアに友人がいないというのはヘルムート・シュミットさんのお言葉で、二つ意味があったと思います。私もお目にかかって言われたことがございます。  一つは、断トツに先進国の歴史が長い。その限りでいうと、本当にほかに似たような経験を持っている国が全くない。近代国家という経験、その成長、こういう点でいうともう全く違う。これが一つ。もう一つは、たまたま先進国になった時期からいって唯一の植民地権力のあった国、つまり二重の意味日本アジアの中で違っているということが実はその理由にあるわけです。  ところが、もう一つ、シュミットさんはどういうわけか福田元総理と比較的仲がよかったらしくて、お目にかかったときにこういう話をされておりました。しかし、一九四五年以降、実に不思議な国になったと。物は言わなくなってせっせとお金を出すようになったと。あんなにけちな日本、ちょっとやるとすぐ軍隊を出してたたいた日本がすごいお人よしになってまるで甘いと。  しかし、その結果何が起こったかというと、ヨーロッパアフリカアメリカ・ラテンアメリカと違って、日本アジア関係は南北問題ではなくて南北問題を克服するという格好で進んだ。つまり、日本に似たような経済、似たような産業、似たような豊かさを持つ国が続々と登場するようになった。いい、悪いは別ですよ。階級社会をつくり、公害問題をつくり、地域格差をつくり、さまざまなことをやったけれども、実はアフリカやラテンアメリカと全く違う、追いつき追い越すという社会を続々とつくってきた。その面でいうと、ヨーロッパ型でもない、アメリカ型でもない、その限りでいえば実は非常に不思議な経験をしたと。  その面でいうと、日本は植民地支配はされていないのに、されたつもりで途上国から先進国へ突っ走るという非常に奇妙な経験をしたことが、実はどこかでアジアの国に、嫌いだけれども、よくわからないけれどもやっていて損はない、それから追いつけないわけじゃない、この人たちはヨーロッパ人じゃない、全く別人種じゃない、自分たちもできるという手本だと。その限りでいうと、日本化しなければ、つまり日本語を勉強し、日本スタイルになり、日本食を食べないと近代という社会をつくれないと、我々は思ったものですから洋服を着、髪の毛を切り、洋食を食うようになったわけですけれども、アジアの人は日本語をしゃべらない、日本食を食べない、でも日本のものを取り入れて日本と同じような社会をつくれる、これはさっき言った民法の話なんですけれども、こういうところだと。  だけれども、一つ非常に問題があると。それは、批判されること、することが全くできない。つまり、黙っちゃう。以心伝心。伝えない、伝える努力をしない。わかれと言う。それを調べてみますと、実は私、七〇年代から幾つかの国の調査をしたんですが、隣の国に関する研究、大学で教えているところ、研究所を持っているところ、例えばマレーシアはベトナム研究をやっているか。八〇年代までやっていないんです。何を教えているかというと、イギリスを教えたりアメリカを教えたり日本を教えたりしているわけです。つまり、どのアジアの国も、欧米を教えて隣の国を知るということをしない。隣人プログラムがない。  実は、私に言わせると、アジアには友人がいないと言われますが、いつの間にか最も我々を深く理解するのは私どもの隣人である韓国の人であったり中国の人であったりするということを私どもは留学して思い知るし、今の社会で思い知っております。その意味でいうと、いつの間にか、国と国ではなくて、社会と社会のつき合いの中から、つまり国の隣人はいないかもしれないけれども、国民の隣人は山ほどできた、これが私どもの財産ではないだろうかというふうに思います。
  73. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 予定した時間も参りましたので、本日の質疑はこの程度といたします。  一言ごあいさつを申し上げます。  参考人におかれましては、長時間にわたり大変貴重な御意見をお述べいただき、おかげさまで大変有意義な質疑を行うことができました。  参考人のますますの御活躍を祈念いたしまして、本日のお礼とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)  次回は二月二十六日午後一時三十分から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十九分散会