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阿南一成君 自由民主党の
阿南一成であります。
私は与党でありますが、本日は、
我が国の命運を左右する重要な
ポストに多くの
国民の期待を背に就任された
田中外務大臣でありまするので、
エールを送るつもりで少し辛口の質問もさせていただきたいんです。ぜひ冷静にお聞きいただきたいと思います。
田中外務大臣は、
我が国の
外交の元締め、首相にかわって
日本を代表して各国と安定した
関係をつくることがその最も大切な
仕事であります。私は、
外務大臣が職務を遂行していくためには、
事務方の知識と知恵、
情報等の裏打ちが必要ではなかろうかと考えております。いかに有能な
大臣が就任されたとしても、決して自分一人ですべてを掌握し的確な
判断をすることは不可能であると私は考えております。
その点、
霞が関の多くの
官僚諸君は大変に有能であります。
国家国民のために意欲に燃えて日夜遅くまで働いております。また、
職務遂行のために全力を傾注して
大臣を補佐する覚悟も持っておると私は思うのであります。ただ、
霞が関の
官僚は、
国民の
皆さんが思っておるほど巨象のような存在ではなく、これだけ
官僚バッシングが続きますと、ひ弱なエリートになっているのではないかと私は考えるところであります。
官僚組織の中に私もいたわけでありまするので、例えば
警察庁出身の
K先生あるいは
H先生、そして私などのような
余りひ弱でもなさそうなのもいますけれども、これらの者は大体
官僚組織を途中下車しておる者が多いわけであります。
エニウエー、特に
政治家と
官僚の
関係は、
人事権を持つ側の
政治家に対してはまさに泣く子と地頭のような
関係にあると私は考えております。私は、
大臣は
官僚を大いに活用し、
我が国の
国益を守っていただかなければならないと考えておる次第であります。
大臣が
官僚の能力を最大限に引き出し活用していただくためには、何よりも
大臣と
官僚との
信頼関係を構築することが一番重要であると思います。常に
官僚との
意思疎通を図り、自由に意見が言える環境をつくり、
官僚との意見の相違は徹底的に議論をする、そして最善の
判断をするということが必要であろうと思います。特に
外務大臣という
ポストは、他の
大臣ポストとは違いまして、まさに
我が国の命運を握っておる
ポストであります。その
判断の誤りは
我が国の
国益にとって致命傷になるということであります。
しかしながら、私は、
大臣が就任以来の
外務省職員に対する言動を
マスメディアでしか知りませんが、私にはどうも首をかしげることもあります。最も
機密保持に神経を使うべき
官庁外務省にあって、
大臣の側からあるいは
官僚の側からそのお家の事情が次々と
マスメディアに登場しております。また、
幹部職員の
出入り禁止、
人事の
フリーズ等の
人事介入の行動は、人によると
国民受けをねらった
大衆迎合主義ではないかというような批判もしております。
大臣みずから
情報を遮断し
官僚の
信頼を失えば、大切な
情報を得ることもなく適切な
指示も行動もとれないことになり、
国益を損ねることになりはしないかと
心配するものであります。最近は
幹部諸君との和解も徐々に進んでいるとの一部の
報道もありまして、ほっとしておるところであります。
私は、
大臣が行おうとする
人事刷新は、恐らく
機密費事件の
再発防止を初めとする
外務省の不祥事に対する
国民の
信頼を回復するということにあろうかと思います。しかし、性急な
人事あるいは長年の
外務省の
人事慣行を無視した仮に強権的な
人事となるならば、ますます
大臣と
官僚との溝を深くするのではなかろうかと危惧するものであります。
例えば、
報道によりますと、
機密費事件の
責任をとらせるために
外務省事務次官を早期に更迭するとも受け取られました、すぱっとやるとの
発言もありました。
官邸側の反対もあり、閣議の承認を得られないということで、その
人事を見送ったというような記事を拝見いたしました。これは、
局長級以上の
人事につきましては閣議の承認を得て
発令することになっていることを
大臣は知らなかったのではないかという指摘もされております。真偽のほどはわかりません。
確かに
外務省の
人事権は
大臣にあります。
大臣としても、
官僚の士気に気配りをし、やる気を起こさせることが極めて重要である。そうして政治にすり寄る者を排する。真に
国家国民のことを考える者が元気に頑張れる環境をつくることが一番大切であると思っております。
大臣は、先般の
中国訪問の際、恐らくこれはジョークを含めた
大臣一流のユーモアかもしれませんが、某
局長のことに関連をいたしまして、まだひげをそらない
局長がいるとの
発言がありました。
行政の長である一国の
大臣が部下の身体的な問題に触れる
発言をするというのは、私は個人的にはいかがなものであろうかと思っております。
公務員は、一
政治家の使用人ではなく、
国民全体の
奉仕者であります。三権分立の原則もあります。それ
ゆえ公務員は公平かつ
中立性が求められておりますので、
人事に関しても、もし仮にそれが不当であるとするならば、不当な
政治介入は認めない、当然のことであろうと思います。私の古巣、
警察庁においては、
警察庁を管理する
国家公安委員会は
独立行政委員会のシステムをとっております。
大臣といえども、五人いる
国家公安委員の中の一人、すなわちワン・オブ・ゼムであり、恣意的な
人事は全く許されない仕掛けになっております。
エニウエー、私は、
外交に絡む
人事も、政権の交代や
政策の変更などに大きく左右されない
継続性が必要であると考えております。もし仮に強権的な
人事を行うとすれば、事は
外務省職員とのあつれきが生じるだけでなく、今後の
外交政策への影響も大きく、
国益にとってもマイナスになるというふうに
判断をいたしております。
そこで、さらに具体的な例を申し上げますが、
大臣は、三月二十六日付で
発令をされました小寺前
ロシア課長を
英国公使に転出させた
人事を白紙に戻されました。
ロシア課長を復帰させました。小寺氏は五月七日に
日本を出発し
英国の
ヒースロー空港に到着をいたしました。駐
英大使館員が帰りの便のチケットを持って待ち構え、帰国を
指示し、乗ってきたのと同じ
全日空機でトンボ返りをしたとの
報道がありました。急な
指示であったと思います。そして、この小寺氏を
英国公使にするという
人事は、
河野洋平前
大臣のときに既に
発令をされたものであります。
一度
発令された
人事が、
大臣が交代したとはいえ、一カ月余りで変更されるというのは極めて異例であると私は感じます。今回の
人事により、
英国や
ロシアとの
関係、そうして
当該課長や課員の職務上に何か悪影響が生じていなければよいがと
心配をするものであります。
また、今回の
人事は
事務手続上どのような扱いになっているのか。前回の
発令を撤回したのか、または新たに
発令し直したのか。そして、帰国の
指示についてはどのような
発令行為があったのか。厳粛に行わなければならない
人事発令が簡単に凍結されたり撤回されることはあってはならないと私は考えております。
去る五月三十一日の読売新聞には、「大使「停滞」十九か国」との記事が出ておりました。また、六月一日の朝日新聞には、真相はわかりませんが、新聞の記事によりますと、外相、
田中大臣の「私よりえらいつもりなの」、
外務官僚の「当分は
仕事はしない」という大変センセーショナルな小見出しのもとに、「対立続き
外務省機能不全」、「
外交にも影響深刻」という大見出しが躍っておりました。「
田中外相が就任後に宣言した「
人事凍結」で、
河野洋平・前
外相時代に内定した十九か国の
大使人事が閣議にもかけられないまま宙に浮いている」との指摘もありました。
相手国に打診してアグレマンを得ている
大使人事も含まれておると思いますが、
人事凍結も結構でありますけれども、
日本外交を最優先にして考えるべきであることを進言しておきたいと思います。
また、
外国要人との
会談キャンセルについての
報道。
外交については、
相手国に失礼がないように、そうして
外国要人とは
信頼関係を築きながら、しかし主張するときは主張するという
スタンスが必要であると思います。
今回、
アーミテージ米国国務副
長官が
ブッシュ新大統領の親書を携えて来たわけでありますが、
大臣がその会議を直前に
キャンセルしたという
報道がありました。その理由として、
心身ともに疲労し
パニック状態になっていた、また日程を調整中だったので
キャンセルではないとの
発言も
報道されています。しかし、私は、
外交の舞台ではそのような理由は通用しないと思っております。
アーミテージ米国国務副
長官は
知日派として知られておるわけでありまして、対
日政策の実質的な
責任者でもあります。
ブッシュ政権の中でもとりわけ
我が国にとって重要な人物であります。
田中大臣は、今回の
キャンセルについて
アメリカから抗議は来ていないと簡単に答弁をいたしておりますが、これは私は単に
アメリカが大人の対応をしたのではないかというふうに思っております。新
内閣となって最初に訪日された
重要人物との
意見交換を通じて
信頼関係を築くせっかくのチャンスであったと思います。
また、今回の
アーミテージ米副
長官との
キャンセルが特に今クローズアップをされておりますが、
大臣が
キャンセルをした
各国要人との
会談はこれだけではないという話もあります。真実のほどは確かめておりませんが、
イワノフ・ロシア外相、
クック英外相、
ソラナ欧州連合共通外交上級代表、
パッテンEU欧州委員等との
電話会談も
キャンセルをされたというふうに聞いております。
もしそれらのことが事実であるとするならば、各国では新
大臣はどのような人物なのか早く知りたいと考えて時差があるにもかかわらず無理をして
会談をセットしてくれたことに対し、非礼ではないかと私は思います。また、この
会談をセットした
外務省の
担当者は、今後
当該国との
会談をセットすることは今までのようにスムーズにはいかなくなるということでもあろうかと思います。そうして、この一連の
キャンセルが事実であるとするならば、今後の
日本の
外交にどのような影響が出るのか
心配でもあり、しっかりと注目をしていきたいと思います。
ところで、先般の
衆議院予算委員会における
外務大臣と
達増議員との質疑は、
アーミテージ米国務副
長官との
会談について、先方は
会談できると思って来日してきたにもかかわらず、結果として
田中外務大臣は
アーミテージ副
長官とお会いしなかったことの理由をめぐって議論が交わされました。
アーミテージ氏と
会談しなかったことは、
外務大臣としての見通しの甘さ、ひいては
責任放棄と受け取られても仕方がないことであると厳しく指摘した
達増氏の
発言に対しまして、
最初外務大臣は答弁を拒否する
姿勢を見せられました。その後、
外務大臣は、
達増氏に対し、
外務省のしっぽを引きずっていると答えるなど、激しい応酬が繰り広げられたことをテレビで見ておりました。
この模様を放映したNHKの
全国中継の
視聴率も普段の数倍の数字に上がった。また、一方の当事者である
達増氏のもとには
国民からたくさんの抗議、非難の電話が寄せられたとのことであります。
国民が
国会議論の行方に高い関心を示している証左であると思います。一見、大変好ましいことでありますが、しかし私は、
田中外務大臣の人気が高いゆえに、一方を善とし他方をすべて悪とするような
国民の
皆さんの認識には率直のところ一種の危うさを感じます。これは私だけではないと思います。
真の
外交論議は、相手を非難中傷することによってではなく、
外交方針のあり方をめぐってちょうちょうはっしと行われるべきものであります。そうした立場に立って、私は、みずからが正しいと思ったことには敵が何百万いようとみずからの信念で進むべきであると考えますが、同時に、
国益がかかる
外交には
バランス感覚も必要であり、いかに
国民的人気が高い
田中外務大臣といえども、みずからの信念だけで
外交を展開されるということはいかがなものかと
心配をいたしておる次第であります。
また、
外務大臣は、できるだけ
外国に行かなくても済むようにスケジュールを組んでもらうよう
事務方に
指示をし、
情報通信が発達している今日でもあるので電話とか
メール、ファクスなどで対応したい旨表明したと聞いております。さらに、
外国賓客の接遇は主として
外務副
大臣に分担させる旨表明しておるとのことでありますが、このような
姿勢は一国の
外務大臣としていかがなものかと私は考えております。
私は、このように
情報通信技術が発達した今日とはいえ、
無味乾燥な機器に全面依存するのではなく、真の国際平和と安全に貢献する
責任のある国として、その顔である
我が国外務大臣が積極的に他国の要人に会い、互いの親交、理解を深め、
外国にも積極的に出かけていき、フェース・ツー・フェースの
外交を展開することが必要ではないかと思います。それこそが
外務大臣の
仕事ではないかと思っております。
外国にはなるべく出かけずに
メール等によって行う、あるいは
要人接遇は副
大臣に任せるといったこのような
外交姿勢は、
我が国の
国益にとって望ましいことではないと私は考えております。
ところで、
大臣は、中国の
唐家セン外相との
電話会談を五月七日に行っておりますが、その中で、台湾の
李登輝前総統の
査証発給は今後認めないと
発言したとの
報道があります。事実は知りません。先日の
参議院予算委員会でもこの問題が取り上げられましたが、
大臣は相手方の立場もあるのでやりとりを逐一説明しないと答弁をし、
発言の事実の有無を明らかにしておりません。しかも、この問題は
我が国の
外交政策の基本にかかわることでもあり、もし事実であるとすれば、前
内閣が決定したことを一
大臣が勝手に変えたことになると思います。これは
外交の
継続性の視点からいっても大変に大きな問題で、
我が国の
国益にもかかわることであると思います。
小泉総理は、
田中大臣の一連の
発言に対する各議員の質問に対しまして
ノープロブレムと言っております。が、いつまで
エールが送れるのか
心配であります。
田中大臣の
発言はこれまでの一議員の個人的な
発言とは違い
我が国を代表する言葉となることを十分認識していただいて、慎重に対応していただきたいと思います。
指導力を発揮することは構わないのですが、独断で行わないように閣内で
意思統一を図った上で
発言していただくことをお願いしたいのであります。
私は、
田中大臣に
我が国を代表するすばらしい
大臣になっていただくことを念願しております。これまでの一連の
報道を受けて、中にはためにする
報道もあるかもしれません。が、
外務大臣という重責を担って、今までのことは今までのこととして、今後どのような決意で
仕事を遂行されるのか、その決意のほどをお伺いいたしたいと思います。