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2001-06-07 第151回国会 参議院 経済産業委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十三年六月七日(木曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  六月六日     辞任         補欠選任         加納 時男君     井上 吉夫君      亀井 郁夫君     倉田 寛之君      直嶋 正行君     小山 峰男君      本田 良一君     和田 洋子君  六月七日     辞任         補欠選任         井上 吉夫君     加納 時男君      小山 峰男君     直嶋 正行君      和田 洋子君     本田 良一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         加藤 紀文君     理 事                 畑   恵君                 保坂 三蔵君                 山下 善彦君                 足立 良平君                 西山登紀子君     委 員                 加納 時男君                 陣内 孝雄君                 吉村剛太郎君                 直嶋 正行君                 本田 良一君                 藁科 滿治君                 海野 義孝君                 風間  昶君                 梶原 敬義君    事務局側        常任委員会専門        員        塩入 武三君    参考人        財団法人日本エ        ネルギー経済研        究所常務理事   藤目 和哉君        東京国際大学国        際関係学部教授  関岡 正弘君        株式会社野村総        合研究所上級コ        ンサルタント   石黒 正康君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○石油の安定的な供給確保のための石油備蓄法  等の一部を改正する等の法律案内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 加藤紀文

    委員長加藤紀文君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、亀井郁夫君及び本田良一君が委員辞任され、その補欠として倉田寛之君及び和田洋子君が選任されました。     ─────────────
  3. 加藤紀文

    委員長加藤紀文君) 石油の安定的な供給確保のための石油備蓄法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。  まず、参考人から意見を聴取いたします。  本日は、本案審査のため、参考人として財団法人日本エネルギー経済研究所常務理事藤目和哉君、東京国際大学国際関係学部教授関岡正弘君及び株式会社野村総合研究所上級コンサルタント石黒正康君の三名に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  皆様には御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査参考にしたいと存じております。よろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人方々の御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず藤目和哉参考人にお願いいたします。藤目参考人
  4. 藤目和哉

    参考人藤目和哉君) ただいま御紹介いただきました日本エネルギー経済研究所藤目と申します。  私は、資料の一面に六つずつ、色のついた画面が入っているものでございます。タイトルは、左上にありますように、「最近の国際エネルギー石油)情勢とわが国エネルギー政策における石油の位置付け」ということで御報告したいと思います。  内容は三つに分けております。  最初に、「最近のエネルギー価格上昇不安定化」というのは、これは価格不安定化ということでございますけれども、その背景意義、それから二番目に、長期エネルギー需給見通し改定が今進んで、もう終わろうとしていますけれども、これにおける課題、それから三番目に、石油利便性需要輸入増、特にアジア地域での石油輸入増が非常に大きくなる、それは日本石油政策にかなり影響を与えるという三点で御報告したいと思います。  最初に、一ページ目の左下にございますように、一九九九年以降、以降というのはもう春先ぐらいからエネルギー価格は急上昇したと。これは過去七〇年代にあった二回の石油危機とは違った形ですけれども、価格は急上昇したということです。それはここにも書いてございますけれども、一九九〇、ちょっと間違っておりますけれども、九九年ですね。原油価格は一九九九年初めのバレル当たり十ドルから二〇〇〇年には三十ドル、一挙に三倍にまで上がったということですね。したがいまして、第二次オイルショックのときは三倍ぐらいだと思いますから、そのぐらいの上昇はあったということです。したがって、国際的には非常に危機的な問題でありますけれども、これはアメリカ中心にして起きているということで、日本円高のためにそう影響は大きくないということになります。  天然ガス価格は大体原油価格にリンクしていますので、日本の場合、天然ガス価格も大幅に上がっております。日本天然ガス価格は、これ、百万BTU単位でいいますと二・七ドルから五ドルまで、これは石油換算でいった方がやっぱりよろしいですか、十六ドルから三十ドルぐらいまで上がったと。一方、アメリカでは、非常に大幅な価格、最近ガソリン価格高騰が伝えられますように、アメリカにおいては天然ガススポット価格が百万BTU当たり十ドル、これは石油換算バレル六十ドルに相当します。六十ドルといいますと、原油価格の二倍ぐらいになったということですが、これは後で理由を述べますけれども、非常に上がったと。それから、カリフォルニア電力危機卸売価格が大幅に上昇して、高いと言われる日本並みぐらいになって、停電が相次いだというようなことが起きております。  右に三つありますのは、今述べた価格上昇の図でございます。上は、NYMEX、ニューヨークの取引市場における原油価格上昇ですね。真ん中は、日本原油価格上昇青線で書いてございまして、LNG価格天然ガス価格赤線で書いてございます。それから、右下が、先ほど申しましたように、米国スポットガス価格は急上昇したということでございます。  二ページ目の左上に、「なぜ価格急上昇が起こったか」ということですけれども、これは基本的には石油の、アメリカは非常に好景気で、アメリカ需要とそれからアジアでは通貨危機後の回復で大幅な需要増加があったということです。アジアについては最後にちょっと触れます。それから、非常にバレル十ドルという低価格が続きますと、供給力は非常に減退したということですね。そこのところに需要が盛り上がったものですから、需給バランスが崩れて上がったということもあります。それから、国際的にエネルギー市場規制緩和ということが行われ、価格メカニズムにある程度市場を任せようというような方向でいきましたけれども、それの副作用的な要素もあったということです。それから、環境規制温暖化問題を含めて国際的に非常に厳しくなっていますけれども、それで例えば発電所が建たないとか精油所が建たないとか、そういう問題が起きて、そういう面でもあります。それで、実際には個々の企業は最適化行動をやっているわけですけれども、余りに合理化したために、供給クッション供給弾力性が低下したというような背景にあります。  それから、カリフォルニア電力危機については、これはいろいろ言われておりますけれども、自由化するのは世界流れですから否定しがたいんですけれども、かなり中途半端な自由化でいわゆる市場制度設計のミスがあったと言われています。それから、先物市場が非常に発達して、これは先物市場というのは御存じのように金融資本流れによって決まるところがありますので、そういう実物経済以外のところでの力が価格決定影響されたというようなことがあります。  それで、あと「成長センターアジアにおける需要」ということで、これはちょっと省略しますけれども、アジアでの需要増が最近減っていたのがふえましたので、その格差は大きいと。  それから、左の一番下に、「市場自由化における副作用」ということで三つ挙げてあります。  余剰能力を持つことを避け、できるだけ削減する、それから供給力増減への投資インセンティブの縮小、それから資本集約的、つまりリードタイムの長いものについては投資をする意欲は減退する、例えば原子力とか石炭火力といったような長期の時間がかかるものは意欲は減退して供給力が低下している。  それから、二ページ目の右の上は「環境規制のインパクト」ということで、環境改善そのものはやっていかなきゃいけないわけですけれども、その規制が非常に厳しくなって、そちらの方への投資が優先されている面がある。これはそれなりに結構な話なんですけれども、そういう問題。それから、特にアメリカですけれども、天然ガスというのは石炭石油よりクリーンだということとか、温暖化原因となる炭素が少ないということで、天然ガスへ猛ダッシュでシフトして、それで上がったということです。  それから、「環境規制強化ニンビイバナナ」ということで、ニンビイというのは、ノット・イン・マイ・バックヤードという、自分のうちの裏庭にはつくってくれるなと。アメリカではそれをもっと越してバナナと言っていますけれども、バナナというのは、英語で、ビルド・アブソリュートリー・ナッシング・エニホエア・ニア・エニワンと、こういうことで、最近ではバナナ現象と言われていまして、要するに何でもだめだというような動きがあります。そういうことで、アメリカでは、それと精製能力不足等石油製品の特にガソリン等価格高騰が、ガロン当たり一ドル程度のものが今や一ドル八十ぐらいまで上がっています。  それから、長期見通しに書いてある課題についてはここでは四点挙げておりまして、一つは、原子力発電計画がおくれがちになっているわけですが、おくれればおくれるほど火力でカバーしなきゃいけませんのでCO2排出がふえていく、そうすると京都議定書が守れないというような状況になるわけで、省エネに非常に負担がかかる。それから、新エネルギー、太陽とか風で原子力をカバーするということが考えられるんですけれども、量的にはとてもカバーし切れない。したがいまして、石油というのは、これは安定供給上も石油依存度を減らすというのが政策の基本になっておりますけれども、さらにCO2排出量石炭ほどではないにしろかなり出すものですから、石油にしわ寄せになって、石油依存度は五〇%以下にするという方向になる可能性は大きいということであります。  それから最後に、三ページ目の左下に、石油利便性需要輸入増ということで、石油については、まず埋蔵量の点でよく四十年とか言われますけれども、これは確認埋蔵量のことで、究極可採埋蔵量では百年あるいはとり方によっては百五十年、二百年という量があるので、すぐなくなるわけではないということです。それから、非在来型、オイルサンドとかオリノコタール、オイルシェールなどを含めればその倍以上あるということで、資源的な制約は非常に超長期に考えればあるわけですけれども、そうあるわけではないと。  それから、やはり石油の場合は、使い勝手がよく、輸送しやすく、また貯蔵しやすい、特に備蓄しやすいというようなものです。  それから、輸送用車用としてはもう圧倒的な競争力を持っていまして、恐らく二十一世紀中はなかなか代替的な有力なエネルギーというのは出てこないだろうと言われています。  それから、最近国際エネルギー機関が出した見通しでは、世界エネルギーのうち四〇%が石油なわけですけれども、二〇二〇年になっても四〇%とほとんど変わらないと。年率二%ぐらい伸びるということです。そのうち、増加分の約半分がアジアでふえると。これは自動車の普及に伴うものですね。  それで、アジア石油輸入量は一九九六年の約五百万BD日本を除いたアジア途上国ですね、五百万BDというのはちょうど日本輸入量に等しいぐらいなんですが、日本と同じぐらいの規模が二〇二〇年には二千五百万BDとなるということで、これは中国インド中心として、日本市場の五倍ぐらい大きなものが新たに登場するということで、非常に石油需給に対する逼迫あるいは価格上昇が起こり得るということでございます。  三ページ目の右上の方にございますけれども、地域別にはどこが輸入国になるかということです。これはエネルギー全体で、石油だけではなくて天然ガスも入れているわけです。ただ、真ん中エネルギー輸入量見通しエネルギー源別とありますけれども、圧倒的な輸入石油が占めるということです。つまり、アジアには石油資源が、中国インドネシアには多少ありますけれども、内需が大きくなって輸入せざるを得ないようになるということも含めて、アジアが大量の輸入石油に依存するようになると。その依存度上昇することについて、三ページの一番右下に書いてございますように、石油依存度が最近の四〇%ぐらいから七〇%以上になるというようなことでございます。  四ページ目に、最後に移りますけれども、特に中国という国を注意して見ていかないといけないということであります。  中国の場合には、現在、石油輸入は、石油製品輸入を禁止していたりして少ないんですけれども、将来非常に大きくふえる、中国石油需要の半分ぐらいは輸入に頼るようになるということです、半分以上ですね。それから天然ガスも、石炭が今中国エネルギー供給の七五%ぐらいを占めていますから、環境に悪いということで天然ガスへのシフト、それも輸入に頼らなきゃいけないというような状況になるということです。  その下はインドですけれども、インドも同じように石油大量輸入国になるということで、一番下に中国インド石油輸入見通しが書いてございますけれども、私どもの研究所見通し数字では、二〇二〇年に中国が五百二十万BDインドが四百二十万BDアジア十二カ国で二千万BDと非常に控え目に見ておりまして、最近出た国際エネルギー機関見通しでは、中国が八百万BD、それからインドが、ここには出ておりませんけれども五百万BDぐらいということで、アジア途上国、つまり日本以外のアジアの国では二千五百万BDまでふえるということで、中東石油をめぐっての争奪戦になるおそれもあるということで、石油について、またエネルギー全般についても、決して市場メカニズムだけでは解決できない問題が起きているということでございます。  以上、報告を終わります。
  5. 加藤紀文

    委員長加藤紀文君) ありがとうございました。  次に、関岡正弘参考人にお願いいたします。関岡参考人
  6. 関岡正弘

    参考人関岡正弘君) 関岡でございます。大学では資源開発について教えております。私は資源屋の立場から発言いたしたいと思います。  昨今の原油価格は、九八年十二月にバレル当たり多分十ドル八十セントだったと思いますが、その後、急上昇いたしました。二〇〇〇年九月二十日には三十七ドルを超えました。この価格に関して、この現象が第二次石油危機、一九七九年に起きた現象価格の値上がりは全く同じであります。ですから、私は、現在、現在といいますか過去二年間、第三次石油危機だったと考えております。ただし、政治的な危機を伴っていない静かな石油危機だったと考えております。  ちょっと飛ばしまして、三の「石油危機意義」という点を御説明したいと思います。  一九七〇年代に二度ほど石油危機が起きたんですけれども、この石油危機はたまたま政治的な危機を伴ったために、石油危機政治危機であるというふうに誤解されてしまったと思います。しかし、石油危機実態原油価格が急上昇するという点にあるわけであります。その原因は、石油供給不安、需要に対して供給が不足するということになると考えるのが当然でありまして、実際に供給不安が起きたんだと、それを重視しないといけないと思うんです。仮に中東の湾岸で政治危機が起こりましても、実際に石油供給に不安が生じなければ石油危機は来なかったわけです。この点が石油危機政治危機ということで誤解されてしまったんではないかと、これを不安に感ずるわけであります。  ポイントは、現在は政治危機を何ら伴っていない石油供給危機であるというふうにとらえなければいけないわけですけれども、これはむしろ静かですけれども、悪質な状態ではないかというふうに考えております。  ここで原油価格性格についてお話ししておきたいと思いますが、原油価格はだれかが管理していないと乱高下を繰り返すという傾向にあります。  歴史的に見ますと、一八七〇年ごろから一九八五年まではだれかが管理した状態が続いておったわけであります。ところが、八五年に最後管理者であるOPECの管理システムが崩壊いたしますと、その後は全くだれも管理していないということで、原油価格本来の性格需給バランスによって乱高下を繰り返す、こういう状況になっていると思います。  それから、四番目に参りまして、現在の埋蔵量統計、一応一兆バレルとなっていますが、これはかなり怪しい数字だと申し上げなければなりません。  それは、一九八九年以降、確認可採埋蔵量は一兆バレルで推移しておるわけでありますが、その間、十一年間に三千億バレル石油が消費されて失われたということは確実であるんですけれども、この状況が全く反映されていない。もちろん、こんなに大きな埋蔵量が新しく発見された可能性もないし、技術革新も起こってはおりません。  この埋蔵量統計の裏には、もともと産油国埋蔵量を誇張しがちであるという点と、それから技術的に言いましても、地下に存在する石油が何%回収できるか、これが確定できない。そういう事情があるので、この一兆バレルという数字にはかなり疑問があります。実際にはかなり下回っているのではないか。むしろ九八年末から起こりました原油価格高騰という現象は、その前提でのみ理解できるのではないかというふうに考えられるわけであります。  国際的な石油開発動向について、ごく簡単にお話ししたいと思います。  世界埋蔵量、これは六五%が中東に集中しておりますのは御存じのとおりです。ただ、中東において油田が発見された時代は一九三五年から六五年まで約三十年間続きましたけれども、以後中東では事実上大きな油田は発見されておりません。  一九七〇年代以降、開発されました主要油田地帯は、北海メキシコアラスカなどですけれども、アラスカはもうピークを過ぎております。北海メキシコ、これもほぼ限界に達しているというふうに考えられます。  一九九〇年代に入りまして、石油開発技術革新があったのは事実であります。ただ、この新しい技術といいますのは、いずれも弱小油田あるいは微細油田を発見し開発する技術でありまして、世界全体の埋蔵量増加にはほとんど意味をなさない。ただし、一時的に生産能力を上げる効果はあったということだと思います。  いろいろな観点で見てみますと、一九九八年に原油生産能力ピークを打った可能性がかなりあります。まだ断言はできないんですけれども、まだ去年のデータを入手しておりませんのでわかりませんが、どうも九八年に世界全体の原油生産能力ピークを打って、その後下がっている、それが原油価格高騰ではないかというふうに考えております。  今後の原油価格見通しなんですけれども、原油価格というのは非常に厄介なものでありまして、このグラフをちょっとごらんいただきたいのでございますけれども、きょう追加させていただきました、「関岡資料二〇〇一・六」と書いてあります。  石油供給曲線需要曲線、このポイントは、石油の場合は供給限界に達しますと、価格が幾ら上がっても供給量はふえない。当然のことなんですけれども、それをグラフにあらわしますと、片仮名のレを逆にしたような曲線になると思います。  それから、供給曲線、これは普通は右下がりのカーブで経済学は考えているんですけれども、石油の場合、極限に来ますと、価格が上がっても需要は減らないという傾向がありますので、供給曲線需要曲線も垂直な部分があるというふうに考えております。ですから、供給限界需要が近づきますと、価格乱高下する傾向があると思われます。  この二つの曲線性格を考えに入れまして石油危機のモデルというものを考えてみますと、供給能力限界というのが存在するわけであります。それに対して、石油の消費、これは生産と事実上一致すると思いますが、波動を繰り返しながら供給能力限界に近づいていく、その幅が小さくなると価格高騰する、幅が広くなると暴落するということで、私は一九九五年ぐらいからこの限界に近づいているというふうに考えておりますので、石油供給の将来はかなり厳しいのではないかというふうに考えております。  その背景で、それらの今お話ししましたことを背景石油開発政策のあり方ということを考えてみたいんですけれども、実は最近十年間、大学経済なんかを教えているために余り開発政策などを論ずるバックグラウンドはございませんので、簡単に述べさせていただきますけれども、我が国の石油開発政策というのは強化すべきであっても弱体化はできるだけ避けるべきではないか、そういうふうに考えております。  以上です。
  7. 加藤紀文

    委員長加藤紀文君) ありがとうございました。  次に、石黒正康参考人にお願いいたします。石黒参考人
  8. 石黒正康

    参考人石黒正康君) ただいま御紹介に上がりました石黒でございます。  私がいただきましたテーマは、石油業界関連でございます。この中で、私は二点についてプレゼンテーションを申し上げたいと思います。(OHP映写)  一つは、「石油業界現状課題」でございます。もう一つが、「石油に係わる規制改革影響と今後の展望」でございます。  まず、第一の課題でございます「石油業界現状課題」でございますが、これを論ずる前に、今まで石油業界がどういう状況に置かれてきたかを少し見てみる必要があろうかと思います。  御存じのように、石油業界はいわゆる業法による規制と保護のもとで育成されてきた。これは、他の産業と比べてかなり違った状況に置かれたわけです。この業法によって石油産業自体は経営の自由度が極めて限定されてまいりました。  それから、もう一つ石油業界にとって大きな影響を与えたのが、七〇年代に二度起こりました石油危機でございます。このときに価格規制が行われました。いわゆる家庭用の燃料である灯油あるいは輸送用であっても物流に使われる軽油というものは値上げが抑えられました。唯一ガソリンでその利益確保するという構造が起きたわけです。  ここに各国、いわゆる先進国として日本米国、イギリス、ドイツの輸入原油価格に対して製品価格はどうであったかというものを示してみました。このグラフから見ておわかりのように、日本製品価格は極めて製品間で大きな幅が出ております。つまり、ガソリンだけに利益を依存すると。それからもう一つ注意していただきたいのは、この原油というのはコストでございます。それに対して精製した製品を販売するわけですから、この幅というものが本来であれば精製コストとマージン、収益であったわけです。日本は他国と比べてこれほど大きかったはずです。ところが、実態として石油精製業界は決して利益を上げたわけではございません。そこには非常に非効率があり、利益に結びつかないという状況もあったわけでございます。  そして、七〇年代の石油危機を越えまして、八〇年代になりますと、それまでの産油国が公示価格という形で決めてきた価格の決定が市場にゆだねられる形になりました。つまり、マーケットの機能が働き始めたわけです。八〇年代に入りまして、既に欧米のメジャーズはもうリストラを始めておりました。日本はかなりおくれました。  具体的には、八六年に石油価格が暴落いたしました。いわゆるプライスコラプスでございます。その後、八七年から政府は規制緩和プログラムを開始いたしました。いわゆる特石法を通した十年をかけたいわゆる規制緩和でございます。ただ、これが問題であったのは、時間を余りにもかけ過ぎたと私は感じております。  そして、その特石法が九六年に廃止になって、それから五年たちました。つまり、十五年かけてやっと産業の立て直しが行われたわけですが、先ほども申しましたように、欧米メジャーズはもう八〇年代の前半から既にマーケットの変化を読み取って徹底的なリストラを始めたわけでございます。例えば、エクソンで見ますと八三年から人員整理を始めております。八五年に十四万人いた職員を九七年には八万人、モービルでいいますと同じく八六年に十六万人いた人員を四分の一の四万三千人まで減らしております。さらに、メジャーズ同士で八〇年代後半から九〇年代にかけていわゆる下流部門の提携による合理化を進めました。欧州ではBPとモービルが業務提携いたしました。それから、米国ではシェルとテキサコが精製・販売部門の統合を始めたわけです。これはもう八〇年代、九〇年代の頭に始まっておったわけです。日本はそれに比べてかなりおくれたわけです。  このような経緯がございましたが、九六年の特石法の廃止によりまして本格的な規制緩和が進みました。これは、ある意味では日本石油業界にとっては急激な環境変化であったわけです。まず、それまで参入が守られていた、業界にとって守られていた市場石油精製・元売以外の新規事業者が参入してまいりました。例えば、総合商社、丸紅、三菱商事といったところが製品輸入を開始いたしました。大手の流通業者、いわゆるダイエー、ジャスコと呼ばれた企業もガソリンの販売、リテールに出てきたわけでございます。  そういったことで、非常に市場が厳しい状況になったわけです。その中で、石油業界は合理化がかなりおくれました。その結果、九六年から九九年までに石油業界は収益を非常に削り、実に九九年三月期では、精製・元売で合計マイナス百八十億円という大赤字になったわけでございます。  これは見ておわかりのように、九六年が特石法の廃止、その前の九五年から明確に利益が落ちて、九九年には赤字に転落したわけです。これが過去五年間の実情であったわけです。現状は、直近で見ますと、おくれたとは言いながら、業界も合理化を進めました。事業の再編、集約化を進めました。例えば、人員削減を見ますと、多分一番人員削減を進めたのはコスモ石油であったかと思いますが、四〇%、実に二人に一人が退職をするという状況まで追い込まれたわけです。その中で、現在ですと四グループ、日石三菱・コスモグループ、昭和シェル・ジャパンエナジー、そして出光とエッソ・モービルグループ、この四つに大方集約されるようになりました。直近で見ますと、二〇〇〇年三月期、そしてこの二〇〇一年三月期の決算がそろそろ出ておりますが、かなり収益力を回復するようになったわけでございます。  課題でございますが、まだまだ経営の面から見た石油業界課題はたくさん残っております。まだまだ合理化は足りません。  例えば、精製設備能力でいいますと、今、日本での原油の処理需要というのは約四百万バレル・パー・デーでございます。これに対して常圧蒸留装置がまだ五百万バレル・パー・デーでございます。稼働率でいくと、今現在でやっと八〇%いくかいかないか。こういった設備のまだ合理化も必要でございます。特に設備の面から見ますと、日本石油精製業界は近隣諸国、例えば韓国、シンガポールに比べて恐らく精製コストは二倍以上、まだまだコスト高でございます。  もう一つは、日本石油産業といいますと、基本的には下流部門だけでございます。いわゆる精製業界を指しております。今現在、水平的な再編によって四グループまで集約されておりますが、長期的には精製業が本当の意味でのエネルギー業界に脱皮する必要があります。そういった意味で、これから上流部門へのいわゆる事業の再構築が必要です。  ただ、この上流部門への進出というのは戦後一貫して石油業界の悲願ではございました。ただ、資金力、また技術力から含めて非常に課題は多いわけでございます。  例えば、オイル、ガスというのは同族としてとらえられております。日本はLNGを輸入しております。じゃ、かつてLNGの輸入にどこの産業がリーダーシップを示したかといいますと、例えば商社でございます。なぜ商社がそういったリーダーシップをとれたのに石油産業ができなかったか。そういった過去をやはり振り返ってみる必要はあろうかと思います。  次に、「石油に係わる規制改革影響と今後の展望」、これはあくまでも私の私見でございます。  まず、将来を展望するに当たって基本的な認識を少しまとめてみました。  まず、石油のマーケットですが、八〇年代に入りまして実は市場のメカニズムが機能し始めて、現在では戦略商品という性格から完全に市況商品へと変わっております。いわゆる石油のコモディティー化が進んだわけでございます。  これは石油価格を示したものでございます。ごらんのように、確かに名目価格で見ると九九年も非常に暴騰いたしました。九八年が十一ドル、その後三十七ドルまで暴騰したわけです。これを見ると、あ、これ第一次オイルショックのときと同じではないかととられるのですが、第一次オイルショックは一九七三年です。今から二十八年前です。つまり、その当時の三十ドルと今の三十ドルとは全く貨幣価値が違います。  これは、私が二千ドルの実質価格、ドルをGDPデフレーターで戻したものです。これを見ておわかりのように、原油価格は、実質価格で直しますと、石油価格が暴落した以降それほど動いてはおりません。いわゆるボラティリティー、急激な変動はございますが、構造的な変化はそれほど出ておりません。  こういった状況を考えますと、基本的には市場の機能が動いております。そういった中で、政府が過去行ってきたように、産業の日々の活動、いわゆるはしの上げおろしまで規制することは決してエネルギーの安全保障の担保にはつながりません。国といえども世界石油マーケットを動かすことはできません。  そういった意味で、安全保障を確保するための最大の方法というのは、やはり市場が十分に機能する環境を整えることです。これは、誤解のないように言いますが、市場だからほっておけばいいということではなくて、その市場機能が公正に、公明に動くような整備をしてやることです。  もう一つ、緊急時への対応。例えば、昨年オイル価格が暴騰した。アメリカでもそのとき産油国に対して政治的な圧力をかけたわけです。これは民間にできる仕事ではありません。すなわち、緊急時への対応と日常の経済活動への介入というのは混同すべきではない、これは明確に分けるべきだと考えております。  そういった意味で、私は、政府の役割というのはこの三つに集約してよろしいかと思います。  まず、市場を守るという意味で、市場の機能を阻害したりゆがめたりする行動を監視すること。公正な競争の担保でございます。不正行為の排除でございます。  二つ目が、情報がすべての人に正確に流れることを助ける、それによって石油会社、消費者、政府が最善の判断ができる環境を整備することです。つまり、市場に対して常に正しいシグナルを送ってやるということです。  市場がどう動くかというのは、これはだれにも判断はできないんです。それぞれの判断の中で最適値を見つけるしかないわけです。決して政府が常に正しい判断ができるわけでもありませんし、専門家であったはずの石油業界が正しい判断をできるわけでもありません。そういう意味で、全員に正しい情報を送る、その中で判断させるのが最善の方策だと考えております。  そして、もう一つは緊急時への対策でございます。先ほど言いましたように、緊急時、これは民間にできる能力を超えた部分がございます。  例えば、備蓄の問題でございます。これは日本だけではございません。アメリカでもいわゆる戦略備蓄、さらにはアメリカの場合は軍も備蓄しております。ヨーロッパも同じです。この備蓄をどうするか。緊急時にどこで放出するか。この判断というのはかなり政府の判断に任されるわけです。  それから、原油価格が急変したときに産油国との対話をどうするか。これは民間企業だけでは力がありません。先ほど申しましたように、九九年にオイル価格が暴騰したときに、アメリカはやはりサウジアラビア等に政治的な交渉を行っております。そういう意味で、これはやはり政府の役割なわけでございます。  最後に、将来展望ということですが、まず石油産業以外の産業を見ますと、基本的に市場、マーケット、産業というものは国際化しております。まさにメーカーなどはそうです。そういった意味で、グローバライゼーションという言葉は使われておりますが、ある意味ではもう時代おくれとなりつつあります。そういった意味で、石油業界は非常におくれてしまいました。これから石油業界が本当の企業として残るには、国際社会の中で競争力を持たねばなりません。そういった意味で、まずはコストを削減しなければなりません。  それからもう一つ、「ワンセット主義」と書いてありますが、何が何でも日本の資本と日本の企業だけでやるということは不可能でございます。投資能力からいっても技術力からいっても不可能でございます。そういった意味では、そのワンセット主義、私は日本が今まで標榜しておりました消費地精製主義もやはりもう限界に来ていると思います。そういった意味で、石油製品の貿易を通しての安定化というのはこれは避けることができませんし、またそれを進めることが日本にとっての安全保障の担保になると思います。  例えばアジアの他の国を見ましても、韓国は九八年に外資の規制を廃止しております。アブダビは現代に資本参加しておりますし、サウジは雙龍、いわゆるリファイナリーに資本参加しております。そして、フィリピンのペトロミンに対してサウジアラムコは資本参加しております。こういった資本の流れによって、石油を通したアジア経済圏あるいはアジア中東日本中東アジアとの経済交流の発展、その中で安全を確保していくのが最大のかぎかと思っております。  かつて外資を追放しました中東産油国も既に石油政策を変えております。外資を受け入れようとしております。なぜならば、投資が必要です。技術が必要です。そこにはやはりマーケットが存在するわけです。  そして最後に、長期課題、まさに日本石油業界が夢見てきた上流部門の取り組みでありますが、先ほど申しましたように、日の丸一本やりではもうこの夢はかないません。少なくともメジャーズと比べて資本力、技術力でかなり劣っております。とすれば、自分たちの比較優位性がどこにあるのか。技術力はどうなのか。投資能力はどれだけあるのか。投資に対してどれだけのリスクがあってリターンがあるのか。この見きわめを明確にした上での開発が必要かと思います。  そういった意味では、先ほど言いましたまさに日の丸石油だけではなくて、外資との協力あるいはいわゆるエクイティーの参加という形での開発も必要だと考えております。  以上でございます。
  9. 加藤紀文

    委員長加藤紀文君) ありがとうございました。  以上で参考人皆様からの意見聴取は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 加納時男

    加納時男君 自由民主党の加納時男でございます。  藤目さん、関岡さん、石黒さん、三人の参考人の方、きょうは非常に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  まず、三人の方にそれぞれ伺いたいと思いますが、まず最初藤目参考人に伺いたいと思います。  先ほど御説明のあった資料の、ページ数で言いますと三枚目の左の下でございますが、ここのところで先ほどお話があったのは、アジア地区の特に途上国石油需要がふえてくる、そのふえてくるのは自動車等の輸送用エネルギーであるという御説明がありました。  確かに、現状、五MBDといいますから五百万バレル・パー・デー程度輸入量が二〇二〇年には五倍になる、二千五百万バレル・パー・デーになるという見通しも出ておりまして、そういう意味ではこれは大変な問題だろうと思います。  この対策をいろいろ考えているところなんですけれども、二つあるような気がします。ほっておきますと途上国のモータリゼーションは、これはとめどなく広がっていくと思います。現に中国にその兆しがあらわれております。それで、二つあるのかなと。一つは自動車そのもの、輸送手段として自動車そのものの代替というのが一つのシナリオ。もう一つは、自動車は自動車であっても、その燃料を代替していく。こういう二つの方法があるんじゃないか。それからもう一つ、同じ燃料であっても効率化するというのがもちろんベースにあります。  さて、自動車それ自体の代替ということを実際に途上国なんかへ行って見てきたわけでありますが、中国では盛んに汽車路線、火車路線という論争があります。汽車というのは列車じゃなくて自動車、火車と書いたのが鉄道でありますけれども、要するに遠距離間の輸送手段として鉄道を考えるのか、自動車を考えるのか。自動車を走らせるために高速道路を延々とつくっていくのか。そして、どんどん自動車をつくって、それで石油燃料を消費していくのか。それとも鉄道にして、鉄道の燃料を石油以外にすればいいという考えであります。  その場合に、石油以外というのは当然のことながら今だと石炭になりますけれども、将来は電気に変えていく。その電気のもとも石炭じゃなくて水力だとか原子力に変えていく、あるいは天然ガスに変えていくというようなことで、より石油を使わない燃料に変えるということで、自動車それ自体の代替が一つあると思います。  その場合に、例えば都市部はどうするのかということでありますが、都市部におけるいわば都市内交通としての大量輸送手段を考えていけばいいわけで、これは北京などでも始まりました地下鉄あるいは場所によってはモノレール、さまざまな鉄道を都市内の交通システムとしていく。こうすると、都市間、都市内両方のシステムで自動車の代替ができてくるんじゃないだろうか。逆に、これをやらないと大変なことが起きてくるというのを藤目さんのお話から感じたわけであります。  もう一つの方法である、自動車は普及するとしても、その自動車に使う燃料を代替していく、石油から非石油へ代替していく。  どんな方法があるのかということでありますが、例えば燃料電池と一言で言いますけれども、ガソリンを燃料とした燃料電池というのはガソリン自体が石油でありますけれども、それ以外に例えばメタノールから水素をとる、要するに水素をとればいいわけでありますから、そうなりますといろいろオプションが出てくるだろう。天然ガスから改質して水素をとるといった燃料電池、こういった燃料電池自動車を走らせる。自動車であっても、より石油を使わないというのが方法かなと。あるいは、天然ガス自動車あるいは電気自動車といったようなオプションがあると思います。  こういったようなことがもう世界的な戦略、特に発展途上国中心とするモータリゼーション、それに伴う石油需要の急増に対する方策かなと思うんですが、このあたり、先生はどのようにお考えでしょうか。
  11. 藤目和哉

    参考人藤目和哉君) おっしゃるとおりで、石油需要増加分はほとんどがアジア中心とした途上国における自動車用燃料ということなんですが、一つは、アジアの国を見ていても、いわゆる大量輸送機関と言われる公共輸送機関が日本に比べると著しく未発達であるわけですね、これは歴史的な経緯もあると思うんですけれども。そういう自動車とかあるいは大量輸送機関についての技術協力、経済援助も含めて、日本の場合にはお手本になるわけで、そういう技術を、実際に地下鉄つくったりいろいろやっているわけですけれども、これをかなり日本としては強力に進めていくことができる立場にあるんじゃないかというのが大きな問題だと。つまり、日本並みにすれば相当の自動車用の燃料消費が節減できるということですよね。  それから、燃料についてはもちろんその燃料電池で水素、水素をできれば再生可能エネルギーとか原子力でつくってということは考えられるんですけれども、これは今二〇一〇年ぐらいに向かって実現に向けているわけですけれども、先進国でも非常に大変なものが途上国に普及するのはいつごろかという話なんで、私の感じでは恐らく二〇五〇年ぐらいまでは難しいんではないかと思うわけですけれども、ただそれは考えていくべきだと思っています。それもハイブリッド車とかそういう燃費の非常にいいものを普及していく。今はどっちかというと中古を使ってもらっているような感じで非常に燃費が悪いですから、その燃費の面での技術協力というのはできるんじゃないかと。  決定的な代替燃料というのは水素そのものということだと思うんです。その水素を何からつくるかということが問題なんですけれども、超長期的には水素そのものが使われることになるというのは、これは環境面でも非常に好ましいわけで、ただそれはかなり五十年単位の問題で、なかなか私自身は普及が難しいんではないかなと思っております。  そういう意味で、とりあえず日本としてできるのは、やっぱり大量輸送システムとその技術ですね、これを途上国に積極的に移転することをやっていくということが重要かと思っています。
  12. 加納時男

    加納時男君 ありがとうございました。  これからの発展途上国の人々の生活水準の向上、所得の向上、そしてまたエネルギーの使用がふえてくる、これは当然予想されるんですけれども、いかにして彼らの生活水準の向上、利便さの追求とそれから環境に与える影響を少なくしていくのか、これ両立を図っていくというのは大変な大きな戦略課題だと思っています。そういう場面で、やはり日本の役割、国際協力の場合の日本の着眼点というのは、当然、こういう輸送部門のエネルギーの効率化あるいは脱石油化といった面での協力というのは当然あってもいいのではないか。この話題は掘り下げていくと幾らでも広がる大きな話題かと思いますけれども、貴重な御意見をありがとうございました。  もう一つ藤目さんに伺いたいんですけれども、先ほどの御説明で非常に興味深く伺ったのは、きょうの資料の二ページの左の一番下とそれから右の真ん中の二つの枠でございますが、これ見ていますと、石油市場自由化に伴う副作用ということも当然ありまして、余剰能力を減らしていく、それから精製能力の余裕分をカットしていく、こういうことをやって、いかにしてプレーヤーとしては最適化を図るかという御説明がありました。その御説明がよくわかるのは二ページ目の右下の図だと思うんです。アメリカ精製能力、この絵をぱっと見ますと、八〇年代後半から精製能力を絞り上げてきたと。過剰精製能力を絞ってきて、その結果、価格上昇を図ったということがはっきりわかるんじゃないかなと思います。  この場面が効果をあらわしたのが一ページ目のNYMEXのウエスト・テキサス・インターメディエートの急上昇にもあらわれてきているのかなと。私の質問はこういうことなんでございますが、一体全体、石油価格というのはどのくらいの水準がメジャーズですとかOPECの方々の共同の利益といいますか目標なんだろうかと。  今までも、私も石油価格ずっと眺めてきて感じたことなんですけれども、一つの仮説として、余りにも下がり過ぎたならばこれはもう石油企業があるいは産油国が発展できない。しかし、余りにも高くなり過ぎると急激な代替エネルギーへのシフトが始まってしまう。これまで市場に出なかったような新しい技術市場化してしまう。したがって、代替エネルギー開発だとか、それから石油離れを生じないような範囲でのいわば中の上程度のところのバンドの中での価格の安定、その中での価格の変動というのがどうも一番望ましいのかな。  具体的に言いますと、バレル当たり、今の価格で二十二ドルから二十八ドルぐらいと、よくアメリカ方々と議論するとそんな数字が出てくるんですが、二十二ドルから二十八ドルぐらい、いわば中の上ぐらいの価格のバンドの中で動くのがいいのかなと。そういうことを目指しながら精製能力を絞ったり、若干ふやしたり、それからOPECの方も減産をしたり増産をしたりしているのかなと思うんですけれども、こういう仮説についてコメントいただけたらと思います。
  13. 藤目和哉

    参考人藤目和哉君) これは非常に難しい問題で、御存じのように、OPECのプライスバンドというのは二十二から二十八というのを設定して、その中に入るように需給を調整するということですから、ですからもう石油市場自体が自由競争市場ではないんですね。OPECというカルテルが厳然として存在し、しかもオイルメジャーという非常に強力な企業が存在しているわけで、決して自由市場ではないと私は思っていますけれども、日本の国内は自由市場に近いんだと思います。  そうしますと、価格はどの程度が適当なのかというのはなかなか難しい。売り手にとっては高ければ高いほどいいというわけでも必ずしもない。おっしゃったように、上げ過ぎれば需要がおっこちてひどい目に遭うわけですから。  そういう意味では、私も個人的には恐らく二十五ドル前後のところだと、長期的にも、生産者にとってもある程度の収入を得られるし、買い手の方にとっても負担がそんなに大きくないというぐらい、あえて言えば二十五ドル前後じゃないのか。ただ、その二十五ドルにずっとするためには一種の商品協定を結ばなきゃなりませんから、もう商品協定は今まで成功したものはないんですね。ですから、実際にはそうしておくのは難しいと思いますけれども、二十五ドル前後だと生産者にも消費者にとっても適当な価格かなと思っています。
  14. 加納時男

    加納時男君 ありがとうございました。  その関連で伺いたいことがございます。  これは関岡参考人に伺いたいと思うんですが、きょう関岡さんからいただいた資料グラフを見て、これ初めて見たグラフですけれども、ぎょっとしたのでございますけれども、石油需要曲線供給曲線というのがありまして、非常にこれ印象深いグラフだと見ているんですが、ちょっとわからないことがございまして、おっしゃるように、この上の方の図の一でございますね、需要曲線がこれ立っちゃっているわけです。つまり、これ私の言葉で言うと、需要価格弾力性がないというふうに経済学の用語で読むんだろうと思いますけれども、そうだろうかということであります。  確かに、私ども、七三年以降ずっとこういうものを見てきた立場からしますと、例えば乗用車の需要というのは乗用車のガソリンなり軽油なりの需要でございますが、こういった需要というのはおっしゃるとおり価格弾力性がなかったということは痛感しております。それから、家庭用の電気、こういうのも需要の弾力性、価格弾力性がないなと思っておりますが、しかし一方で、これ石油と書いてありますので、考えてみますと、例えばヒーティングオイルですね、暖房用の、日本で言うと灯油と言っておりますけれども、こういったものは価格弾力性があるのかなと。  例えば、灯油の値段が上がってしまうと、電気のヒートポンプにかわるとかガスヒーターにかわる、これ現実にありました。それから、例えば工業加熱用、これは重油を使わずにほかの燃料にかわったというケースがあります、インダクションヒーターにかわったとかですね。それから、発電用というとこれはもう見事になったわけですけれども、石油に七七%依存していた発電燃料が今や石油のウエートというのは一〇%におっこっちゃって、六〇%もどんとおっこちたのは、まさにエネルギーの安全保障ということももちろんありましたけれども、しかし、やっぱりこの価格効果があったんじゃないかな。それで天然ガスにかわり、原子力にかわって、七〇%から一〇%というふうにドラスチックに石油需要が変わったのかなというので、この立っちゃったままの需要曲線、ちょっと私、違和感を持つんですけれども、いかがでしょうか。
  15. 関岡正弘

    参考人関岡正弘君) まさに御指摘のとおりだと思います。多分、需要曲線は階段的になるんじゃないかというふうに考えています。  ただ、ここでそういうことを説明しなかったのは、問題の本質というのはなるべく単純にした方がわかりやすいのではないかということでこういうふうにしたわけです。特に、原油価格がなぜ高騰するかというのは、短期的に見ると石油製品価格弾力性がほとんどない、場合によっては、仮需というものを考えると逆に右の方へシフトしてしまうということで、価格が上がるとかえって需要がふえてしまう、そういういろいろな問題があると思います。  私が経験している一番典型的な例はセメントの重油です。第一次石油危機のときに日本で七百万キロリットル使っておったんですけれども、これが半年後に消えてしまったんです。ただし、それは半年かかったし、その間はセメント業界の重油の積み増しはあったわけです。ですから、中長期的に見るか短期的に見るかによってそこが変わってくると思います。
  16. 加納時男

    加納時男君 どうもありがとうございました。  最後に、石黒参考人一つだけ伺いたいと思います。  きょうのお話はよくわかりましたので、ありがとうございましたというのがもうほとんどでございます。九〇%。あと一〇%、一つだけ質問がありますけれども、最後におっしゃった政府の役割のところで、緊急時への対策というのがありました。確かに、政府の役割として私は、市場に介入するんじゃなくて、一つの大きな枠をつくっておいて、あとはもう自由に市場でやってくださいというのが正解だと思っていますが、非常にリスクの高い上流部門への投資、こういうものについての政府の保証であるとか、例えばカントリーリスクについて、ある程度政府の持っている金融保証機能でバックアップするとか、そういうのがあってもいいと。それと同時に、この緊急時への対策はすぐれて国の役割だと私は思います。  そういう意味では、アメリカではSPR、ストラテジック・ペトロリアム・リザーブといっておりますけれども、緊急石油備蓄というのは国家備蓄です、全部。日本の場合には、備蓄というのは国家備蓄と民間備蓄のいわば合わせわざというようなことになっていると私は理解しているんですけれども、この辺について、国の役割、民間の役割を、備蓄に限ってですけれども石黒さんはどういうふうにお考えでしょうか。
  17. 石黒正康

    参考人石黒正康君) 今の御質問は、備蓄に関して、民間備蓄を日本は義務づけられておる、これに対しては確かに民間から、いわゆる俗な言葉ですが不平が出ている部分がございます。ただ、ヨーロッパを見ましても、民間は実は備蓄をやっているんです。つまり、日本のような各企業が備蓄をするのではなくて、協会を通して備蓄をして、そのフィーを払うという形です。ですから、これは制度の問題であって、決して民間がそれを無視しているという意味ではございません。
  18. 加納時男

    加納時男君 それはわかるんですけれども、例えばアメリカではなぜ民間に備蓄がないんですか。実際に在庫はあります。在庫はあるけれども、民間に備蓄は義務づけていないし、民間備蓄はない、緊急時の備えは国の役割だと、ナショナルセキュリティーは国のファンドでやるんだというのが私はアメリカのSPRの基本的な考えかと思うんですが、その辺どうでしょうか。
  19. 石黒正康

    参考人石黒正康君) これは、多分アメリカ石油産業の歴史から見る必要があろうと思います。  そもそも、ああいった大きなメジャーズができたのは、まさにエクソンでありモービルであったわけですが、彼らはある意味では自分たちのビジネスに国が介入することを極端に嫌ったわけです。それはまさに一八〇〇年代の後半から一九〇〇年代前半を見ればおわかりのことです。そういう意味では、メジャーズはあるときは国と戦った企業でもあったわけです。そういった意味で、日本のビジネス環境とは非常に違います。  ですから、アメリカでは大統領命令で石油業界に備蓄を命令できるような形にはなっておりません。そこは非常にアメリカの場合は明確に自分たちの役割を分けているかと思います。
  20. 加納時男

    加納時男君 どうもありがとうございました。  三人の参考人の方に厚く御礼申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  21. 足立良平

    ○足立良平君 民主党・新緑風会の足立でございます。  きょうは、藤目参考人、それから関岡参考人、そして石黒参考人、それぞれ本当に有益なお話をいただきまして、お礼を申し上げたいと思います。  時間も余りございませんので、それぞれ三人の参考人の皆さん方に質問をさせていただきたいと思います。  まず初めに、藤目参考人にちょっとお聞きをしておきたいと思うのですが、きょうお話をいただきました資料、これは一応私もそれぞれ見させていただきまして、本当に有益だったと思うんです。ちょうど昨年の十月くらいだったでしょうか、藤目参考人の「「長期エネルギー需給見通し」改定に向けて」という論文を拝見させていただいておりまして、きょうお話にあったことも含めまして藤目参考人の説が載せられているわけでありますが、石油の問題というのを考えてみましたときには、藤目論文のように総合的な我が国のエネルギー戦略をどのように確立していくかということも、これまた中における石油ということは大変重要なファクターだろうというふうに思っているわけであります。  その中で、私は、きょうは触れられていなかったんですが、藤目参考人にちょっとお聞きをいたしたいと思いますのは、省エネルギーの問題と炭素税、表現はどういう表現をしたらいいのかちょっとわかりませんけれども、に対する考え方について再度お教えをいただきたいと思います。  実際的には、余りにも低過ぎるとほとんどこれは効果がない、高過ぎると国際競争力を阻害するというふうな観点から、いわゆる炭素税あるいはまた環境税というふうに言ったらいいのかわかりませんけれども、そういう面でどういう考え方をこれからしていけばいいのだろうかということが一点目でございます。  そして二つ目に、これから、石油の問題を含めまして、省エネルギーというもの、エネルギーを抑えていく、そういう面で一体どういう手段というものをとっていくことが一番社会的に見ても、あるいはまた経済的に見ても有効な手段であるのかという点でもしお考え方があればひとつお聞かせを願っておきたい、このように存じます。  それから、それぞれ一点ずつ御質問させていただきたいと思いますのは、関岡参考人に一点まずお聞かせを願いたいと思うんですが、これも後ほど時間があれば少しまたきょうお話のあった点でお聞きをいたしたいと思うんですが、関岡参考人が、これも昨年だったと思いますが、エコノミストで論文を発表されておりまして、ちょうどこういう表現がありまして、実は私、大変興味を持ちましたので、ちょっと考え方をお聞かせ願いたいと思います。  これは、この委員会の中におきましても石油問題を議論いたしますときに、石油公団の問題について、これが一体どうなのかということの議論を実は我々やっているわけでありまして、この点について関岡参考人がおっしゃっておりますのは、石油公団という名称はいかにも石油公社の印象を与えるが、実際は金融会社であるというふうな表現をされておりまして、むしろ真の石油会社に変革をすべきなのではないかというふうにおっしゃっているわけでありまして、この点、石油公団のこれからの役割なり、あるいはまた、先ほども出ておりましたけれども、国としてこれからの石油政策を進めていくに当たっての石油公団の役割とか、そういう面について関岡参考人の御意見というものを参考までにもう少し詳しく教えていただきたい、このように思います。  それから、石黒参考人の方にもお聞きをいたしたいと思うんです。  これは大変失礼な言い方してまことに申しわけございませんけれども、藤目参考人は、先ほどずっとお話をいただきましたときに、最後の方だったと思いますけれども、中東石油争奪戦というふうな、表現はちょっと別として、市場メカニズムでは対応は難しいのではないかというふうに御指摘になったというふうに私はお聞きをいたしました。石黒参考人のお話をずっとお聞きいたしておりますと、お話としては、石油というのが戦略商品から市況商品にもう既に変わってきたんだというふうに一応考え方が出されたというふうに思っていまして、むしろ市場主義にのっとって石油問題というもの、あるいはまた日本エネルギー問題というものを考えていくべきだというふうに私はお聞きをいたしたわけであります。  そういう面で、本当に戦略商品から市況商品に完全になったというふうに、私もそんな感じもするんですが、一方でまだ、待て待て、本当にそうなのかねと。中東にほとんど偏在している石油の今日の状況なり中東の政治状況なり、あるいはまた輸送してくるに当たってのそれぞれの海運の状況なり等々いろんな点を考えてみましたときに、ううん、どうなのかなというふうにちょっと私は思ったりいたすわけでありまして、そういう面で、この点についてもう少し突っ込んでお考えをお聞かせ願いたいと、このように思います。とりあえず、まずお願いいたします。
  22. 藤目和哉

    参考人藤目和哉君) 私の書いた論文自体では、エネルギーというのは個別のエネルギーだけで考えると必ずしも解決が出てこないということで、エネルギーミックスをどうするかというのが非常に重要だということです。幸い日本石油が大体五割、五二%です。あと天然ガス石炭原子力、水力。先進国の中では一番バランスがよくとれているということです。これはたまたま政策を追求した結果そういうふうになったということですけれども、そういう理解をするべきだということであります。  その中で、原子力の計画で二十基建てるというのが必ずしもスムーズにいくとは限らないわけなので、そのときにどうしたらいいかというと、原子力のかわりに普通考えられるのは天然ガス火力石炭火力ですけれども、これを五〇、五〇でもし代替すると、CO2が炭素換算で約二千万トンふえてしまうんです。二千万トンふえてしまうと、それを省エネしなければいけないということですから、実は原子力の計画をおくらせれば実際には省エネをたくさんやらないと合わない、新エネルギーは非常に限度がありますので。そういう意味で、原子力も反対だけれども省エネルギーはそう進んでやらないということは成立しないということなどを言ったわけです。  そのときに、経済的な手段として、つまり個人個人の価値観に頼るわけにはいかないので、いろんな方法があるんですけれども、炭素税というのも一つの考えだろう。これは国際的にはヨーロッパを中心として非常に有力な考え方です。しかし、炭素税は、今考えられているリッター二円とかいう話だとほとんどきかないし、それじゃ実際にきくとすればリッター五十円とかそういう話になるので、これはとても耐えられないという、なかなか難しいのと、必ずしもどの程度エネルギーをしてCO2を減らせるか効果が推定できないんです、炭素税の場合。  したがって、私自身は排出権取引というのがもっと有効ではないかということで、排出権取引は、要するに、排出量の目標を超過達成した企業から未達成の企業が買うことができる、あるいは国でいえば国間で取引ができるということで、これは必ずしも環境を売買するわけではなくて、安いコストのところから省エネをしたりCO2を削減するという考え方なので、これですと京都議定書の目標をきちんと達成できたかどうか、企業ベース、国ベースで一応できるわけです。  それと、できるだけ安いところからやっていくというのは、これは経済合理的でもありますし、そういう考え方がいいのではないか。しかも、国際競争力の点で差が出ないということですね。アメリカ京都議定書を離脱した場合はともかく、あらゆる国が同じような排出権、排出権というのは国際的に一本化するような仕組みになっていますので、格差が出ないという意味で排出権取引が最も適当ではないかということを、私あるいは私どもの研究所はかなりそういう考え方を出しております。  もちろん、炭素税等の組み合わせというのもあり得るわけですし、これは政治的にいろいろ難しい問題ですからどうなるかは別として、排出権取引というのはかなり有力な省エネ手段あるいはCO2削減手段としてきいてくるんではないかというふうなことです。  それから、省エネルギーが非常に重要だというのは、特に京都議定書を守るために何でも省エネルギーと、省エネルギーにみんなどうしても頼っちゃうようになるんですけれども、実際にはそう易しくない。つまり、生活水準を下げるのはみんな嫌いますし、戦後のあの世界に戻るというのはまず考えられないということですから、所得水準は例えばGDPでいうと二%ずつ今後伸びるというのを想定しますと、やっぱりエネルギーというのは所得効果が大きいんです。つまり、所得がふえるのにエネルギー消費を減らすというのは、いわゆる劣等財ということで、よく昔アイルランドで貧乏になったらジャガイモをたくさん食べるようになったということが言われていますように、所得と反比例するものを劣等財と言うわけですけれども、エネルギーを劣等財にできるかというと、なかなか難しい。  そうしますと、GDPで二%所得がふえるのにかかわらずエネルギー消費を、先ほどの原子力の計画がおくれた場合とを比較しますと、最終エネルギー消費はむしろマイナス一%ずつぐらい二〇一〇年に向かって下げていかなければいけないですね。GDPはプラス二%、最終エネルギー消費はマイナス一%ということが本当にできるのかということになると非常に難しいんですけれども、先ほどの排出権取引の仕組みを、これはかなり強力にやらないとしないので、いろいろ企業の抵抗とか個人の抵抗があると思いますけれども、そういう仕組みで一つはやるということと、もう一つは、基本的には最近のIT化技術を含めて、要するに一人一人がいかにも頑張って省エネをしているという感じではなくて、技術の進歩によって合理的にエネルギー市場配分が行われるというような仕組みといいますか、基本的には技術進歩ということですけれども、それでやっていくような、だからIT戦略の中にぜひこういう省エネルギー戦略というのを組み込んでやっていくことによって技術的に可能ではないかと考えております。  以上です。
  23. 関岡正弘

    参考人関岡正弘君) 足立先生の御質問はまさに私にぐさっと刺さったような印象があるんですけれども、石油公団といいますのは、私は実は今の大学で教えて十一年目になるんですけれども、その前はアラビア石油という石油会社で働いておりまして、その間三年間、石油鉱業連盟というところに出向していろいろお世話になった関係がありまして、いわば仲間内の存在であると。  考えてみますと、石油開発業界というのは非常に弱体な存在であります。その中で、もし石油公団という存在がなければ今どうなっていたのかなというと、やっぱり非常に石油開発業界にとっては頼りになる存在だったのではないか。その意味で有意義だったのではないかというふうに思う反面、二年ぐらい前でしたでしょうか、文芸春秋で堀内元通産大臣がお書きになった文章を読んで、私が石油業界にいたころはなるべく考えないようにしていた、何というんですか、暗黒部みたいなのが白昼にさらされて、やはりこれは問題があるなというふうに考えたわけであります。  何と申していいか、正直言って答えがないんですけれども、ただ一つ指摘しておきたいことは、石油公団という組織は、お金を貸す機関であって、銀行のようなものですね。しかも、問題は、リスクマネーであっても返済を義務づけられていると。ということになると、実はリスクマネーではない。失敗した企業で焦げついた分を成功した企業からそれをプラスして徴収するというシステムになっているために、必ずしもプラスの面ばかりではないということで、その点は、私の個人的な願望のようなものなんですけれども、日本に強力な石油会社があればいいなと、特に開発部門において。それになり得るのは石油公団しかないのではないか。  もう大分昔の話なんですけれども、第一次大戦中にイギリスが当時のペルシャの石油利権をベースにアングロ・ペルシャ、現在のブリティッシュ・ペトロリアム・アモコですけれども、それを設立したわけです。それで、イギリス政府が五〇%以上の資本金を持ったんですけれども、経営にはほとんど参加しないで民間会社として機能して、今や世界のビッグスリーと言われる石油会社グループの中核に座っていると。  それで、そういう多分私の夢物語みたいなことをつい書いてしまったというのが実態であります。
  24. 石黒正康

    参考人石黒正康君) 先ほどの御質問は、石油が戦略商品であるのか、いわゆるコモディティーであるかという、これはいろいろなところで議論されている問題です。それで、まず戦略商品という言葉を出したとき、一体それはだれにとっての戦略なのか。多分我々日本人の頭にまず思いつくのは、産油国にとっての戦略ということもあるかもしれません。  ただ、今のOPECを見てもおわかりのように、OPECはもう既にカルテルではございません。例えば、その中のメンバーを見てもサウジ、クウェート、イラン、イラク、ある意味では政治的にも争っている国です。OPECがいろいろな取り決めを行いますが、そこは合意の場でしかないんです。例えば、約束した各国の生産枠を破った場合、罰則を与えることはできません。罰則を与えることができないということは、強制力がないわけです。それから、価格の協定もできません。  もう一つ、今、原油価格を決めているのは、いわゆる公示価格というものはもう既に二十年以上前に消えています。今、石油を買うときどうするかというと、売り手と買い手は価格のフォーミュラを決めるだけです。基本的にそのフォーミュラのもとになるのは、今のマーケットにおいて石油製品が幾らであるのか、その形で決めているわけです。  もう一つメジャーズというものもあろうかと思います。じゃ、メジャーズが戦略的に石油を押さえる、しかしこれも本当に可能でしょうか。スーパーメジャーズと言われるものを見ても、エクソンモービル、それからシェブロン、BP、それからロイヤル・ダッチ・シェル、シェアを完全に押さえているものはないわけです。力はあります。  それと、彼ら自体も原油資源を持っているわけではもうありません。例えば、第一次石油危機が起きたときどういう状況であったかというと、その当時はいわゆるセブンシスターズが利権を持って、産油国生産した原油を自分たちのルートで、一本のルートで流していたわけです。そこをいきなり産油国は国営化したわけです。その時点でも国営石油はメジャーズに流通販売網を依存しなければならなかったわけです。ですから、その一本の道しかなかったがために、ああいった極端な市場の変動が起きたわけでございます。ただ、今そのルートというのは非常に多様化しております。そういった意味で、市場のメカニズムはきいております。  ただし、先ほど藤目先生がお話しになりましたように、需要が上がっていることは事実でございます。そういった意味で、需給はある意味ではタイトになります。ただ、その場合にも基本的には需給とのバランスの中で供給がどう上がるのか、需要がタイトになれば価格は上がります。ただ、それを決めるのもやはりマーケットです。  エクソンモービルにとっても、彼らは別に米国を代表しているわけではありません。生い立ちとしては米国かもしれませんが、世界じゅうでオペレーションしているわけです。そういう意味では、アメリカだけの利益で自分たちの事業戦略は決めません。  それで、もしマーケットでの争奪という、ある意味ではみんなが競争するという意味では争奪かもしれません。ただ、そのときにいわゆる消費国側がそこで勝つというのは、多分その技術力であり、資本力であった、そういったところがアドバンテージを持つ。当然売り手の方は少しでも高い値段で売りたい、そこは需給関係で決まりますが、そのとき手を結ぶのはやはり資本力がある、技術力がある、ここはやはりマーケットのメカニズムで動くと思います。  ちょっと余談になりますが、先ほど私がお示ししました八ページの図、実質価格で見てください。九九年は確かに原油価格、ぼっと上がりました。ただ、この原因というのは九八年に実はもう原油価格は十ドルを切るかどうかまで下がったわけです。そのとき、メジャーズは十ドルの原油でも生き残れる体質をつくろうとして、下流部門を物すごくスリムにしようと動き始めました。それから、在庫も減りました。  特に、アメリカで起きたのは、いわゆる在庫がかなり減ってきたわけです。その中で、市場としては当然先物を抑えようとします。それが価格上昇になったわけです。ただ、それも長くは続きませんでした。二〇〇〇年になって、一時は三十数ドルまで上がったものが、また二十ドルを切るところまで落ちてしまったわけです。その中で、OPECはいわゆる二十五ドルを真ん中にしてプラスマイナス三の二十二から二十八という価格帯の中で抑えたいと。消費者の方もその辺が一つの妥協というところで現在に至っておるわけです。そういう意味で、私は市場は否定いたしません。
  25. 足立良平

    ○足立良平君 ありがとうございました。
  26. 海野義孝

    ○海野義孝君 公明党の海野でございます。  きょうは三人の参考人方々、御多忙のところを私どもの法案の審議に資するために、大変有益な御意見、示唆に富んだお話をいただきまして、大変感謝を申し上げます。  最初関岡参考人にお聞きしたいと思いますけれども、いただいた資料を読ませていただきましたけれども、今回のこの私どもが今審議中の法案の改正の中でもいわゆる上流の問題、原油開発の問題につきまして、またさらに石油公団のあり方も少し変わってくるような感じがするわけなんですけれども、先生もこの中で、石油開発政策のあり方ということにつきまして、近年の石油高騰等におきましては、従来OPECは生産制限をやりましてもなかなか成功しなかったけれども、今回に限ってはうまくいったようだと。それは、やはり生産余力がもうほとんど残っていないんじゃないかと。先ほど御指摘のように、世界原油生産能力も九八年に大体ピークアウトしたんじゃないかと、その後ふえていないというようなお話でしたけれども。そういったことで、やはり我が国にとりましても石油開発政策というのは強化すべきじゃないかというような御指摘をされているわけです。  その中で、ただしそのあり方についてはいろいろ改革すべき点があるんじゃないかと、こういうような御指摘でありましたけれども、その辺、もうちょっと具体的に先生のお考えになっている点はどんな点がございますでしょうか。
  27. 関岡正弘

    参考人関岡正弘君) 最初の部分にもうちょっと補足させていただきたいんですけれども、やはり石油開発政策を考える場合に一番大事なのは、地下の確認埋蔵量が一体どれぐらいあるのかということがすべての出発点になるべきだと思うんですけれども、実際のこと、これはだれにもわからないんですね。全くわからないんです。  ですから、過去十五年ぐらい、これは出発点は一九八五年の末から八六年にかけて起きた原油価格の大暴落なんですけれども、ちょうどその同じころに確認埋蔵量統計が引き上げられたんですね。それまでは大体七千億バレルぐらいだったのが、三年ぐらいかかりまして一兆バレルに引き上げられたわけです。それで、その後それが据え置きになっているんですね。  ということは、一九八六年以降について考えますと、六千億バレル石油が発見されたことになって、というか追加されたことになっているんですね。六千億バレルということは途方もない数字でありまして、世界最大の油田であるサウジアラビアのガワール油田でも、かつて八百億バレルと言われていたわけです、今六百億バレルというのが資料に出ておりますけれども、それを十個見つけて初めて六千億バレルということであって、これは絶対あり得ないわけですね。ですから、一兆バレルという埋蔵量がどれぐらい残っておるか、といいますか、一兆バレルという数字は全く根拠がないわけですね。  ただし、具体的にどれぐらいになっているかということは私ももちろんわからないわけなんですけれども、一応、油田開発する場合に、北海などは最大級の原油でも十五年回収で考えるんですね。大体そういうことを実行されていると。それで、中東油田はもうちょっと大きいので、五十年分あるいは六十年分ということで生産設備が計画されるわけですけれども、それはむしろマーケットが当時なかったためにそれだけ抑えられたということであって、産油国の人もできるだけ収入は多い方がいいわけですから、売れる限りなるべく大きな生産施設をつくるということを考えると、保守的に考えて、油田というのは三十年回収で考えられるとすると、もし一兆バレル埋蔵量が今あれば一億バレル・パー・デーの能力があるはずなんですね。三百六十五を掛ける三十年分となると大体一万倍になりますから、一兆バレルを一万で割ると一億バレル・パー・デーになるということなんですけれども、もしそういうポテンシャルがあれば、今、絶対に原油価格が上がるはずがないんですね。そういうことから考えると、一兆バレルよりかなり下回っているのが実態ではないかというふうに私は見ておるわけです。  そうなりますと、これからかなりきつい事態が生ずると。もし一九九八年に能力のピークを打ったとすると、ピークを打つということは、あと、下り坂ということになりますから、どれぐらいのペースで考えるかが問題ですけれども、これからふえないのではないかというふうに考えておるわけです。  そうしますと、それは余りにも大きな問題であって、一石油公団がどうのこうのという問題を超えてしまって、原油価格上昇に対してどうやって日本は対処していくのか。ただ、非常に問題なのは、先ほどグラフで示しましたように、生産能力限界に実際の生産水準が近づきますと暴騰もするかわりに暴落もするということで、現在でも世界経済がどうなるかということによって大暴落もあり得るということで、これから考えなければいけないのは、原油価格の暴騰あるいは暴落の中でエネルギー政策を考えなくちゃいけないのではないかと。私は、個人的な見解ですけれども、そういうふうに考えておるということであります。
  28. 海野義孝

    ○海野義孝君 もう一つ、ちょっとお聞きしたいんですけれども、今、確認可採埋蔵量のお話、これは絶対的なものでないということで、その見通しが変わることによって原油価格にも大変な変動を与えるというお話でしたけれども、原油需要見通し等から見まして、原油価格というのは景気の状況によりまして変動はあるとしましても、恒常的に見て原油価格というのは上昇するというようにトレンドとしてはお考えでしょうか。
  29. 関岡正弘

    参考人関岡正弘君) 暴騰、暴落を繰り返しながら、趨勢的には上がっていくと思います。
  30. 海野義孝

    ○海野義孝君 石黒参考人にお願いしたいと思いますが、石油備蓄の問題につきましてです。  先ほどから皆さんのお話の中にも出てきておりますけれども、やはりこれから中国などアジア諸国における原油需要というのは急激にふえていく。現にそういう状況にあります。そういったことから、日本以外の多くのアジア諸国は、そういった点から見ますと十分な石油の備蓄をしていないのではないかと、こう思うわけでございます。そういった点では、アジアの諸国も自国の安全のためにも責任を持って備蓄を行うというように、我が国としましても例えばODA予算を活用するなどの各種の方策によってその勧奨に積極的に取り組んでいく必要があるんじゃないかと、こう思うんですけれども、そういったアジア諸国における石油備蓄の必要性とその対応、我が国のなすべきこと等についてはどんなお考えをお持ちでしょうか。
  31. 石黒正康

    参考人石黒正康君) まず備蓄の性格ですが、基本的に今の備蓄は何が対応できるかというと、急激な価格変動に対してそれを冷やす作用しかありません。ですから、例えば二年、三年、四年といった長期にわたってタイトになった場合、これを冷やすだけの能力はございません。あくまでもボラタイルに価格が動いたときの対応策であります。それをまず考えておく必要があろうかと思います。  そしてもう一つアジアの諸国が備蓄をするべきであるか否か。これはそれぞれの国がやはり考えるべき問題であると思います。事実、備蓄というのは非常にコストが高くつきます。それはある意味では保険です。それはその国の財政能力あるいは同じ財政を投入するのであれば、ほかにエネルギー安全保障の道を探すこともあるかもしれません。ですから、これは日本がやりなさいという話ではないと私は個人的には考えております。
  32. 海野義孝

    ○海野義孝君 藤目参考人にお聞きしたいと思います。  今回、石油業法が廃止になるということでございますけれども、現行法におきましては石油輸入業は届け出制であったわけですけれども、備蓄義務があったにもかかわらず実際には備蓄の履行がされないというようなこともありまして、今回は登録制になったと。  登録制というのは唯一の規制なわけですけれども、言うなれば、規制緩和の中で、反面、規制強化というようにもとれないわけでもないんですけれども、これは登録制でないと備蓄におきましての目的を達成できないのかどうかといった点が一つと、それから需給調整規制というものを撤廃して本当に大丈夫かどうかと。例えば、主要国のエネルギー政策規制緩和の関係等についてはどうであるかといった点、特に我が国のような護送船団方式をやめるということによりまして緊急時に対応できるか、そのセーフティーネットという点ではどうかという点、こういった点について教えていただきたいと思います。
  33. 藤目和哉

    参考人藤目和哉君) 非常に難しい問題で、どちらかというと私の専門ではないんですけれども、石油業法自体が今回廃止になるというのは、歴史的な流れとかあるいは国際的な流れの中では自然だと思うんです。登録制にしたということについては、これはなかなか政治的な判断ですし難しいと思いますけれども、ただ全く規制がなくていいかというと、私はやはり、先ほど石油はコモディティーか戦略商品かという話が出ましたけれども、コモディティーの面もあるし戦略商品の面もあるということで、その局面局面によって両方出てくるんだと思いますね。どっちかに割り切れるものでもないということで、やはり備蓄義務とか、国がある程度関与した方がいいという場合は当然あるわけで、これは食料とエネルギーというのは戦略物資であるという考え方が日本では法的に確認されているわけですけれども、やっぱり石油も戦略的物質の一つであることには変わりないと思いますね。  コモディティー化しているといっても、それが全くなくなるわけじゃなくて、緊急時にはそういう面がぐっと出てくるということで、平常時では余り出てこないということで、一方的にコモディティー化したということは言えないんじゃないかという意味では、ある程度規制は必要ではないかというのが私の考え方です。  それから、需給調整規制を撤廃して緊急時に大丈夫なのかという点については、これは行政指導も含めていろんなやり方があるわけで、撤廃しても国が何もしないというわけではないと思いますね。ですから、備蓄の放出ももちろん今度できるようになってくることですし、そういう形で、撤廃したとしても国が何らかの形で、アメリカのメジャーズは国の介入を嫌うと言っていましたけれども、日本は国に依存しないでもやっていけるだけの規模の石油会社があるわけではないわけで、ある程度国の関与が必要なときにはするということで、撤廃されたからといって全くフリーハンドになるわけではないというふうに考えております。
  34. 海野義孝

    ○海野義孝君 それでは、最後石黒参考人にお聞きしたいと思います。  これから公団は既に発見された油田の買収に当たって資金を出すというような新しい踏み込んだ段階に入っていくわけですけれども、これは本当により効率的で確実な手段と言えるかどうかというような点についてどのようなお考えをお持ちかどうか。そしてまた、我が国の、おくればせながら四つのグループに仕分けされた日本石油業界、これが和製メジャーといった方向に向かって進んでいくという点については、収益的な点とかあるいは供給力とか、いろいろな面におきましてどういった評価をされるかといった点についてお願いします。
  35. 石黒正康

    参考人石黒正康君) まず第一の御質問で、公団がいわゆる既存の油田を買収するエクイティーとして参加していく、これについては私は一つの戦略として、選択肢としてとり得るものだと思います。私が個人的に一番やっぱり問題であったのは、かつてはまさに日の丸原油でしかなかった。自分たちのお金だけで、自分たちの技術だけで、一切メジャーズを排除して自分たちの橋頭堡をつくるんだ。これは非常に高くついたわけです。実際、その力もなかったわけです。それがああいった公団の事件を起こした背景にあったわけです。  そういった意味で、ある意味ではそれなりの価値を持った油田も世の中にはあります。それは多分生産コストと規模の問題です。それをエクイティーで参加するという可能性はあります。実際、メジャーズも合従連衡あるいは大きいところがインディペンデントを吸収していった。これは何のためかというと、石油危機以降、いわゆる石油資本というのは国営化政策によって油田をどんどんとられていったわけです。その中で一つ彼らが確保しなくちゃいけないのは、供給源をどうするか。もちろん穴を掘るという方法もありますが、手っ取り早いのは既存のものを買うということ。そういった意味で、私はこの戦略はあると思います。  ただ、これも私が先ほどプレゼンテーションいたしましたように、リスクとコストとリターンがちゃんと評価されなければならない。いわゆる我々、企業の買収などもやりますが、バリュエーションということをやります。その企業が一体どれだけ価値があるのか、その油田がどれだけ価値があるか、そこを見きわめる必要はございます。  それから次に、日本石油産業、これはいわゆる精製・元売ですが、これがメジャーズに伍していけるかどうか。いわゆる上流から下流まで一貫した企業になり得るかというのは、個人的にはかなり難しいかと思います。まさに和製メジャーズという言葉が七〇年代に使われましたが、今となっては遠い昔の思いがしないではないわけでございます。  一つは、やっぱり技術力、資本力の問題です。その差はかなり大きくなっております。ただ、日本の場合は非常に大きなマーケットがございます。これを使うという意味で、いわゆる下流のシェアが大きいという特異性はございますが、それなりに生き残っていける余地はあると思います。
  36. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうもありがとうございました。
  37. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  きょうは、参考人の皆さん本当に貴重な御意見をありがとうございます。  私たちは今、当委員会で、石油業法を廃止いたしまして、石油の安定的な供給確保のための石油備蓄法を一部改正する、あるいは石油公団法を改正するということで審議をしているわけでございますけれども、少しこの石油業法の歴史を私も勉強させてもらったんですけれども、実はこの石油業法を制定いたしますときに、私たち日本共産党は、この業法というのは国内炭をほとんど壊滅状態に追いやるというようなことからむしろ反対をいたしました。  しかし、今日、国内炭がほとんど壊滅状態になっているわけですが、それだけに石油エネルギーに占める比重というのは非常に大きくなっている、国民生活にかかわる比重が非常に大きくなっているということからいたしまして、石油業法の例えば第三条、供給計画あるいは第十五条の石油価格高騰ないしは極端な下落、こういうことについての標準価格の設定、こういうような点は、むしろ今国民生活の安定に寄与するという点では再評価をすべきじゃないか、こういうような立場になっているわけでございます。  最初に、藤目参考人にお伺いをしたいと思うんですけれども、先ほど参考人も、市場メカニズムにすべてゆだねてしまうということについての少し疑念を述べられたというふうに思いますけれども、まず第一にお伺いしたいのは、今石油業法の持っている全体としての趣旨というもの、つまり需給調整規制というものを国が責任を持って行うことができるようなシステムを保持しておくということがむしろ平時の価格高騰に対する抑止力としても非常に働くんじゃないか、あるいは安定供給という点でもむしろその方がいいんじゃないかというような点についての、私たちの意見に対する参考人の御意見がございましたらぜひお伺いしておきたいということが一点でございます。  それから、先ほどいろいろと、このカラーのグラフなどで御説明をいただきまして、大変私も勉強をさせていただいたんですけれども、アメリカ価格急上昇などのグラフ、一ページ目の一番下の左、それから右、これですね。アメリカで既に起こっておりますこの現象というものは、「市場自由化における副作用」ということで二ページ目の下の方にまとめられておりますね。それから、二ページ目の右の下のところには、アメリカ精製能力、むしろこれは工場の数ということで棒グラフであらわされて、稼働率は赤い丸でなっておりますが、こういう現象、つまり、むしろ自由競争にゆだねたために、価格を引き上げるために供給側が供給能力をみずから削減していってしまう、こういうことは市場メカニズムにゆだねた場合には当然起こることじゃないかと。これはアメリカだけで起こっておるわけでなくて、日本がすべて市場メカニズムにゆだねた場合にはこういうことは日本だって起こり得るんじゃないかということ。この辺をひとつ、日本ではどういうふうに、こういうことが起こらないと言えるのかどうかということが一つ。  それから、アメリカでそのときに国家備蓄を放出いたしまして、いろいろ価格に対する作用をしたというふうに聞いております。そのときの状態は一体どんなふうに作用したのか、あるいはその評価は一体どのようなものであったのか。いろんな評価があったと聞いておりますけれども、そういうことについて、今後日本が備蓄法の改正によって放出をしていくということ、これは委員会で大臣は、最後的な手段じゃなくて機動的に考えていきたいという御答弁もあったわけですけれども、そういう場合にアメリカの例がどういう点が教訓になるのか、そこら辺のことをぜひ教えていただきたいなと思います。  まず、その点を藤目参考人にお伺いしたいと思います。
  38. 藤目和哉

    参考人藤目和哉君) 非常に鋭い御質問で難しいんですけれども、市場メカニズム論というのは、いわゆるアメリカを代表としたアングロサクソン的な考え方と、こう言われていますね。古くはアダム・スミスまでさかのぼる話なんですけれども、市場メカニズム万能論というのは、一応経済学的にはないと思うんですよね。  というのは、市場というのは必ず失敗を起こすということで、例えば環境問題なんかも一つ市場の失敗ですね。環境コスト市場に組み込まれていないとか、そういうことですね。だから、市場の安定といっても、安全保障コストが組み込まれていないために、企業に任せておいてちゃんと備蓄するかというと、それは任せておけばできないわけで、そういう意味で、市場を全く自由にした場合に必ず市場の失敗が起こるということは、これは経済学的にも確かな話です。  したがって、市場設計をするときに、今世界的な流れはアングロサクソン流の価格メカニズム、万能とは言っていないですけれども、近い考え方で進んでいるわけですけれども、カリフォルニアで起きた事件は非常に条件が悪いということもあるんですけれども、やはり自由化をした場合には必ず市場の失敗が起こることを前提に考えて、市場の失敗が起こらないような措置をちゃんととるというのが大原則だと思うんですね。それは国の介入といえば国の介入だし、つまり国の役割というのはちゃんとあるわけです。  ですから、私はもう石油業法は、共産党が再評価されたというのは知らなかったですけれども、時の流れとしてはもう既になくても、あってもなくても同じような状況になっているという意味では市場流れとしては廃止される時期かなと思いますが、ただ原点に戻って考えたときに、今言いましたように市場自由化を言うときに、必ずその失敗が起きないようないろんな仕組みとか措置とか、そういうことがちゃんと準備されているかどうかというところに問題があると思うんですね。  その辺の仕組みは私もよくわかりませんけれども、もしフリーにするのであれば、それなりの対応措置を市場の仕組みの中に組み込んでおくというのが大原則だと思います。もしそれがないとすればそういう失敗は起こる可能性は大きいということでございまして、起こるとは言っていないんで、もしそういう工夫がされていなければ市場の失敗が起こる可能性は大きいということです。  それから、アメリカエネルギー危機というのは、最近の第三次石油危機というようなことはアメリカ側が震源と言われていまして、それは、すべてアメリカは、石油市場はもうとっくに自由化されたわけですけれども、ガスも自由化され、それから今度は電力。まだ五十州の半分しかやっていませんけれども、ガスの急上昇が我々が考えている以上に大きいですね。  というのは、家庭用エネルギーというのはほとんどガスでやっているわけですね。このガスが今までは石油より安かったんです。日本でいえば灯油並みの安さだったのが急に石油の二倍に上がったと。これは物すごく家庭とか産業影響を与えるわけですけれども、それはやはりガスの市場自由化したときにそれなりの仕組みですね。それから電力については、先ほども言いましたように、自由化するとどうしてもリードタームの短いもので最初にイニシアルコストが小さいものですから、それはやっぱりガスタービンをそれこそごろごろ買っておいて、需要がふえたらぱっぱっと一、二年でつくってしまうともっと早くできるかもしれませんね。そういうものをつくるという傾向が出て、電力会社が、しかも自由化ですからみんな天然ガスにダッシュして需要が物すごくふえたんですね。  ところが、天然ガスというのは供給能力に非常に弾力性がないわけですね。というのは、パイプラインの能力はもう決まっていますし、カナダから輸入しようと思っても能力以上輸入できない。そういう弾力性がないというガスの性状に対してちゃんと対応措置をとったかというと、とっていないわけですね。  だから、そういうことも含めて市場側の失敗が起こる可能性について十分配慮されていなかったという意味で、アメリカエネルギー危機というのは非常にいい教訓だと思って、日本がこれから自由化石油は終わりましたけれども、電力などの自由化をやる場合に、その教訓を学ぶべきだと。自由化自体は流れですから否定はできないわけですけれども、ちゃんと市場の失敗が起きないような工夫の措置をしておく必要があるということです。  そういうことはアメリカに言えますし、日本アメリカは、日本資源国じゃないですから、ガス資源もありませんし、いろいろありませんけれども、基本的には市場経済の国であることは確かなので、日本自由化に向かったときはそれなりの対応措置が組み込まれていないと、やはり同じように起こる危険性は大きいということではないかと思います。
  39. 西山登紀子

    西山登紀子君 政府の答弁などでは、備蓄法がありまして、日本は民間備蓄と国家備蓄でしっかり備蓄しているんだということを言われまして、それで放出をして価格の急上昇ということについても機動的にとおっしゃったんですけれども、一方で三つの過剰というようなことがどんどん言われて、今まだまだ生ぬるい精製能力削減というようなことがかけ声をかけられていっている日本のこの石油業界の様子なんか見ますと、これは本当にどんどんアメリカに似ていくんじゃないかと。  それで、備蓄された原油というか、それが放出されても、市場に出てくる製品の能力というのがそもそも減ってしまっているのに価格高騰に対応できるのかなという、そういう疑問を持つんですけれども、その点は参考人はどのようにお考えでしょうか。
  40. 藤目和哉

    参考人藤目和哉君) 先ほどちょっと答えましたが、アメリカが備蓄放出したときに、それは効果があったかどうかという点については、これは非常に分かれております。それは、在庫水準が非常に低い、そういう状況で放出してもほとんど心理的な影響ぐらいしかなかったという見方もありますし、いや、やっぱり急騰した価格を抑える効果があったということで、これはなかなか検証するのは難しいんですよね。  ですから、備蓄を放出すれば必ず価格が抑制されるかどうかというのは本当に難しい問題で、社会科学では実験はできないと言われていますけれども、実験してもなかなかその関係は難しいということで、日本の場合、精製能力が過剰なのは、過剰というよりも、程度の差があって余りにも過剰だということだと思いますので、多少のやっぱり削減はした方が資源の有効利用としてはいいと思うんですけれども、ただ、確かにおっしゃるとおり、余り削減し過ぎるのも問題、また需要が回復してくる可能性もないわけじゃないわけですから。  そういう意味で、適切な余剰能力という考え方が石油精製能力にもあるんだと思うんですね、アメリカでもそうですし。もちろん、これは電力が一番適切な余剰能力という考え方があって、カリフォルニアはそれをしなかったということなんですけれども。だから、そういう意味で、日本の場合も適切な余剰能力という考え方を出して、それはなかなか識量だけではそういう行動しないんですね。私は盛んに企業の最適化行動というのはそういうことを越しちゃって、自分の企業によければどんどん減らしていく。マクロには考えませんから、ミクロで考えていますから。  だから、マクロな政策はやっぱり国がやるべきだというふうな考え方だと思うんで、アメリカの失敗の経験を日本も基本的には学ぶべきだと。ただ、適切な余剰能力というのはなかなかどのぐらいがいいかというのは難しいことは確かだと思うんですけれども、そういう考え方は必要なんじゃないかと思うんです。
  41. 西山登紀子

    西山登紀子君 関岡参考人にお伺いしたいんですけれども、いただきましたこのレジュメの二枚目なんですけれども、国際的石油開発動向ということでいろいろと教えていただきました。  それを見ますと、中東では目立った油田は事実上発見されてはいない。それからその後の方ですけれども、北海メキシコアラスカなどでも生産増加傾向はとまって、むしろ今後は減産傾向に入ると予想されているというようなことで、それで最後の方に、OPECといえども生産余力がほとんど残っていないというようなことが書かれてありまして、以上の認識に基づいて、我が国の石油開発政策は強化すべきではあっても弱体化は避けるべきだというふうにおっしゃっていますし、そのあり方については改革すべき点はあるというふうにおっしゃっているんですね。  私は、やっぱり世界石油というのは限りある資源だということ、それもかなり時間的には短いですよね。あと四十何年と言われる方もあれば、百年、二百年と言われる方もあれば、いや、それはわからないよというふうな方もいらっしゃいますけれども、やっぱりこれは限りある資源だなというふうに痛切に思います。  それをどんどん使っていいということではないだろうというふうにも思うんですけれども、先生がおっしゃっている石油開発政策の強化の方向というのはどんなものなのかということをもう少し詳しくお伺いして、終わりたいと思います。
  42. 関岡正弘

    参考人関岡正弘君) 痛いところを突かれたという気がしているんですけれども、多分具体的にはないんじゃないかというふうに思います。  中東油田はすごい巨大油田なんですね。世界最大のサウジアラビアのガワール油田というのは表面積が富山県と同じぐらいの大きさなんです。一方、オイルウインドーというのが地質学的に言われておりまして、石油は海の底に沈殿した有機物が熟成されたものなんですけれども、地下千五百メートルぐらいまで潜らないと石油にはならないんです。ただ、五千メートル以下へ下がっちゃうと全部分解してガスになってしまう、あるいはさらには石墨になってしまうということで、石油の存在する場所というのは大体千五百メートルから四千メートルか四千五百メートルぐらいの間なんですね。ですから、私は浅い海に潜む巨鯨だというふうに学生に教えているんですけれども、見つけやすいんですね。ですから、それを考えると、中東で新しい巨大油田が発見される可能性はほとんどないと思うんです。  それからさらに、じゃ第二の中東が発見できるかというと、もう半世紀ぐらいメジャーズを中心とした石油会社がほとんど掘りまくっているわけですね。石油がありそうな場所というのは限られているわけです。例えば太平洋なんというのは、もう石油は絶対あり得ないんですね。陸上でも、昔のベーズンというんですか、東京湾みたいな場所、それしか可能性がないんですけれども、それが世界で百六十とか百七十というふうに言われていたんですけれども、石油がありそうな場所はほとんど井戸を掘ったということが言われているんです。ですから、小さな油田は見逃している点があると思いますし、過去十年ぐらい、北海微細油田を探す技術が急速に進歩したんですね。これはコンピューターの能力が進歩したためです。  それからもう一つは、その発見された微細油田生産力化する。これは具体的に言いますと、井戸を真っすぐ垂直に掘るんじゃなくて、あるレベルで曲げて水平に掘っていく。そうしますと、例えば中東石油の井戸は大体三千メートルぐらいの深さを持っているわけですけれども、世界最大のガワール油田というのは七十メートルの厚さがあるわけです。ですから、この七十メートルをペイゾーンと言うんですね、お金になるゾーンと。三千メートルの井戸を掘って七十メートルのペイゾーンがあれば、これはペイするんですけれども、例えば微細油田の十メートルとかあるいは二、三メートルというような油田は、これはとても経済的にペイしないわけですね。それを水平で掘っていくと、例えば五十メートルとか百メートルとれる可能性があるわけです、石油は水平に埋蔵されていますから。  ということで、微細油田もこれから開発していかなければいけないんですけれども、さて、そういう能力が日本石油会社にあるかというと、これは非常に難しいなということなんですね。ですから、これは一応書いたんですけれども、文章のつじつまを合わせたということで御容赦いただきたいと思います。     ─────────────
  43. 加藤紀文

    委員長加藤紀文君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、和田洋子君が委員辞任され、その補欠として本田良一君が選任されました。     ─────────────
  44. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 三人の参考人の先生方、きょうはありがとうございます。社会民主党の梶原ですが、同じ質問を三人の先生方にさせていただきたいと思います。  石油資源のことですが、このまま消費量がどんどん伸びていったときにいつまであるのかと、結論はですね。  私は最近、韓国も中国もこの前行ってきましたが、それから東南アジア諸国をほとんど回ってきました。やっぱり車がどんどんふえていまして、石油の消費量が非常にふえているような感じを持ちました。これで一体、こういうやり方を世界各地でどんどんどんどん車が走って、有限の石油資源がいつまで続くのかという疑問を持ってしようがないんですね。  この委員会で、四年前、大牟田で三井炭鉱がもう閉山するというときに行って、商工会議所の人たちや市長さんたちとお話をする機会がありまして、そのときに私は聞いたんですが、炭坑節がはやったころ、あのときにあなたたちはこうして閉山するような事態が来るなんというようなことを想像しましたかと言ったら、全く想像しておらぬと言うんですね。もうそれは、そういうことががたっと来るわけですから。  私は率直にお聞きをしたいんですが、一体全体、このままの調子で石油世界の各国がどんどん消費をしていったときにいつまでもつのか。藤目参考人から順番にひとつ、五分程度ぐらいで、三人で十五分ですから、できればお話しいただきたいと思います。
  45. 藤目和哉

    参考人藤目和哉君) なかなか難しい問題ですけれども、石油資源については、関岡さんがおっしゃるように、いわゆる確認埋蔵量、今すぐ掘り出せるのが一兆バレルという、この数字も怪しいことは怪しいんですけれども、一兆バレル。しかし、究極可採埋蔵量というのは、これ、まだ未発見のものとか確認されていないものが含まれると二兆とか、最近では少し多くなって二兆数千億バレルとかいうふうに言われていますね。しかし、こういう数字は地質学者が理論的に推定したものだけですから、わからないですね。石油もいまだに何からできたかわからない。一種の化学反応というか火成岩的にできたのかもしれませんし、動物の死骸からできたのか、それさえもわからない。どのぐらいあるかというのは本当にだれもわからないんです。  私自身は、資源的には百年ぐらいはあるんじゃないかと思うんです。ただ、その資源制約よりも環境制約とか、先ほどおっしゃったように、石炭は高くて使えない、あるいは競争力がなくて使えなくなる、日本石炭みたいに。日本石炭資源というのは結構あるんですけれども、競争力がないために使えないわけですね。だから、むしろ経済的な要因とか環境上の要因でやっぱり石油というのはなかなか使いにくくなってくるんじゃないか。それが、自動車用燃料というのは決定的なものがなかなか出てこない、いずれは水素か何かが出てくるのかもしれない。そういう意味では、環境制約からいうと五十年ぐらいがせいぜいかなと思っています。  ですから、途上国でどんどん消費が伸びますけれども、温暖化がどんどん進みますから、京都議定書どころじゃなくて、九〇年比で五〇%カットなんということになるかもしれないわけですね。そうすると、石油を自動車用に使うなんということはできなくなると思いますよね。だから、そういうことも考えると、あとせいぜい五〇年かなと。  だから、資源制約というよりは、むしろ環境制約とか経済的な制約とか、そういうものから使えなくなる可能性の方が大きいんじゃないかと思っています。
  46. 関岡正弘

    参考人関岡正弘君) 大変な質問だと思うんですね。先ほどから申し上げておりますとおり、地下に石油がどれぐらいあるかということはいろいろ推定できるんですけれども、そのうち何%がとれるか。これは、確認埋蔵量のうち可採埋蔵量、この可採という部分が回収率ですけれども、これがわからないんで、結局ブラックボックスに入れて考えなければ仕方がないんですね。  それからさらに、残存可採埋蔵量、これをXとします。それに、これもはっきりしませんけれども、ある係数を掛けると原油生産能力というのが出てくるはずなんですね。この原油生産能力という数字についても統計はないんです。ですから、今どれぐらいの生産能力があるかということは全くわからないんです。  ただ、私は、約半世紀ばかり石油で飯を食ってきましたから、いろいろな長い歴史の中で考えると、その時点における生産能力を推定できるチャンスが三回あったと。それは七〇年代の二度の石油危機。これが、価格が大暴騰したわけです、四倍とか三倍に。  その価格が上がるのはなぜかというと、一般的には売り手が上げるというふうに言われているんですけれども、これは大きな間違いであって、買い手が上げるんです。買い手がお金を払うから、そう上がっちゃうわけです。ということは、価格が上がったということは、そこに能力の限界があったということです。ですから、七〇年代に二回上がったと。  それから、この資料に書いておきましたけれども、九八年末から今まで続いている現象は第三次石油危機です。つまり、今の生産量が今の供給能力であるということを強く示唆しています。そういうことから考えると、これはこの場で言うということは非常に怖いんですけれども、私個人の見解としては多分二十五年プラスマイナス五年ぐらいじゃないかというふうに私個人は考えております。
  47. 石黒正康

    参考人石黒正康君) まず、資源量がどれだけあるかというのは、これはだれにもわからない問題です。  ただ、歴史的に見まして、いわゆる可採埋蔵量を年間の生産量、あるいは消費量という言葉に置きかえてもいいですが、それで割って一体資源が何年もつであろうかということは数値が出ています。例えば一九七〇年、オイルショックの前ですね、三十三年と言われました。九八年、ちょっと古いんですが、四十年。いつまでたっても四十年あるんです。  これは何かというと、そのときの可採埋蔵量というのは、まずマーケットのプライスとそのときの技術コストでどれだけ生産できるかということで決まるわけです。究極的な埋蔵量を見ても、七八年、ちょうど第二次オイルショックが起きたときです、六千四百八十億バレル。それが二十年たって一兆五百三十億バレル、一・六倍に伸びたわけです。  そういった歴史的なものを見ると、まだ残っている資源はあるであろう、手のついていない資源は残っているだろうと見るのは間違いではないと思います。あと、それが五十年もつのか百年もつのか、これはわかりません。  ただ、我々がエネルギーの安全保障を考える場合に、五十年先のことだけを考えているわけではありません。少なくとも、石油について、五年先、十年先に資源が枯渇するわけでもございません。そういった意味で、むしろ石油だけではなくて、確かにアジアではエネルギーの消費量がふえています。そういうところ、その増加したエネルギーをどうやって供給していくのか。もう一つはその消費量をどうやって下げてやるか、いわゆる省エネの問題です。そういった多様的な問題の中で考えていくべき問題だと思います。  以上でございます。
  48. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 三十三分まで少し時間がありますから。  私は若干若いときパルプ会社におって経験したことがあるんですけれども、農林省の統計で、近隣の脱木、雑木の資源を切り出すのに、統計上はだんだん減ってくるんです。しかし、値段を上げるとどんどん出るんです。それで、下げるととまってしまうんです。ところが、やっぱりある時期に限界点に達しまして、もうコストも合わないし、資源ももう天然林残さなきゃならない部分に行き着いてしまった。  だから、統計上四十年が長く続いているということは、これは本当にそんなに甘く考えていいのかと。本当に私は、来るときはがたっと来るんじゃないか。そこのところをもう少し、本当に我々がどれだけ、神に近いぐらいの推察能力を持って仕事をするかというのは、そうしないと、一つ一つの判断をするのに甘く判断するのか、しっかりした判断をするのか、ここのところが大問題でありまして、これは難しい問題でしょうが、特に先生方というのは社会的な影響力がありますから、やっぱり我々に本当のことを示唆していただきたいと思います。何か御意見があれば。
  49. 石黒正康

    参考人石黒正康君) 的確な答えになっておるかどうかわかりませんが、石油資源がいつなくなるか、それから急になくなるかもしれないし、なくならないかもしれない、これはだれにもわからないんです。隠しているわけではありません。石油が確かに需給がタイトになる傾向にあることは事実なんです。ただ、石油だけで今エネルギー供給を賄っているわけではありません。  もう一つ、最近ガスの時代とも言われてきております。むしろ、炭酸ガス問題からいっても、石油よりガスの利用の方が望ましい。少なくとも環境負荷は小さくなります。そういったことで、燃料をもう少し天然ガスを使おうという、しかも天然ガス資源でいえば石油に比べて偏在性が少ないわけです。もっと世界じゅうに散らばっています。それから、絶対的なカロリー換算した資源量も多いわけです。  そういった意味で、エネルギー供給構造を変えていく、利用形態を変えていく。例えば、先ほど自動車の話がありましたが、自動車は今ガソリンをたいて動いているわけです。でも、これは燃料電池にかわって、あるいは天然ガスからメタノールを使って、メタノールで動くことも可能です。それから、バスもいわゆる圧縮天然ガスということで、天然ガスで動かすことも可能です。  ですから、単に石油の可採埋蔵量だけを心配してすべてを議論するというのは必ずしも正しいアプローチではないと思います。  以上でございます。
  50. 藤目和哉

    参考人藤目和哉君) 今、石油にかわってガスが出てきて、ガスの埋蔵量はまだ石油よりたくさんあるかどうかわからないんですけれども、例えば日本海周辺にもメタンハイドレートがかなりあるとか、これはコストが高いから使えないということですが、そういうことも考えると、そう簡単にはなくならないということは確かだと思うんです。  ただ、人類の歴史が何百万年かとか、氷河期と氷河期の間が一万年とかなんとかだとしますと、それは一万年後にはなくなることははっきりしているわけで、そういう意味で化石燃料を使う時代というのは長くても一世紀とか二世紀の間。長い人類の歴史から考えればやはり枯渇資源だというふうに考えていった方がいい。  それにかわるエネルギーは何なのかというのは非常に難しい話ですけれども、原子力とか核融合とかいろいろ考えられるんだと思いますけれども、その人類の歴史の中でいえば相対的には短い期間でなくなるということじゃないか、あるいは使えなくなるということじゃないかと思います。
  51. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 反論をするわけではないんですけれども、第二次世界大戦が終わった後、急激な車の増加率とか、あるいは工場生産増加とか、こういうもので石油資源というのは、戦後ですね、消費がこんなに伸びたのは。こんな状態は人類の歴史上なかったわけですから、これはそんなに甘く判断をすべきものではないんじゃないかな、このように思うんですけれども。
  52. 関岡正弘

    参考人関岡正弘君) 全く梶原先生のおっしゃるとおりで、第二次大戦以降のこの半世紀というのは全く特殊な時代だったんではないかというふうに考えております。  それは、中東石油というのを発見して開発をした。先ほども言いましたけれども、第二の中東というのは発見されていませんし、九九%発見される可能性はないと思うんです。中東油田に対しては極めて過大な期待が寄せられているんですけれども、私はアラビア石油中東石油開発に関与してきた立場からいうと、中東油田といえども無限ではない、そろそろ枯渇に入ったと考えた方がむしろ当たっているんではないか、そういうふうに考えておりますので、梶原先生の御指摘は全く同感であります。
  53. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ありがとうございました。
  54. 加藤紀文

    委員長加藤紀文君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  参考人方々に一言御礼申し上げます。  本日は、大変お忙しいところ、長時間にわたり有益な御意見を述べていただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して一言御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十分散会