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八田ひろ子君 私も、今言われております農業者の方とかあるいは中小零細企業家の
家族従事者として働いていらっしゃる
女性というのが、
社会保障の面でも
税制の面でも、そしてましてや
自分が手にすることができる働いた報酬というんですか、そういう方たちの場合
賃金じゃないものですから、そういう面にしてもやはり
制度の外に置かれている。出産をしたときでも、当然一緒に働いている従業員は産前産後の
休暇をとったり、それから健康
保険から出産手当が出るんだけれ
ども、事業者の妻として働いている人の場合はそういうものも受け取ることができないとか、そういう、これは法とかあるいは
社会保障制度の不備が実際にあるということをいろいろと伺っていますし、これは改善しなくてはいけない問題だというふうに思います。
それと、今議題になっております
女性の多様な
働き方と
雇用環境の
整備の問題でいいますと、
女性の多様な
働き方という規定がこの
調査会の論議の中でもいろいろありましたが、本当に働く
女性の自由意思による多様な
選択が今できるのかといえば、必ずしもそうではなくて、
賃金が低いところを
女性が
選択せざるを得ないような形が先ほど来の
お話の中でもありまして、就業形態が違うことを理由に
賃金を初めとするいろいろな条件に
差別をつくったり、それから低
賃金や
不安定雇用というのしか
選択できないという半ば強制をされている今のやり方というのを改善するためには、私はやはり
労働基準法に
雇用形態による
差別禁止というのが明記されるべきだというふうに思います。
いま一つは、先ほどからの
お話で、
パートを初めとして
女性と
男性との
賃金格差、
女性が
賃金の低いところを多く
選択せざるを得ないということは、
女性の
経済的・
社会的自立を阻害しているだけでなく、
男性にとってもやはり大きな問題だと思います。私もいろいろ
調査をさせていただいて、
女性労働者に多い
パートタイム
労働者の時間給の実態というのが、地域の最賃ぎりぎりのところが多くて、あるいは新聞広告や雑誌の広告なんかを見ますと最賃より低いのがあるわけですよね。
それで、憲法二十五条を受けてこの最低
賃金というのがつくられているわけなんですけれ
ども、現在の最賃が同じ憲法二十五条から出ている生活保護のレベルよりも実際低いわけです。例えば、東京で十八歳の単身者で比較しますと、最賃では生計費、これは
社会保険料や税金を引いた金額なんですけれ
ども十万三千円になるんです。ところが、生活保護費は十四万円なんです。七八年までは実は最賃の方が生保よりも上だったんですけれ
ども、八〇年代からは最賃の方が生活保護基準よりも低くなっている。東京でもそうですから、最賃を購買力平価で
外国と比べてみますと、
日本はサミット諸国で最低になっているんです。
だから、こういった問題でも、全国一律の最賃
制度をつくって国がナショナルミニマムをきちんと示して憲法二十五条を遵守できる、そんな最賃
制度をつくること、これは全体の底上げになりますので、
男女ともが人間らしく生きるということ、そして
女性の
自立を支えるという面でも非常に大事じゃないかと思うんです。
もう一つは、いわゆるグラスシーリングの問題です。これは女子学生がなかなか
就職できないというところで必ず取り上げられる問題なんですけれ
ども、ことし、二〇〇一年一月一日のアメリカのニューヨーク・タイムズがこの
日本の問題を取り上げて、鉄筋ガラスの天井というふうに題して報道しているんですね。
最初、私、鉄筋ガラスの天井とは何だろうと思ったんですが、グラスシーリングというのは目に見えない頭打ちということでガラスの天井と言われているんですが、
日本の場合はそれが鉄筋で補強されているように非常に強いものだというふうに言っていて、
日本のエリート大学を出た
女性、女子学生が技術系の会社の
就職面接めぐりをしていくんだけれ
ども、実際には何を聞かれるかというと、
日本にコンビニは幾つあるかとか、いわゆる彼女たちの日常生活に関するつまらない質問、あるいはあなたは総合職じゃなくて事務職を受け入れる気はあるかとか、そういうことを尋ねると。これは記事の中身なんですけれ
どもね。
それで、その中で
女性、女子学生を事務職の軌道あるいはその行きどまり職に転入させるという、要するに上に上がっていけないところですね、そういう儀式、これは面接のことだそうですけれ
ども、こういうことが実際にあるんだということを言っていると語らせているんですけれ
ども、やはりこういった
外国から見ても異常なグラスシーリングというんですか、
男女差別ということも実は今非常に大きな問題があるんじゃないかと。
ところが、
男女共同参画基本計画の中には、二〇〇〇年
プランにあった「
賃金格差解消に向けた取組」という
項目や「グラス・シーリング
解消のための取組」というのがなくなっているわけなんです。ですから、
女性が
自立できないほど
差別を受けている状況を
是正するための最大の
課題として、こういった
賃金格差是正の問題や「グラス・シーリング
解消のための取組」というのをきちんと
政府に対しても取り組むように、この
調査会でもぜひ
提言の中あるいは報告の中に私は盛り込んでいただきたいなと思っております。