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参考人(
普光院亜紀君)
保育園を考える親の会の代表をしております普光院と申します。きょうはこういう場で発表をさせていただきまして、どうもありがとうございます。
私の方からは、今ほどの
前田さんからのお話とダブるとは思うんですが、より近く働きながら
子供を育てている親
たちの
実態ということで、会員のアンケート等を資料にしながら御報告したいと思います。
レジュメと資料を用意いたしましたが、資料の方は非常に大部になっておりますのでまたゆっくり見ていただくとして、ポイントだけを御
説明させていただきたいと思います。
まずレジュメの方で、一番最初に「
実態から見た「
仕事と
子育て両立成功」の要件」ということで、これは
子供を育てながら働く生活をずっと見てきました私の方で三つの要素というものを挙げたものです。
一つは
保育。地域に安心して
子供を預けられる
保育園があるかどうか。
二つ目は
家庭。
男女の役割分担にこだわらず夫婦で家事
育児を分担できるかどうか。三つ目は
仕事。職場で産休や育休、また
育児時間等がとりやすく、上司や周囲の
理解が得られるかどうか。この三つの要素が全部そろえば本当に順風満帆で、だれもがゆとりを持って
子育てができると思うんですが、大抵はこのうちの幾つかが欠けていたり、またゼロだったりするような
状況の中で、厳しい
状況に直面いたします。
社会的にはこの三つの要素がなるべくすべての人に整うようにサポートしていくことが必要かと思っております。
そして、レジュメの次の項目、「
両立生活の
実態(会員アンケートより)」というふうに書いておりますが、ここからもう一冊用意いたしましたアンケート
調査の御
説明をさせていただきたいと思います。
このアンケートというのは、私どもの会員が今六百三十人ぐらいおりますけれども、その中の二百数十人が答えたもので、非常に母数としては少ないんですけれども、どちらかというと
正規雇用者が多く、ある意味では恵まれていて、
両立の第一歩には成功しているけれども、今の
社会の矛盾に非常に直面しておりまして、
両立の困難もいろいろ抱えているという人々に単刀直入に聞いたものですので、御
参考になるのではないかというふうに思います。
そして、まず一番目の「回答者の勤務業界・職種」ということで、ざっとどういう職域で皆さんが働いているかということを掲げておりますが、大体全体として大手
企業、官公庁、小規模でも専門職系の方が多く、そういうところではやはり
育児休業制度が普及しておりまして、また前例者も多くいるということで継続しやすいということがわかります。一方で、流通業界ですとか中小
企業に勤務している
女性は非常に少なく、こういった分野の
方々が
両立が困難で
仕事をやめたりしているのではないかということが想像されます。
次の資料に参りまして、「②勤務時間・
保育時間」という資料がございますけれども、こちらの方で平均的な生活像が見ていただけます。平均値ですのでいろいろなものを含んでしまいますが、まず平均値では、朝八時十一分に
保育園に預け、九時に出社し、夕方は午後五時二十一分に会社を出て、午後六時までに大体
保育園のお迎えに行っているということなんですが、これはもちろんパートタイマーですとか
育児時間を取得中の方の時間も含んでおりますので、若干短目に出ております。
ただし、これがさらに次のページをめくっていただきますと、二重
保育ということでその数が挙がっておりますけれども、二百四十四人の回答者のうちの約八十人ぐらいが二重
保育をしている。そして、その二重
保育者は多くが祖父母、そしてまたベビーシッター等を
利用しているという
状況です。こういった
状況から、やはり延長
保育等の
保育時間の問題というのは非常に深刻で、うまく補完する
保育サービスを見つけられなかったり、また、おじいちゃん、おばあちゃんのサポートのない親の方はかなり
仕事を断念しているのではないかということが想像されます。
それから、「回答者の預け先」ということで、次の紙に参りますけれども、私どもの会では
認可園の
利用者が非常に多いです。実は、やはり今の
状況ですので、ゼロ歳児のときなどは
待機児になりまして
認可外
保育所に入る方はとても多いんですが、その方の多くが二歳、三歳で
認可園に転園しております。これは、やはり
認可園の信頼度が非常に厚く、
認可園に何とかみんな入りたいということで申請しているということがあります。
認可園のメリットとしては、親の側から見ますと、とにかく基準があって安心であるということ。それから、有資格者が
一定数以上で
子供の
保育に当たっているということ。それから、園庭などの設備も整っているということ。園庭に関しましては、比較的良質な駅型
保育所に通っておりました親の方も、小児科のかかりつけのお医者さんに、三歳になったら園庭のある
保育園に移りなさいねということでアドバイスをもらったという例もありまして、非常に二歳以上の
子供の戸外遊びの確保ということは重要なんですが、そういったことも
認可保育園では比較的
整備されていると。それから最後に、所得に応じて負担が軽減されるという点が非常に
認可園の大きなメリットとなっておりまして、特に質の部分が確保されているということで、長時間毎日預ける
家庭にとっては、
保育環境は
子供の育ちにそのまま影響いたしますので、そういった
保育園の質の確保という部分が強く求められているということが言えると思います。
それから、次の資料に参りまして、「父親・
母親の分担
状況」というアンケートがございますけれども、どちらかというとやはり
母親に偏っているということで示したものなんですが、特に御注目いただきたいのは、夫が
子育てのために勤務形態を変えたことがありますかという右側の項目なんですけれども、四分の三の
家庭で変えていないという答えですけれども、変えたという四分の一の世帯の回答に御注目いただければと思います。
内容は、
育児休業をとった、転職をした、残業時間を少なくした、フレックスタイムを
利用した、
保育園の送りのために出勤時間を変更したなどなど、男性の方がこのように勤務形態を変更している例が見られます。
女性の場合は、これはほとんどの方がこういうふうにするわけですけれども、男性の場合は非常にそれが少ない。こういうことができる男性がもっともっとふえていくことで、
仕事と
子育ての
両立がもっとしやすくなっていくということが言えると思います。そして、そういうことが広く行われることによって、延長
保育ですとか病児
保育、これはもちろん必要なんですが、その
利用をほどほどにすることができて、
子供への負担も少なくなる。そして、男性がそういった勤務形態を変えることで、
企業の中での
子育てに対する
理解も進み、
労働時間の短縮も進むという効果が考えられます。
それから、その次に、「緊急に改善を求めること」ということで六枚目のアンケートがありますけれども、これもざっと見ていただければおわかりのように、
保育園の受け皿をふやして入りやすくするという第一の項目、また第二番目に
社会全体で
男女とも
労働時間を短くする、三番目に病児
保育を広く実施する、四番目に
認可保育園の
保育時間を長くする、五番目に勤務時間の短縮
制度を充実するというように、
保育制度と
労働制度が交互に出てまいりまして、非常に両方から板挟みになって苦労している親
たちの姿がかいま見られると思います。
その次に、七枚目には「働き方緊急アンケート」ということで、やはり働き方について親
たちが緊急に求めていることというのを選択肢から選んでもらっておりますが、一番目がやはり
育児のための勤務時間の短縮ができるようにする。二番目が全体の
労働時間の短縮のための対策を講じる。三番目が
子供の看護休暇の導入、これは先ほどの病児
保育と表裏一体なんですが、選択肢が違っていたためにこのような結果になっております。それから四番目に、転勤命令は
家庭の事情への配慮を求める。五番目が男性の
育児休業を促進する
制度を設けるというふうになっております。
労働時間の短縮ということで
日本の総
労働時間は徐々に減っておりまして、
政府の目標の千八百時間に近づいているかのような統計になっておりますが、実はそれはパートタイマーの方の
労働時間も含まれておりまして、パートタイマーの
労働者がふえていることによって漸減しているようには見えますが、
正規雇用者だけで見ると二千時間あたりでずっと減ってはいないということで、非常に厳しい
状況。
また、私も会員の方の話を聞きますと、リストラで人員が減っている分、
企業の中では一人一人の
仕事の量、
責任が非常に大きくなっていまして、
育児休業をとること、勤務短縮をすること、残業をしないこと、
子供の病気のために
仕事を休むことに対する周囲の目は非常に厳しくなっておりまして、ますます
母親社員は肩身が狭い思いになっております。
それで、先ほどの「働き方アンケート」で自由記述のところに目立った
意見としては、職場風土をもっと
子育てを尊重するものにしてほしい、
育児休業等の
制度利用者を不利益に扱うということをやめてほしい、そういうことに対して罰則を設けてほしい、フレックスやワークシェアリング、再
雇用など自在の働き方を可能にしてほしいといったような
意見が目立っております。
こういったことが、この資料の七枚目から十枚目までにわたって会員が綿々と書いております自由記述がございますので、そのあたりを見ていただきますと親
たちの苦労がしのばれるのではないかというふうに思います。
その次に、学童
保育について少し
説明させていただきたいと思います。
先ほど通り過ぎましたアンケートの中に、実は勤務短縮のところで、いつまで勤務短縮
制度がほしいかという部分で、三歳ぐらいまでという
意見と、あと小学校の低学年までという
意見があったわけなんですが、この小学校の特に入学当初については非常に強い要望があります。と申しますのは、幾ら
保育園で延長
保育等長時間
保育を保障してもらっても、入学と同時に学童
保育は
保育時間が非常に短くなる。そしておうちで
子供はお留守番をしなくてはいけない。しかも、入学当初で
子供はお留守番になれ、学童
保育生活になれ、小学校生活になれという大変な局面になりまして、
子供も親も非常に緊張いたしましてストレスが高まります。こういった期間にぜひとも勤務短縮等ができるようなシステムにしてほしいという強い要望が会員の中からございます。
それから、学童
保育については十一枚目の資料に親
たちが
子供に必要だと考えていることが出ておりますけれども、こちらの方も、今学童
保育というのは九八年に
児童福祉法が改正されまして法制化されまして、まだ何も基準もございませんし、助成金も非常に少ない中で各
自治体任せで行われております。
その中で、ここに挙げられております一番から五番までの項目というのは、例えば
子供が帰ってきたらお帰りなさいと指導員が迎えてくれる。そして登録されている
子供がちゃんと来たかどうかチェックしてくれるとか、低学年というと体が一番動かなきゃいけないんですけれども、そういったスペースが保障されているとか、そういった基本的なことが全然保障されていない
施設もございますし、また、数が全然足りていない
自治体もございますので、こういったものをぜひとも充実させて、これから
保育園から学童に上がっていく
子供が多数出てまいりまして、また
保育園問題と同じようなことが学童
保育の世界で起こると思うんですけれども、ここの部分をこれから先手を打って、もう先手ではないんですが、今すぐにでも充実させていく必要があると思います。
それから、もう時間がございませんので、次の資料なんですが、ちょっとこれは訂正がございまして、二人目の出産をためらわせるものと書いてございますが、実は既に二人
子供がいる回答者もおりましたので、次の出産をためらわせるものというものが正しい表題でございます。
このように非常に次の出産は困難であるという答えが二百四十四人中百三十七人に及んでおりまして、それがどういう要素だったのかが分析されておりますが、職場の環境が八十人、
保育の問題が四十一人ということで、それぞれ詳しく
内容が出ておりますので、ぜひ見ていただければというふうに思います。
それで、最後にまとめたいと思いますが、やはり
共生社会ということを目指すのであれば、
子供にとって育ちやすい
社会でなければ親も安心して働けませんので、
子供の視点から見た望ましい
共生社会ということを考えなくてはならないというふうに思います。親が
仕事と
子育てのバランスを考えられる
社会にしていただきたい。それはつまり、必要な人には長時間
保育を保障しつつ、同時に
家庭での時間を尊重する施策や
子育て観が特に、とりわけ
企業等の場で必要なのではないかということです。
それから第二番目に、
一定以上の
保育水準を備えた
保育園がどの
子供にも保障される
社会でなくてはならないのではないだろうかということです。その
保育水準ということに関しましては、最後の資料のところで、
保育園の選び方という形で書いております私の記事がありますので、見ていただければと思います。
どうも長くなりました。ありがとうございました。