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国務大臣(
河野洋平君)
基本的に、
我が国外交の二十一世紀における問題を
考えてみますと、
中国の存在というものは
我が国外交あるいは
我が国の安全保障、どの面をとってみても
中国の存在というものは極めて大きい、これはよくも悪くも大きいと言わざるを得ないと思います。
例えば、貿易、
経済の面でも、日中間の貿易量というものはこれはもう目をみはるばかりの伸びを示しております。あるいはまた環境の分野でも、
中国の環境の悪化は即
日本の環境の悪化につながる
可能性がございます。それからまた、
アジア太平洋の平和と安定ということを
考えますと、日中
関係が友好的であるかどうかということによって
アジア太平洋の安定というものに影響が出ることもまたこれ否定のできないところだと思います。つまり我々は、二十一世紀においても
中国とはよりよき
関係を維持しながら共存していくということが重要だというふうにまず
考えたいと私は思っております。
ただし、何も
日本は
中国の言うがままに、あるいはなすがままに
中国の後をついて歩けばいいということでは決してありません。我々は
中国に対して指導すべきところがあれば指導する。例えば環境問題などは我々が持っている知見、経験というものは
中国にとって極めて重要であり効果的であるはずでありますから、
中国の各都市が抱えております、あるいは直面をしております環境問題について、
日本の経験とか知見とかいうものをきちっと技術指導を行う、あるいはその他指導をしていくということは重要なことだというふうに思っております。
その反面、今、
議員が
お話しになりましたように、ODAは
我が国国民の貴重な税金を使って
経済的援助を行うわけでありますから、そうしたことを
考えれば、
中国国民がこの
日本からの
経済援助について正しく認識してもらう必要があるということも当然のことだと思います。確かに、読売新聞とギャラップでしたか、の
共同の
調査によりますと、この
日本の
経済援助を知っているパーセンテージは極めて少ないのでございまして、これでは幾ら
経済的援助を行ってもその効果は上がらないではないかという
指摘はまさにそのとおりだと思います。
この点については、我々も
中国に対してたびたび、
日本からの援助によってこういうことができている、こういう問題が解決しているということを
中国国民に十分周知徹底させてほしいということは繰り返し言っておりまして、
中国側もそれについてだんだん理解を示してきております。そのだんだんというところがどうも我々にとってはなかなか、もっと速やかにやってほしいと思いますけれ
ども、しかし、昨年
日本を訪問されました
中国の朱鎔基首相の
発言の中にも、
中国は
日本からのこうした援助というものを
国民がみんな知る必要がある、そのために
中国政府は努力をするという趣旨の御
発言がございまして、
中国政府は今、
日本からのこうした援助について周知徹底させるための努力が行われているというふうに認識をしております。
それからもう一点は軍事費の問題がございます。
中国の軍事費は確かに御
指摘のとおり二けたの伸びをここずっと示しているわけでございまして、この点についても我々は繰り返し
中国側に
説明を求めております。仮に二けたの伸びがあったとしても透明度を高めて、これが何に使われているか、例えば
中国の兵士の日常生活の質の向上に使われているものなのか、新鋭の攻撃用の機器に使われているものなのか、あるいは一体何のためにそうした軍事費の伸びが必要なのかということを明確に
説明してもらいたい、透明度を上げてもらいたいということを繰り返し言ってきているわけでございます。
この点についてはASEANの仲間たちが集まりますARFの
会議におきましても、各国がそれぞれ軍事費の透明度を上げるということをやろうではないかという話が毎年出ておりまして、それに対してそれぞれの国は
説明を行う、すべての国がまだ行っているわけではありませんが、
説明をそのときに行うということにはなってきているわけでございまして、私は、やがて
中国も透明度がさらに高まるであろう、また高めてもらわなければならぬというふうには
考えているところでございます。
いずれにせよ、一回り話が戻りますけれ
ども、
日本にとりまして、また
アジア太平洋地域におきまして、
中国の存在というものを一体いかなる存在として二十一世紀は
考えるか。この
中国が二十一世紀に
アジア太平洋の地域の中でよりよいパートナーとして存在するか、あるいは孤立の道を進んで
近隣諸国とも必ずしもいい
関係をとらないという国になってしまうかということを
考えれば、我々は、
中国が開放的でよりよいパートナーになっていってもらうことを選びたいと思っているわけです。そのために、我々がどれだけのODAを
考えればいいかという、その投資対効果と言いますか、効率の問題についても
考えなければならないと思います。
それからまた、今、
議員が
お話しになりました、どういう目的でどういうプロジェクトについて使われるかということは極めて重要だと思っております。
上海に行き北京に行けば目をみはるような都市がそこに存在をしているわけでありますけれ
ども、一たび内陸部に入っていけば、これはやはりまだまだ貧困と言えるような
状況もそこにはあるわけでございまして、そうした地域に対するODAが使われるということでなければならないということを私
どもも
考えておりまして、内陸部へのODAあるいは環境問題へのODA、こういうことを
考えて、これから先、対中ODAについて、
議員が
お話しになりましたように、見直しと申しますか洗い直しといいますか、そういったことを
考えていきたいと思っております。