○菊池
公述人 御紹介いただきました菊池でございます。
きょうは、私の
意見をここで申させていただく
機会を与えていただきまして、大変光栄に思っております。私は大学の教員でございますから、中立の
立場で、
財政金融の理論とかそういう面から私の
意見を述べさせていただきたいと思います。
お手元に
資料がございますので、その
資料を御参照ください。時間の制約がございますので、私の
意見をまとめておきました。それから、数字を説明させていただきますので、途中からパネルを使わせていただきます。
私の主な公述内容でございますが、まず、
平成十三年度
予算に対する私の所見を四点に集約して申し上げます。次いで、第一点の
日本の
財政状況と
財政再建について時間を割いて所見を申し上げ、
最後に、デフレ
経済からの脱却戦略、そういうことについて私見を述べさせていただきます。
まず第一に、私は、
平成十三年度の
予算案に賛成であり、一日も早く成立させていただきたいと思います。しかし、なぜこの
予算案を六年ぶりの緊縮
予算にしなければならなかったのか、私は大変理解に苦しむわけでございます。
日本の
財政は、総債務、つまり借り入れだけで把握しますと、
GDP、国内総
生産比率で見て主要国の中で最悪でございます。しかし、総債務から金融資産を控除いたしました純債務という
観点から
GDP比率を見ますと欧米平均並みでございまして、決して悪くはございません。しかも、
日本国は資産超過で、
債務超過ではございません。しかも、対外的には債権国でありますから、私は決して
財政が危機的であるとは思いません。十分まだ
支出余力があるのではないかと考えております。
したがって、
日本の
財政事情を適正に把握しておれば、
平成十三年度
予算は積極
財政にすべきではなかったのかと考えます。
第二番目には、株式
市場の活性化と金融システムの安定化のためには、
銀行が本体で所有しております株式、これを
銀行から切り離しまして、
株価の下落が金融不安に直接影響を及ぼさないような、そういうシステムを早急に検討すべきであると考えます。
銀行が収益対策や株式の持ち合い解消のために株式を
市場で売却いたしますと、
株価が下がります。
株価が下がりますと
銀行の自己
資本が減額いたしまして、ここにはBIS規制というルールがございますので、自己
資本が減額した分に相当して、実は一兆減額いたしますと、八%自己
資本を維持する
銀行でございますと十二・五兆貸し出しを落とさなきゃいかぬということになります。したがって、貸し渋り、信用収縮を招きます。こうなりますと
実体経済が一層低迷いたしまして
株価がさらに下がる、こういう悪循環が続くわけです。
現在進んでおりますこの悪循環を断つためには、
銀行本体の株式残高を凍結いたしまして別の組織へ移管することだと思います。こうした措置をとれば、株式
市場が活性化いたしますし、十年以上も継続する資産デフレを解消する道が開けるのではないかと考えます。この方針を本年三月末までにお決めいただき、
銀行の株式保有の弊害に決着をつけていただきたいと思います。
どういう形がいいかといいますと、現在主要国でとられているシステムとしては、
アメリカ型が望ましいのじゃないか。つまり、金融持ち株会社のもとでの
銀行子会社、証券子会社、そういう場合には、証券子会社は株式を保有してもよろしい、やってもよろしい、しかし
銀行本体は株式は一切持つことは禁止します、それから、あるいは
銀行の子会社として証券会社を持ち、その子会社である証券会社は株式を扱ってもよろしい、これが現在、九九年十一月に成立いたしました最新の
アメリカの
銀行システムでございます。
それから第三番目には、本年三月末に失効いたします金融機能早期健全化緊急措置法を少なくとも五
年間延長していただきたいと思います。
これは金融システムのセーフティーネットでありまして、この法律の失効が近づいていることが、
株価の低迷と金融不安、信用不安の根本的な原因ではないかと思います。この法律は議員立法で成立しておりますので、議員の先生方の御発議をお願いしたいと思います。
この法律のひな形となりました
アメリカの三三年緊急
銀行法は無期限でございまして、実に一九五四年まで二十一
年間、セーフティーネットとして続いたわけです。
それから第四番目には、現在
日本で特に重要なことは、マクロ的見地から
財政と金融の一元的
政策を進めることだと思います。
現在の
日本は、
政府が
財政支出をふやして必死にデフレ解消に努めているにもかかわらず、
金融政策は、デフレ解消どころか引き締め
政策をとっていると考えられます。こうした矛盾を解決いたしますには、雇用と
経済成長促進法といった法律を制定して、
政府が金融と
財政の一元的
政策を進められるようにするべきではないかと考えます。
アメリカでは、完全雇用と均衡
成長法、フル・エンプロイメント・アンド・バランスド・グロース・アクト、これはハンフリー・ホーキンズ法といって、先生方御存じのとおりと思いますが、こういう法律がございまして、中央
銀行は、
インフレを抑制しつつも、
金利操作と通貨量の増加によって
最大限完全雇用と
経済成長をもたらすように
金融政策を遂行することが義務づけられております。この法律によりまして、連邦準備制度の
理事長、中央
銀行の総裁である、今ですとグリーンスパン総裁は、年二回、二月と七月に議会で証言いたしまして、
政府、議会の
意見を十分取り入れて
財政と金融の一元的な運営が行われているわけです。
日本も、こういった法律を
参考にして成案すべきではないかと考えます。
それでは次に、一番最初に申し上げました
日本の
財政事情と長期ビジョンというところについて私見を申し上げます。
私の現状認識といたしましては、デフレ型の
金融政策と緊縮
予算案が株安、
景気失速懸念の原因ではないかと考えております。現在、
日本国民の多くは、
日本経済の将来に対して不安感を抱いております。この根底には、長期にわたる
経済の低迷と過度の悲観論があると思います。
九八年七月に就任されました小渕前総理は、
財政再建策を凍結され、公的
資金の注入によって金融危機を乗り切り、積極
財政をとって
恐慌的
不況の克服に全力を尽くされました。特に、九九年秋の補正
予算では真水九兆円の
支出ということをお決めになり、これが
日本経済を大きく
マイナス成長から
プラス成長に引き上げる原因であったと考えます。
平成十二年度
予算も積極型で、これで
日本経済は
成長路線に乗るかと期待されました。
ところが、昨年の夏ごろから、一部の識者が総債務だけで
日本の
財政をとらえ、
日本の
財政事情は危機的であって、破綻寸前であるかのように誇張され、マスコミもその論調を強めたために、やむなく昨年秋の補正
予算は真水で四兆円の増加にとどまりました。これで、九九年秋の補正
予算に比べて五兆円の減額となります。
また、
平成十三年度の現在御審議いただいております
予算案では、六年ぶりの緊縮、減額
予算でございまして、金額では前年に比べて二・七兆円の減額ということになっておると思います。ですから、
平成十三年の
予算支出は前年比で八兆円の減額となり、
景気抑制型、むしろデフレ型
予算というのが実態ではないかと考えます。
株価が一段と低迷し、金融不安が再燃し、
景気失速が伝えられる大きな原因はここにあるのではないかと考えております。
加えて
金融政策は、昨年八月のゼロ
金利解除によりまして
金利の引き上げと量的な引き締めがとられております。このまま何ら手を打たないで放置するとしますと、
平成十三年度には
経済が
マイナス成長に陥るのではないかと私は実は懸念いたしております。本年四月以降の
景気動向を十分注視されまして、
景気が失速しそうになった場合には早目に補正
予算を御検討いただくのがよろしいのではないかと考えます。真水で例えば十兆円
支出するといたしましても、
平成十三年度の前年比
支出増加額はわずか二兆円にすぎません。
二番目といたしまして、私は、
日本の
財政は決して危機的ではない、純債務で
財政事情を適正に把握すべきであると申し上げました。
そこで、この純債務というのは具体的に言ってどのような形になっておってどうなのか、御存じと思いますが、ここでパネルを使いまして御説明をさせていただきます。純債務で
日本の
財政事情を説明してきたというケースは今まで余りないのではないかと思いますので、御説明申し上げます。
資料といたしましては、右上の三ページを
ごらんください。
まず、手順といたしまして、皆様十分御存じと思いますが、
日本の
資金循環というのはどうなっているかということでございます。
家計、
企業、それから
政府、
海外、こういうふうに考えますと、まず、ここに書きました数字でございますが、上に書きました数字は、九九年度、
平成十一年度の実数でございます。昨年十二月に出ました
経済企画庁の
国民経済計算、そこからとっております。括弧内は一年前の数字でございます。
そういたしますと、金融資産、
家計部門には千四百八兆ございます。そのうち、
家計が使っておりますのが三百八十四兆ありますから、
家計部門の余剰が千二十四兆、それから下に
金融機関で別勘定で計上しているものがありますので、実際の余剰は千六十二兆でございまして、これは一年前に比べますと百兆ふえております。大体ここのところ
個人金融資産というのは百兆ぐらいずつふえているんですね。
それがどう回っているか。
企業部門の不足に七百四十九兆、それから
政府部門の不足では純債務として二百二十八兆あります。実は、
政府部門には総債務六百十八兆の
負債がございます。しかし、金融資産として三百九十兆持っておりますから、この
部分を引きますと二百二十八兆が純債務でございます。それから、
残りは
海外の債権として八十五兆、こういうふうに回っております。
ですから、これは極めて健全に処理されておりますから、安定的な
資金調達で推移しております。
次に、その右側の
日本政府の貸借対照表でございます。
これはどういうふうになっているのだろうかということで、特に昨年の十月に大蔵省から、
日本国は
債務超過であるというような数字が出ましたので、かなり注目を浴びました。しかし、私が計算いたしますと、決して
債務超過ではございません。
どこかといいますと、まず金融資産、この数字も
平成十一年度、九九年度の実数でございます。括弧内は一年前でございます。合計しまして資産が八百七十七兆ございます。金融資産が三百九十兆、固定資産が三百三十二兆、土地が百五十五兆、金融資産は全体の四五%、固定資産は三八%、土地は一七%です。これは、ある程度時価評価しておりますけれども、含みもございます。
一方、
負債はどうか。
国民経済計算によりますと六百十八兆ございます。これは先ほどの
負債に合うわけですね。一方、正味資産というのがこの差額で二百五十九兆ございます。ですから、ここで見る限りは
日本は資産超過国です。
しかし、昨年十月の大蔵省の発表によりますと、
負債のところに公的年金と公務員の賞与・退職給与引当金、こういうものを計上しまして、その
部分は正味資産を上回る、したがって
債務超過である、これが三通りあるというふうに言われております。
しかし、ここで私が思いますことは、公務員の方々のこういった賞与とか退職給与の引当金というもの、これは税収によってカバーされているわけでございまして、将来にわたっても税金に対する徴収権というものは
政府にあるわけです。一方、
国民年金でございますが、これも賦課方式をとっておりますし、将来にわたっても保険料の徴収権というものは
政府にあります。そういった将来の徴収権というのは資産と考えるべきではないかと思います。
それを考えますと、この
負債というのは、ある
意味ではやや疑問を感じます。私自身は、ここに
負債として計上するのはいかがなものかと考えております。ですから、いたずらに
日本国は
政府も
負債だというようなことをやや誇張し過ぎるのは、
国民をかえってミスリードすることにならないだろうかと私は考えます。
ついこの前、タクシーに乗りまして運転手さんと話していましたら、国もいよいよ
債務超過なんですね、一体この国はどうなるんですかとおっしゃいましたから、ちょうどこれを僕は計算した直後だったんですが、いや、こうこうこうでそんなことないんですよと言ったら、そうですか、だけれどもみんなそう思っていませんよ、こう言っておりました。ですから、いたずらに
国民に不安感を醸し出すような考え方はいかがなものかと私は疑問を感じております。
では、次に参ります。ペーパーは四ページに行ってください。
ここでは、
日本の総債務と純債務というものを九五年から分析してみました。そういたしまして、二〇〇一年度、今の
予算案もここに入れてみました。そういたしますと、四ページの左の上のような表になります。特に九九年というところに丸をつけてございますから、九九年で見てみたいと思います。この表は、左が、一番上が
GDP、それから総債務、三番目が総債務の
GDP比率、それから金融資産、それから純債務、つまり総債務から金融資産を引いたものが純債務ですね。それから一番下はその純債務の
GDP比率、こういうふうに表をつくってみました。
そういたしますと、九九年、実数といたしましては、総債務の
GDP比率は一二〇・三%、しかし純債務の
GDP比率は四四・三%、この差額、実に七六%ポイントもあります。ここに実は
日本の特徴がございます。ほかの国は大体一五%ぐらいなんです。この後御説明いたします。
そこで、それではなぜ純債務という考えの中に入れる金融資産の内訳というのが余り表に出てこないんだろうかというふうに考えられると思います。これを見ていきますと、それでは、金融資産の内訳はどうかというと、その下の表、左の表の下でございます。図表四、この数字、左が合計でございます。それから右へ行きまして、内訳の最初のところが社会保障基金、その右が外貨準備、貸出金と出
資金、いわゆる
政府の貸出金とか債権でございますね。
問題は、社会保障基金というものでございます。これは、御存じのとおり、年金と
国民健康保険の残高でございます。これを九六年からずっと二〇〇一年まで見ますと、実は、ほとんど残高としてはもちろん
黒字といいますか、かなりの金額がございますし、年々十兆円近く増加しているんですね。
確かに、現在、健康保険の問題とか
国民年金というのは、年齢構成とか将来に向かって問題になっております。ですから、十分今から手を打たなければならないことは確かです。しかし、現時点ではこれは
黒字なんです。これが
黒字なんだということを知っている
国民はどのぐらいいらっしゃるんでしょうか。私も実はこれをやってみて初めて、こんなに
黒字なんだなということがわかりました。
ですから、ここで私が申し上げたいことは、こういった社会保障基金も
黒字である。それから、
日本は債権国ですし、対外的に外貨準備もあります。既に三千六百億ドル、四十兆を超す外貨準備、史上最高のがあるはずでございます。ですから、そういうものはきちっと
国民に正しく伝える。しかし、特に社会保険機構は年齢構成とかいろいろな角度でこれから難しくなるからひとつ協力してもらいたいという前向きのプレゼンテーションをすれば、
国民もよくわかるんじゃないか。何か現在では、あれも悪い、これも悪い、
日本は沈没するんじゃないかというようなイメージ、まあ、マスコミなんかはそういうのが好きですから、特にこちらにあおられている、これは非常に問題だと私は思いますけれども、いずれにしても、純債務で見ることによってこの辺のことは正確、的確に把握できるのではないかと私は思います。
それでは、その次の五ページへ行ってください。そこで、
日本の
財政事情を
アメリカ、イギリス、ドイツ、この三国とちょっと比べてみます。そうすると、非常におもしろい数字が出てまいります。
五ページの左の下を
ごらんください。まず第一、
日本の総債務と純債務の
GDP比率、これを国際比較してみましたのがその左の下でございます。ちょうど真ん中の図表六は、総債務の残高の対
GDP比率。これで見てみますと、九九年、一番右の方ですね、確かに
日本は一二〇・四、ドイツが六二・六、イギリスが五四・〇、
アメリカは五九・三、
アメリカは特によくなってきていますね。一方、これを純債務で見てみますとその下のような形になっていまして、
日本はどうなっていますか、四四・三、ドイツが四七・一。ドイツが実は一番悪いんです。それから、
アメリカはよくなって四四・〇、イギリスが三九・七、こういうふうになっております。ですから、純債務で見ますと
日本の
財政はそんなに危機的ではないと私は思います。
それから同時に、前回の
財政構造改革というのが行われましたのが、九六年に決まって九七年度でございました。そのときに一体純債務はどのぐらいだったのかと見てみますと、その下の表の真ん中のところに二一・三とございますね。実に純債務の
GDP比率は二一・三%だったんです。ですから、ほかの国に比べて半分ですね。これは健全
財政ではなかったか。
ですから、当時、九七年の三月だったと思いますが、
アメリカのゴア副大統領が
日本に来られまして、もっと金融資産があるじゃないかというようなことをおっしゃったようで、新聞で読んだことがありますけれども、このことではなかったのか。そういうことはこれで裏づけられます。
それでは、
日本の
財政というのはどういう
構造なのか、実は非常に特異な
構造があるわけでございます。
まず、一番上の表を
ごらんください。上の表は、主要国の
経済、
財政事情というものを項目別に整理してみました。一番上が経常収支、それで
プラスが経常収支の
プラス、つまり輸出の方が輸入より多い、それから三角は輸入の方が多い、
マイナスでございます。それから、二番目が国内
投資と
貯蓄、Iが
投資でSが
貯蓄でございます。だから、IとSで不等式になっておりますが、Iの方が多いということは
貯蓄よりも
投資の方が多い。それから三番目、
財政収支、これは三角が
マイナスで
プラスが
黒字でございます。四番目、対外債務国か債権国か。三角は対外的に債務国です。
プラスになっていますのは債権国です。これは
日本だけです。それから、五番目が総債務の
GDP比率、六番目が純債務の
GDP比率、これは先ほどの数字を全部書いてあります。
そうしますとどういうことが言えるかといいますと、まず
アメリカの場合は、これは債務国でございます。しかし、経常収支はずっと輸入の方が多い。国内も
貯蓄率が
マイナスのような国ですから、
投資の方がずっと多いです。それから、下の方を見ますと、総債務と純債務の比率は、総債務が五九・三、純債務の
GDP比率が四四・〇ですから、一五・三。こういう一五・三%ポイント、つまりこの数字が両方の見方のギャップでございます。
それからドイツは、経常収支は全部
プラスでございます。しかし、その下の
投資と
貯蓄を見てみますと、この国は
投資の方が多いんですね。これは、統合の結果が影響していると思います。それから、
財政は
赤字でございます。それから、総債務と純債務を見てみますと、総債務が六二・六、純債務が四七・一ですから、この差額は一五・五ということになります。
イギリスはどうか。イギリスは、九七年以外は経常収支は
赤字です。それから国内はどうかといいますと、この国は九八年までは
貯蓄の方が多かったのですね。そこで実は
財政赤字をやったのです。それで、積極的な
財政をやりました結果、九九年には内需が喚起されて、同時に
財政も
黒字になった。この両方の先ほどのポイントは一四・三。ですから、ほかの国は大体一四、五%ポイントの差しかありません。
一方、
日本はどうか。これは非常に特異な性格を持っておりまして、国際収支は全部
プラスでございます。それから国内はというと、
貯蓄の方がはるかに多い。これがずっと続いております。
財政は
赤字です。対外的には債権国です。両者の比率は実に七六%、非常に大きいわけですね。
ここから見ますと、非常に
日本の特徴がはっきりしてまいります。どういうふうにはっきりしてくるかといいますと、右下の
日本の特徴を見ていただきたい。
三番目には、九七年度の
財政を出した時点では、先ほど申し上げました。
四番目の、
財政構造の点から見て均衡
財政ということはあり得ない国だ。それは、右の一番上に
財政理論ということをちょっと書きましたけれども、
通常、経常収支が
赤字の場合には国内は
投資の方がふえる、経常収支が
黒字でございますと
貯蓄の方が多い。それから、ドーマーの定理ということで、債務
コストよりも
経済成長率が高ければ債務は自然と消えていく。当たり前のようなことですが、こういうようなことが言えます。ですから、
日本について言えることは、こういうような
財政構造から見ますと、下の方の四番目、
財政構造の点から見て均衡
財政というのは
日本に当てはまりません。
五番目には、常に輸出超過国で、今後ともこの動向が期待され、国内は
貯蓄が
投資を上回るので、ほかの国以上に
政府が公共
投資で
資金を民間へ還元する
政策が必要である。
それから六番目には、
国民負担率は主要国の中で最低です。これはその左上の下のところに書いてあります。
日本は
GDPの比率で一・三から一・四、
アメリカが二%、欧州が三%という形になるわけです。
こういう面から、私は、
日本はそう危機的ではないということでございます。
最後に、時間が超過して恐縮ですが、
日本の
財政再建についての基本的な考え方といたしましては、まず、
構造改革ということと
財政再建を切り離してきちっと考えるべきであろうと思います。
財政構造改革というのは、税収の増加対策、それから効率の低い
支出は削減するということで現在既に実施中ですし、これをもっと強めるべきだ。それから、
財政再建というのは、やはり
景気が回復して三%以上の
成長が持続できるようになって、しかもそれが軌道に乗ってから行うのが望ましい。今まで経験的に見まして、ほかの国でも、
景気下降期で
財政再建改革で成功した例はございません。
二番目は、
社会資本の充実が必要な国でございますから、
政府が公共
投資を継続しなければならない国です。ですから、四百兆円ぐらいの
国債残高は常にあっていいのではないか。これはよい
財政赤字であって、次の世代に引き継いでもいいのではないかと思います。
それから三番目には、社会保障基金は現在
黒字です。将来にわたっての問題は既に検討中であり、過度の心配は無用である。この辺は
国民にもこういう
事態をしっかりと説明すべきではないか。
景気を回復して増加した
所得の中から徐々に負担率を上げる、こういう考えが望ましいのではないかと思います。
最後に、デフレ
経済からどう脱却するかということですが、現在の
日本は、総力を結集してデフレ
経済からの脱却を考え、実行すべきであると考えます。
政府は、明確なビジョンを示し、
国民の不安感を解消していただきたいと思っています。
目標は、やはり
GDPの三%以上の
成長。
財政支出はまだ十分可能で余地がございます。
金融政策を早急に
成長型に変え、
銀行の不良債権と株式保有の抜本的解決を並行して進め、また、物価下落を食いとめるためには、セーフガードの発動、円安誘導などを実行してもよいと思います。こういうものを総合して継続して実施することが必要ではないかと私は思います。
政府の
予算にそういった面での具体化をぜひお願い申し上げたいと思います。
どうも失礼いたしました。(拍手)