○中川智子君
社会民主党・市民連合の中川智子です。
私は、ただいま
議題となりました再
就職促進雇用対策法等の一部を
改正する
法律案に対しまして、
総理及び坂口
厚生労働大臣に御質問をいたします。(
拍手)
人間だれしも、幸せに生きていきたいと願っています。まして、みずからがみずからの命を絶つ、その自殺が本当にふえています。苦しみ悩み続けた結果、みずからの命を絶つようなことがますますふえていく
社会を、私たちは決してつくってならないと思っています。
でも、その自殺の原因が経済生活苦、その原因が大変ふえています。電車に乗っていても、人身事故によってしばらく電車がとまることが、本当に週に一回ぐらいあるのです。それはほとんどが自殺です。
警察庁の統計によると、
平成九年の自殺者二万四千三百九十一人のうち、生活苦が原因とされる人が三千五百五十六人、
平成十年では、全体が三万二千八百六十三人にふえて、やはり生活苦が六千五十八人、十一年度は、三万三千四十八人のうち、生活苦は何と六千七百五十八人にも上っています。昨年はもっとふえています。
総理、私たち政治家の仕事は、死にたくなるような
社会をつくるのではなく、希望を持って生きていきたい
社会をつくるのが仕事です。あなたは希望を絶望に変えてしまいました。その経済政策の失敗の責任をどのようにお
考えでしょうか。そしてまた、
失業率悪化の責任に対してどのようにお
考えですか。明確にお答え願います。
雇用対策法は、完全
雇用の達成を国の
目標として明らかにし、
労働者の
職業の安定と経済的、
社会的向上を図ることを目的に、三十五年前につくられたと認識しています。そこにあった精神は、より積極的に
雇用の質的改善を目指す、
労働者本位の政策体系であったはずです。
しかし、その後の産業
経済構造の転換や日進月歩の技術革新、さらには
労働者の意識
変化などによって、
雇用環境は大きく変わりました。
失業情勢は最悪を記録している今、この
改正が
労働者の不安を増幅することのないよう、細心の配慮や
措置が求められます。
戦後の労働法の展開は、各国とも、
企業、職場レベルでの使用者権限の規制と
雇用責任の強化が立法の中心でした。
日本では、
企業別の内部
労働市場を前提とした
日本型
雇用慣行が形成され、
雇用の安定が追求されてきました。
他方、敗戦直後の、使用者の一方的作成を認める
就業規則
制度が維持され、
日本はアメリカと並んで、
企業主が絶対的な権限を有する国の一つでもあります。その方法は、
企業は
労働者を安易にリストラなどしないものだという性善説に基づくものでした。しかし、今や、なりふり構わずのリストラのあらしです。
その点、ドイツでは、労使共同決定
制度を導入していますし、EU諸国では、職場での
労働者の権利を拡大してまいりました。それに比して、
日本が大きく立ちおくれている側面があることを事実としてきっちりと押さえるべきです。規制緩和論は、このような
日本労働法制の基本的な特徴を意識的に無視していると断ぜざるを得ません。
したがって、無定見な規制緩和に押し切られてしまい、退路を断たれたあげくの見切り発車ではないかという厳しい批判もあることを
総理はしっかりと御認識でしょうか。その点、伺います。
また、
改正により、
雇用対策法の理念、目的がなし崩し的に崩れ、本来の役割の変質を結果的に迫られる心配はないのか、明確な御答弁を求めます。
また、本
改正の意義は、
労働者の幅広いキャリア形成を最重視するとともに、
失業なき労働移動に対する支援策の
整備こそ大切だと言えます。それだけに、単に労働力需要調整機能の強化や移動前後の
助成強化にとどまらず、その大前提として、
雇用にかかわる
セーフティーネットの拡充が不可欠です。
とりわけ、円滑な労働移動実現のための
対策として打ち出された
計画的な再
就職援助については、安易な解雇の横行をいかに防ぐかが問われています。解雇回避の努力を十分行った上で、かつ、人員削減が避けられない場合にだけの労働移動支援策であることをそのために明確にする必要があると思いますし、その点をしっかりと法令に明文化することが大事だと思います。
大臣の御答弁を求めます。
改正案には、労働組合等の意見聴取が必要とされていますが、これだけでは
労働者の意見が十分に反映される仕組みが担保されるとは思えません。
実は、私も二十四年前、オイルショック後の構造不況の中で、五百人余りの従業者を百人に削減する、厳しい職場に身を置きました。真っ先にパートが、そして、女性が首を切られていきます。それから、
労働者が働けなくなるような
状況をじわじわとつくっていかれます。そのときには、労働組合さえも、
企業の倒産を防ぐために、
労働者の声を聞く力を持ち得ませんでした。労働組合も会社も、だれも頼りにならないときに、
労働者一人一人のきっちりしたその解雇に至る
経過、そしてまた、その後の善後策をこの
法案の中に盛り込むべきだと思います。
本当に悲しい、厳しい現実は、社長も涙し、やめていく者も涙します。だれもがつらい、そのことは身を置いた者でなければわからないと私はつくづく思います。その人の気持ちをしっかりわかってください。
労働者の主体的なキャリア形成を支援していくことは、とても重要なことだと認識しています。しかし、
事業主が担うべきことは、恒常的なキャリア形成への
能力開発援助だと
考えます。
森総理が初めてパソコンをさわられてからかなりの月日が流れましたが、どの程度、技能を身につけられましたでしょうか。年をとればとるほど、技能を身につけるのはつらいし、困難です。
事業主が担うべき
能力開発の責任が
労働者に転嫁されるおそれはなきにしもあらずです。国と
雇用主が連携し、日常的な
援助体制が必要だと
考えますが、いかがでしょうか。
また、当然のことながら、幾ら
流動化が進もうと、
企業が必要とする労働力を外部調達に頼ることを主としてはいけないのは当然のことです。
日本経済が優位性を保ってきた原動力とも言える
日本型長期
雇用慣行、それにおける熟練、キャリア形成の果たす役割は引き続き中核的なものとして位置づけられるべきだと
考えますが、その御認識について伺います。
これまで述べてきたように、
労働者の権利を保護した上での
労働市場活性化が労働力需給の
ミスマッチを解消するための重要な一つになることは、私も否定しません。ただし、それはあくまで、
機会均等の確保、
差別禁止が明確に貫かれることを前提としています。せっかくの再
就職が、
能力開発支援策なども、
求人側の
年齢制限がある限り、ハローワークの入り口でそれらのものはこっぱみじんに吹き飛んでしまうのです。四十代からの男性の自殺者がふえているのも、
就職したくても面接までたどり着けない現実があるからです。
今回の
政府案は、やっと
求人の
年齢差別禁止が
努力義務のみとして盛り込まれたにすぎません。
年齢制限をされて、そして面接にも行けない情けなさ、それも家族を抱えながら日々の生活に追い立てられての求職、そのような仕事探しならどんなにつらいでしょう。そのことをしっかりわかって、この
法案に、単に
努力義務だけではなく、しっかりとした裏打ちを私は望みます。
次いで、
大臣にぜひ
提案したいことがございます。
労働者が主体となる仕事興しの支援体制です。
EUでは、
雇用関係のない、みんなが一体となって働く協同労働があります。働く者が出資もし、維持管理をともに行う働き方です。生産分野やサービス分野でのワーカーズコープなどの協同労働に対し、体系的な法制や
助成制度の確立に向けてぜひ取り組んでいただきたいと思うのですが、決意をお聞かせください。
失業なき労働移動を掲げた本
改正案は、結局のところ、多少お化粧をして、お色直しをして、あとはあなたの努力で勝手に頑張ってと、ほうり投げてしまうもののような気がしてならないのは私だけでしょうか。
つい先週も、私は飯田橋のハローワークに行ってまいりました。職を求めて必死の思いでパソコンの画面に向き合っている人々でいっぱいでした。とてもその場で声をかけられる
状況ではありませんでしたので、入り口のところで立って、聞いてみました。肩を落としながら出てくる人が、口々におっしゃっていました。一度リストラされたら、無用の
人材としての烙印を押されてしまう、そしてまた、そのことによって再
就職がとても困難だとおっしゃっていました。そして、どの
企業でも即戦力を求めていて、多少勉強しただけではとてもその
企業の要求にこたえられないともおっしゃっていました。
大臣、
企業が大変な
状況にあるのはわかります。でも、
企業は
人材を育てる役目も負っているのではないでしょうか。安易にリストラしないのはもちろんですが、リストラせざるを得ない
企業と需要のある
企業が協力体制を持って、
企業間の連携が大事ではないでしょうか。山一証券の社長が、泣きながら、社員をどこか雇ってくださいと言いました。社員が一度
市場にほうり出されるのではなく、
企業と
企業が連係プレーをして、そして、
失業なき労働移動ができるような体制をつくることはできないでしょうか。ぜひとも
考えていただきたいと思います。
ここで、ちょっと
総理に一言、耳の痛いことを言いますが、あなたは某新聞社に、自分だけ入社試験に白紙答案を出して入社したと、堂々と御自分の著書で書かれておられます。でも、ほとんどの人はコネなどないんです。必死に
就職活動をしているんです。この現状をわかってください。(
拍手)
総理に伺います。
失業の人々が三百万人以上です。この
状況を打破するには、
企業努力のみに頼れなくなっているのが現実です。故小渕
総理が百万人の
雇用創出を提唱なさいました。あの百万人の
雇用創出は、今どうなっているでしょうか。
今
国会に提出した、三十人学級の実現による教
職員の拡大をぜひともお願いします。また、環境分野の
人材の確保、そしてまた福祉面でのマンパワーの充実、ここに国が積極的に
雇用創出を今こそ断行すべきではないでしょうか。御答弁をお願いいたします。
本日最後に、ぜひともお願いしたいのですが、大規模災害の被災者の
雇用問題、
就職の困難について、
総理にわかっていただきたいのです。特に三宅村の村民支援に対して伺います。
三宅村の全島民が避難して半年がたちました。専門家によると、島にはいつ帰れるか予測がつかず、避難生活は長期になるだろうと言われています。三千七百九十七人、今、生活の不安をいっぱい抱えて暮らしています。
雇用保険も切れました。また、義援金など支援金も底がついたと聞いています。このままでは、捨てられた民となることは必至です。
阪神・淡路大震災も、一年目より二年目、二年目よりも三年目……