○古賀誠君 私は、自由
民主党を代表して、
さきに行われました
森総理大臣の
施政方針演説に対し、
質問をさせていただきたいと存じます。(
拍手)
最初に、去る一月二十六日に、
インド西部の大
地震により、多数の
人命が失われ、甚大な
被害が発生しました。被災された
方々に心よりお見舞いを申し上げますと同時に、速やかな
復興をお祈りいたします。
日本政府において、医療チームの派遣、援助物資の供与など可能な限りの
支援をしておりますが、引き続き万全な救援措置を講じていただきたいと存じます。
また、
有明海のノリ養殖の深刻な
被害について、自由
民主党は既に
被害調査対策本部を立ち上げ、去る一月二十六日、
与党三党の幹事長等で現地を
調査いたしました。
政府としても、
被害原因の徹底究明を総合的に行うとともに、漁業関係者への緊急の
生活支援を初めとする
支援措置について、万全かつ早急に対処していただくよう要請するものであります。(
拍手)
さらに、一月三十一日、日航機同士が異常接近するという
事故が起きました。衝突回避した一機の中で負傷された
方々に、心よりお見舞いを申し上げます。今回の
事故は空前の大惨事になる寸前だったことを重く受けとめ、自由
民主党としては、
国民の不安を解消するため、ニアミス
事故調査対策特命委員会を設置したところであり、
政府においても
原因究明と再発防止に全力を挙げることを求めるものであります。
さて、二十一
世紀の扉が開かれました。いよいよ新たな百年が始まります。ちょうど百年前、二十
世紀を迎えるに当たって、福沢諭吉先生はこんな言葉を残したそうです。「
独立自尊、新
世紀を迎ふ」。昨年、この言葉を知り、私は深い感銘を覚えました。
独立自尊とは、独立して世に処し、みずからの人格と威厳を保つことでありますが、百年たった今も少しも古さを感じさせないばかりか、むしろ、二十一
世紀を迎えた
日本国民全体、とりわけ我々
政治家に重いメッセージを伝えていると思います。
私は、この意味するところをかみしめながら新年を迎え、二十一
世紀という新たな
世紀が希望に満ちた平和な
世紀になるよう、一
政治家として身を賭して邁進することを決意した次第であります。(
拍手)
しかし、年明け早々、
独立自尊の
精神とは裏腹に、まことに残念なことが起きてしまいました。いわゆる
KSD事件をめぐって、
小山孝雄参議院議員が
受託収賄容疑で逮捕される事態が生じました。政権
与党の中枢にある我が党に
国民の厳しい怒りの視線が向けられているのは当然であります。公党を預かる者として
国民の皆さんに、
政治の
信頼を損なったことに、また、友党の
公明党、保守党の皆さんに、御迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げる次第であります。
我が党としては、
小山議員に対し強く離党を勧告、同氏は離党し、最後は議員を辞職されました。当然、
事件そのものについては司直の手にゆだねるほかはありません。問題は、
自民党としての反省と
改革であります。二度とこういう事態が起きることのないよう、組織の総点検をして問題点を洗い出し、具体策を講じることだと
考えます。加えて、
政治家一人一人が
政治倫理について深く思いをいたし、みずからを厳しく律することが肝要であります。
小山議員の
議員辞職、
額賀経済財政担当大臣の
辞任は、その反省と自戒の第一歩と受けとめていただきたいと思います。
我々
政治家にとっては、倫理は最重要の問題であります。
政治倫理の問題は、古くて新しく、新しくて古い問題であります。マックス・ウェーバーは、「職業としての
政治」という著書の中で、
政治家の力の中には善悪が渦巻いていると指摘し、禁欲、すなわち欲を禁ずることが
政治家の大きな
課題であると言っております。我々
政治家は、
国会の議席を
国民から負託された栄光の座として誇りを持つ一方、職業としての
政治家として、物欲を断って職責を果たす
責任を常に感じておかなければなりません。
衆参両院で議決された
政治倫理綱領は、その冒頭にこううたっております。
政治倫理の確立は、議会
政治の根幹であります。まさに至言であります。この言葉をかみしめ、今回の
KSD事件を教訓に、
日本の
政治と自由
民主党の
信頼回復に全身全霊を注ぐ覚悟であります。(
拍手)
総理はこの
政治倫理についてどうお
考えか、最初に
お尋ねしたいと思います。
外務省職員による公金横領
事件についても触れなければなりません。まことにざんきにたえないことであります。
外務省の
調査結果と処分が発表されましたが、
国民の怒りはさらに増幅された印象を受けます。これだけ
巨額の公金が不正に流用されるには、組織として欠陥があったものとだれもが
考えているからであります。
福島県二本松市に、二百四十数年前に建立された戒石銘という石碑があります。そこには、藩主が藩士に対する訓戒として次のように刻まれております。
爾の俸 爾の禄は
民の膏 民の脂なり
下民は虐げ易きも
上天は欺き難し
これは、おまえがお上からいただく給料は人民の汗とあぶらの結晶である、下々の人民は虐げやすいけれども、神を欺くことはできないという意味でありましょう。
政治倫理の確立が強く求められると同様、公務員も公僕として、そのような戒めを肝に銘ずべきであります。
今回の
事件を踏まえ、
外務省の組織、
体制のあり方について
総理は
外務省をどのように
指導されるおつもりなのか、さらに、横領
事件のきっかけとなった報償費のあり方についてどうお
考えになるのか、お伺いしたいと思います。
さて、
日本にとっての二十
世紀を振り返ってみますと、前半は
戦争の半
世紀でした。とりわけ第二次世界大戦が、
日本を焼け野原にし、多くの
国民の
皆様方に
戦争の傷跡を残しました。そして、今なお
戦争による心の傷を多くの
国民の
方々が引きずっているのもまた事実であります。
戦争で父を亡くした遺児である私の大きな
政治目標は、
日本の平和と世界の平和の実現であります。再び
日本の国が戦火にまみれ、
戦争の渦に巻き込まれることのないようにしたい、
国家主義や全体主義の国にしてはならない、こうした
考えが私自身、
政治を志した原点であります。私は、この原点を終生忘れることなく
政治活動を続けていく覚悟であります。(
拍手)
戦争の半
世紀に対し、二十
世紀の後半は、ある意味で成長と繁栄の半
世紀だったと言えるでしょう。第二次世界大戦後、
我が国は、
荒廃の中から立ち上がり、欧米先進国に追いつけ追い越せを目標に、
経済復興を最優先する
政治方針のもと、科学
技術の発達や工業化の進展、さらに勤勉な
国民の努力によって、驚異的な
経済成長をなし遂げ、あらゆる面で
国民生活は向上し、平和で豊かになりました。
しかし同時に、負の遺産もたくさん背負うことになりました。
経済至上主義は、大量生産や大量消費を生み、公害や化学物質による汚染、首都圏を中心とする人口の一極集中、物の一極集中、金の一極集中、その反面、多くの過疎地を生み出しました。
こうしたもろもろの負の遺産は、
国民の皆さんの英知をおかりし、御協力もいただきながら、我々
政治家が
責任を持って二十一
世紀の早い段階に解消していかねばならない
課題であります。そして、
国民の皆さんが、この国に生まれてよかった、そう誇りに思っていただける国にしなければいけないと
考えております。(
拍手)
そこでまず、二十一
世紀の
日本はどうあるべきなのか、
総理の
考えておられる
国家像をお示しいただき、それを実現するために
政治はどうあらねばならないのか、
総理の
政治理念を含めて、率直にお
考えをお聞かせください。
ところで、二十
世紀の後半は成長と繁栄の半
世紀と総括しましたが、
世紀末の最後の十年は混乱が続き、残念ながら、お世辞にもよい十年とは言えないと思います。言い古された言葉ではありますが、失われた十年と言っても過言ではありません。では、なぜこのような十年をつくり出してしまったのか。幾つかの要因があると思います。その
一つに、
政治の混迷と混乱があったと思います。我々
政治家は、このことに対してひとしく反省しなくてはなりません。
平成五年、自由
民主党の分裂以来、
政治の安定は大きく揺らぎました。中でも、細川、羽田内閣の無
責任な政権運営、すなわち
予算の提出、成立の異常なおくれが
原因となった
経済の低迷はここから始まり、取り返しのつかない失政であったのであります。(
拍手)
その後、
政党、
政治家の離合集散の繰り返し、
平成十年の金融
国会の混迷などを教訓として、小渕
総理が、
政治が安定してこそ最良、最大の責務を果たせるとの思いの中で、熟慮の末に決断されたのが、今日の
自民党、
公明党、保守党三党による連立政権の樹立であります。その結果として、
予算の年度内成立や数々の重要法案の迅速な
処理など、着実に成果を上げ続けてまいりました。
政治の安定なくして政権の安定はあり得ません。
平成元年の竹下
内閣総理大臣から現在の
森総理大臣まで、十二年間で十人の
総理大臣が誕生しています。このような
状況で、
政治が安定していると言えるでしょうか。これでは、どんなすばらしい
政治家が政権を担当しても、政権に信用、
信頼が生まれるはずがありません。
政治の安定があってこそ、初めて
政府と
国家に信用、
信頼が生まれるのです。
政治の安定なくして
国民の
政治への信用、
信頼は決して生まれず、真に
国民に必要な政策を円滑にかつ迅速に遂行することはできないと思うのであります。
その観点に立って、私は、二十一
世紀最初の一年は
政治の安定を取り戻すことに全力を挙げたいと思っております。それが失われた十年を取り戻すことであり、失われた二十年にしないための最大、最良の道だと
考えるからであります。(
拍手)
政治の安定の第一歩は、
国民の
政治に対する
信頼を得ることであります。そのためには、まず何よりも、自由
民主党が、
国民の
信頼を取り戻し、安定していなければなりません。
現在、
我が国には
政治不信、
政党不信が蔓延し、現政権に対する批判があることも十分承知しています。しかし、現在のような基本政策が一致しない、無
責任きわまる
野党に政権をゆだねるわけには到底まいりません。だからこそ、連立政権の中心である自由
民主党は、
国民のための
政治、スピーディーでダイナミックな
政治に全精力を注ぎ込み、同時に、反省しなければならないことは謙虚に反省し、正さなければならないことは思い切って正す、そうした党
改革を断行しなければなりません。(
拍手)
また、
公明党、保守党との連立の継続は、
政治の安定、政権の安定にとって絶対不可欠であります。我が党は、反省と
改革を進めながら、連立政権の基本である
信頼と互譲の
精神で、一層強力な
与党関係の構築に最大限の努力を重ねていきたいと
考えております。
そこで、
総理に
お尋ねいたします。
政治の安定のためには何をなさなければならないかとお
考えでしょうか。また、現在の
与党三党の連立政権をどう評価し、今後どのような展望を持って連立政権を運営されるのか、御答弁願います。
私は
政治の安定を強調しましたが、そのことは、従来の
仕組み、構造を頑迷に墨守するということではありません。
例えば、
選挙制度であります。連立三党は、昨年、衆参両院の議員定数を削減いたしました。また、
平成二年の
選挙制度審議会答申以来、その懸案であった
参議院比例代表制を人物本位に
改革いたしました。そして今、
衆議院の小
選挙区比例代表並立制のゆがみが指摘され、昨年の国勢
調査の結果、いわゆる一票の格差の拡大による定数是正が必要になってきており、さらに一歩踏み込んで、
制度全体のありようについて議論を始めることが重要だと
考えております。
選挙制度の
見直しについては、
総理はどう
考えておられるのか、お
考えをお示しいただきたいと思います。
さて、失われた十年の
一つの要因が
政治の混迷と混乱であったとすれば、もう
一つの要因は、
経済の低迷であります。
そこで、連立
与党は、数次にわたって
経済対策を実施し、
経済の下支えを行ってきました。その結果、
日本経済は、決定的な崩壊には至らず、何とか明るい兆しが見えるところまで
回復してまいりましたが、いまだ安心できる
状況ではありません。
小渕前
総理は、
経済の
再生に全力を傾注され、残念ながら、道半ばにして命を落とされました。私
たちは、小渕前
総理の無念とその思いをみずからの使命に置きかえ、
日本経済の
再生、
我が国経済を自律的
回復軌道に確実に乗せるために全力を挙げて立ち向かう覚悟であります。(
拍手)
今後は、
日本経済の安定のためにも、
さきの臨時
国会で成立した
平成十二年度補正
予算を迅速的確に執行するとともに、
平成十三年度
予算、税制
改正及び
予算関連法案を一日も早く成立させ、目標とする
経済成長率一・七%を達成することが重要であると
考えます。
総理の今後の
経済運営に関する基本的な
考え方をお聞かせください。
もう
一つの大事なことは、
経済を上昇軌道に乗せる一方で、一日も早く
財政構造改革に取り組む必要があるということであります。
責任与党として、
財政構造改革という道しるべを
国民の
皆様方の前に明らかにする時期が私はもう来ているのではないかと思うのです。
確かに、あの金融
危機で
日本経済がどん底にあるとき、小渕前
総理、
森総理は、思い切った財政の出動をし、政策を総動員して
経済の
再生に取り組んでこられました。だからこそ、
我が国は
経済が沈没せずにきょうここまで持ちこたえることができた、
日本発の世界恐慌を食いとめることができたと私は思っております。(
拍手)
しかし同時に、
平成十三年度末には、国と
地方の長期債務残高が六百六十六兆円に上ることもまた厳然たる事実であります。これを
政治の
責任で何とかしなければなりません。
財政構造改革、言葉の響きはいいけれども、
財政構造改革の推進は、
国民の
皆様方にさまざまな分野で痛みを分かち合っていただかなければならないことであります。どのような
社会保障の負担と給付のあり方が適当なのか、国の財政が負うべき役割は何か、こういった議論を尽くしていくことが不可欠であります。今般、連立
与党が
政府・
与党社会保障
改革協議会を立ち上げたのも、その
一つであります。
責任与党である我々が、勇気を持って、歯を食いしばってでも
財政構造改革をやっていくのだという決意とビジョンを明らかにし、明確なグランドデザインさえしっかり提示できれば、たとえ痛みを伴う
改革であっても、
国民の
皆様は理解してくれるに違いありません。
総理の決意をお聞かせください。
さて、ことしの一月六日、二十一
世紀の幕あけとともに、明治維新や戦後
改革にも匹敵する
中央省庁の
再編に伴う新
省庁体制が
スタートしました。この大
改革は橋本元
総理の情熱と決断で実現したものであり、新しい
世紀を新しい
政府で出発することの意味の重さを痛感するものであります。
今回の
改革の最大の特徴は、国政の場における政と官の
責任体制を明確にすることであります。首相を中心とする内閣主導で、
国民本位の政策をスピーディーに決定する
政治主導の
仕組みを整備したものであります。
大事なことは、仏つくって魂入れずということだけは断じて避けなければなりません。
国民の立場に立ち、
国民の視点から見て、新しい行政組織が期待されるとおり運営されていくことが重要であります。このことを注意深く見守るとともに、新
省庁体制が円滑に
スタートし、その実が上がるよう、
与党三党が一致協力してバックアップしていきたいと
考えております。(
拍手)
総理は、先般、いわば二〇〇五年行革ともいうべき作業を指示されました。この国の形を実現するため、明治維新以来の
改革を完結されることを
考えておられることと思います。そこで、これまでの行革とこれからの行革の位置づけについて、そして、二〇〇五年行革に取り組む
総理の決意をお伺いいたします。
次は、
総理に憲法問題についてお伺いいたします。
あの焦土と化した
我が国が今日あるのは、今の憲法が
日本国の根底に強く存在していたからだと私は信じます。
日本国憲法の前文にうたう主権在民、平和主義、基本的
人権の尊重は、今後とも守っていかなければならない大原則であります。
私が二歳のとき、父は、一銭五厘の赤紙の召集で、フィリピンのレイテで戦死いたしました。このため、悲しいことではありますが、私には父の思い出がありません。しかし、それは決して私だけのことではないのです。あの
戦争で、とうとい命をたくさん失いました。
戦争未亡人や子供を亡くした親、
戦争孤児など
戦争の残した多くの傷痕は、今なおいやすことができないものとして残っています。悲惨な
歴史を二度と繰り返さないためにも、憲法に
流れる
精神、すなわち、平和主義、主権在民、基本的
人権の尊重という崇高な
精神は常に忘れてはならないと
考えます。(
拍手)
しかし、
時代の変遷とともに、現行憲法では律し切れないさまざまな問題が生じているのも事実です。そのため、昨年の通常
国会において、衆参両院に憲法
調査会が設置されました。憲法問題についての本格的な論議が行われることとなりました。かつては、憲法の論議さえもタブー視された
時代がありましたが、今では、各種の世論
調査でも、憲法
改正に賛成する人が六割を超えるところまで来ています。憲法について改めるところは改めるとの意見が
国民の中でも既に過半数を占めているという事実を、我々
政治家は重く受けとめなくてはなりません。(
拍手)
私は、二十一
世紀にふさわしい、
国民のための新しい憲法が必要であると
考えます。そのためにも、まず、広く深く憲法論議を行うことであります。さらに、
国会に限らず、さまざまな場での積極的な憲法論議が必要だと
考えます。その議論は、伝統と
文化、
政治、
経済、
社会、
外交、安全保障など各般にわたる、二十一
世紀の新たな
日本の
国家像についての
国民的議論になるに違いないと
考えます。
総理の憲法問題への取り組み姿勢と基本的なお
考えをお聞かせください。
次に、
外交問題を
お尋ねします。
私は、
外交の根幹は、確固たる定見を持ち、揺るぎない国際感覚で行うべきものと
考えていますが、
総理の
考えておられる
外交の根幹とはいかなるものなのでしょうか、まず
お尋ねしたいと思います。
限られた時間ですので、個別には、日米、日朝、日ロ関係についてのみ
お尋ねします。
まず、日米関係ですが、
総理は、共和党のブッシュ新政権と早急に対話の機会を持つべきではないでしょうか。日米関係は、言うまでもなく
我が国外交の基軸であります。国際
政治を左右し、アジア太平洋のみならず、世界の安定に大きく寄与している日米関係は、微動だにさせないことが肝要であります。今後の日米関係のあり方について、基本的な
考え方と日米首脳会談の見通しについての
総理のお
考えを伺いたいと思います。
次は、日朝関係ですが、朝鮮半島をめぐっては、昨年一年間に和平への大きな変化がありました。このような中で、
我が国としても、日朝国交正常化を本年中に実現することを目標に
外交努力を尽くすべきであります。
総理は、昨年、七年半ぶりに再開された日朝国交正常化交渉の新たなページをめくりたいと述べられましたが、今後の日朝関係をどのように進展させるのか、お
考えをお聞かせください。
ただ、日朝関係を推進するに当たって忘れてはならないのは、友邦
韓国の理解であります。
先日、
JR山手線の新
大久保駅で線路に転落した
日本人を救おうとして死亡した
韓国人留学生イ・スヒョンさん及び
関根史郎さんの勇気は、我々に多くの教訓を残してくれました。心からイさんと関根さんの御冥福をお祈りいたします。とりわけイさんの勇気ある
行動は、
日本と
韓国は一衣帯水の隣人であることを改めて教えてくれました。
韓国の理解なくして日朝関係の推進はないとの立場を再確認したいと
考えますが、いかがでしょうか。(
拍手)
最後に、日ロ関係ですが、昨年、
総理は積極的な対ロ
外交を展開されましたが、クラスノヤルスク
合意が実現できなかったことはまことに残念なことでありました。本年中に領土問題を
解決し、平和条約を締結することを目標に努力すべきであります。日ロ首脳会談の見通しと、この会談に臨む決意を含め、今後の日ロ関係の構築にどのように取り組んでいかれるおつもりか、お聞かせください。
以上、私の所見を交えつつ、
総理に幾つかの
質問をさせていただきました。二十一
世紀の
我が国の指針を決める大事な今
国会の代表
質問の最後に私が申し上げたいことは、二十一
世紀は心の
世紀、心を取り戻す
世紀にしなければならないということであります。(
拍手)
二十
世紀の後半は、物の
世紀と総括しても間違いではないでしょう。幸せの価値観が余りにも物質的な、
経済的な豊かさに置かれ過ぎたのではないでしょうか。私
たちは、物が豊かであれば、裕福であれば幸せなんだ、物がなければ不幸せなんだとの思いを持ち過ぎたのではないでしょうか。そして、二十
世紀後半は、
経済が繁栄し、物が豊かになった反面、
日本人としての大切な魂や心、具体的には、家庭のきずな、親子のきずな、兄弟愛、そして、友達を思う心、国や郷土を愛する心、そうした大切なものが失われてしまったのではないかと思います。
私には、多感な青春のころ、一時期、不良少年だった
時代があります。母に悲しい思い、心配をかける、つらい思いをさせる、そんな過去を今思い出しております。しかし、今こうして曲がりなりにも私があるのは、父のいない貧乏な母子家庭の中ではありましたけれども、子供を必死に育てる親の背中を見ることができたからだと思っております。(
拍手)そして、母と子の揺るぎない
信頼を築くことができたからだと思っております。また、優しく厳しく、励まし、希望を与え続けてくれた教師との温かいぬくもりの師弟関係を築くことができたからだと思っております。
貧しくとも、私
たちの少年
時代は夢があり、眼は輝いていました。青少年による凶悪な
事件が頻発している
現状を見るにつけ、何としても二十一
世紀は心を取り戻す
世紀にしなければならないと
考えますし、我々
政治家の
責任の重さを痛感いたします。
いじめや青
少年犯罪、学級崩壊や問題教員、大学
教育の
現状や成人式の混乱など、本当にこの国はこのままで大丈夫なのか、率直にそのような
危機感を覚えます。しかし、
我が国の二十一
世紀を担うのは、青少年、
子供たちであります。子供は国の宝なのです。彼らが、人類の知的遺産を受け継ぎ、豊かな心と創造力、たくましさを備えた
日本人として成長していけるよう、そして、
我が国の将来がすべての
人々にとってより明るく幸せなものとなるように、我々も全力で
教育改革に取り組まなければならないと
考えます。(
拍手)
そのため、今
国会で
我が国の将来像や
教育のあり方について大いに議論し、英知を出し合い、
日本新生のための
改革国会の名にふさわしい、実りあるものにしたいと心から願うものであります。今
国会の最大のテーマである
教育改革にかける
総理の意気込みをお聞かせください。
私は、どちらかといえば寡黙な
人間だと思っています。それゆえに、
総理の雄弁に常々大変感心しております。しかし、ともすれば
総理の舌も時々非常に滑らか過ぎて、
国民の皆さんは戸惑うことも多いのではないでしょうか。しかし、
総理の持ってあるすばらしい判断力、決断力、洞察力を駆使されて、自信と情熱を持って我々の先頭に立ち、
政治のリーダーシップを発揮していただきたいと心から願うものであります。(
拍手)
さて、最後になりますが、私の
政治の師である田中六助先生は、今から十七年前、第九十八回通常
国会において、この本
会議場の同じこの壇上から代表
質問を行われました。当時、田中先生の体は病魔にむしばまれ、字を読むことのできないほど視力が落ちてありました。しかし、田中先生は、不屈の
精神をもって、この代表
質問を三十分にわたり原稿を全く見ずに堂々となし遂げられたのであります。その先生の鬼気迫る迫力に議場は圧倒され、先生の
質問が終わるや否や、万雷の
拍手が鳴りやまなかったのであります。私は、その感動と感銘を生涯忘れることはないと思っております。
田中先生が病躯を押してでも代表
質問の大役を立派に果たされたのは、まさに
政治家としての使命感にほかならないと思います。今こうして私が同じ壇上に立つことに限りない感慨を覚えますと同時に、私も
政治を天命として願う一人として、自戒とそして倫理を高める中で、常に気迫と気概を持って
政治家としての使命と責務を果たさせていただきたいと思うのであります。(
拍手)
国民の皆さん、
森総理は今
国会を
改革国会と位置づけられました。
改革に取り組もうとする今、これからが一番厳しい、つらいことが続くわけでありますが、もし挫折があるとするならば、
日本の将来はありません。私
たちは、二十一
世紀を切り開くために、政権
政党として
責任ある
政治家の姿勢は、
国民に夢を売るばかりでなく、迎合するものでもなく、常に厳しく
現実を直視して、ともに痛みを分かち合って、二十一
世紀の足固めをすることを勇気を持って説くことであります。(
拍手)
国民の
皆様には、
政治を
自分たちの問題としてとらえ、
自分たちに何ができるか、
自分たちは何を引き受けるべきかを
考え、そして、ともに
行動して、
日本の
政治を、二十一
世紀、未来のある
政治に構築していきたいと思います。
結びになりますけれども、森内閣の新
時代へ向かっての再出発の門出に当たり、
森総理並びに閣僚の
皆様方の御活躍と御研さんを心からお祈り申し上げまして、私の
質問を結びます。(
拍手)
〔
内閣総理大臣森喜朗君
登壇〕