○木島
委員 非常に大事な、立派な決定を
我が国の
裁判所はもう既に出しているのです。今、
民事局長からも
答弁がありましたが、昭和六十二年七月十七日東京高裁第四民事部の決定であります。第一審は静岡地裁で、昭和六十二年一月十九日の決定であります。いずれも、
文書の保管者である警察が
提出を拒絶したものに対して、出すべきだという
判断が下った事件であります。
どういう事件かといいますと、警察の違法な捜査を理由とする国家賠償請求民事事件において、不起訴処分となった被疑事件の参考人調書に対する
文書提出命令の申し立てが認容された、大変画期的な事件でございます。いろいろと判決理由は一審、高裁ありますが、非常に大事な判例でありますから、一審判決の
文書をちょっと読んでみます。
「次に、相手方は、」これは
文書の保管者、警察、静岡県側でありますが、「刑事訴訟法上の守秘義務を根拠に、本件供述調書の
提出義務はない旨主張する。」るるいろいろ書いてありまして、「原告にかかる業務上横領被疑事件については、」この捜査記録なんでしょうね、「既に捜査の密行性・
秘密保持の必要性は、実質的に失われており、かかる状況のもとで、
証拠調べのため本件供述調書を当
裁判所」民事
裁判所「に
提出することは、それが右被疑事件の送致の際にも検察庁に」送致されていない、「静岡県警察が自ら保管してきたものであることを考慮しても、なお刑事訴訟法第四七条但書にいう「
公益上の必要その他の
事由があつて、相当と認められる場合」に該当するものというべきである。仮に刑事事件記録を公にするか否かの
判断が、相手方」静岡県側「主張の如く、刑事
手続の公正な運用という観点から、第一次的には、当該記録の保管者の裁量に委ねられるとしても、それは、適正迅速な民事
裁判の実現等それ以外の
公益上の必要にも十分配慮した、合理的なものでなければならず、また、
文書提出命令の申立の採否にあたり、民事
裁判所が守秘義務の
範囲を具体的に画することを否定するものでないことも、多言を要しないところである。」
要するに、この刑事訴訟上の記録は警察が握っていたのですね。その刑事事件というのは、静岡県警が地検に送検していないのですよ。何で送検しないか、もう明らかでしょう。警察の違法な捜査がいろいろ問題になった事件だから送検しない。しかも、これの
裁判記録を読みますと、もう問題の事件は時効が来ているのじゃないですか。だから、そんな供述調書を民事
裁判に出しても、全然刑事事件の捜査に影響ない、そういう事件。
それにもかかわらず、この民事国家賠償、警察官の違法な捜査を理由とする国家賠償請求事件において、その大事な参考人調書を警察は出すのを拒絶したのですよ。恐らく、この
文書を出したら、捜査が違法な捜査だったというのが民事
裁判で明るみに出されて、警察側、静岡県側が敗訴しちゃうから、隠したのでしょうね。そういう局面の事件ですよ。
それで、
裁判官が、捜査の必要性、刑事
手続の公正な運用、そういう観点も十分に配慮の上で、しかし、本件は民事の
裁判の
実体的真実のために警察は出すべきであるという
判断を下した。確定しているのですよ。これが
司法判断というものですよ。
ところが、今回の法案は、もうはなから、先ほど
答弁がありましたね、不起訴記録も入るのだ、不送致記録も入るのだ、警察が握っている書類も入るのだというのですから、これは二百二十条四号ホに当たりますから、
文書提出命令の申し立てすらできないのです。任意に出してくれればいいですよ。しかし、そんな局面じゃないですよ。出したがらないものを、請求すらできないのですよ。おかしいでしょう。こんな立派な判決がもう出ないのですよ、この
法律が通っちゃうと。——もう
民事局長はいい。
法務大臣、おかしいと思いませんか。