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冬柴委員 法務大臣、約三百人が告訴するというのは、もうよほどのことじゃないとしないと思うんですね。大概は、
日本人は辛抱してしまうか、あきらめちゃうわけですけれども、とにかく、警察、
検察庁に、こういうことをやられたからということで親告をする人があるわけですけれども、そういう中で、最終的に懲役とか禁錮は、これは相当悪性が高かったと思うんですが、三人でしたか。ということになりますと、アメリカの懲罰的損害賠償部分というものには代替していないんじゃないか。とてもじゃないけれども、一般的な抑止効果は
期待できないと思うわけでございます。
ですから懲罰的損害賠償をすぐとれ、私はそう言うわけではありませんけれども、これは法体系が
民事と
刑事と大変精緻に分けられていますけれども、いわゆる故意で悪いことをした、あるいは、過失と言ったらこれはそんなに有罪になりません、故意に人の名誉を毀損した。その毀損された人にとっては大変なダメージです、後で事例を挙げますけれども。
そういうものに対して、頼りになる刑罰というものが、百分の一の人が刑務所に入る、あとは起訴猶予があったりということで、いろいろ調べられた人、いわゆる立件して調べられた人の中でも、三百数十人の中で約一割の人が起訴されたということを考えますと、
日本の場合、何かこれはやり得みたいになってしまいまして、ですから、週刊誌を見てください、あるいはテレビを見てください。これは本当に
人権国家かと思われるような報道があります。
私は、そういう
意味で、いわゆるジャスティス、正義というものをつかさどる
司法がそういう面をもう少し考えなければ、二十一
世紀は
人権の
世紀だ、
人権国家だということは言うことができないように思うわけでございます。
一件。これは本人の同意も得たんですけれども、これは裁判にもちろんなりましたけれども、すごくひどいですよ。私は、ここで言うとその人がまた二重に被害を受けるということを恐れるわけですけれども、名前は伏せますけれども、「スクープ!美人国
会議員の四十万円買春SEX一部始終を暴露する! 元交際男性が全告白」ということで、顔写真から全部載っています。電車の中づりから全部出ているんですよ、これ。「元女優の美人国
会議員が年若い男性と肉体
関係を持った。それだけなら独身の彼女だけに、問題はない。だが、その
関係の実態はオトコの肉体をカネで買うという買春行為だったのだ。」これ、四ページにわたって、しかも、もう読んだらへどが出るほどですよ。私のおしっこを飲んだら三十万円上げると言って飲まされた、こういうことですよ。
もちろん告訴もしたし、
民事訴訟も起こしました。全く告白した男性というのはいないんですよ。どれだけ言っても、出てこない。そして、ホストクラブというのですけれども、ホストクラブは実在していました。しかし、この美人国
会議員は一回も来ていない。そして、その中には、ブランデーをボトルキープしたと書いてある。ところが、彼女は酒飲まない。こういうことが行われている。
この
事件もそうですけれども、いろいろな
事件を見るにつけて、これは
人権国家と言えないな、何とかしなきゃいけないよ。マスコミの人から怒られるかもわかりませんけれども、そうじゃなしに、私は、あくまで報道の自由は守り抜かなきゃならない、しかし、こういう
人権侵害がこの
日本の国で敢行されるということは絶対許されないと思うわけでございます。
この裁判例たくさんを私読んでみて感じたことは二つあった。
一つは、名誉毀損に対する損害を発生しながら賠償額が余りにも低過ぎるということが一つ。請求額が五千万というものでも、百万というようなのが多い。いわゆる百万円賠償ルールというふうに言われているルールがあるみたいです。したがいまして、損害発生したらおおむね百万円。私もたくさん判例、五百近い判例を見ましたけれども、百万円前後の事例が非常に多い。
そうしますと、こういう困難な
事件を、私も弁護士ですけれども、こんな
事件を担当するのは嫌ですよ、実際。これを勝訴するためにその当事者の受ける精神的、経済的負担ということを考えたら、勝訴して百万円もらって、弁護士費用に消えますよ。したがって訴訟を断念するという事例が非常に多いんです。そして、
社会通念からかけ離れた額で、実際の補償にはなっておりません。
第二点は、認容額が低額に過ぎるがゆえに営利活動として行われる名誉毀損を誘発している、私はそういう現象が
日本には見られると思います。
ですから、静岡弁護士会が大変な労作でこういう判例の一覧をつくられました。出版されておりますが、三百七十一件のこういうプライバシー侵害の
事件を挙げていられるのですが、特定の名前を挙げて申しわけないけれども、被告にされた人、新潮社が三十二件、これは週刊新潮とかフォーカスという雑誌が出ていますね。三百七十一件中三十二件が新潮社が相手でした。そして、そのうち認容賠償額が最高の五百万円という事例も新潮社でありました。
なお、講談社、これは週刊現代とかフライデーで、二十二件あります。
そのほか、もちろんずっと、もう言うのはやめますけれども、週刊誌とかあるいは日刊新聞に対しても非常に
事件が多いということに気がつきます。
最高
裁判所として、今私が
指摘したことをどう受けとめられていますか。