○都築
委員 大変奥深い御見識をお聞かせいただきまして、ただ、今の
お話をお伺いいたしますと、先ほど
大臣が言われた、私は
教育三法といったもので本当に十分なのか、大丈夫なのかなということを実は考えるわけでありまして、これはまた、いずれ法案の中で
議論をすることになろうかと思います。
それで、もう一度、政治家かどうかという
議論に戻って大変恐縮でありますが、今、連日
新聞をにぎわしておりますのが、実は、ハンセン病の国家賠償訴訟に対して、熊本地裁の判決が五月十一日に出されました。そして、控訴期限が二週間ということですから、五月二十五日までに
政府として控訴するかしないか、そういった決断が迫られている
状況の中で、小泉総理に原告団の
皆さんが面会を申し込んだけれどもまだ会っていただけない、こういう
状況が今続いておるわけでありますし、また、控訴するのかしないのかの時期も迫ってきている、こういう
状況であります。
私自身、今回の原告団の
皆さんあるいはまた弁護団の
皆さんとのいろいろな
お話の中で、
国会議員の懇談会にも参加をさせていただいて、いろいろ
お話を聞かせていただきました。本当にひどい実は実態があったんだ、こういうふうにつくづく思うわけでありますし、映画の中でしか実はそういう場面も、確かベン・ハーという映画がございましたが、そういった中でそういう病気があるということも承知をしておりました。
ただ、
学校教育の中で、実は随分いろいろ取り上げられておったんではないだろうかなということも思いまして、資料をお願いしたわけであります。そうしたら、現実に、実は
教科書のコピーを、私の
事務所も探しましたし、行政の方からもいただきました。
一つは昭和四十七年、「
中学校新保健体育」、大
日本図書。これは保健3年のところでありますが、らいというのは
らい菌の感染によって起こる慢性伝染病で、神経や皮膚をおかす病気である。潜伏期はひじょうに長く、数年から十数年である。以前は不治の病気と考えられていた。しかし、近年、医学の進歩によって、らい患者はたいへん減少し、社会復帰もできるようになった。しかし、適確な予防法がないために、まだ一万人近い患者がいるといわれている。
それから、昭和五十三年、これも同じ「新版
中学校新保健体育」、大
日本図書。ここでは、同じような記述ですが、少し変わっておりますが、
らい らい菌の感染によって起こる慢性伝染病で、神経や皮膚をおかす病気である。潜伏期は数年から十数年である。患者数は現在全国で約一万人で、最近の発生届出患者数は年間百人前後である。最近よくきく薬が開発され、完全になおって社会復帰することが多くなった。らいのことを、らい菌を発見した
学者の名まえをとって、ハンセン病とよんでいる。
それから、同じ昭和五十三年の、これまた東京書籍の「新編 新しい保健体育」。ここでは、ハンセン病ということで表題がつけてありまして、
らい菌の感染によっておこる慢性伝染病で、遺伝病ではない。菌を発見したハンセンの名まえをとって、ハンセン病という。一九〇〇年には三万人ほどいた患者も、最近はすぐれた薬によって、約一万人ほどに減った。また、早期に治療すれば完全になおるようになり、新しく発生するものはほとんどなくなった。なおったあと眉毛が落ちたり、手指が曲がったりするため、むかしは社会の人の偏見があったが、完全になおった人は、健康な人と同じであるから、職場や家庭であたたかく迎えるようにしたい。
という実は記述になっておるわけです。
昭和五十三年というのは、厚生省が熊本地裁の裁判の中で主張した、実は、昭和五十六年以降にハンセン病の解決方法というのはある程度確立した、それ以後については、確かに行政の
対応、立法の
対応がおくれていたかもしれない、こういう主張をしておったにもかかわらず、文部省の
検定を受けているでありましょう保健体育の
教科書には、既にここまで、差別や偏見をしてはいけないという形で取り上げておるわけでありますね。
それは何に基づくのか、こう思いましたら、昭和四十四年の
中学校学習
指導要領というのが出されておりまして、その中で、これはどこの(5)かわかりませんが、「病気とその予防」、アとして「伝染病の予防」「伝染病の種類とその現状、予防の原則および予防接種について知ること。特に、赤痢や結核の原因、感染経路、症状および予防について
理解すること。」こうなっておりまして、その後、「
内容の取り扱い」という項目がありまして、(5)として、「
内容の(5)のアについては、癩、痘そうの推移にも触れるとともに、性病の概要についても取り扱うものとする。」ということで、ハンセン病についてもちゃんと取り扱うようにというのが、学習
指導要領ということで、昭和四十四年当時、もう既に、実は文部省は、こういう
教科書を使って
子供たちに
教育をしておった、こういうことだろう、こう思うわけです。
そうすると、厚生省の主張していることは一体何だったのか。予防法が確立していない、だから、強制隔離して、全国十三の園にそういう患者さんたちを終身閉じ込めておくんだという
姿勢をとり続け、そして大変残酷なことも行われておったわけです。
昭和四十四年というと一九六九年でありますが、この原告団がつくった資料によりますと、「優生保護法」に基づくハンセン病を理由にした断種・人工妊娠中絶数ということで、一九六九年、断種は男一人、女二十四人、計二十五人、人工妊娠中絶数は九十三人、翌年の一九七〇年、断種、男二、女四、計六、そして人工妊娠中絶数百四十六、実はこんなことをやっておったわけでありまして、これを一体どういうふうに
政府は認識をするのか。
だから、時間がもう参りましたが、今回、実は
政府の方は、控訴して和解をするという極めて形式的な
対応をとろうとしておりますが、それは、その理由として、例えば、立法の不作為を、こんなことを一々やられたらたまったものではない、それから、除斥期間という問題も、その論争が、実は原告の主張に近い形でというのは納得できない、あるいはまた、損害が個別ではなく共通損害という形でやっているというのは、これはまた悪例を残す。
こんな、ほかの裁判への
影響を懸念して、平均年齢七十四歳という
状況になった高齢者の
皆さん方、もう控訴をやっておったら恐らく救うことがなかなかできないかもしれない、そういう
状況、あるいはまた、国の政策が誤っておったということについての謝罪を求めているわけでありまして、それについて、例えば小泉総理に会うべきだという坂口
大臣や川口
大臣あるいは中谷防衛
大臣、こういった方たちの
お話を聞きますと、ぜひ
遠山文部
大臣も、こういう行政を担ってきたお立場から、ぜひ小泉総理に会うべきだという
お話と、控訴は、ぜひ政治家の立場からも、政治家ではないかもしれませんけれども、そんなことをやっていいのかということを御主張されたらいかがかということを最後にお伺いしたいと思います。