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宮崎参考人 おはようございます。
熊本県の小国町の町長の
宮崎でございます。今回の
林業基本法の一部を
改正する
法律案並びに関連
法案の提案に当たりまして、
林業の町の町長といたしまして、
考え方を述べさせていただきたいと思います。
まず、
熊本県の小国町の
資料を
皆さん方に差し上げておりますので、その
資料をもとに簡単に、
林業の置かれております、小国町の
状況を見ていただきたいと思います。
まず一ページに、
土地の
所有形態ということが一番上に書いてありまして、小国町総面積一万三千七百ヘクタール、そのうち民有林が一万三百二十六ヘクタール、ほとんど、小国町の
土地八〇%弱が
山林でありまして、人工林率が何と七五%、二百年以上前から植林が行われた
地域で、ある
意味での
林業先進地ということが言えるのではないかと思います。
それから、二ページに統計の
資料を提出しておりますけれ
ども、ちょっと字が小さくて見にくいかもわかりません。一番上、
昭和五十四年が左側にありまして、そのときの蓄積量が百五十万九千立方、成長量が六万四千立方、
素材生産量が四万二千立方で、
昭和五十四年、一番ピーク時の素材平均単価が三万九千円。今度は一番右側を見ていただきますと、
平成十年、蓄積量が三百二十九万立方、およそ倍増いたしておりまして、それに伴いまして成長量も十万三千立方、それから年間の
素材生産量が何と二万六千七百十六立方というふうに半減いたしております。これは、価格の低迷とやはり
需要の大幅な減退によるものです。それに伴いまして素材平均単価が一万五千八百円、半分以下。さらに、このことに加えまして、
伐採、搬出等の労働賃金が大幅に上昇しておりますので、ほぼ、平均単価が一万円を切りますと、六十年生の木を全伐した場合でも、プラス・マイナス・ゼロか、あるいは場合によっては赤字、そういうような
状況が生まれております。
それから、少し飛びますけれ
ども、八ページに
林業労働力の推移という表が掲げてあります。
昭和六十年、一般
林業従事者、人員百二十二人、平均年齢五十四歳。このことを受けまして、
昭和六十一年に悠木産業株式会社という第三セクターをつくりまして、悠木産業
森林整備課というのを設けました。
昭和六十一年ですと、人員八名の平均年齢二十四歳、新規就労者が八名に二十四歳という
状況で、
平成十二年には、悠木産業の社員で
林業、
森林整備に携わる人員が八名、平均年齢が三十八歳、一般
林業従事者は何と四十五名で平均年齢六十一歳、そういう
林業労働力の推移になっております。
新規就労者が
林業に携わる場合には、現在、
林業機械等を使っての
作業になりますので、その研修には、
熊本県にはグリーンワーカー
制度がありますので、それを活用いたしております。悠木産業の社員教育の中で得られましたことは、とにかく三年間は、一人前の給与を支給するには赤字である、年間三百万ぐらいは、三年間を通して町の助成が必要であるという要望を受けております。
それでは、簡単なレジュメを二枚差し上げておりますが、これは、
林業基本法の
改正の中の
理念あるいは重要な項目の中で関係のある部分だけを拾って、小国町と関連しながら説明させていただきたいと思います。
「
森林の
多面的機能の
発揮」という一枚のペーパーですけれ
ども、「国・地方公共団体の責務」ということで、
多面的機能を
発揮する
森林、これは
経済性は別問題として、その
重要性はわかりますけれ
ども、例えば、国有林野事業には一般会計からの繰り入れが認められております。民有林事業には何もそういうことはないわけで、国有林の
管理が独立してできないということであれば、当然民有林におきましても、差はありましても、
公益的機能があるから民有林を十分に維持
管理していきなさいということを求めるのには、かなり無理があるというふうに思います。
そのための、農業には中山間地の直接支払い
制度ができましたけれ
ども、
多面的機能の面からの
林業の
保全、
振興という面からは、やはり農業に適用されました直接支払い
制度と同様の
制度が求められるのではないかというふうに思います。
現実的に、共有林等を中心に、これは集落有林等が多いのですけれ
ども、町で買い上げてほしいという要望等が出てきております。これは、
森林の
公益的機能を維持していく上にも必要ですので、町におきましても、五十ヘクタール以上の
山林の買収等を行ってきております。
そういう
状況の中で、下流
地域、特に恩恵を多く受けている
地域との連携で、水源
地域の
山林の維持ということで、小国町を中心に、筑後川上流
地域森林公有化協議会、大分県二町と
熊本県二町、四町村で協議会をつくりまして、特に、筑後川ですので、福岡市等を中心にその公有化を求めていっております。これは国においても
検討すべき
課題ではないかと思います。
それから「
山村地域における定住の
促進」。多くの方々が
自然環境の良好な
地域を求めて小国等を訪れております。そういう方
たちの受け皿としての農
山村地域の
整備ということで、小国ツーリズム協会がその窓口となり、その実践の九州ツーリズム大学、あるいはまた、子供
たちのためのおぐに自然学校等の取り組みをしてきております。
それから次のペーパーの、「
林産物の適切な
供給及び
利用の確保」という面におきまして、「
林業の健全な
発展に関する
施策」。
昭和四十年代前半までは
拡大造林が行われたわけですけれ
ども、その
拡大造林の折に、民有林関係におきまして、
林業家は
造林資金あるいは
森林担保
資金等を借りまして、
拡大造林のための
土地の購入あるいは育林経費に充ててきております。
それが償還の時期に当たっているのじゃないかと思いますけれ
ども、そういう
拡大造林の時期に植林しました針葉樹は、
伐採、搬出しましても収益を得ることはほとんどできないというふうに思います。非常に
林家は、特に
拡大造林政策に沿った形での
林業展開を行った
林家は、
経営的に成り立たない
状況になっているのが
現状ではないかと思います。
これは、国の
施策でもありましたし、そのような
状況の中での
資金的な手当て等が求められるのじゃないかというふうに思っております。今回、そういう面の配慮も
法律的には
改正案の中になされているというふうに思っております。
それから、「生産方式の合理化、
経営管理の合理化」と「機械の
導入等、
林業経営基盤の強化」とありますけれ
ども、今、大型の
林業機械はほとんど外国で
開発された
林業機械です。これは、
日本のような急峻な地形の
山林においては、大型の
林業機械を効率的に活用することは非常に難しかったから
林業機械が
開発されなかったというふうに思っております。
そういう
意味で、いわゆる機械の
導入によります、あるいは林道等の基盤
整備によります
コストの削減には、
日本の
林業におきましては大きな限界がある。そういう点を申し上げたいと思います。
それから、「
林産物の
供給及び
利用の確保に関する
施策」としましては、小国町は、
資料に差し上げておりますけれ
ども、パンフレットの中では、町独自で、
公共建築物は小国の
資源であります杉を活用した建築物にしなければならないという取り組みを
昭和六十年から始めまして、現在、多くの
公共建築物あるいは
民間の建築物が小国杉を活用した形でできてきております。これは、自助努力をとにかく
林業地みずからが行わなければいけないということと、それから、それによります関連産業の
振興を図るということから行ってきました。さらに、それを進めまして、現在、小国型の健康住宅の提案をいたしております。
また、最近の
法律改正を見ておりますと、品確法あるいは建築基準法の
改正によりまして、いわゆる国内材がさらに使われないような
状況が起こっております。特に柱材、はり材におきまして集成材にかわりましたのは、品確法の関係でありますし、最近、内装材の防火材での
改正がありましたけれ
ども、せっかく使われておりました内装材の板材も、そのことによりまして大きな打撃を受けております。国内
林業の
振興という
観点から、建築基準法等が本当に配慮されているかどうかに大きな疑問を持っております。
以上で陳述を終わらせていただきます。(
拍手)