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信田参考人 御紹介をいただきました北海道
農民連盟の
信田でございます。
ゆうべ北見から出てきましたけれ
ども、私、北見ですから、オホーツク海は流氷がまだ居座って、有名な観光船おーろら号が非常に利益を得て観光が活発に行われまして、私
どもとしてはことしは寒い夏が来るのかなといろいろ心配しているところから参りました。
私は、若干内陸ですから、北見の方で水田十町歩と畑三十町歩、この中にはハウス野菜など畑作物をつくって、家内と息子夫婦、孫二人の
経営で、きのうも私は野菜のハウスのトマトの苗などを管理しながら、百姓をやっている一人でございます。
実はつい先日、私のところの夕食の際、六人集まって食事を始めていたところ、孫が、四年生の男の子なんですけれ
ども、春休みの間何日か塾に通うという話が出て、息子夫婦の方で進めていたのでしょうけれ
ども、私は、兄ちゃん、そんなに勉強して何になるんだと言ったのですね。いや、僕一生懸命勉強して、パパの後継ぎをして
農家をやるんだ、こう言ったわけです。
一瞬うちの家族、そのテーブルがしゅんとなって、だれも答えないのですね。みんな顔をこういうふうに合わせて、それでしばらくの沈黙の時間が保たれた。これが四十町歩を
経営している私のところの
専業農家の家族の今の雰囲気なんです。将来、不安なんです。やってほしい、願いなんですよ。私も、息子がやって頑張っていますからありがたいのですけれ
ども、孫にやらせたくない。息子がその子供に本気になって勧められないという実情なんです。
そんなことで、私たち夫婦はことしから四十ヘクタールの
農地、家屋、倉庫、まあ住宅も含めてでありますが施設、それから農機具、技術、これまでの伝統や地域のさまざまな
関係、
農業協同組合などのすべてを息子に移譲しました。
農業委員会に行きましてすべての手続を終わらせました。したがって、私たち夫婦は来年から
農業者年金だけが頼りなんです。息子とはいえ何から何まですべて
経営を移譲してしまって、何も私
ども夫婦二人は持っておりません。
したがって、家内は本当に半泣きです。本当ですよ。今はまだ二人とも足腰が立って元気に手伝えますから、面倒を見てもらえると信じていますけれ
ども、将来本当に面倒を見てもらえるのかなといって半泣きです、
女性ですから。私は男ですからざっくばらんにどこかに、うば捨て山に捨てられてもいいというような考え方ですけれ
ども、実は非常に不安を持っております。
今の
農業者経営移譲年金がなければ私は譲りませんよ、はっきり申し上げて。それから、
土地も売りません。いや
土地は売りますよ、息子でなくて個々に。切り売りして
生活していこう。これが私の本当の腹の中です。
私は実は、
農業者年金制度が創設されまして、これは若いときでしたけれ
ども、大いに期待を持って、
政府は
国民の
理解を得て非常にすばらしい
制度をつくってくれたということで、即
加入をいたしまして二十六年になりました。当初、私が入ったのは四十六年ですから、
経営が非常に苦しくて、こういう
規模拡大もやっていましたから、毎年農協から借金をして
年金を納めてきました。
そのときの農協の組勘金利は、私のところは若干安くて八・何ぼだったんですが、年利九%なんかざらでした。酪
農地帯で一割なんというところもあるぐらいですから、これは非常に高い金利で借金をしながら納めてきて、来年の四月から私は
受給者になります。今は若干の待期者です。
それで、私は、金もなくて学校に行けませんでしたから夜学で勉強しましたので、今、通算五十年間
農業に就農しているんです。それで、まだ働けるんです。もしかしたら六十年ぐらい私は
農業をやれるのかな。家内と結婚して来年で四十年ですから、四十年も二人で
農業に、本当に朝の早くから、暗いうちから働いて今日の四十町歩
経営にしてきたんですね。
それで、今の
農業者年金の部分ですが、幾らもらえると思いますか。五十年の私の就農、四十年二人で働いて、五万五千三百円です。公務員でしたら、これだけ働いて、家内と働いて二人でしたら、どういうことになるんでしょうか。私は、人のことは計算していませんけれ
ども、大体はわかっています。しかも、
政府案では、わずかこれだけの受給に対して九・八%
削減するというわけですから、私たち仲間の
農民としては断じて認めるわけにいかないというのが腹の中です。
私たちの年代の
農民は戦後の日本経済の復興に対してかなり貢献したと私は今でも自負しています。そのときの米は幾らでも、魚沼のコシヒカリよりまだ高く売れたとしても、食糧管理法で、私
どもは
国民のためとして、そこは
法律に基づいて、安くとは言いませんけれ
ども、それなりの貢献をして、地域や親戚やそして多くの
国民のためにさまざまな努力をしてきたものというふうに自負している一人です。現在は、国際化の中で逆に安くなるのを
保護していただいていることについても感謝はいたしますけれ
ども。
そういった中で、私たちの
農民の中に、当初三〇%以上の
削減案を諸
先生方の御努力で九・八%になったんで感謝しているという仲間もたくさんいます。事実、ここにおいでのすべての
先生方を初め、多くの
関係者の御尽力で今日のこの
政府案が出されていることに対して、私は心から感謝を申し上げておりますし、努力に対しては評価はいたします。
しかし、私
ども、よく考えてみました。もともと支給額等を
削減できないものを無理やり
削減したのではないかな、そういうふうに私
どもとしては
理解せざるを得ないと思っております。
政府は、
加入者減での財政上の
理由としていますけれ
ども、
農業者年金制度化以後、国会は一貫して、私
どもの見方としては、
農業者の
削減の
構造政策とその予算を承認して事業を
推進してきたんではないかな、その結果、
加入者減ということは、
政府としては好ましいことであったんではないかと思っています。成功した
政策だった、こんなふうにも私
どもとしては考えて、このこと自体についてはそれなりの、その時代時代の
先生方の御努力に対して別に問題はなかったと思います。
しかも、
農業者年金は、御案内のとおり、当然
加入の
政策年金です。世界の先進国でも、地域や
農業を守り、
国民の
食料安定供給のためにさまざまな
政策を行っているわけでありますが、
政策上約束した
農民の
年金を、充実することは聞いていますけれ
ども、
削減したという先進国などがあるのかどうか、私は調べておりませんし、そんな学もありませんからあれですけれ
ども、この点についても国際化の時代に適合していないんではないか、こんなふうに思っています。
したがって、私は、もし
政府案が国会で承認された場合、国会はみずから遂行してきた
政策で日本国
憲法第十一条の
国民の基本的
人権や二十五条の
生存権及び第二十九条の
財産権を侵害することにもなりはしないか。非常に先進国の民主主義国家としてどうなのかなと疑念を持つ一人であります。
私は強く訴えます。
農業政策は、ひとり
農民のためのものではありません。これは言うまでもございません。
国民の命を自国で守り、地方を守り、文化、伝統をはぐくみ、真に
国民の豊かさを創造するものである、こういうふうに私
どもは信じております。このまま
政府案が決定されれば、多くの脱退、解約、あるいはまた訴訟が起きるのではないかと私は非常に心配をしている一人でございます。
北海道
農業七万戸のうち六万戸で私たちは北海道
農民連盟を組織しております。みずからが
負担金を納入して活動している盟友のほとんどが
専業農家です。
農業者年金基金法の
改正に当たっては、すべての
農業者が他の
国民と遜色のないように改善され、再構築されるものと信じてさまざまな運動をし、
お願いをしてきたところでございます。
それだけに、私たちの期待を、言葉はきついけれ
ども裏切る
内容に
政府案はなっているので、強く反対をいたしたいとともに、支給
削減は絶対に行っていただきたくない、こんなふうに思うところであります。
なぜかと申しますと、国会で承認して遂行された
農業政策が、その結果、
加入者が減って財政破綻だというので、
農民の責任は私は全くない、国会と
政府の責任だ、こんなふうな
観点から納得ができないわけであります。
また、
平成七年の
年金財政再計算の
加入者設計のミスがあったのではないか。あわせて、国際化に向けた
構造政策を強化して急激な
農家減少を生み、村と地域社会を崩壊しまして、今地域社会と村は危機に立っているわけでありますが、若者が村をどんどん出ていくことを加速してしまっております。
しかも、他の公的
年金と比較しても、夫婦単位で
保険料負担と受給額とあわせて一千五百八十万円相当、私
どもの計算では格差があります。また、
専業農家がほとんどの北海道では、期待度が高く、
加入はもちろん地域によっては一〇〇%、総体でも九〇%以上の
加入で、断じて後退は認めることができないのです。
二世代、三世代家族の、私のところもそうでありますが、
農業を持続するために、
農民の老後の安心を保障することで、とりわけ村と地域社会を再建する、そのためにも
農業者年金、
老齢年金を含む確定
年金の全額を保障すべきだというふうに私は強く
お願いをするところであります。
また、
政府案では、担い手にシフトした
政策支援で多くの
加入要件をつけております。これは
農業者を選別するというふうに私
ども生産現場では強く
批判をしている、私まで怒られておるところであります。
委員長、何やっているんだと怒られているわけですが、
農民はこれは全然納得していないところであります。
国民のために
食料を供給する
農民を公平、平等にやはり支援する、これが本当の意味の
政策年金ではないかと思います。
さて、新農基法では、消費者、
農民そして地域社会の三位一体で
国民の命と環境の
政策を築くことにしましたんですね、皆さんのお力で。いわゆる
食料安定供給、多面的機能の発揮、
農業の持続、
農村振興と、いずれも
農民が安心して村で持続して営農できるかどうか、これにかかっているわけであります。
しかし、
政府案のように受給額を
削減したり、暗に脱退者を促すような
政策支援の選別ととられるようなやり方では、新農基法の理念から考えてもこれは受け入れがたいのではないか。
そこで、私は、せっかく御努力いただいている皆さんにただ反対するだけではなく、二十一世紀の地球環境や地域社会、文化、伝統を未来に持続させ、日本国の均衡した発展、これは都市と地方のことを指しているわけでありますが、このために
政策提言をさせていただいて、終わりにしたいと思います。
三点あります。まず最初に、村と
農民を守り、他の
国民との均衡ある
年金に近づけるために、近づけるというのも遠慮がちなんですけれ
ども、これはひとしくと言いたいところでありますが、定住
年金を加算
年金として創設していただきたいと思います。
これは、地方分権によって地方自治体が
制度主体となって、対象者は
農業を引退する男女、
農業に従事した労働者で、就業年数に応じて支給するという定住
年金制度であります。
条件としては、
農業を営み、従事した者が、同じ行政区域内で将来とも定住する者に市町村が
年金を加算していく、これを国が支援する。EUでは、これを
実施して非常に高い効果を上げて、村意識と地域社会が成り立っているとも聞いています。
もう
一つは、これまでさまざまな問題を言っていますけれ
ども、私のところもそうでありますが、なぜ
農業者の若い
人たちの
加入が減っているかの中には、
農業者が
農業者年金をまずきちっと信頼をして、安心して
加入できる
制度内容はもちろんでありますが、やはり所得がしっかりしていて
保険料を支払っていけるかどうかというところが非常に問題でありまして、このためには、国際化に対応した
農民に対する直接所得補償を
農業基本法の三条、四条に基づいて確立していただきたい。現在
政府などが御検討いただいておりますが、これを急いでいただきたい。
最後ですが、前段に
憲法第十一条の基本的
人権に抵触するのではなどと大げさに申し上げましたが、現在の
農業者年金は、夫が死亡しても妻に遺族
年金が適用支給されていない
現状でございます。これが若干基本的
人権に触れるのではないかと私
どもは考えております。
他の
国民の
年金に比べて
農業者を軽視した
政策であり、一緒に働いて
食料を生産してきた家族に対して、
平成二年と
平成七年の衆参の附帯決議に基づいて遺族
年金の適用をしていただきたい、こういうふうに
最後に提案をさせていただいて、
年金制度がさらに充実したものに再構築されることを
お願い申し上げて、私の
意見表明とさせていただきます。
どうもありがとうございました。