○福井
参考人 本日は、
参考人としてお呼びいただきましてまことにありがとうございます。御紹介いただきました
社団法人日本てんかん協会の常務
理事、福井典子と申します。
道路交通法改正案の障害者関連欠格条項について意見を述べさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
てんかん協会は、一九七六年に
二つの組織が一緒になりまして設立をいたしました。以来、全国に支部がつくられております。支部といいましても、親
たちがボランティアでやったりしているわけですけれ
ども、その中で私
たちはてんかんの
社会ケアを行う我が国唯一の団体として、さまざまな活動に取り組んでいるところです。
さて、今回の
道路交通法改正に伴う欠格事項の見直しにつきましては、長年の私
たちの悲願といいますか、大変切実な要求にようやく光が当てられたという
思いでおります。国際障害者年を経て、政府が中央障害者施策推進協議会を設置し、一九九八年に障害者に係る欠格事項の見直しを発表したことが今日の成果を生んでいることと
思いますときに、この間の関係者の
皆さんの大きな御尽力に、まず心から感謝をしたいと
思います。
私
どもは、毎年国会への要請や請願運動を行っておりまして、この運転免許問題は、いわば重要な運動の柱でございます。全国の仲間がようやく光が見えてきたという感慨の中に今いますことを
思いますときに、きょう私は、ここに立たせていただいていることも本当に感慨を持って受けとめております。
道路交通法の施行が一九六〇年ですから、実に四十年もの長きにわたって、私
どもてんかんを持つ者はすべて一律に自動車運転免許を許さない、そういう法律がいわばまかり通ってきたということになります。そういうことを
思いますときに、今回の改正の意義と期待の大きさにははかり知れないものがあるということを、まず最初に申し上げておきたいというふうに思うわけでございます。
さて、ここで若干、私
どもてんかんの患者の置かれている現状について少しく述べさせていただきたいと
思いますが、今我が国では百万人の人々がてんかんに悩んでおります。私も実はその一人です。てんかんは大変古い
時代からの病気ですが、今や医学のすばらしい進歩によって、てんかんは治る
時代になってきております。ところが、周囲にその病名を隠すなど、いまだに無
理解からくる偏見の中に置かれているという現実があります。勢い、就職も結婚もままならず、在宅者が全国的に多いという実態がございます。
私も昨年から協会本部に座っておりますけれ
ども、協会本部には、昨日もそうだったのですけれ
ども、全国から連日多くの切実な相談の電話がかかってまいります。中でも、きょう問題にしていただきます自動車運転免許にかかわる訴えというのは非常に切実です。先日もお母さんが、うちの息子はもう運転免許が取れる時期になったのだけれ
ども、取れないということになると周りの人がどう思うだろうか、もう本当に息子と一緒に心中してしまいたいような
気持ちだと、電話の向こうで泣きながら訴えるのです。
私などは東京におりますから、全国的な状況を、そういうことを
思いますときに、本当に胸のつぶれる
思いがいたしました。特に地方などでは、運転できないと
生活できない、それから就職や
社会参加の機会を閉ざされる、そういうことにつながるわけで、その暮らしの大変さ、困難さはとても短い時間では言い切れない、つまり察するに余りあるところがあるということを申し上げておきたいと
思います。
障害の状況が法律に明記されることについて、ここで若干申し上げたいと思うのですが、昨年の十月に警察庁から、このことで私
どもそれから関係団体は意見聴取を受けました。そのことを皮切りに、御存じのとおり十二月には
道路交通法改正試案が発表され、全国的にいわば
国民の意見を求められたわけです。しかし、私
どもは、それを見まして実は大変びっくりしたわけでございます。
その中身というと、免許拒否の事由として、「てんかん、精神分裂病等にかかっている者」というふうに明記されているではありませんか。つまり、今まで規制されていた免許を受けることはできるんだけれ
ども、こういう病気、障害に限っては拒否することもできるというふうにはっきりと書かれているわけです。てんかんについては原則拒否であって、事実上絶対的欠格事項を残したものと私
たちは受けとめまして、このままでは絶対に認められないというような
思いがしたわけでございます。
そうして私
たちは、早速、きょう
委員の皆様のお手元にお配りいたしました一月十四日付の見解をもって警察庁とお話し合い、交渉をさせていただきました。その結果が二月になって新たな警察庁案として示されたわけです。きょうも課長おいでですけれ
ども、てんかんという
表現は消えましたけれ
ども、かわって、発作により
意識障害または運動障害をもたらす病気にかかっている者ということになりまして、拒否事項の障害列記は残されたということになりました。
それに対して私
どもは、全国から集まってきている
理事会でも大いに話し合いをいたしまして、お手元に配られております提出の資料、三月十一日付の見解がそれに対する意見でございます。きょうは時間がありませんので十分述べられませんが、ぜひそこをごらんいただきたいと
思います。
重点的に申しますと、最大の問題は、拒否事項の障害列挙なのです。これは、先ほど申し上げましたように、中央障害者施策推進協議会本部が障害者に係る欠格条項の見直しの指針として挙げております「障害者を表す規定から障害者を特定しない規定への改正」にいわば明らかに違反するばかりか、広く国際的非難も免れない、ちょっと
言葉はどうかと
思いますけれ
ども、
時代錯誤だと言わなければならない。私
どもは、障害列挙をする必要はないのではないかというふうにも考えております。最後に申し上げるようなことで、ぜひ改正の
法律案の修正をお願いしたいと思っております。
細かいことについて述べる時間もないのですが、政令で
基準を設けることについても、実は、警察庁との交渉の中で、
幾つかこういうことで道を開くのだよということをおっしゃっていただきましたので、一緒に述べさせていただきたいと
思います。
今回提出されております
法律案にかかわりまして、警察庁は、病名や処分の
基準は政令で決める、ガイドラインについては、私
どもが車の両輪のようにお世話になっております
日本てんかん学会などと協議して大いに
基準に反映させると言ってくだすっています。それは大変結構なんですけれ
ども、また、てんかんについては、拒否対象としない範囲を、例えば睡眠中にだけ発作が起きる者とか一定期間発作がない者ということになっていますが、この発作がない期間については、海外の
基準な
ども参考にすると、私
どもは二年以上発作がない者というふうにするのが妥当だと実は考えておりますので、意見として述べさせていただきたいと
思います。
また、治癒した者、治った者は免許拒否の対象とはしないということにしていただくようでございますが、私
どもの聞きます学界の定説というのは、このことでは実は定説は決めておりません。今後、判定
基準の決定や手続、障害を持った者の手続ですから、そういう手続等については、申すまでもなく、患者の人権を守る
立場からしっかりと私
どもも意見を述べさせていただく必要があるというふうに考えております。
明確な
基準を設けることの意義について、次に述べさせていただきたいと
思います。
自動車免許の問題では、協会としましては、これまでも交通安全の
立場にしっかり立って会員の
皆さんへのいわば啓蒙を図ってきたところですし、いろいろと提案もしてまいりました。今回のように明確な
基準をつくることによって交通の安全が保たれ、てんかんを持つ人の交通の事故率は実は少なくなるということは、諸外国の例でももう証明済みのところです。判定
基準をつくることは交通安全を高めることになると私
どもは
皆さんに訴えておりますし、そのようにしてまいりたいと思っております。
繰り返しになりますが、ここは誤解のないように重ねて申し上げたいのですが、私
どもは、てんかんであっても一律に運転免許を与えてくださいと言っているのではありません。医学の進歩によって、事実、服薬などで患者の七割から八割は発作がなくなっている人が多数いる、つまり治る病気になっているという現状を踏まえていただいて、てんかんのある
人たちの一人一人の状態、つまり病態をはっきりとさせた上で、運転に支障がないと
判断される人には資格を与えるべきだと言っているのです。このことは、後から御質問もあったら申し上げようと
思いますが、国際的な趨勢でもあるというふうに申し上げたいと
思います。
事故に対する責任は当然のことであり、
社会参加のバリアをつくるのではなく、市民として、
国民として、参加と責任が可能な条件をつくることが必要だというふうに思っております。
最後に、これからのことでちょっと申し上げておきたいのですが、私
どもは、
日本障害者協議会、JDを初め全家連ですとか障害五団体が、去る三月十三日、当時の森
内閣総理
大臣あてに、
道路交通法改正案の障害者関連欠格条項の修正に関する要望というのを実は提出をしてございます。
それはどういう中身かといいますと、改正の最大の問題点、さっき申しました障害列記の箇所を、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるものと修正してほしいというものです。どうか当
委員会の議員の皆様にも、この点で十分御
理解をいただきたいと思っております。
また、これは
委員会で決めていただくことですけれ
ども、当然のことながら、見直し規定ですとか附帯決議等も必要であると考えておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
御承知のとおり、障害者の欠格条項の見直しはまだ多くを残しております。今回のことを通して、これからは、私
ども障害者
自身が参画した法案づくりの仕組みをぜひつくっていかなければならないと痛感させられております。自立と
社会参加の道を閉ざされ、希望のない暮らしを余儀なくされている全国百万人の仲間とその家族のことを思うと、私
たちは、一層他団体と協力を深め、運動を広げていかなければならないと思っております。この運転免許問題をその新たな第一歩として、引き続き障害者の完全参加と平等を目指してまいります。どうかこれからもよろしくお願いいたします。時間制限の中で十分意を尽くせませんが、何とぞよろしくお願いをいたします。
以上でございます。大変ありがとうございました。