○太田(昭)
委員 きょうは
質問の時間をいただきましたが、実は、この
犯罪被害給付制度ということについては私は特別な
思いがありまして、きょうは
質問に立たせていただきました。
今から二十五年ほど前に、この
法律がまだないときに、私は公明
新聞の記者でありましたが、公明党がいわゆる
犯罪被害補償法の制定に懸命に動いていた時期がありまして、私はそれをお手伝いさせていただいたわけです。なかなか野党で
制度をつくるというのは難しかったんですが、五十五年にこれができまして、五十六年の一月一日からこの
制度が始まったということについては、大変感激でありました。
実は、この裏にはいろいろなことがありました。昭和四十一年に、神奈川県の市瀬朝一さんという方がいらっしゃって、二十六歳の一人息子がおりまして、十九歳の少年の通り魔殺人によって大事な息子さんを失うという
事件がありました。
私も当時からその話を聞いたわけですが、この市瀬さんの息子さんは長野県の方と結婚が決まっていたということがありまして、突然の死ということで、一日ベッドの中で格闘しながら命を失ったんですが、遺言がありまして、おやじ、おれのかたきを討ってくれということを言って亡くなったということです。
市瀬さんは鉄工所をやられていたんですが、それで一生懸命動くということになりまして、かたきを討てというのは相手を殺すんだということで、法廷に行きましてチャンスをうかがうというようなことがあったんです。しかし、それはこうした
制度をつくるという運動が大事だということで、
全国を駆けめぐったんですが、組織をするということは非常に難しくて、十年がかりでずっと動いておりました。
この
法律の契機となったのは、四十九年の三菱重工爆破
事件というのがありました。当時私もこのことに携わっておりましたものですから、窓ガラスが落ちて首をすぱっと切るというような非常に大変な
事件でありました。
市瀬さんは五十二年に亡くなりました。奥さんがそれを継いで一生懸命やられたわけですが、「償いなき死」というような読売の連載が始まりましたり、
最後は、ここに本がありますが、木下恵介監督の「息子よ」という、「衝動殺人 息子よ」ということで、木下恵介さんが映画をつくってくださったということで、私にとりましては大変感激でありました。これが五十四年でありまして、その後、新宿の例のバスの
事件がありまして、五十六年の一月一日からこの
法律が施行されました。
しかし、この
法律ができたときに非常に残念だなと思ったことがあります。それは、運動をつくって一生懸命やってくださった方には何にも報いることができなかった、遡及ができないということがありまして、私財をなげうってずっとつくってきてやっとでき上がったときに、この市瀬さんのところには感謝状が一枚だけで、あとは何もありませんでした。
しかし、一人の市民が十年余りの年月をかけて命と
財産をかけて立法化の実現を獲得したということで、公明党にとりましては、この市瀬さんと一緒にこの
法律をつくるということで、当時闘った方で、木下監督も亡くなったようでありますし、それから沖本さんという私たちの先輩が亡くなりましたし、服部信吾さんという伏木さんの秘書で闘った方も、
参議院議員でありましたけれ
ども亡くなったんですが、また市瀬さんはもちろん亡くなったわけですが、私はそんな
思いがあって、これが今回拡大をされるということについては、一言、これは
質問というか、感慨も含めてこの場に立たせていただきたいなというような
思いで、きょうはさせていただいたわけです。
私は、そういう
意味で、十分というわけではないけれ
ども、今回ちょうど二十年たちまして大きく前進をしたということは、公明党の先輩にとりましても、また身銭を切ってこの運動を展開したという一人の方の遺志というものがこうして二十一世紀の冒頭に広がって実現をしていくということについて、我々国
会議員として大変こたえることができたんではないのかな、このように思っております。
そこで、市瀬さんなんかも盛んに言っていたんですけれ
ども、やはりどうしても
加害者は守られるけれ
ども被害者がということがありました。当時も、いつ
裁判があるかわからない、情報すらわからないということをこの運動を展開した市瀬さん御
自身がおっしゃっていたわけですが、私は、昨年、
被害者保護二法というのができて、今回これができ上がりますと、
被害者の側に立った
法律が、
基本法という
考え方もあるでしょうが、かなり総合的に確立されつつあるという実感を持っております。
そこで、昨年の
質問ですが、
被害者保護二法の成立の際、附帯決議がされまして、
犯罪被害給付制度の拡充とか、民間の
被害者支援組織等への援助とか、相談・カウンセリング
体制の整備とかということがありました。案外附帯決議というのはそのまま放置されることが多いんですが、私は、先ほどから申し上げましたように、多くの方の悲願というようなことの延長線上で、ぜひとも附帯決議というものを大事にしながら取り組んでいくということが非常に大事だ、このように思っておりますので、ぜひとも附帯決議についてどのようになっているか、またどのようにされているかということについて
答弁を願いたい、このように
思います。