○鈴木(淑)
委員 今の
塩川大臣のお話を伺っていて、九七年から九八年のときの
予算委員会における橋本総理と私のやりとりを思い出した。あのときとそっくりですよ。二つ申し上げましょう。
一つは、
景気について他力本願。今おっしゃいましたでしょう、秋ごろになれば米国
景気も何か底を打って、そして輸出が伸び始めるかもしれないからと。もう僕は途端に思い出しましたよ、桜が咲くころには
景気が回復すると言ったとんでもない
大臣がいたということを。どんどん突っ込んでいる最中に。あの方は今も
大臣をやっていますな。
大臣、そういう他力本願の
経済見通しで政策を
考えてはいけません。もっと国の中を見てください。国の中を見れば、一—三は若干プラス成長かもしれませんよ、さっきのリサイクル法の
関係の買い急ぎがあったから。その反動も出て、四—六から私はマイナス成長はちょこちょこ出るというふうに思いますね。そうすれば、当然、雇用が減り、賃金が減りますから、
消費がまた本格的に落ちてくるんですよ。そっちの面から、悪循環で。そういうのを眺めれば、設備投資も落ちてくるんですよ。現に、設備投資の先行指標の機械受注はこの一—三月にマイナスになっていますよ。それから、きのう発表になった
財務省の法人
企業統計季報を見ると、設備投資の実績も多分一—三はマイナスですね、季節調整してみると。
そういう
状況で、国内の
景気の両輪ともいうべき個人
消費と設備投資が内在的な悪循環で落ちていくんですよ、秋に向かって。そんなときに他力本願で、桜の花が咲くころみたいなのと同じ論法で、米国
経済について何とかなるだろうと。米国
経済についてだって、専門家の多数意見は年内
景気後退ですよ。そんな秋からよくなるなんて言っているのはごく少数の意見であります。それが
一つ。
もう
一つ、ああ、あのころと同じことを言っているなと。特に当時の橋本総理が言っていたのとそっくり。もう今や
財政赤字削減は待ったなし、これが政治家の使命であります、今塩川さんそういうことをおっしゃった。
財政赤字削減が政治家の使命だというのはそのとおり。でも、それは、待ったなしで、
日本経済がひっくり返っちゃっても削減しろという
意味ではないんです。これは中期の目標です。五年でプライマリーバランスをとるとか、七年でプライマリーバランスをとるとかいう議論があるように、中期の目標なんです。そこへ行く過程で
財政赤字がどういうパスを通るか、どういう経路で行くか、こんなものは簡単に予測できるものじゃないんですよ。
経済学者だって簡単に予測できない。こんなものは固定しちゃいけないんです。
財政赤字なんというのは結果なんだから。
景気が回復してくるか突っ込んでいくかで、もうすぐ
財政赤字なんか変わっちゃうんですから。
ですから、私は
構造改革をやるななんて言っていない。むしろ、じゃんじゃんやれと。
大臣おっしゃったように、私は昔から規制緩和論者、規制撤廃論者。そして、元気な民間、小さな、効率的な
政府に向かえと昔から言っている。そのてこになるのが規制撤廃、規制緩和ですよ。それで
構造を変えていくんですよ。それをやめろなんて一言も言っていない。しかし、この
構造を変えていくというのは長期の計画ですよ。
財政の赤字を減らしていくというのも、もう長期ですよ。柳澤
大臣が担当しておられる
不良債権処理というのはいわば中期ですよ、三年からそこらの中期ですね。それと目先の
景気という短期がある。
この短期、中期、長期は、
塩川大臣、よく聞いてください、
塩川大臣がいつも言うのは、長期の
構造改革をしなければ
景気も持続しません、それから、中期の
不良債権処理をしなければ
景気も持続しません、それはそのとおりですよ。でも、因果
関係はその方向だけに走っているんじゃない。
景気が回復しなければ
構造改革は挫折するんですよ。なぜか。それは、
構造改革は痛みを伴うのに、その前から
景気が突っ込んで痛みが出ていたら、雇用面からもたない。
日本人の暮らし向きがもたない。
それから、柳澤
大臣御担当の
不良債権処理だって、
景気がおっこっていったら不良債権がふえるという因果
関係があるんだから、
景気を落としながら
不良債権処理をしていれば
景気は上がってくる、そんな論理はないのです。要するに、短期、中期、長期は双方向で同時決定的な
関係にあるのですよ。それを、長期の
構造改革と中期の
不良債権処理をやれば
景気が上がってくる、そればかり言っていたのは、これも橋本総理でしたね。そっくりですよ。
今、
塩川大臣は、あのころよりは
日本経済はしっかりしていると。これもおよそ根拠のない楽観論ですな。そんなことはわかりません。あのときは四%以上、直前まで
経済は成長していたのですよ。グラフを見てごらんなさい。九五年度だって、九六年度だって、きゅっと成長していますよ、ぐっとGDPは上がっていますよ。今みたいにふらふら一%成長できるかどうかの
状態じゃないのですから。見ようによっては今の方が危ないんですよ。あのときは、曲がりなりにも回復しているところに
財政赤字削減のデフレ
予算をぶつけたのです。それでも
経済は参ったといって下を向いちゃった。今度は上がっていないで、ふらふら一%前後の
状態ですよ。もう既に、ことしに入ったらマイナス成長に入っていますよ、四—六から、今年度は。そういう中でやるのですから、今の方が
経済がしっかりしている、何を根拠にそんなのんきなことを言っていますか。
しかも、さっきから伺っていると、ちょっとこれは揚げ足取りみたいに聞こえたらお許しいただきたいが、重厚長大型産業から変わるんだ、冗談じゃありませんよ。重厚長大型産業なんて
構造はもうとうに終わっています、
日本は。そんなものは高度成長時代の話です。一九七〇年代までの話です。それから最近ではいわゆる軽薄短小に変わったのですよ。エレクトロニクス産業が中心になった。だから、時計もメカからエレクトロニクスに変わったし、自動車も完全にエレクトロニクスで装備したし、いろいろなところでエレクトロニクスの産業は軽薄短小に変わったのです。その次に、今出てきているのが、情報化というもう
一つの変化が今兆しているのですね。
だけれ
ども、そういう変化が兆しているから今の方が
経済がしっかりしているなんて、どこで聞いてこられたか知りませんが、そういう楽観論は私は簡単に口にされない方がいいと思いますよ。ずっと
大臣をおやりになるとすれば、本当に秋から暮れにかけて
経済は深刻になりますよ。
そのときにどうするか。その深刻な
経済を発射台にして
平成十四年度の
予算を
大臣は組むのですから、そこで公約どおり、三十兆円以内の国債発行にとどめるのでしょう。できっこないと私は思いますよ。あるいは、やれば、それを見てさらに民間の経営者はぶったまげる。恐らく、国債発行は三十兆円以下におさめるが、あの手この手で事実上のやみの国の借り入れをこしらえるとか、そういうチーティングをしない限りは無理ですね。これは議事録にとどめていただいて、秋の国会で、あるいは暮れにどうなったか、
塩川大臣とまた討議をさせていただきたいというふうに思います。
あの九七年度、八年度も、私がこう言うと、人をおどかすなとやじがぼんぼん
予算委員会なんかでは飛びましたよ。だけれ
ども、私が言ったとおり、九七年の四月から
景気が突っ込んだのですから。それから、あのとき私は、
不良債権処理は終わったと言う橋本さんに対して、そんなことはありません、住専処理が去年終わったが、あれは氷山の一角です、不良債権のメーンのところは主な銀行のバランスシートの中に残っていますと言い続けたのですよ。最近になって、あのころは
国民がみんな間違えたのだから、おれも間違えて仕方がないという論法を使う人がいるけれ
ども、とんでもない。うそだと思ったら、議事録を持ってきてここで読み上げます、私はずっと警告していたのですから。九七年の
予算委員会あるいは大蔵
委員会で。
ですから、何か今の方があのころよりも
経済がしっかりしているとか、あるいはあのときはみんな間違えちゃったのだよ、あるいは他力本願で、
日本経済は秋からよくなるよ、そういう言い方は慎んでいただいた方がいいのじゃないかと思います。
質問しないでこっちばかりしゃべっていますが、
塩川大臣は相当お疲れだとお見受けいたしますし、それから、当初の予定は私は実は二十五分まででございました。そのために後の日程を組んでしまいました。
柳澤
大臣、本当に申しわけございません。柳澤
大臣にお越しいただいて私が申し上げたかったのは、今の
景気情勢にしっかり目配りをしてください、そうじゃないと新たな不良債権の発生で三年内にというのが苦しくなりますぞ、これを申し上げたかったものでお招きしたのですが、それに対する御
答弁をいただかないで
質問を打ち切ることをお許しいただきたいと思います。
それでは、当初の予定どおり、二十五分で
質問を終えます。