○鈴木(淑)
委員 ありがとうございました。
おっしゃいました
幾つかの
効果のうちで、私がそれはおっしゃるとおりだと思いますのは、主に二つございます。
一つは、人々の期待に対する働きかけです。
日本銀行の
金融緩和にかけるこのスタンスを明示するということによる、もう
金融はとことん緩めるところまで緩んだ、
金利も下がれるところまで下がったというそのことが、人々の期待に働きかけて何がしかのプラスの
効果を持つかな、ここは全くそう思います。
それからもう一点おっしゃるとおりだと思うのは、これはやはり長短両
金利が下がってくれば為替相場に対しては
円安の
効果を明らかに持つ、その面から輸出に多少プラスになってくる。それから、長短
金利が下がればその限りでは、他の
条件について一定なら、
株価水準はある幅、上方修正されるはずだ、そこからプラスの
資産効果が出てくるだろう。この点も私は賛成をいたします。
ただ、それをトータルしてどのくらい大きな影響があるのかなという話になりますと、やはり、
総裁もおっしゃいますように、構造的な
要因で
経済が停滞をしている、そのために流動性のわな、リクイディティートラップに陥っちゃっているような
状況では、
金融政策の緩和の
効果というのは知れたもんじゃないかというふうに思います。特に、当座預金に一兆円余計積んで五兆円にするということでありますが、しかし、この当座預金のコスト、値段は何ぼかといえば、ゼロ%なわけですよ。これはゼロ%じゃなきゃ、遊ばせておいちゃまずいな、何とか使わなきゃということで
銀行行動に働きかけることができますが、このお金は遊ばせておいたって損はない、オポチュニティーコストはゼロだ、こういうことになると、まさにこれは流動性のわなで、きかないだろうなというふうに思います。
そういうわけで、
総裁も私と同じ御意見のようでございますが、一生懸命、やれるだけのことはやったが、
効果は知れていると。
私、その中で一つ非常に注目しておりますのは、
操作目標ですね、オペレーティングベリアブル、
日本銀行は長いこと
コールレートに置いてきたわけです。海外ではもう、アメリカでは一九六〇年代に、
操作目標と中間目標を
金利指標から量的指標に切りかえるべきじゃないかという論争をずっとしていました。それで、ヨーロッパも巻き込んで、七〇年代、八〇年代、だんだん変わってきたわけです。
その中にあって、
日本銀行は、中間目標についてはマネーサプライ重視
政策というのを打ち出しましたが、手前にある
操作目標については、先日まで、
金利指標である
コールレートにずっと固執してきたわけです。先進国の中央
銀行の中でも、中間目標については量的指標に足並みをそろえておきながら、
操作目標だけは
金利指標と言って頑張ってきたのは
日本銀行だけだなと思います。その
日本銀行が日銀当座預金という量的指標に切りかえたということに私は非常に注目をしているわけでございます。
アメリカでさんざん
議論したときも、
操作目標としての量的指標は何だろう。それまでは、やはりフェデラルファンドレートないしはその背後にあるフリーリザーブを見ていたわけです。エクセスリザーブから借り入れを引いたところを見ていたんですね。これは需給指標ですから、
金利指標と同じです。それが、それじゃだめだということになって、アンボロードリザーブ、リザーブ全体から借り入れを引いたもの、あるいは、もう借り入れなんか引かないで、トータルリザーブ。このトータルリザーブを見ましょうというのがだんだんアメリカの主流になってきていますが、今度の
日本銀行の当座預金を見ましょうというのは極めてこの思想に近い。トータルリザーブを見ましょう。ただし、キャッシュ・イン・ボールトといいますか、
金融機関が手元の金庫に持っている現金もリザーブに入っちゃうんですが、これはよくわからないから抜いちゃって、
日本銀行からよく見える当座預金のところだけ見る。
こういう意味で、私は、ついに
日本銀行もトータルリザーブに近い量的指標をオペレーティングベリアブルに採用したかと。この歴史的な意義は非常に大きいと思うんですが、発表文を見ますと、これも含めて、
消費者物価の生鮮食品を除いた部分が前年比で安定的にゼロを上回るようになるまでとなっております。
そこでお伺いいたします。私は、この点については、
消費者物価の上昇率がゼロ%を上回るまでという
条件をつける意味がないのじゃないか。それよりも、やはり、将来の
予想インフレ率がボラタイルで見当がつかないときには
金利指標よりも量的指標の方がすぐれているという、この何十年来の世界の先進中央
銀行の標準的な思想を
日本銀行が受け入れたという解釈をとった方が、私はわかりやすいですね。どういうおつもりですか、
総裁。ほかの、今度おとりになった一兆円余計に積むとか、そのためには
長期国債の買いオペをもう少しふやすとか、その結果としてゼロ
金利になるでしょうとか、その辺のことは
消費者物価がゼロ%を上回ったらやめるというのはわかるけれども、
操作目標を
コールレートじゃなくて当座預金に置くという、これもやはりやめちゃうんですか。もとの
金利指標に戻っちゃうんですか。それとも、ここのところは続けていこうという考えなんでしょうか。
総裁じゃなくて担当の
理事でも。副
総裁、どうぞお答えください。