○鈴木(淑)
委員 今の御
答弁を伺って私はがっかりいたしましたし、多分
市場関係者が聞いたらやはりがっかりすると思います。普通のことを普通にやっていればそのうちよくなると言っているうちに、今危機的な
状況になっているのですよ。それに対しての緊急
対策ですよ。そういうときに、普通のことを普通にやっていればそのうちよくなるなんて、そんなのんきなことを言っていていいはずがないのですよ。
要するに、今の不況の本質は、よく言われるようにバランスシート不況ですね。バランスシートが傷んじゃった。バブルの崩壊で資産側の地価も株価も下がって、資産がぐっと圧縮された。でも、借金は圧縮されないで残っている。それで債務超過になった。このバランスシートを直すのに、企業は四苦八苦しているわけですよね。それが現状でしょう。
だから、もうかればそのうち消費に回ってくるでしょう、十—十二はだめだったが一—三に回ってくるでしょうなんてのんきなことを言っていますが、そんな短期の話じゃないですよ、今の企業のリストラは。このバランスシートを直そうという努力、債務超過になっているのですから、もうかればやれやれと言って、まず借金返済をするわけですよ、もうかればやれやれと言って値下がりしてしまった不動産の損切り売りをしていくわけですよ、もうかればやれやれと言って、
不良債権の償却をするわけですよ。十—十二にできなかったことが一—三にできるなんて冗談じゃない。一—三から雇用をふやしたり、賃金を上げたりなんかできませんよ。
だから、企業が必死になってリストラ、傷んだバランスシートを直そうとしている努力、これは俗に言う合成の誤謬を生んでいるのです。企業の努力としてはこれはいいのですよ。企業経営の努力としてはいいのだが、それを合成すると、マクロ経済的には
デフレ的になってしまうわけですね。もうかっているのに借金返済とか損切り売りとか、そういうふうに後ろ向きにしか金を使ってくれない。これを御承知のように合成の誤謬と言うわけですね。企業経営としては正しい、ミクロとしては正しいけれ
ども、それを合成してしまうとマクロ経済としては突っ込んでいってしまうわけですな。なかなか消費が出ない。
そうしたら、
財政政策の役割というのは、企業が傷んだバランスシートを一生懸命直している間は、
財政政策でマクロ経済を支えていなきゃいけないのですよ。それが消費に対して直接の手を打つ、さっきから僕は、一番わかりやすいのは所得減税だと思いますけれ
ども、社会保険料の引き上げをおやめなさいというのだってこれは随分違う、そういうことを申し上げているわけです。
だから、
宮澤大臣、この危機に直面した
財務大臣が、十—十二はだめだったけれ
ども一—三になったらそのうち企業のもうけが家計に回っていって消費が出るだろう、そんなのんきなことを言っているときじゃありませんよ。企業が必死になってリストラをやっている間は、
財政政策の責任で経済を支えていなきゃいけない。おっしゃるとおり、これは頑張っていれば、長くて三年、早くて二年、少しはよくなってくるでしょう。だけれ
ども、十—十二はだめだったが一—三によくなる、そんな短期の調整じゃないですよ、バランスシートを直す調整は。そこを間違えないでいただきたいと思います。
柳澤大臣、このコンテクストの中でお
伺いいたしますが、株価
対策が出ておりますね。私は、株価
対策の中の税制改革のところはうなずけるものがございます。
前回、私、この
委員会で三つ申し上げました。配当所得と利子所得の間にアンバランスがある、これをせめて利子所得並みにしなさいよ。二番目に、配当二重課税がある。これはヨーロッパのように一気にインピュテーションしなくてもいいが、少しは手を打って、利子課税よりむしろ配当課税の方を軽くしなきゃ配当二重課税に対する
対策にならぬでしょうということ。それから、譲渡益課税について、ただ延期するなんというのじゃなくて将来展望を出してくれ。それは私は申告の分離課税だと思うし、その
税率はほかの利子課税と同じような二割、そういうふうにバランスをとれ。三つ申し上げたのですね。大体そういう
方向を向いていますし、これから御検討されるわけですから、ぜひ私のこの三つを入れていただきたいと思っております。
そこはいいのですが、もう一つ、買い上げ機構をつくるような話、その他ありますね。これはもう
委員の皆さんよく御存じだと思いますが、株価
対策というのは、株の需給に手を突っ込んだら、買い上げというのはまさにそうでしょう、株の需給に手を突っ込んだら、そのときは株価がちょっと動きますよ、
効果が出ますよ。でもこれは根本的な
対策にならないのですよ。
というのは、よく言われるように、株価というのは最終的には企業の予想収益の割引現在価値なんですから、企業の予想収益をよくするような手を打たなきゃ本当の株価
対策にはならないんですよね。企業の予想収益を好転させるということは、さっきから私がるる申し上げているマクロ経済
政策のところなんですよ。マクロ経済
政策のところに、特に消費にウエートを置いた手をお打ちになれば、これこそ一番
効果のある株価
対策になると私は思います。それがぽんと抜けている。だから、これじゃ株価だって上がらない。
柳澤大臣、税制のところは
柳澤大臣と私と
意見がかなり一致しました。そこはよろしゅうございますが、それだけじゃ株価
対策は無理。需給に直接手を突っ込んでかき回すようなことは、かえって
市場がゆがんで国際的にも評価を落とします。需給に手を突っ込む
対策じゃなくて、企業の予想収益率が好転する
対策を打たなきゃいけない。その点どうお
考えでしょうか。