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金子(哲)
委員 社会民主党・市民連合の
金子です。先日に引き続きまして、この問題について質問をさせていただきたいと思います。
先ほど来ありますように、これはお互いがよく認めているところで、今の
雇用状況が大変厳しいというのは、何とかしなければならない
状況を通り越して大変な
状況にあるということは、お互いが認識していると思います。
けさの新聞のニュースを見ましても、大変びっくりするわけですけれども、「希望退職、初日で終了」。ダイエーがきのう一千名の希望退職を募集したら、一週間の予定で募集をしたけれども、たった一日でこの千人の予定募集に達したということが言われております。
対象者は四十歳から五十九歳までの正
職員で、五千五百名の対象の中で、これまで、こういうことをやるよということが一カ月前に周知されていたとはいえ、わずか一日で千名もの人がやめていくという意思表示をする。そして、これと同じようなことが、実は私の出身であります広島でも、二月にマツダが千八百名の希望退職を募集したところ、これも一日で、夕方になる前にこの希望退職が達したということが言われておりまして、私は愕然とする思いを一方で持つわけですね。
もちろん希望退職ということですから、それぞれの
皆さんがそれぞれの事情の中でこの希望退職に応じられたということですけれども、働く人が企業に対して魅力を失ったという
状況も一方ではあるのではないか。
そして、場合によれば、例えばダイエーでいえばこの四十歳から五十九歳の年齢の方で、今の
雇用状況の中でいえば、大変厳しい
雇用状況の中で、
高齢者の
皆さんの
雇用が厳しいという中で退職を希望されるということは、逆に言うと、自分にある程度の能力を持っているという自信もあって、早く見切りをつけて新しいところに行った方がいいんではないかというようなことまで考えられるということは、そこまで今の
日本の
雇用状況、
労働情勢というものが落ち込んでいるというか、企業そのものの活力がもう失われているというふうな見方をせざるを得ないような
状況にあるんではないかということで、最初に言いましたように、要は、昨日のニュースを見まして、二月、三月と、いわばかつての大手の企業と言われるところでこのような事態が相次いでいるということに対して、非常に深刻なものを感じております。
この法案の趣旨の中にも盛られておりますように、職業生活の全期間を通じて、その職業の安定が図られるように配慮されるものとしなければならないということがこの法案の一番の趣旨だということ、基本的な理念ということになっておりますけれども、せっかく法律としてはそういう基本理念を立ててみても、実際の
社会情勢の中では、その基本理念にかかわる仕組みそのものが崩れていく
状況があるというふうに思います。そういう意味では、本当に厳しい認識を持って今の
状況というものに対処しなければならないのではないかということをまず思っております。
そして同時に、最近子供の非行の問題なども大きくこの国会でも論議になりました。私は、最近の
労働情勢を考えてみますと、お父さん、お母さんが毎日夜遅くまで、先般の時短法の中でも討論がありましたように、長時間の時間外
労働をし、またサービス残業まで行って一生懸命に働いている。休日も子供たちと一緒に遊べる時間もないほど懸命に働いている人が、いつの間にか企業のリストラという名のもとに職場を奪われている。そして、子供にとってみると、一緒に遊ぶ時間もなかったお父さんやお母さんが長くいてくれるということは、最初のうちはそれはうれしいことに思えるかもわかりませんけれども、そのことが家庭や子供たちにとって、子供の将来にとって、本当にまじめに一生懸命働いてもこの世の中が支えてくれるんだろうかという思いを子供たちに与えるんではないか。
その意味で、私は常々、このリストラの問題、失業の問題というのは、そういう思いでもしっかりと見ていかなければならないということを考えております。それはやはり、一生懸命に働いている人たちが本当に
社会の主人公として、いわば安心して働くことのできるような
社会というものこそ政治がつくらなければいけない。そのことに本当に今こそもっと力を入れていかなければならないと思います。
私は、先般の質問でも、あえてこの法律の際に、リストラを誘発することにならないのであろうかということを申し上げました。
最近、企業が大変な
状況の中で、企業再生法でありますとか、商法の
改正でありますとか、いわば企業活力を高めていくための措置としてさまざまな法案がつくられておりますけれども、残念ながら一方、現場においては、その本来の趣旨と離れた中で、実際にはそのことがてこにされて、先ほどもありましたように、いわばリストラの口実にまでなりかねないような、企業の再建のためには
労働者が
一定に犠牲になってもしようがないんだというようなことが言われております。
例えばこの商法
改正の問題にしても、もう昨年あたりから民間企業の中では先取りする形でこういうことが行われておりまして、私のおります広島でも、昨年の
労働委員会でも
指摘をしましたけれども、民間企業で百三十名の工場が新会社に経営譲渡、分割するというような
状況の中で、実際にはその新しい会社で再
雇用される人は七十名しかいない。しかも、賃金は一時金を含めて六八%にまで賃下げをされる。本来あってはならないことが、実際に現場では起きている。
そして今、私鉄の中で、同じ広島にあります私鉄の会社では、昨年の春闘時に同じようなことで企業分割が提案されて、約百名の会社ですけれども、この会社の中で一たん全員解雇をして、そして新たに
雇用する。しかも、企業が大変だという
状況の中で、今までの退職者に対しても退職金は分割で支払われておりますが、全員解雇をして退職金を払うといっても、そのとき退職金も払えない、これも分割。そして、新会社になった際には、先ほど言いましたように、新規
雇用だからということで賃金も新採用の賃金からスタートをしていく。こういう提案がされて、今なお労使紛争が続いておりまして、これは地労委にもあっせんが出されております。
つまり、そのように、こういう事例を見てみても、実際には提案をされた側の、本来の趣旨と違うことで企業側が、いわばうまく使うといいますか、それを逆手にしたような形で
労働者の
労働条件の切り下げや首切りというものが進んでいるということを私はつぶさに見、またそういう相談を受けている中で、この今回の法律も、本当にこれを使ってリストラが促進されるようなことがあっては、私もお互いに審議している
委員の一人として、どうしてもこれをそんな法案にしてはならない、このように思っているわけであります。
いわば、企業の生き残りのためには今何やってもいいというような風潮が横行している時期だけに、このことを改めて申し上げたいというふうに思います。
そうした意味では、この法案の最も心配なところは、何度も申し上げますけれども、このことによってリストラが促進されるようなことが決してあってはならない、そのように思っておりますので、まず、今回の法案の中で、先般も同じような質問をさせていただいておりますけれども、改めて、本法案に特に盛られております再
就職援助
計画制度が安易な解雇の促進にならないように政府が十分な措置をとるべきだというふうに考えておりますが、その点についての御見解をお聞きをしたいと思います。