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坂口国務大臣 厚生労働関係のことだけを聞かれるのかと思ってここに座りますと、
経済のことまで御
質問になられるわけでありまして、私も面食らうわけでございます。
とにかく、現在のこの
状況というのは、
一つは、やはりグローバリゼーション、グローバル化によって
日本は大きな変化を受けている。そしてもう
一つは、また高齢化ということによって大きな
影響を受けている。
日本の
経済、非常に大きな
影響を受けておりますが、これは中長期的に見ましても、この二つのことが大変大きな
影響を与えていると私は
考えております。
その中で、国際的な問題の中で、
日本はこれから雇用の問題を一体どうしていくのかということを
考えましたときにも、この国際化ということを抜きにして語ることはできません。それは、諸外国、とりわけ先進国も、この国際化という中でどういう
経済を行い、そして
産業政策を行っていったらいいかということで非常に諸外国も苦しんできたわけでございます。
ちょうど六年前になりますけれども、あるいはもう七年ですかね、前回私が
労働大臣をやらせていただきましたときに、第一回の雇用サミットがアメリカのデトロイトでございました。そのときに、クリントンが
出席をいたしまして、そして、そのときにすぐ、
日本に聞きたいというので
質問をいたしました。答えるのは私しかいなかったものですから私が答えざるを得なかったわけでございますが、そのときに彼が聞きましたのは、
日本はアメリカ方式でいくのですか、それともヨーロッパ方式でいくのですかということでございました。それはどういうことかといいますと、アメリカのように、賃金を引き下げて、そして極力
仕事の幅を広げて、いわゆる
産業の幅を広げて、そしてそのかわりに失業率を下げていく、しかし、賃金はトータルで見ると若干下がる。そういうアメリカの方式をとるのですか、それとも、ヨーロッパのように、賃金は高いままで、これはおろすことができない、賃金をおろすことができなければ、そこでそれでは何が起こるかといえば、そこに高失業率を許容せざるを得ない、いわゆる賃金はおろさずにそして付加価値の高いものだけをつくるという選択をする、そのかわりに失業率は高くなる。そのフランスやドイツの行き方と、アメリカの行き方のどちらを選ぶのですかというのが、クリントンさんの私に対する
質問でございました。
私は、これは
経済、どういうふうな運営をしていくかということに非常に大きな
影響を与える問題だというふうにそのときに思って聞いたわけであります。しかし、私はそのときに、賃金を下げることも失業率が高まることも両方とも困るものでございますから、
日本は第三の道を選びます、いずれも選びません、こう答えたわけでございます。そういたしましたら、そのときに、ヨーロッパの皆さんやあるいはアメリカの皆さんは、そんな手品のようなまねはできない、
日本は数年後いずれかの道を選ばなければならなくなるであろうということを申しました。
労働界の専門家の
皆さん方がそこにはお集まりでございました。
今思いますと、
日本の
経済、先日デフレかどうかというような
お話もあったわけでございますけれども、デフレスパイラルに陥っているわけではありませんけれども、デフレ傾向にあることは事実でございますし、私は、
日本の現在の
状況を見ましたときに、この国際的な流れの中でどこに
日本が定着をするのかということと大きなかかわりがあると思っております。そうした
意味で、
日本は、アメリカ型でもないしヨーロッパ型でもありませんが、そういう方向に誘導しておるわけではありませんけれども、何となくその中間に着陸しかけているような気がしてなりません。
すなわち、現在の
経済状況の中で見ますと、正規の
労働者よりもパートタイムの
人たちが非常にふえてきているという、このことは、いわゆる
産業界が、やはり賃金というものをどうしても抑えていかなければならないというようなことから、パートの
人たちをふやさざるを得ないという
状況になってきている、そして全体としての賃金の抑制をしようということを、好むと好まざるとにかかわらずそういう方向に来ているのではないかということを危惧いたしております。
そして、一方において、失業率が四%後半でずっと続いておりますこの
状況を見ましたときに、全体のそうした
日本の流れが、
世界の中における
日本の流れがやはりこの失業率にも
影響を与えている。ヨーロッパほど高くはありませんけれども、しかし、四%後半というと、これはかなりの失業率でございます。だから、何となくその中間に流れているような気がしてなりません。
ここをどう克服していくかということがこれから最大の課題であり、
日本の一番悩まなければならないところではないかというふうに思っております。賃金を上げるということを行えば、
日本の
企業はさらに外国にその拠点を移す可能性もあるわけでありまして、グローバル化したわけでありますから、今までのように
日本の国の中でというわけにはいかないのではないかというふうに思います。
そうしたときに、これからその賃金の問題をどうしていくか、それからきょうのこの法案にもかかわることでございますが、
有給休暇等の問題もどうしていくかといった問題も絡んでくる問題ではないかというふうに思っておるわけでございまして、そうした中で、私は、
日本の
経済の今後というものをやはり
考えていかなきゃならない。この一カ月か二カ月の動きでどうするかということではなくて、中長期的に見ました場合に、そうした中で、やはり
日本の
経済、とりわけこれからの
産業界のことも含めて
考えていかなければならないのではないかというのが私の思いでございます。