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斉藤政府参考人 御説明申し上げます。
まず最初に、現在の
ドメイン名に関する仲裁の状況でございますが、昨年の十月からサービスを開始いたしまして、現在までに既に十二件が申し立てられております。そのうち、
移転の裁定が出されたものが六件、取り下げられたもの、これは事実上和解したということでございまして、それが三件、それから係属中が三件ということでございます。
その具体的な中身といたしましては、特にどういう場合に
移転の裁定が出るかということでございますが、例えば、有名な検索エンジンの
商標と同じものを使っていた
ケースがございます。これは、その検索エンジンだと思って開きますと、アダルト画像を自動的に開いてしまう、しかもそれが有料になってしまうということで、そういうサイトに自動的に転送されるようなことだけをしておったわけでございまして、そこで、検索エンジンの
商標と
類似であるということで申し立てをしたところ、それは
移転をしなさいという裁定が下されております。
そのほかも、例えば、全然使っていないのに、あるいは、自分の、
登録者としての法人の名称等と全く無
関係にかかわらず、有名な
企業の、あるいは有名な
商標と同じものをとっておりまして、それで商売の邪魔をするとか、あるいは無理やり一緒に商売をしましょうというような持ちかけをしたという場合につきましても、
ドメイン名の
移転の裁定というものが下されております。
ただ、これらはいずれも、もとの
登録者側が納得いたしておりませんで、
裁判に訴えて、現在係争中ということでございます。
次に、
ドメイン名が具体的に有料で転売されているものがどうであるかということでございますが、
JPNICに調べてもらいました。昨年の十月以降ということで調べてみますと、約五百件弱の
移転が行われております。これは、有料、無料を問わずということでございます。ただ、いずれにしましても、これらは円満に
移転が行われた
ケースというふうに言えようかと思います。
それでは次に、不当な価格で転売を目的として強要されるというような
トラブルの事例でございますが、
日本国内のジェーピードメインに関しましては、先ほど申し上げました仲裁センターの裁定のうち、一件が不当な価格で転売を目的としていたので、それに対して
苦情を申し立てて
移転が認められた
ケースであります。
このほかにも、ジェーピードメイン以外、先行しております一般ドメインに関しましては、
日本企業が直接間接に不当な買い取りを要求されている
ケースというのが非常にふえてきて、相当数に上っておるわけでございます。
そのほかにも、
インターネットのサービス
プロバイダーのいわゆるネットオークションの場にたくさんの
ドメイン名が載っていて、そこに価格が設定されている、あるいは入札で高い値段をつけた人に売りますというようなことが画面上にもう出てきております。
また、
先生御
指摘いただきました日本語ドメインというものが最近入りました。先ほどちょっと一般ドメインの
ケースが先行していると申し上げましたのは、ローマ字の世界でございましたのでそういうアメリカとかで起こっていたわけですが、今後、日本語ドメインになりますと、
日本国内でも、
有名企業の名称そのものが
ドメイン名として使われる、しかも、これまでわかっているところでは、かなり本来の
企業以外の人がとっているということもございますので、今後、その点につきましては、かなり
トラブルが出てくるのではないかということを懸念いたしておるわけでございます。
ただ、その際に、幾らなら不当かということにつきまして、実は、
ドメイン名をとること自身はほとんどコストはかかりませんし、大変安い価格でとれるわけでございます。手数料はほんのわずかです。
したがって、ではそれを超えたら不当かということになりますと、これは先行事例なんかでも、それを使って自分でいろいろな商売をしていて、自分で価値をつけているという場合に、それを売ってくださいと言えば、それは当然ある程度の価値が出るということでございますので、これはまさに個別の
裁判事例におきまして、社会通念上不当と思われるような価格を持ちかけて、例えばそれをのまないということであれば嫌がらせをする等によりまして起こってくるということではないかと思っております。
それから、ADR、仲裁のための民間のシステムがあるのに、なぜ
法律を今回
改正するのかという御
指摘でございますが、おっしゃるとおりでございまして、民間によるADRというのは、今のセンターでいいますと二カ月で処理するということで、大変迅速です。それからコストもかからないということで、大変すぐれた
制度でございます。
ただ一方で、先ほどちょっと申し上げましたように、
紛争の被害者側は、なかなかADRで納得しないという場合がございます。そういう場合には、日本の憲法で保障された
裁判を受ける権利というのを奪うわけにはまいりませんので、
裁判所に結局
紛争が持ち込まれるということでございます。したがいまして、ADRのみでは最終的な
紛争の
解決に至るとは限らないということが言えようかと思います。
そこで、今回、
ドメイン名紛争が
裁判に提起された場合につきましてもルールを整備するということで、
裁判とADRが一体となって、被害者の迅速かつ適切な
救済がなされるということを目的といたしております。
もちろん、
先生何度か御
指摘いただきました、
ドメイン名に関しましては、先にとる、要するに、
消費者のニーズに合わせまして自由に取得する、それからそれを自由に利用できるという
利便性があるということで伸びてきたわけでございます。ただ一方で、その
利便性の裏返しとしまして、先に
登録した人が排他的に権利を持ってしまう、あるいは、実態としまして
商標と同様の経済的、社会的価値を持っているということから、悪用する人たちが出てくるわけでございまして、これらの
商標権者の事後的
救済をしないと、結果的には健全な
ITの、
インターネットの社会の発展というものを害することにもなりかねないわけでございます。
もちろん、このようなルールにつきまして、先に
登録した人の
利益を害するという面があるのは御
指摘のとおりでございます。したがいまして、社会的に見ても公平になるよう、
ドメイン名登録者と
商標権者との
利益のバランスをどう図るかということで、我々といたしましては、この
法律におきまして、図利加害目的という、積極的に
他人を害する等の社会的に許されない場合にのみ、差しとめ、
損害賠償を認めるということにいたしたわけでございます。
バランスにつきましては、いろいろ
外国の例など、ICANNにおける例などでも、先にとった人につきまして、正当な
利益を有すると認められる事由、具体的にいろいろ書いてございますが、善意によって先に使っていた場合、あるいは
登録者がその名称で一般的に知られていたとか、それから非商業的で公正な
使用であるという場合につきましては、それを使っていても、不正の
利益を得る目的または
他人に
損害を与える目的とは認めないというふうな
判例といいますか、仲裁例の積み上げがなされておるわけでございまして、このようなものも参考にしながら、社会的に見て認められないものについては対処するものの、
商標をとった大
企業あるいは
商標権者に対して過度に
保護が偏らないように配慮していきたいと考えておるわけでございます。