○岡部
参考人 ただいま御紹介いただきました、
石油連盟会長、コスモ
石油の岡部でございます。
本日は、
法案審議に際しまして、
参考人という
立場で
石油業界の
立場から
意見を述べさせていただくことに関して、非常に感謝を申し上げておるところでございます。
まず、今回の法律
改正に関してでございますけれども、全般論といたしまして、
石油業界といたしましては、
規制緩和、
自由化の大きな流れの中で避けがたいものと受けとめておるところでございます。
既に先行いたしまして行政指導が段階的に撤廃され、そして、後でちょっと述べます一部法律の廃止、さらには運用面での弾力化を通じまして、実質的には、現在、業法廃止の
方向で動いておるところでございます。今回それに加えまして、当然のことながら、
石油は
経済の血液である、社会の燃料であるという視点に立っての
石油製品の戦略的性格というものも踏まえまして、緊急時の
対応としての法整備、公団法あるいは備蓄法の
改正、充実、そういう問題として受けとめておるところでございます。
実は、先ほど言いましたように、今回業法が廃止になるわけでございますが、我々としては、何らかの形で、内容は変わっても、業法という形があることがやはり
石油業界の、
エネルギーの大宗をなす我々としてのステータスのような感じがいたすわけでございまして、業法の廃止は寂しい気はいたします。
基本的には、この業法というものは、昭和三十七年に、戦後の配給制から、貿易
自由化、為替
自由化という流れを踏まえまして、やはり
石油が特性のある産業であるという視点にかんがみて、
石油の国内
市場の一定割合を国の支配下に置く、そして
石油の低廉かつ
安定供給をすることが国の責務である、そういう視点で立法措置をとることによって、国民
経済の向上、国民
経済の
発展、国民生活の向上を目指す、そういうことでできた法律でございます。
その中身の主体は、
供給計画を策定する、
石油精製業及び設備の許可制、標準
価格の設定、生産、
輸入計画の届け出及びその
輸入に関しての届け出による許可ということでスタートしたわけでございます。
基本的な問題として、消費地
精製、現在では方式と呼んでおりますけれども、当時は
一つの主義として、いわゆる消費地に非常に近いところまで
原油を運んできて、そこでタンクに入れながら効率的に生産するということが、
エネルギーの
効率性、
安定性からも
石油の利便性からもベストである、そういう考え方に立ちまして消費地
精製主義というものを
基本としたために、結果として、製品
輸入に関しては事実上認められなかったわけでございます。
その後、リファイナリーが
中東にできまして、
欧米からの
一つのプレッシャーがございまして、
日本も応分の
輸入を促進すべし、そういうことでございまして、特定
石油製品
輸入暫定措置法というものが、昭和六十年、一九八五年にむしろ
輸入の促進という形でできたわけでございますけれども、当時から結果として業界だけが
輸入するという形で十年間の歩みがあった。その後、完全な本格
自由化の中で、促進としてスタートしたこの法律も、十年の流れの中ではむしろ全面的な
輸入門戸開放ということからは障壁であるということで、くしくも皮肉な形でこれが葬り去られた、そういうことによって今業界は本格的な
自由化になっておるわけでございます。
したがいまして、先ほども申し上げましたように、業法上の
供給計画を除いた運用面において実質的には既に弾力化しておるということ、今回、備蓄法を
改正するということ、公団法も充実するということ、そういうことを踏まえまして、我々としては、
市場原理に基づいた業界運営というものを粛々と、厳粛に、冷厳に受けとめて、業界の強靱な体力強化に努めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
もちろん、
石油ショックのときに、緊急二法ということで国民生活安定緊急措置法と
石油需給適正化法という
二つの緊急時
対応としての法律もございますので、その運用と、今回の公団法、備蓄法の
改正によって、実質的には
安定供給も踏まえた
石油の運営というものがなされていくということにおいて、我々としてはこの法律の
改正については厳粛に受けとめておるところでございます。
続いて、せっかくでございますので、ここで少し
石油の現状ないしは業界が当面する重要課題
二つについて簡単に申し上げたいと思います。
一つは、
石油というものは連産品であるということ。
石油ショックのときに
原油が四倍になりました。そのときに、
原油コストをどの製品にかけるかについては、連産品でございますから、
原油からパラレルにあらゆる製品が出てくるということではガソリンにかけようが何にかけようが構わないということで、そこで、行政の
一つの方針として、ガソリンが当時はぜいたく品であるということで、これにかけることによって、ガソリン独歩高という、国際的に非常にひずんだ、
日本特有の
価格体系ができて今日まで及んできたということでございます。現状では、特石法廃止後、
海外からいろいろな品物が入ってくることも含めて、国際的な
価格ということで、ガソリンも含めてフラットな
価格体系の中で、我々は、
効率化、
市場形成に努めておるところでございます。
続きまして、これは中国でも、中国の
新聞で私は見たこともありますけれども、
基本的にやはりこれは、一たん事あれば
石油は戦略商品に変わるということについて、各国各様ではございますけれども、十分な認識の中でこの問題に
対応しておるということでございます。
ただ、当時、
石油ショックのときは
中東を一括して火薬庫と考えておった
状況からは、現状
中東和平の問題からくる分はございますけれども、それぞれの国々が特性を持った
エネルギー政策というものを
中東側としても考えておりますので、それに
対応した
資源外交というものが必要であるということ、戦略商品としての
石油ショックの経験はございますけれども、現状
中東を
一つの火薬庫と考えるのではない
対応が
資源外交として必要である、そういうことも考えておるところでございます。
それから、最近のOPECの再台頭と
メジャーの戦略という問題について私見を交えて簡単に申し上げたいと思います。
一つは、OPECの再台頭ということでございます。
あのベネズエラの暴れん坊が加わり、サウジとイランという巨大国が手を結び、十ドル割れによって財政的に危機に瀕した悪夢と、先物
市場というものが急激に動いていく怖さと、それから、ある程度団結をしてやれば
市場に対するインパクトが与えられるという彼らの経験則、こういう
三つの問題が加わりまして、彼らは恐らくこれから増減産を繰り返しながら需給
対応をしていくのではないか、そういう
意味において、現状、一呼吸置いておる、小康状態ではございますけれども、なかなか読めない
状況にございます。
OPECについてはそういうことでございますが、最近の
メジャーの戦略ということとの関係がございます。
レイモンドというエクソンの会長が言っておるわけでございます。我々は巨象のような巨大な
企業規模だけれども、現在は、
世界における
原油の八〇%以上を国が占めておる、したがって、中国が、インドが、国ごと、
石油を
開発という形でとりに行く
状況の中で、
メジャーとしても、エクソン・モービルの合併は、二千五百カ所のSSを、
下流における問題を犠牲にしてまで川上の戦略として合併しておるわけでございます。また、BPアモコにアルコが加わることによって、これから
天然ガスの時代であるということで、ガスに対する戦略ということも含めて、アルコを取り込んでBPアモコアルコグループというものができた。そういうこともございまして、
メジャーとしては大きいけれども、
中東の最近のOPECの大きさというものを考えれば我々は象に対するネズミかもしれない、そんなことも言っておるわけでございます。
そういったOPECの再台頭と、それに関連した
メジャーの戦略というものを私はそういうふうに見ておるところでございます。
日本としてのこれからの
セキュリティーの問題でございますけれども、もちろん、緊急二法、備蓄法の
改正に加えまして、公団法の
改正による既存油田への
対応もございます。ただ、残念ながら、現在、
世界を見ましたときに、効率的な油田がさらに挙がってくるとは思えません。しかしながら、
メジャーも含めて
開発段階の会社がより効率的な油田に資金を投下していこうとする過程の中では、必ずやそこに我々なりに手に入れるものが出てくるかもしれない。あるいは、あくまでも金額が大きいので、お互いに協調し合って金を出して
開発しようではないかということも出てくるかもしれない。そういうことも含めて、既存油田に対する今回の公団の
対応というものは、私は歓迎すべき問題であると思っております。
しかしながら、
メジャーは今回、先ほど言ったような戦略も含めて、二兆円の利益を、エクソン・モービルについてはあり余るほどの利益を川上で上げておる。十ドル
原油で疲弊したOPECも、一息ついて財政上豊かになって、軍隊も含めて給料を上げておる。そういったような
状況の中で、ひとり我々は川下だけの問題で苦しんでおるわけでございます。今、
自主開発原油はわずか一五%にしか達しない、それが
日本の頭でございまして、我々は、頭もないような胴体以下の形で、国内における必死の
企業努力を続けておるという
状況でございまして、この
開発の問題に手を入れるためにはどうしても公団によるバックアップ体制なかりせば、巨額の投資、それに関するリスクの問題も考えますと、どうしようもないということでございます。
今、公団がいろいろ不良債権問題ということで取りざたされておりますけれども、当時ドル融資がなかった、円融資で三百円で融資をした、当時エクソンですら百ドルを見込んだ
状況の中で、四十ドルから五十ドルという
原油代をベースにすれば必ずや
収益が成り立つという、
日本全体がのろしを上げたような
開発熱によりましてスタートしたという問題がございます。今日、その為替の三百円が約百二十円になって、借金が三倍になる、あるいは
原油代がなかなか上がらない、加えて、税金という問題に金利がついていることからくる債権の問題もございます。今、そういう
状況の中で、
開発会社は全体的に苦しんでおる。これを不良債権と呼ぶのかどうかについてはわかりませんけれども、そういう経緯があっての現状の
開発会社の苦しさであるということも付言をしておきたいと思います。
それから、
エネルギーのベストミックスということでございます。
これからの
セキュリティーの問題については、
石油ショック当時は、火薬庫である
中東からいかに逃げるか、あるいは、
石油をいかに軽減するかということが
セキュリティーのすべてだったわけでございます。現状におきましては、少なくとも、
環境問題も加えて、
石油を大宗としながらも
エネルギー全体のバランスをどういうふうに考えるか、どこからどういう格好で油あるいはガスをとっていくかというようなこと、新
エネルギーの
開発をどうするか、そういったようなことも含めた
エネルギーのベストミックスと、それから、先ほど申し上げました
中東に対しては、一国として考えるのではなくて、それぞれの国特有の
資源外交をしていく、この
二つが相まってこれからの
エネルギーの
セキュリティーが図られていく、私はそういうふうに考えておるところでございます。
それから、
最後になりましたけれども、当面の課題ということで、
環境問題と
石油税の問題について簡単に申し上げたいと思います。
環境問題につきましては、
一つは、
環境保全ということで、公害問題に端を発する、工場運営におけるSOx、NOx等あるいは排水、要するにそういうものを含めた
対応をやっていくということ。それから、ガソリン、軽油その他に関して硫黄分を取り除いていく、そういったような
環境に優しい商品をつくっていくという
二つの問題がございます。この問題につきましては、我々はここ十年間で約一兆五千億前後の投資をしながら世の中の
皆様にこたえておるところでございます。
それからもう
一つは、地球
環境問題ということでございます。
これはグローバルな問題でございますけれども、二十一世紀は本当に地球
環境問題をどのように考えていくかということが大事な問題でございます。我々は、経団連の指導によります自主行動計画によって、トータルとはいきませんけれども、というのは、やはりガソリンを使えばそれなりの製品を我々は
供給しなければならない、しかし、その製造過程において、少なくとも省エネを含めて、自主行動計画によって単位当たりの炭酸ガスの発生を防いでいくということにおいて、一九九〇年比の自主行動計画における一〇%の削減については現状においてほぼ果たしつつあるという
状況を付言しておきたいと思います。
最後に、
石油税の問題がございます。
石油税の問題については、まず巨額であるということ、消費税も含めて約六兆円になんなんとする問題でございます。と同時に、多重・多段階であるということ。つまり、
原油の段階に石炭対策でかける、次に
石油税という形で、備蓄あるいは
開発のための財源として取る、それからガソリンはガソリン税をかける、軽油には軽油税をかける、それも庫出税か引取税かというような形で、税の体系が地方税、国税と、税の性格も含めて違う。そういう問題も含めて多重・多段階である。それに加えて、消費税導入のときに、少なくともタックス・オン・タックスということでそこに不合理、不公正な問題も起こってきたということで、巨額、多重・多段階、不合理、不効率という形の税の問題を我々は今冷厳に受け取りながらも苦しんでおるところでございます。
これからいろいろな
環境問題からくる税の問題も、財源面から、あるいは抑制効果から、あるいは国民一人一人の
環境問題に対する意識高揚の問題を含めて浮揚してくるかと思います。しかし、この問題に関しましては、まずは現在のそうした巨額以下申し上げました税金の問題を見直しながら、そして新しい
日本の税体系の中で
環境税の問題を考えていくことが必要であるということを
最後に申し上げて、私のコメントにさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)