○河野
国務大臣 紛争予防というのは、今、国際社会の中で、とりわけ先進国が最も関心を持つ問題だというふうに私は
認識しております。
一体、紛争というものはなぜ起こるか。今議員がおっしゃいましたように、民族間の問題もありますし、あるいは宗教上の摩擦もあります。あるいはもっと深刻なのは、貧困によって起こる紛争というものがございます。まだほかにもいろいろケースはあると思いますけれ
ども、そうした紛争を予防するためには、例えば貧困を克服するための援助でありますとか、これはただ単に経済援助だけじゃございません、
技術援助もあるだろうと思いますが、そうした貧困を克服するための手だて、これをどういうふうに
考えていくかという問題もあると思います。
それから、紛争が起こった後、なかなかそれが終息しない、どんどん深刻になっていくという問題を
考えますと、そこには、例えば武器がどこからか渡されてくる、あるいは流れ込んでくる。あるいは、その武器を買うための財政力といいますか、金がどこからかそこへ回る。私
どもG8の外相
会議で議論をいたしましたときに大きなテーマになりましたのは、アフリカの紛争で、武器を買うための原資に例えばダイヤモンドが使われる。ダイヤモンドが不正に採掘されて、それがやみのルートで流れて、その金が資金になって武器が買われるというような問題がある。したがって、やみのルートで資金がそういうところに流れ込むことを何とか防ぐ方法はないかというような問題についても、相当突っ込んだ議論が今行われているわけで、これは一回のG8の外相
会議で結論が出るというものでもございません。とにかくたくさんのケースがありますから。
先般の
九州・沖縄で行われましたときの外相
会議では、例えば小型武器をどうやって規制するか、あるいはダイヤモンドの売買をどうやって規制するか、あるいは貧困の克服のためにどういう方法があるか、あるいはその結果非常に犠牲になる子供たちをどういうふうに救うかとか、そういった問題について議論する。恐らく、ことしイタリーでまたサミットが行われれば、イタリーのサミットの前に行われるであろう外相
会議でも、紛争予防についてまた別のテーマが議論されるということになると思います。
我々は、今お話がありましたように、やはり紛争予防というものをもっと集中的に議論して、それを具体的に進めていく。中には、今これも議員がヒントとなる御
意見を述べられたように、国家の単位で
考えて問題が解決するだろうか。これは小渕総理が人間の
安全保障という概念を提唱されて、これは国連の中で、人間の
安全保障、一人一人の人間の
安全保障についてどうやってそれを守るか、こういう
考え方もあるわけですね。ですから、さまざまな問題のつかまえ方といいますか、アプローチの仕方について、それはケース・バイ・ケースでいろいろなケースがあると思いますが、それをやっていかなきゃいけないというふうにも思うわけです。
それからまた、紛争と一言で言うけれ
ども、一体、紛争とはどういうものを紛争というか、あるいは紛争が解決されたという
状況はどういう
状況をいうのか。つまり、国境線が変更されそうになったものを押し戻す。それが押し戻された結果、もうそこで紛争が解決されたと言えるかどうかという問題もあると思います。
長くなって恐縮ですが、もう今から三十年近く前でございますけれ
ども、イスラエルにダヤンという大変な兵隊さんがいまして、このダヤンさんは
飛行機乗りで、大変強くて、ダヤン率いる部隊というものはもう大変な強さだったんです。そのダヤンが、ある日、東京に来ておりまして、私は全くぶらっとホテルでそのダヤンと一緒にお茶を飲んだことがあるんです。いろいろな話をしましたが、もう天下無敵の部隊を率いているダヤンが、ミスター河野、武力で問題は解決しない、武力で問題は絶対に解決しないのだ、解決をするのは話し合いによって、納得によって解決する、納得しなければ問題は解決しないんだと。その人に言われて、私は、なるほど、そうだということをしみじみ思ったことがあるんでございます。
これから先も、我々は、外交
努力というものをやはりさらに一層強めていかなければいけない。しかし、問題が起こっているときには、力でそれを抑えておく、あるいは原状に戻す、そういう力もまた一方で必要で、これが全く要らない、こういうものを使わないで問題が解決するかというと、そうもいかないということもあるということを申し上げたいと思います。