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政府参考人(
細川清君) 現行の
破産法、会社更生法がとっている御
指摘の厳格な属地主義が維持されるということになりますと、
破産手続等が開始された場合であっても、一部の
債権者が
手続の開始国以外の国にある
債務者の財産から抜け駆け的に
債権回収することが従来どおり許容されることになります。
例えば、日本で
破産宣告を受けた企業がアメリカに財産を持っている場合、日本の
債権者がアメリカに行って自分だけ
債権回収するということができて、
債権者の平等な扱いができなくなるということがございます。それから、外国で
債権を回収した場合でも、現行の
破産法では、
債権回収額を国内の
破産手続における
配当額に反映させて調整する規定も整備されておりません。したがって、抜け駆け的に
債権回収を行った
債権者も、国内の
破産手続においては、現行法上は他の
債権者とさらに同じ割合で
弁済を受けるということになってしまうわけでございます。
しかも、外国に財産があるかどうかとかそういうことを
調査するとか、外国で
手続をするということをするためには、それだけの情報収集能力があって、海外での活動を可能にする組織力、豊富な資金力を持った企業に限られるということになりますので、
一般の
債権者の間では大変不公平が生じるということになるわけでございます。
また、外国で再建型の倒産処理
手続が開始された場合、例えば日本の会社更生
手続に相当する
手続がアメリカで開始された、そういう場合に、その会社の事業を継続する上で必要不可欠な財産というのが日本にあったといたしましても、日本の
債権者はその財産に強制執行を
申し立てて換価することが可能でございます。こうした場合にも、現行の倒産法制のもとでは強制執行
手続を中止する手だてはないものですから、国際的な規模での合理的な
再生計画の策定が非常に難しくなるという問題がございます。
他方で、
債務者が
弁済に充てるべき財産を
手続が開始された国以外において使ったり、隠すことも可能です。例えば、日本で
破産宣告を受けた
債務者が外国に有する財産は、
破産管財人の管理処分権が及びませんので
債務者は自由にこれを換価、処分することができます。しかもその対価を
債権者への
弁済に充てる義務もないわけでして、
債務者がみずからこれを使うということも許されるわけです。
しかも、もともと海外にあった財産だけではなくて、
破産宣告の直前に
債務者が国外に財産を持ち出してしまいますと、これについても同じように
破産管財人の
権限が及ばないということになります。こういう不正な行為が現行法では事実上野放しになっているという状態でございます。