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2000-11-14 第150回国会 参議院 地方行政・警察委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年十一月十四日(火曜日)    午前九時三十分開会     ─────────────    委員異動  十一月九日     辞任         補欠選任      阿南 一成君     青木 幹雄君  十一月十日     辞任         補欠選任      八田ひろ子君     市田 忠義君  十一月十四日     辞任         補欠選任      市田 忠義君     畑野 君枝君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         朝日 俊弘君     理 事                 木村  仁君                 北岡 秀二君                 浅尾慶一郎君                 簗瀬  進君                 富樫 練三君     委 員                 岩城 光英君                 鎌田 要人君                 久世 公堯君                 関谷 勝嗣君                 谷川 秀善君                 山下 英利君                 菅川 健二君                 和田 洋子君                 大森 礼子君                 白浜 一良君                 畑野 君枝君                 照屋 寛徳君                 松岡滿壽男君    事務局側        常任委員会専門        員        入内島 修君    参考人        東京都立大学法        学部教授     前田 雅英君        上智大学法学部        教授       小幡 純子君        ジャーナリスト  久保 博司君        日本国民救援会        会長       山田善二郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○委員派遣承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○警察法の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○警察法の一部を改正する法律案富樫練三君外  二名発議)     ─────────────
  2. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) ただいまから地方行政警察委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る九日、阿南一成君が委員辞任され、その補欠として青木幹雄君が選任されました。  また、去る十日、八田ひろ子さんが委員辞任され、その補欠として市田忠義君が選任されました。  また、本日、市田忠義君が委員辞任され、その補欠として畑野君枝さんが選任されました。     ─────────────
  3. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) 委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  警察法の一部を改正する法律案閣法第四号)及び警察法の一部を改正する法律案(参第一三号)の両案につき、神奈川県において意見を聴取するため、来る十一月二十一日に委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  警察法の一部を改正する法律案閣法第四号)及び警察法の一部を改正する法律案(参第一三号)の審査のため、本日の委員会東京都立大学法学部教授前田雅英君、上智大学法学部教授小幡純子さん、ジャーナリスト久保博司君及び日本国民救援会会長山田善二郎君、以上四名を参考人として出席を求め、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) 警察法の一部を改正する法律案閣法第四号)及び警察法の一部を改正する法律案(参第一三号)の両案を一括して議題とし、参考人から御意見を聴取いたします。  参考人皆様一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を承り、両案の審査に反映させてまいりたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず参考人皆様方からそれぞれ十五分程度ずつ御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人皆様の御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、最初に前田参考人からお願いいたします。前田参考人
  9. 前田雅英

    参考人前田雅英君) それでは、座って失礼させていただきます。  このような席で発言機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。先生方に厚く御礼を申し上げたいと思います。  私が、行政法先生警察法の第一人者がいらっしゃるのにわざわざ学者として発言をさせていただく理由というのは、一つはやはり刑事法警察の中でも非常に重要な意味を持っている刑事警察とか、刑事の問題の中での警察の位置づけ、それと警察法関係という視点で若干のことが申し上げられるからであると考えております。  刑事司法の中で警察を考えたときに、警察に対する信頼というものが失われれば国家の根幹である刑事司法というのが動かなくなる。その意味で、一連不祥事を反省して、それを回復して、それから今後繰り返さない手だてをつくるために厳しい法改正をしていく。その意味で、各党からお示しいただいた案というのは基本的には合理的な方向性を持ったものであって、まさにその方向で審議を進めていただきたいと考えております。  ただ、もちろん微妙な差異があるわけで、その差異を判別するときの一つの指針として刑事法の側から見た視点も加えていただきたいということで御意見を申し上げたいと思います。  微妙な政策選択といいますか、公安委員会機能を強化していくというときに、どういう機能の強化の仕方が合理性があるかということにかかってくると思いますけれども、そのときの視点として特に私が強調しておきたいというか申し上げたいのは、今の問題解決で、国民に対しての信頼回復ということにのみその視点を奪われるのではなくて、警察法改正という非常に大きな事業ですから、二十一世紀の特に前半でしょうが、警察行政がどうあるべきかという大きな視座を持って臨んでいただきたいということです。  私は、明らかに二十一世紀日本警察像というのは変わらざるを得ないと考えています。特に刑事の側から見ると、非常に大きな転機に来ている。戦後の学問の世界で扱ってきた従来の警察、特に、刑事の感覚から持ってきた警察像では対応できない状況に至ってきている。  ポイントは二点あります。  第一点は、現在の治安状況悪化傾向の開始です。治安状況が非常に危機的な状況に変わろうとしています。これに対応する視点抜き改革案というのは、私は非常に危険だと思います。それから第二点は、社会変化、とりわけ社会家庭脆弱化からくる警察行政の需要の増加、積極的な関与、この要請が強まっている、そういう中での警察法改正だという視点を入れていただきたいということでございます。  特に、まず第一点、私の専門観点から申し上げますと犯罪状況が大きく転換したということで、僣越ですがお手元に資料を配らせていただきました。参考資料、図が六枚ございます。  図の一は、これは凶悪犯認知件数、もう先生方に申し上げるまでもないと思いますが、認知件数のうちの凶悪犯変化なんですけれども、平成に入って明らかにトレンドが変わったということですね。この変化は、犯罪者の一番確定したものである有罪人員変化もこれとほとんど同じです。それから、刑務所収容人員変化もこれと同じです。戦後の日本犯罪が減り続けてきた社会、それが終わったということです。増加傾向に変わってくる、変わってきた。三、四年前までは、ひょっとして増加がとまったというかまた下がるんじゃないかぐらいの感じだったんですが、このグラフを見ていただければおわかりのとおり明らかにトレンドが変わった。  実は、この傾向刑法犯全体から見ますと三十年前から始まっていました。それが図の二の図。図の二に示しましたように、刑法犯犯罪率は七五年、八〇年にかけてですが、そこが底で、それ以降増加傾向にあったわけですね。  このような状況の中でなぜ今まで気がつかれなかったというか危機意識を持たれなかったかといえば、軽微な、窃盗とかオートバイ盗、自転車盗なんかは大したことない、より重大な犯罪がふえなければということでたかをくくってきた面があるんですが、凶悪犯等窃盗中心とした、このグラフはどうしても窃盗が表に出るわけですが、一般犯罪中間粗暴犯なんかの変化はその中間でやっぱり増加に転じています。明らかに犯罪状況流れが変わってしまった。  さらに、警察という観点から見て致命的な変化は図の三なんです。これは九〇年ごろからがくんと検挙率が落ちたことを示しています。ただ、これは半端な落ち方ではありません。六割という検挙率というのは世界に冠たる数値治安のいい国日本を象徴する数値でした。犯罪が減り続け、検挙率が高いから日本治安はよかったんです。しかし、六割が今、ことしの上期では二五%です。これは、治安が悪いとか検挙率が低いといったヨーロッパ以下です。アメリカ並みです。アメリカ並みというのはあれですが、客観的な事実としては間違いではありませんが、言い方がちょっとよろしくないと思いますが、このような状況になってきた。  これはいろいろな理由が考えられると思いますが、基本的には上の犯罪増加に対して警察増員が間に合わなかったということなんだと思うんです。  これまで私もいろんなものを書いてきましたけれども、ある時期までは精神主義で頑張ってきたんだけれども六十年の初めに一定の警察政策転換を行った。要するに、合理的な人員配分を考えて、重大な事件に対してエネルギーをかけるべきであって、軽微な事件は手を抜いていいというとちょっと言葉がよくないんですが、政策変換を行った結果、今度は重大な事件検挙率も落ちてしまった。それは政策のミスだと初め考えたのが、そうじゃないんですね、やっぱり。もともと適正規模人員がいないから、無理してゴムを引っ張っていたのがゴムが切れたらこうなったということだと思いますね。  単純に事件数と各国の警察官の数の比較だけでは説明できないので、捜査のやり方とか手間のかかり方とかいろいろありますけれども、間違いなく警察が足りない。それに対して犯罪はふえ続けている。この状況をどうしていくかということだと思います。  そこそこの線で犯罪が抑えられればよくて、警察官増員というのは少ない方がいいという議論もあり得ないことはないと思いますが、最近アメリカで話題になったニューヨーク治安がよくなったという話、これはもうどこからでも出てくる、客観的なデータもそうですし、観光に行った人の実感でもそうですが。そのときに、有名な窓ガラスの理論もありますけれども、要するに犯罪をきちっと抑え込んで、そのときに警察増員して、そして明るいニューヨークをつくった。それはコストをかけても、それだけプラスといいますか必要なお金なんだと思うんです。  私は、やはり二十一世紀警察を考える上では、そういう対応の仕方をしていかないとまずいということなんだと思います。特に、日本警察の場合というか、これは警察だけの問題ではないんですが、刑事司法の場合に何に失敗があったか、これはもう間違いなく少年です。  二ページ目の図の四。これは警察と同じような変化検察にもあって、起訴率が同じ時期にすとんと落ちるんですね。これはやっぱり意図的に軽微な事件を落としたんです。つまり、交通事犯の一部のものを起訴するのをやめたんです。横に変わっていないのは一般事件なんですが、交通事件はすとんと落ちたんですね。これによって検察仕事はある部分楽になったんですが、やはりそのしわ寄せは国民に対して来ているんですね、交通事犯の処理の仕方なんかには。  その起訴率の話はちょっと飛ばして、次の図の五を見ていただきたいんですが、このグラフは、三角形のものをつなぎ合わせたものが一般に公にされている少年犯罪変化なんですが、私は、このグラフは公表されていて、少年犯罪はそんなに最近ふえていないよという言い方はどうもおかしいと思っていたんです。考えてみればおわかりのとおり、図の二で見ますように犯罪はふえ続けているんですね。ふえ続けていて、その半分は必ず少年なんですよ。なのに少年犯罪が減っているというのはどういうわけですか。  ここで考えればすぐわかるんですが、成人の犯罪少年犯罪というのは捕まえてみて初めてわかる。つまり、検挙数が減れば少年犯罪は減るんですが、実は起こっているんですよ。起こっているけれども、図の三にありますように物すごい勢いで検挙率が落ちてしまったから少年犯罪が減ったように見えただけなんです。  ですから、今までどおり六〇%の検挙率が維持されたらどうなるかというのをグラフにしたのが図の五の太い線なんです。これを見ておわかりのとおり、少年犯罪というのはある意味でふえ続けたんです。犯罪数の半分でありながら、それに対してつぎ込まれている警察もそうですし、いろんなものの資源投下量というのは少ない。これは完全に気がついてきていますから、少年法改正一つきっかけですが、少年警察にしろふえていかなきゃいけない、仕事量をふやさなきゃいけない、これは私は必然なんだと思うんですね。  こういう状況の中で、さらにもう一つ、先ほど申し上げた国民のニーズという意味で、警察に何が求められていくかということですけれども、最近のストーカー立法、それから今後行われる家庭内暴力夫婦間暴力、それから児童虐待、これはもう法律できていますけれども、そういう流れの中で警察イメージが変わってくる。  従来の、これは荒っぽい言い方といいますか形式的な言い方ですけれども、国家権力の手先である警察というのは極力国民生活からなるべく謙抑的で離れているべきだ、民事不介入と言ってもいいんですけれども、そういう議論はもう成り立たない。  まさに最近の警察批判というのは、国民への介入をシュリンクする警察に問題があるんだ、これが警察批判一つ中心になっている。それはある意味では当たっているんだと思うんですね。それは、地方のコミュニティーの崩壊とか家庭変化の中で、警察役割増加というのはある意味必然だったんだと思います。今後もそれが減少していくことはあり得ない。そのカーブがどうなるかは別として、警察役割増加していくと思います。  しかし、片一方で財政の健全化、国全体から見ますと、それも警察に及んでくる。ただただ人をふやせばいいといったって、大変だといったって、そう簡単には人員増は望めない。こういう中で、限られた資源をより有効に使わなければいけない、むだをなくしつつ効果を上げていかなければならない。そのために一番重要なのは、現実に機能するリアリティーのあるシステムをつくっていかなきゃいけないということだと思います。  その中で、今後変わっていかなきゃいけない警察像というのは、監視対象とそれから監視者というかたい関係警察管理監督というのを考えていくのじゃなくて、しなやかな監視組織、そして情報公開との組み合わせというのが現時点で私は要請されていくし、それが必要な知恵なんだと思います。  いかにいろいろなことを考えても、単純に監視する監視されるという形だけのかたい、十九世紀型のといいますか、発想でいけば、私は機能はうまくいかない。監視を厳しくしさえすればシステムが健全に動くというような発想というのは、私は問題があるんだと思いますね。  基本は、やっぱり警察不祥事のかなりの部分は、いろんな調書の偽造事件なんかにも出ていますけれども、仕事量が多過ぎて、それをごまかすためにインチキをする。  人をおとしめるとか、最近南アフリカで警察官不祥事として、一部の警察官が犬に人をかませる局面が映っています。ああいう不祥事が起こったら、それはもう根本的にたたき直さなきゃいけない。しかし、日本不祥事、いろんな問題ありますけれども、一番重大なポイントは、さっきの検挙率の低下とかいろいろな問題なんかをあわせて考えますと、先ほど申し上げた、しなやかに監視しながら、よりよく国民にとってメリットのある働きをしてもらう警察をどうつくり上げていくか。それをつくらなければ二十一世紀前半日本というのは非常にピンチになる、この犯罪増加状況を見ますと、ということを一番申し上げたいんです。  衆議院ですか、地行で呼ばれた参考人の方がごく最近論文を書かれて、警察組織的に腐敗しているから二十六万人全員をやめさせてもらわなければどうしようもないという論文をついこの間発表されました。私はそう思えないんです。世界の国で日本並み警察を持っている国がどれだけあるんですか。日本警察検察、非常にレベルが高いと私は思っています。全部取りかえろという議論、これは信じられません。いかに今あるものをよりよくしていくか、そのための先生方の御議論だと思うんですね。  その中で、どこの部分をどう変えていくのがいいかということで、与えられた時間が限られてきていますし、行政法専門家もいらっしゃいますのでそちらにお譲りする部分が多いんですが、私は、しなやかな合理的な監視というときに、現在ある公安委員会制度がそのままうまくいっているとは思いません。ただ、それをいかにうまく動かしていくかが、さっき言った合理性のある日本的なやり方といいますか、知恵なんだと思うんですね。  まず、警察に関して完全な外部監査というのは、私はこれは非常に危険だと思います。  情報を引き出していくにも、外から見て情報をたたいて搾り出すというのはこれはよくないし、例えば余り学者らしくない比喩で恐縮ですが、中にある情報を、塩を引き出すのに、かずのこの塩を抜くのに真水に漬けたって、全く関係ない水に漬けたって塩は出てこないんですよ。ある程度、こういう組織の場合には情報を知っていなきゃいけないし、ただ完全に塩の濃度が同じで、警察そのものが調べるだけではやっぱり外に塩は出てこないんですよね。そのバランスをどうとるかという意味で、今回提案されている公安委員会機能を強化する、個別具体的監察それから監察調査官の充実というのは非常に私は展望のある具体的な提案だと思います。それから、文書による苦情申し出制度合理性があると思います。  ただ、公安委員会組織をどうつくっていくか、これはちょっと考えますと、警察外に完全に外部に独立したものにするのは合理性があるように見えるんですが、これもさっきの外部監査に近いような問題を一つ含んでいます。全く外の人間が入ってきて警察情報を見てそれをチェックする。  私、大学にいて、この間、経営者が都ですので都から外部監査が入りました。外部監査は、大学みたいなところはそれはある意味合理性があると思いますが、ただそれを見ていましても、外の会計の人が大学を見てこんなことしかわからないのか、専門家大学関係者が見に来たらば全然違う視点だろうなと思いました。  ですから、外部監査とは違って、公安委員会の中を充実させてその中の委員だけを外部の人にということなんですが、全く警察とつながりのない人間がきちっとした補佐ができるかというと、私は、これは断言はできませんが、合理性は少ないのではないかという感じがします。  それと、先ほど申し上げた……
  10. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) 先生、そろそろおまとめください。
  11. 前田雅英

    参考人前田雅英君) では、もう一言にします。  コストのことですね。限られた資源をどう有効にしていくか。各県に全く別個に独立の事務局外部人間でつくっていくということは非常に大変なことだと思います。それは、私はむだが多いと思います。  時間を超過して申しわけございません。発言を以上で終わらせていただきたいと思います。
  12. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) どうもありがとうございました。  次に、小幡参考人からお願いいたします。小幡参考人
  13. 小幡純子

    参考人小幡純子君) 上智大学小幡でございます。  本日、警察法の一部を改正する法律案について意見を申し述べる機会を与えられ、大変光栄に存じております。  私の専門行政法という法律の一分野でございます。行政法というのはさまざまな行政機関の作用及び組織に関する法律というのを対象としておりますが、警察法並びに警察に関する法というのも行政法各論一つとして位置づけられております。数ある行政機関の中でも警察という一種独特の機関対象としているのがこの警察法でございます。  一種独特と申しましたが、警察というのは私たち国民にとって最も身近な存在でございまして、街角で道順を聞くところから始まって、国民の生命、身体を守るための直接的権力手段を持っているという意味では最も頼りがいのある存在とも言えましょうが、逆にその権力が適切に発動されないとたちどころに国民信頼を失うという側面を持ってございます。したがって、警察は常に国民にとって信頼できる存在であることが強く要請されると思われます。  今般の法律改正案きっかけがさまざまな警察不祥事であったことは大変残念なことでございますが、だからこそ法律を時宜を得て適切に改正することによって、国民警察に対する信頼を取り戻す必要性というのは極めて高いのではないかと思われます。  さて、今回の法律改正案の検討に入ってまいりたいと思います。  実は、警察法というのは従前のものから既に国民信頼保護のための特徴ある法制度を内包しておりました。それが公安委員会制度でございます。  公安委員会というのは、戦後直ちに制定されました旧警察法におきまして、警察民主的管理政治的中立性の確保を図るために特に設けられた制度でございます。昭和二十九年の現行警察法制定によって今の公安委員会制度となっております。警察というのは強力な執行権力を持つ専門家集団ですから、そこでの運営が独善的なものにならないように、つまり国民から離れてしまうことのないように、民衆の代表である公安委員会警察組織を管理するというシステムが特に必要と考えられたわけでございます。警察という非常に堅固な官僚組織の上に、警察専門家でないいわば素人の良識人から成る公安委員会という合議体を置いて、それによって国民のための警察を担保していこうという特徴ある制度がつくられたものと理解してよろしいかと存じます。  私は、今回の一連不祥事きっかけとしてではございますが、国民警察との関係での公安委員会というものの存在を明確に認識されまして、その委員にどういう人がなっているのかとか、どういう仕事をしているのかということを興味を持って知るようになるとすれば、それはそれでプラスの面として今後につなげていくべきではないかと思っております。  今回の法改正のメーンのねらいは、結局のところ、警察行政の不正を十分にチェックするシステムというのをいかに構築するかということに尽きるのではないかと存じますが、このような共通の認識のもとで各党が提案なさった法案の中でさまざまな手段が示されております。  政府案は、公安委員会の管理機能を充実するため、公安委員会が監察についての具体的、個別的な指示を警察に対して行うことができるということを明確にしまして、さらに、その指示が履行されているかどうかを点検するシステムというものまで設けようとするものでございます。また、公安委員会に対して、国民警察の職務執行についていろいろ苦情を持っております場合に、その苦情を申し出ることができるということとしまして、公安委員会はこれを誠実に処理する義務を負うばかりではなくて、処理結果を回答する義務というのを課すというものでございます。  さらに、警察署協議会の設置も提案されております。地域ごとの住民の声を警察署に反映させようとするシステムでございまして、国民、住民のための警察というのを身近なところから実現するための施策として非常に、十分評価できるものと言ってよかろうかと存じます。  この警察署協議会については特段異論もないところではないかと思いますので、最も大きな論点となっております公安委員会の活性化策あるいは別組織による監察組織の導入が妥当かどうかという問題について、以下、私の考えを申し述べさせていただきたいと思います。  まず、従来の公安委員会とは別に、警察監察委員あるいは警察監視委員会のような別の監察組織を設けるべきかどうかという論点、いわゆる外部監察の必要性という論点についてでございます。  確かに、今ある組織が十分働いていないならば、直ちに別の組織を設けようという方法も一つの選択肢ではあると思いますが、私は、まずは今ある公安委員会という組織制度を何らかの方法で活性化するというのが一番にとるべき手段ではないかと思っております。  と申しますのは、通常言われます内部監査、外部監査、あるいはここでは内部監察、外部監察というふうに申し上げた方がよろしいかと思いますが、それぞれ一長一短ございまして、組織とか業務をよく知る者の方が内部に効果的なメスを入れることができるという内部監察のよい面というのも否定できないわけです。警察刷新会議の提言でも、警察組織や業務に精通している者が当たらなければ結局は実効性のある監察となり得ないのではないかという指摘がなされております。  さらに、そもそも警察及び公安委員会という制度は、通常言われる内部監察の欠点を補い得る仕組みを持っております。  内部監察というのは組織内部に独立的な機関を設けて監察させるわけですが、その機関は、自分では人事等の強力な管理権限は有していないのが通常でございます。それに対して公安委員会の場合には、警察という官僚組織の上に第三者機関として置かれておりまして、その第三者機関警察という官僚組織に対して人事上の権限も含めて非常に強力な管理権限を持つというそもそもの仕組みを持ってございますので、通常言われている内部監察の欠点と言われているものはそのままの形では妥当しないのではないかと思われます。  したがいまして、このような特徴ある既存の仕組みの中で公安委員会の民主的監督を十二分に生かしていくという方向が、結局のところ、警察組織としての自浄能力を高めることにつながるのではないかと考えております。  続きまして、公安委員会自身の活性化の方法といたしまして、公安委員会独自の事務局を設けるべきではないかという議論もあろうかと存じます。  実は、この問題はなかなか難しいところでございまして、私自身も自前の事務局があった方がよいのではないかと思ったこともございました。ただ、よくよくいろいろな面を考えますと、公安委員会が本来持っている性格及びその警察に対する地位というものを考慮いたしまして、必ずしも自前の事務局を持つことが本当の活性化につながるとは断じがたいところもあるのではないかと現在は思っております。  以下、その理由を述べたいと思います。  まず、公安委員会自身が警察専門家ではない素人集団でございますが、そこにまた素人の事務局を設けるということになります。したがって、警察に対する切り込みが単に迂遠なものになるだけではないかという、そういう状況が生ずるという懸念がございます。そもそも警察行政に素人である事務局公安委員会を十分に補佐できるかということは疑問の点もございますし、逆に、警察公安委員会との間の距離が離れ過ぎて適切な管理というのができなくなるのではないかという懸念、あるいは警察公安委員会との間にもう一つ組織が入ることになりますので、公安委員会が直接警察から報告を受け、直接迅速な対応をとるということもやりにくくなるなど、非効率という問題も生ずる可能性がございます。  先ほどの前田教授の御意見にもございましたが、昨今の行政改革の中でも警察官増員は必要なのではないかということではないかと存じますが、さらにこのような事務局に属する人員を新たに増員するということになってしまうという、その点の問題点もあるかと存じます。  なお、重要な点といたしまして、公安委員会というのはもともと警察に対して人事コントロールを及ぼす権限、すなわち警察本部長等地方警察官の懲戒、罷免の勧告権という人事上の権限を持っております。したがって、このような人事上の権限、担保手段がございますので、公安委員会としては、自前の事務局を持たなくても公安委員会を補佐する警察のスタッフを自分の意のままに機能させるということが本来できるはずでございます。このような観点からは、今後は、公安委員会を補佐するという警察のスタッフの体制をさらに充実したものにするということはぜひとも必要であろうと考えられます。  さらに、今回の改正案で制度化することとされております苦情処理システムというのは、実はこの点に関しても非常に大きな役割を果たすのではないかと思っております。私は、以前から国民公安委員会に苦情を申し出るという明確なシステムが必要ではないかと考えておりました。警察に不満があるのであれば、それのお目付役である第三者機関である公安委員会に苦情を訴えればよいのであって、それこそが民衆の代表、民主的監督機関としての公安委員会が受けとめるべき最も重要な機能ではないかと思われます。  ところで、その国民からの苦情申し出が公安委員会に対してなされるとすれば、公安委員会としては当然何らかの回答をしなければならない。今度の改正案によれば、回答義務が必要とされます。そうしますと、自前の事務局がたとえないとしても、警察に取り込まれてしまうのではないかという疑念は非常に生じにくい状態、つまり、みずからに対する苦情申し出に対してみずから何らかの処理をしなければいけないことになりますので、その限りでは自前の事務局が必ずしも必要という懸念もなくなるのではないか。苦情に応じてしかるべき監察を警察に具体的、個別的に指示するという迅速な処理がむしろ必要で、それが可能になってくるのではないかと考えられるところでございます。  なお、今回の政府案において、公安委員会の監察に関する具体的、個別的指示を明示するということが、もともとの規定にも公安委員会の「管理」という言葉がございましたので、それとどういう関係にあるかという点についても若干触れておきたいと存じます。  公安委員会の行う管理というのはもともと、警察行政の大綱方針を定めまして、これによって事前事後の監督を行うということを意味しております。公安委員会というものの性格上は、捜査活動や警備実施自体などの個別の事務執行を直接自分が行うということはそもそも不適当と考えられておりました。したがって、監察に関しても、そのような個別事務の監察について具体的な指示を行い得るかどうかというのは疑義がございまして、その結果、警察の監察が不十分であることについて公安委員会が十分な監督の役割を果たすことができなかったのではないかという、そういう問題が生じてまいりました。  そこで今回、監察について、公安委員会が具体的、個別的指示ができるということが新たに明文化されるということがやはり必要という状況になったのではないかと思われます。  従来の「管理」でも読めるはずであるから法改正の必要がないのではないかという議論もあるかもしれませんが、あえて明文化することによりまして従来の運用をただすとともに、公安委員会の監督機能の中でも特に監察に関する指示というものを取り出して具体的指示権を認めるということは、公安委員会が今後より積極的に監察についてしっかり監督するようにということを促す、そして結果的に公安委員会の民主的監督機能を強化することにつながる重要な意味を持つものではないかと思われます。  以上のように、私は、公安委員会の本来の民主的監督機能を十分発揮させるために必要となる法改正を行うべきと考えますので、基本的には公安委員会の監察の指示権を強化し、苦情処理システムを設けるという政府案でよろしいのではないかと思っております。  なお、ただこの問題は、最終的には政策論レベルの問題もございまして、必ずしも法律論で勝負がつくというものではございません。ですから、例えばもっと組織自体を増強したり別の組織をつくったりという政策もとり得ないものではございませんが、ただ、公安委員会というものの本来の趣旨に立ち返って、より実働的な働きを今後期待していくという方向で必要不可欠な改正でよいのではないかという趣旨でございます。  むしろ、この機会に、国民の方々に公安委員会の働きを十分知っていただくよう広報活動を行いまして、国民ともども、民衆の代表である公安委員会の活性化に向かっていくというのが望ましい姿かと存じます。  いずれにしましても、警察信頼回復のための法改正必要性というのは疑いのないところでございますので、本委員会で十分審議が行われ、国民のための警察というものの実現に向けて適切な改革がなされますことを願いまして、私の本日の意見陳述を終わらせていただきます。
  14. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) どうもありがとうございました。  次に、久保参考人からお願いいたします。久保参考人
  15. 久保博司

    参考人久保博司君) ジャーナリスト久保と申します。  本日は、意見陳述の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  最近の警察の現状に関しての簡単な私の認識ですけれども、今まさにやっぱり日本警察は危機に直面しているんだと思います。  一つ不祥事の問題がありますけれども、これは昔と今とそれほど深刻に悪化したわけではない。不祥事という点での危機ではなくて、むしろ、その不祥事外部化することによって警察批判が高まり、そのことによって国民信頼が大きく崩れていった。こういう信頼感がなくなってきているというところに今の日本警察の危機があるんじゃないかと考えております。  今回は、改正案についてだけ申し述べたいと思います。  まず、公安委員会について申し上げます。  最初に、私の基本的な考え方を申し上げますと、これまで再三批判されましたように、公安委員会というのは当初期待されていたように機能しているとは思いません。その理由は、さまざまな機会で指摘されましたように、人選の問題、それから事務局がない、その手足がないという問題、それから週わずか一回二時間の会合で一体何ができるかという問題があるわけでございます。しかし、ここでそういった問題を細々と取り上げて指摘するつもりはございません。  ただ、基本的な問題は、国家公安委員会では五名、それから警察本部では二名から三名というわずかな非常勤の委員警察事務という膨大な活動を管理するという、この非現実性にあるわけでございます。とても使いこなせないような膨大な権限があるということは何の権限もないということに等しいのでありまして、一体公安委員会というのは何を期待されているのか、現在の制度ではそれが見えてこないのであります。  現在の制度と比べますならば、むしろ戦後間もなく、当時はまだ存在しておりました旧内務省が提案された方がむしろよいと思います。その構想は、公安委員会とは言わなくて当時の案では警察委員会と呼んでおりましたけれども、その任務は、警視総監や道府県知事、その当時は地方警察のトップは知事でございましたので、その諮問に答えるということ、それから会計監査、住民の監査要求の処理といったことが列挙されておりました。  このように公安委員会役割が具体的に絞られていれば委員も動き方があるわけでございますけれども、抽象的に管理と言われても、どんなに立派な人々を委員に据えても何をやったらいいかわからない、そういう点で機能しなくなってきていると。その結果、公安委員会というのは単なる名誉職のような格好になってしまっているのではないかと私は考えております。  次に、公安委員会には手足となる事務局存在しないということですが、これは現在の制度に基本的な矛盾があるからでございます。  まず、警察法第五条には国家公安委員会警察庁を管理すると規定されているわけですが、十三条では国家公安委員会の庶務は警察庁が処理するとなっておりまして、そして第十五条には国家公安委員会警察庁を置くとなっているわけでございます。  これを見ますと、国家公安委員会事務局警察庁でありまして、その警察庁を公安委員会が管理すると、そういう格好になっているわけです。ですから、管理するためには当然判断の基礎となるデータが必要なんですが、そのデータは管理する相手に依存している、そういう状態であるわけです。ちょうど、おまえを切るからその刀を貸してくれというようなもので、これでは本当に相手を管理するあるいは切るということはできないわけでございます。  こうした矛盾が起きるのは、公安委員会というのは果たして警察組織の内部にあるのか、それとも外部にあるのか、その辺が非常にあいまいだからでございます。  ですから、改革の方向としては二つ考えられます。  一つは、公安委員会を市民を代表しての監視機関と位置づけるということです。これは公安委員会外部化ですね。この場合の委員会は、警察組織に対して市民の意向を反映させ、並行して警察活動が公正になされているかどうかというものを監視することが任務となりますので、その役割はおのずから制限されてきます。  もう一つは、公安委員会を名実ともに警察組織の上に君臨させるということです。例えばニューヨーク警察の場合には、市長の下にコミッショナーがおりまして、そのコミッショナーの下に七人のコミッショナー代理がおります。その代理がそれぞれの警察活動の部門を担当して管理しているわけでございます。アメリカの大都市では大体こういう形の警察がふえていると言われております。  以上のような基本的な考え方から、政府案及び共産党案を検討してみたいと思います。  まず政府案ですが、公安委員会が監察に関して警察当局に指示を行い、その履行について点検する、こういうことは意義があると思われます。さらに、警察職員の違反行為に対する調査結果を警察の責任者から公安委員会に報告する、こういう点も一歩前進と受け取ることができると思います。これまでそういうことがなされなかったこと自体が不思議なくらいだと私は考えております。  しかしながら、最も重要なことは処分の権限を公安委員会に持たせることであります。昨年秋から問題になっておりますところの、不祥事を隠すために処分をしなかったとか、あるいは不当に甘い処分で済ませたとか、こういう問題があります。  不祥事を抑制するためには、不祥事を犯した者を適正に処分するということが最も重要でありまして、その決定権が警察内部にあればどうしても甘くなってしまう傾向があります。これは人情でありまして、そのこと自体を私は責めることはできません。むしろ、処分に当たっては感情に左右されないように決定権を外部に置くということが必要であります。調査そのものは内部で調査するとしても、決定するものは外部で決定するということであります。  次に、公安委員会が市民の苦情の窓口になるという問題ですけれども、そのこと自体は意味があると思います。ただ、しかしながら、市民の苦情の窓口というのは既にたくさんあるわけでございます。問題は、そうした苦情がどのように処理されているかということでございまして、その点、処理の結果を申し出者に知らせるということは評価できると思います。  このように、改革案一つ一つは一歩前進なのでありますが、事務処理をすべて警察当局に依存して、かつ週一回の二時間の会合という活動パターンが変わらないとすれば、たとえ特定の委員を監察担当者にさせたとしても、どこまで所期の目的が達成できるのか、その実効性には疑問が残るわけでございます。  政府案に比べまして共産党案は、公安委員会の監察権をさらに強化している点では評価できます。しかしながら、独自の事務局を置くとなりますと、警察法第十三条などの関係からいいまして公安委員会は二重の事務局を持つことになることでございます。これは警察当局にとっては絶対に受け入れないであろう案であります。  ですから、共産党案の考え方をそのまま実現するには、公安委員会というのを明確に警察組織外部機関として位置づけまして監視機関とすることであります。こうすれば、独自の事務局を持つことは当然でありますし、そして市民の声をより積極的に活動に取り入れるということも可能になるでしょうし、また委員会の審議内容を公表するということについても全く差し支えのないことであります。そのかわり、警察を管理するという漠然とした役割ではなくて具体的な任務に絞り込むということが必要であります。  次に、公安委員の人選に議会が深く関与するという点でありますけれども、これは基本的に私は賛成であります。  といいますのは、警察はどこに法的な責任を負うのか、今の状態では明確ではないわけであります。形式的には公安委員会に責任を負っておって、その公安委員会は市民の代表という格好になっておりますけれども、実際は周知のように公安委員会機能しておりません。結局、現在の状態では警察組織はどこにも責任を負わない政治的無責任状態になっていると言うことができます。警察活動から政治を遠ざける余り、こうした無責任状態ができていると言って断言して構わないと思います。  今後の方向としましては、警察管理に対する政治の関与はより深く積極的になる必要があると思います。そうでなければ、国民の、国民のための、国民による警察という民主警察の実現は望めないわけでございます。もちろん、このためには警察組織を改革する必要がありまして、警察管理部門とそれから警察活動部門、この組織を明確に区分しまして、政治が関与できるのは警察活動の能率を維持するとかあるいは警察活動が市民の要求に沿っているかどうかといった警察管理に限るということでありまして、警察活動には及ばないということであります。法執行活動においては、警察官は法にのみ拘束されるという独立性はいかなる状態でもこれは守られなければなりません。  次に、政府案警察署評議会についてであります。この構想については、警察現場の幹部の中にはかなり反発の声が強いようであります。  その理由は、評議会のメンバーが町の有力者から人選されると考えられているからでございます。有力者にとっては名誉職が一つふえたぐらいの感覚で、どこまで真剣に働いてくれるのかという心配があるからでございます。  もう一つの反発する理由は、既に住民の声を吸収するパイプはたくさんあるわけでございます。例えば防犯協会がありますし、交通安全協会があります。それからさらに、住民と密着したものとしては交番連絡協議会というものもあります。  私は、幾つかこれらを取材したことがありますけれども、警察署長が熱心なところではいい成果を上げておりまして、警察署と地域住民との関係はうまくいっているんです。ただ問題は、このように制度は整備されているんですけれども、余り活動していないということが現状であります。ですから、これは警察署長とか関係所属長の考え方で大きく違っているということであります。これは制度の問題ではなく運用の問題であります。  ただし、今構想されているところの警察署評議会には、保護司とか教師とか弁護士とか、そういう町の安全に関係する活動に従事するメンバーを想定しておられるようで、従来の組織とは性格が違っております。したがって、その特徴を生かすならば意味があると思われます。それは、さまざまな警察サービスのうちの優先順位をつけるということであります。  一連不祥事件を契機にしまして、住民から警察に対する苦情や要求が急増しております。そのすべてに警察官が対応することは到底不可能であります。悪くすると、犯罪捜査とか防犯とか警察本来の活動が十分できなくなるおそれがあります。このため、市民の要求や必要なサービスのうち、どれを優先的に処理し、どれをほかの機関に回すか、あるいはどれをやらないか、そういう取捨選択する必要があるわけであります。その作業を全国ベースでやるのではなくて、警察署単位で行うということで警察署評議会を活用するということは考えられることであると思います。  続いて、政府案国家公安委員会の事務の追加についてであります。  確かに、法案にありますように、航空機の乗っ取りや人質による強要で国家の安全が脅かされるような事案につきましては国が責任を持って対応する必要はあります。今後は、さらにほかの分野でも国の指揮が必要となるはずです。  例えば、外国犯罪組織日本に入り込んで広域的な犯罪を犯しております。これが今の検挙率を大きく低下させている一つの大きな原因であります。こうした犯罪に対しまして、現在の警察本部体制では十分に対応できません。そうなりますと、こうした事案についても国家公安委員会の事務として追加することが必要になってくるわけでございます。  そして、このように追加に追加を重ねていきますとどうなるでしょうか。日本警察は、警察庁を中心とする全国一本の警察になってしまいまして、自治体警察の要素は限りなく希薄になっていくということでございます。  こうした広域犯罪あるいは凶悪犯罪につきましては、警察本部とは別に国家規模の警察執行機関を創設しまして、その機関で対応すべきであります。そして、既存の警察本部の活動のうち、広域的な活動はその国家機関に移しまして、その一方で、警察本部はより住民に密着した警察サービスに力を入れるべきでございます。これは、日本警察国家警察と自治体警察の二本立てにするということであります。  以上が私の警察法改正案に対する意見でございます。  ありがとうございました。
  16. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) どうもありがとうございました。  それでは、最後に山田参考人からお願いいたします。山田参考人
  17. 山田善二郎

    参考人山田善二郎君) 私ども日本国民救援会は、天皇制警察のもと、治安維持法その他国民の自由と人権を抑圧するさまざまな法規と特高警察によって加えられた弾圧犠牲者及びその家族を救援することを目的に結成され、今日まで七十二年の歴史を有しております。  戦後は、アメリカ軍の占領下にあった時代に引き起こされた三鷹事件や松川事件また菅生事件その他多くの弾圧事件や、死刑判決が確定した後ようやく無罪となった免田、財田川、松山、島田その他多くの冤罪事件の犠牲者の救援運動を行っております。  また、御存じの日本共産党、現在参議院議員をしております緒方靖夫氏宅の警察による電話盗聴を初め、警察の不法、犯罪的行為により被害を受けた方々が責任追及と被害の救済を求めて提起した裁判を支援しております。  警察犯罪は、電話盗聴、不法監禁スパイ強要事件少年暴行事件、果ては長野県警本部現職警備警察官の泥棒事件などなど、枚挙にいとまがございません。国民の生命、財産を守るべき責務を有している警察がその立場を悪用して引き起こす人権侵害は、人権侵害の中で最たるものであり、民主社会に絶対あってはならない深刻な問題であると思います。しかしながら、警察のこれらの事件に対する対応、処置は不誠実の一語に尽きるのであります。  私どもは、警察が真に国民のための警察に立ち返ることを願って、去る七月に開催した全国大会において、警察制度の民主的改革を求めて、警備公安警察の廃止、財政を含めた警察情報の公開、警察オンブズマン制度の創設、独立した事務局を持つ公選制の公安委員会による指導と監督権限の強化、国会及び都道府県議会の中に調査弾劾機関を設置すること、キャリアシステムを廃止し、警察官の団結権、団体交渉権の保障、以上の六つの提言を採択しました。  この決定に基づきまして、総理大臣への要請署名運動を展開し、また市民のための警察の実現を願う広範な市民団体と提携して世論に訴えているところです。  きょう、このように委員会にお招きいただきまして、幾つかの問題についてお述べさせていただく機会をいただきましたことをここに感謝申し上げる次第でございます。  申し上げたい第一は、自浄能力が欠如し、裁判の判決さえ無視する警察の体質の問題でございます。  先ほど申し上げた警察による電話盗聴事件の被害者である緒方靖夫氏とその家族が提起した責任追及裁判について、東京地方裁判所が警察組織的犯行だとの判決を宣告したその前日、神奈川県警本部の幹部は、国も県も全面否定したのに何も話せるわけがないじゃないか、それが組織というものだ、晴れていたって気象庁が雨だと言えば雨なんだ、そして、何年かたってその日は雨だったということが真実になるんだと語っておりました。法治国家において法を厳守すべき責務にある警察が、このように裁判所の判決さえ無視してはばからない言辞を吐いているのであります。  次いで高等裁判所は、憲法上保障されている重要な人権である通信の秘密を初め、プライバシーの権利、政治活動の自由などが警察官によって電話の盗聴という違法行為によって侵害されたものである点は極めて重大であると言わなければならないと、厳しく警察犯罪行為を弾劾したのであります。  通常の社会人であるならば、このような判決が出たならば何よりも先に被害者に対して三顧の礼を尽くすべきでしょう。しかし、警察当局はいまだに被害者に謝罪の意思さえ表明しておりません。それどころか、この犯行に関与したと思われる警察官の幹部が長野県警本部長、鹿児島県警本部長、警察大学の校長等々に栄転しているのが現実でございます。  その神奈川県警が、今度は、県警本部長が警察官が引き起こした犯罪のもみ消しのために陣頭指揮をとっていたという事件が発覚したのであります。裁判所の判決さえも無視することを公言し、自浄の意思を持ち合わせていない今日の警察の転落のさまとその行き着く落ちつき先を劇的に明らかにしたものではないでしょうか。  裁判の結果さえ無視する警察の体質を示す事例として、一九七八年、福岡高等裁判所で言い渡した直方スパイ調査事件、及び九六年、同じ福岡高裁が言い渡した芦屋派出所不法監禁スパイ強要事件国賠請求事件の裁判について御紹介いたします。  さきのスパイ調査事件は、福岡県警の現職警察官が、ある労働組合の幹部をしていた日本共産党の党員を金銭で籠絡してスパイとして活動させていたことが発覚、共産党が数名の幹部による調査委員会を設けてその人物を調査したことを福岡県警が不法監禁だとして弾圧した事件であります。この事件について、福岡高等裁判所の判決は次のように述べております。  いまだ公安を害する事態や犯罪が具体的に発生するおそれのない日常活動においてまで、ある個人、団体に対し継続的、組織的、秘密裏に情報収集活動を実施することは、その手段、方法のいかんを問わず、その個人、団体にとっては不断の監視と探索のもとに置かれ、いわれのない無形の圧力を受けることになり、その個人、団体が共有する憲法上の権利及び自由を不当に侵害し、かつ脅かすことになる。警察情報活動が適法であると言えるためには、その行為の動機、目的が警察法第二条一項の責務規定に含まれる正当なものであり、その必要性が具体的、客観的に認められる場合でなければならない。いやしくも法律上権限を有する国家機関である以上、右の活動に従事する警察官社会的、倫理的に非難されるような手段、方法によることは許されない。日本共産党が党規約にのっとって調査委員会を設置しそのスパイ容疑を追及しようとしたこと自体は、同党の結社の自由及び党員の思想、良心の自由を擁護するため、かつ組織防衛上当然の権利の行使である。本件警備情報収集活動は、その手段、方法において社会的、倫理的に非難されるに値する不当なものであり、違法なものと言わざるを得ないと、厳しく警察の不法行為を弾劾しています。  ところが、その同じ福岡県警の警備公安警察が八四年十一月の深夜、帰宅中の民青同盟員であった青年をいわれのない道交法違反の容疑を口実にして派出所に同行し、長時間にわたって二階の一室に監禁して、彼にスパイとなるよう強要した事件が発覚したのであります。  川上という青年が提起した国家賠償請求訴訟を審理した福岡高裁は、警備警察官が交通違反を口実に派出所の一室に入れて出入り口を立ちふさいで退出できないようにし、彼の手を押さえて電話をかけさせず、窓をあけて大声で助けてくれと叫んだら実力で引き戻して押し込むなどして執拗にスパイとなるよう強要したとの事実を認定し、こうした行為が違法であることは明らかであると厳しく批判しております。  川上氏のこの事件は、公安調査局の調査官が身分を隠して川上氏に接近したその場を警備警察官がカメラで隠し撮りをし、その上でさきの方法で彼を監禁してその写真を示して、おまえは公安調査庁のスパイだ、今度はおれたちの手先になれと強要した極めて卑劣な事件であります。警察は、裁判所の判決など全く眼中に置かず、違法行為を繰り返している集団以外の何物でもないという事実はここにも示されているものと思います。  第二の問題として、私は警察から独立した監察機関の確立が必要であると考えます。  神奈川県警による犯罪もみ消し事件とほとんど同じころ、新潟県警による雪見酒事件が発覚し、その後相次いで、警察官の怠慢により善良な市民が殺害された事件や捜査情報横流し、警察官犯罪のもみ消しなどなどが明らかにされています。心ある国民は、警察は最高幹部の多くが警察官としての自覚や罪の意識、違法行為への反省心などを失っており、それが今日の救いがたい事態に追い込んでしまったのではないかと憂慮しております。  神奈川県警本部長が一連警察犯罪不祥事を隠ぺいし温存する役割を果たしたという事実は、警察の反社会的行為の是正を警察に求めることは今や不可能であることを示しているのではないでしょうか。警察内部による監察、調査では自浄作用は機能していないことが明らかになった以上、警察から独立した監察機関を設立することこそが市民のための警察を実現する上で必要不可欠であると考えます。  警察犯罪不祥事が絶えてやまないもう一つの原因は、警察の極端な秘密主義によるものと思います。  警察機関誌と言われる日刊警察に紹介された不祥事対策についての島根県警の昇任試験問題は、警察は秘密主義と犯罪隠ぺいの教育を制度化していることを示すものでした。昨今のマスコミをにぎわせている警察による一連犯罪行為、不祥事件は警察全般にわたって事件隠しを組織的に、また日常的に行ってきた、そのためにたまり過ぎたうみが今あふれ出ているのではないかと考えます。  第三に、私は警察情報を公開し、あるべき警察の姿を国民の目の前に明らかにすることが大事だと思います。  本年度の警察白書には、国民警察に対する信頼度が大きく低下していることが示されています。一連不祥事などだけではなく、警察の閉鎖的で秘密的な体質に対する国民の批判と不満のあらわれだと言うべきでしょう。緒方氏宅電話盗聴事件その他多くの裁判に出廷した警察官は、クロをシロと言いくるめたり、知らぬ存ぜぬを繰り返したり、捜査上の秘密、言いたくないなどと証言して真実発見に非協力の態度を貫き続けています。  警察予算の執行状況組織、とりわけ警備警察の配備状況、教育や人事など警察の実態は国民の前に明らかにされておりません。このような警察の秘密主義が警察の腐敗を生み出す要因の一つになっているのであろうと思います。  そこで、国民信頼を回復するためには、警察組織と活動を国民の前に明らかにすることが重要であると思います。そのためには情報公開は不可欠であり、これによってこそ国民から疎んぜられている警察国民に親しまれる警察に戻る第一歩となるものと確信します。情報公開対象機関警察を加え、個別の事件の捜査情報を除いて警察組織、実態、予算の執行状況などの情報を公開するべきであると思います。  第四は、警備公安警察偏重の警察制度を改めることであります。  秘密主義が警察に蔓延する最大の理由は、国民の生命、財産を守る刑事警察よりも警備公安警察偏重であると多くの識者は指摘しています。緒方宅電話盗聴事件では、警備公安警察の中には公安四係という秘密警察中の秘密警察までも存在していることが明らかになりました。  憲法、警察法、刑法などを無視して、革新政党や労働組合、民主的市民団体などを敵視してスパイ、盗聴などの犯罪的行為を重ねている警備公安警察は廃止し、国民の安全のための警察に改めていくことこそ肝要であると考えます。  第五に、警察から独立した公安委員会を求めます。  本来、警察を管理すべき公安委員会は、これまで全くと言っていいほど機能しておりません。公安委員会警察に推薦された人のみによって構成されており、また警察法第五条には国家公安委員会警察庁を管理すると規定されておりますが、しかし実務を担当する部屋もなく、現職警察官事務局となって実務を行っている状況です。公安委員会警察に管理されているのではないかと言われてもいたし方ありません。  そこで、公安委員会の選任方法を抜本的に改めて国民の前にガラス張りにすること、そして警察から独立した事務局体制を確立し、警察監察の権限を強化することが必要であると考えます。  警察制度の民主的改革は、我が国の日本の民主主義の将来にかかわる極めて重要な問題であります。それだけに、我が国の日本警察制度が抜本的に改善されることを強く願って私の陳述を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  18. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) どうもありがとうございました。  以上で参考人皆様からの御意見の陳述は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  19. 山下英利

    ○山下英利君 自由民主党の山下英利でございます。  本日は、この警察法改正にかかわりまして参考人皆様に御質問をさせていただきます。  まず、今回の警察法の改正に伴いまして、これは一連警察不祥事によって損なわれた警察に対する国民信頼を一日も早く回復する、そして我々国民が本当に安心して、頼りになる警察、そういった警察を一日も早く取り戻したい、そのような観点から、今回の監察力の強化、すなわち最も警察法の改正で言われております公安委員会の管理機能の充実ということが大きなテーマであろうかと私は考えております。  警察刷新に関する緊急提言の中で、透明性を高めるための公安委員会機能強化と活性化、それから身近な警察、いわゆる防犯に対しては苦情の適切な処理、それから警察署協議会の設置といった形での対応、この側面から今回の警察法の改正案がつくられていると、そういうふうに私は認識しております。  時間も限られておりますので、質問を簡潔に申し上げていきたいと思います。  警察専門家でない公安委員が大所高所から判断して警察を管理するといった現在の警察制度警察行政の民主的な運営と政治的中立性の確保という役割をこれまで果たしてきたというものでありますけれども、これを今後も維持するべきだと、私もそのように考えております。  ここで、参考人の方にお伺いいたしますけれども、現行の公安委員会制度というものに対する評価についてどのような所見をお持ちになっていらっしゃるか、行政法に詳しい小幡参考人と、それから警察について著書が多い久保参考人に改めてお伺いしたい。  よろしくお願いします。
  20. 小幡純子

    参考人小幡純子君) それでは、座ったままでよろしゅうございますか。  公安委員会制度につきましては、私の先ほどの意見陳述でも申し上げましたように、戦後すぐ民主的な警察を誕生せしめようということでできたものでございます。  私ども、行政法の生みの親とも言われます田中二郎博士が「公安委員会制度の構想」というのを論文で書いておられまして、「日本国憲法の精神に則り、「民主的権威の組織」として構想されたものであつて、直接間接、「人民の機関」としてポプュラー・コントロールの下に立たしめられているのである。」というふうな言い方がされておりますけれども、私は、この基本的な公安委員会制度の本来あるべき当初の考えられていた機能というのを今後生かしていくべきではないかという趣旨で意見を申しましたけれども、確かに従来、今回のこういう不祥事を発生せしめたということについて十分機能していないのではないかというのは、私の後の参考人先生方の御意見にもございましたが、しかしながら、だからこそ今回、監察について疑義があったところを具体的、個別的指示権を明示することによって、さらに点検システム、苦情処理システムというふうなものを整備することによって、復活というか生き返らせてはどうかということが私の意見でございます。
  21. 久保博司

    参考人久保博司君) 先ほど申し上げましたように、現在の公安委員会制度というのは全く機能していないというのが私の認識であります。  これは、一つは、戦後、四十何年ですか、この現在の警察制度になってから、ある時期に人選の面で変わりました。というのは、当初この委員の人選に関しては、国家公安委員会の場合は国会の意向がかなり強く反映していまして、各党推薦の委員が出ていたわけなんですけれども、ある時期から全く国会が関与しなくなった、人選に関しては口を出さなくなった。これは具体的な名前を申し上げると差し支えがありますので申し上げませんが、ある人を推薦したときに警察庁がこぞって反対したわけですね。そのときには国会の意向が通ってその委員は実現したんですけれども、その後、国会は何も言わなくなった。つまり、その時点で人選に関しては全く警察庁ベースでなされるようになったということが一つあります。  それからもう一つは、基本的には、例えばロサンゼルス市警察の場合には日本に似たような警察委員会組織を持っているんですが、この場合、人選は、例えば弁護士であるとか、白人、黒人、それから市民運動家とか、そのバランスを考えて人選しております。しかも、警察活動に関して詳しい人を人選しているわけでございます。ところが日本の場合は、功成り名を遂げた人たち、財界の人たちあるいは大学先生とか、そういった人たちが、警察については全く知らない方々がなっている。これは日本の良識を代表するということでもありますけれども、じゃ具体的な問題があったときにそれにどういうコメントをすればいいのか、恐らくなかなかそこら辺は難しいんじゃないかと思います。  大体週一回、二時間の会合で十項目ぐらいの提案がなされるわけでございます、報告といいますか、提案といいますか。そうすると、一項目を説明するだけで十分、二十分かかりますと、一時間以上はその説明だけで終わるわけであります。そしてその後に、じゃ何をどう質問してどう判断すればいいか、そういう時間が非常に短い、そしゃくできないんじゃないかということが考えられます。しかも素人であるということがあります。  具体的な運営についてはいろいろ細々とありますけれども、そういったことで、今ただ名目だけの機関になってしまっている。もっと悪い言い方をすれば、その国家公安委員会あるいは公安委員会を後ろ盾にして、警察は完全に独立して自由に警察活動をやるような状況になっているというのが私の認識であります。  ですから、今後は、もしこの委員会制度を続けるとすれば人選の面でまず考えるべきです。  例えばイギリスの警察委員会の場合には、市町村長、それから市議会の議員、それに市民の代表、この三つで構成されることになっているわけです。これは、こういう形にしますと政治が非常に大きく関与するということで日本では抵抗があると思いますけれども、警察活動あるいは社会の安全、そういったことにもっと直接的な責任を持っている、あるいはそれに携わった人たちを少なくとも人選すべきではないだろうかと考えております。  以上です。
  22. 山下英利

    ○山下英利君 ありがとうございました。  政府案では、公安委員会がみずから監察するということにしなくて、公安委員会警察の行う監察をチェックするという仕組みになっています。このような仕組みというものは適切なものかどうか。  そしてまた、政府の考え方は、公安委員会には独立した事務局を置かないで、警察における補佐体制を充実強化させるという考え方をとっております。この点についてどうお考えになるか。  また、こういった考え方に対して、政府案の考え方では公安委員会がますます警察の言いなりになってしまうといった批判もあるわけですけれども、限られた資源を有効に活用する、あるいは情報公開といった側面からも考えると、この点についてどうお考えになるか。  小幡参考人にお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
  23. 小幡純子

    参考人小幡純子君) それではお答えさせていただきます。  公安委員会というものは、警察専門家ではなく素人がなるというシステムになってございますので、直接その委員みずから出張っていって監察をみずからするというのにはやはり限界があるのではないか。それを、大まかな監督しかできないというのではどうしようもないわけでございますが、今回の政府案では、具体的、個別的指示というふうな、つまり警察が監察するのについて具体的、個別的指示権というのが明確にされてございます。これは結果的に、むしろ効率的には、みずから監察するよりは厳しく個別的に指示をしていった方が効率のよい監察ができるのではないかと私は考えますので、この点については特段問題はないのではないかと考えております。  それから、事務局に関してでございますが、先ほどの意見陳述の中でも申し上げましたように、これは制度の組み方として絶対にこうでなければいけないという法律論があるわけではございませんが、ただ公正取引委員会のような形を公安委員会でとらせるというのはそもそも難しいのではないか。公安委員会自身が素人集団であるというふうにつくってございますので、そこに自前の事務局をまた設けても距離が迂遠になって効率性を欠くだけになるのではないかと。  そこで、私が先ほど申しましたのは、補佐体制をそのかわりしっかり、確かに公安委員会の方はやる仕事が多くて大変でございますので、警察の補佐体制というのを今よりは増員する、あるいは公安委員一人一人にきちっと補佐官を置くとか、いろいろなやり方があるかと思いますが、そういった形で充実するという方法でよいのではないかと。  なぜそれでよいかというと、先ほどもちょっと申しましたように、人事上のコントロール権を自分が持っているわけでございますから、そういう意味では警察の言いなりということは本来あり得ないはずでございますし、また苦情申し出についてこたえなければいけないというシステムまで入りますれば、これはともかく苦情として申し出られたものが目の前にございますので、何らかの処理をしなければならないということになりますので、そういった観点からは、とりあえず事務局自前という必要性はなく、むしろ警察の補佐体制を充実という方向ではどうかなと私は考えております。  以上でございます。
  24. 山下英利

    ○山下英利君 どうもありがとうございました。  ポイントは、組織の中での教育の面あるいは組織の効率的な運用というところになるかと思うんです。  次の質問で、野党案では、公安委員会のほかに苦情処理委員会あるいは警察監視委員会を設置したり、あるいは警察監察委員を置いたりしている、そういった形なんですが、こうした考え方と、まず管理機関たる公安委員会の監察や苦情処理の権限を明確化してその機能を強化する考え方とではいずれが適当かということをお伺い申し上げます。  すなわち、情報管理という面から考えた場合には、いわゆる情報を集中することも必要でしょうけれども、リスクを分散するということも考えなければいけないんじゃないかなと思っています。それに伴って組織を効率的に運用する。これは、こういった考え方をいろいろ取り込んで方向性を出していくという必要があろうかと思います。  この点につきまして前田参考人にお伺いさせていただきます。よろしくお願いします。
  25. 前田雅英

    参考人前田雅英君) 先ほどの私の説明で言葉が足りなかったところもあって御質問いただいたんだと思うんですけれども、要するに、公安委員会のほかに苦情処理委員会とか警察監視委員会なんかを別個に設けることの合理性というのは、論理的にはもちろん可能なんですが、政策判断としてどっちが合理的かというと、私は、まず管理機関たる公安委員会機能を高めていく、そのためには、従来抽象的な権限があったとも読めるわけですけれども、それをきちっと書くことによって、それを一つきっかけとして動いていなかった機能を活性化するといいますか、まずそれをやるのが合理的だと思います。機能がダブりますと、というか同じようなシステムを二つ走らせるということは、多くの場合、非常にむだになるというだけでなくて両方の機能が動かなくなるという問題をはらんでくると思います。  それから、御指摘の情報管理の問題も非常に問題を含んでいると思いますが、私は、端的に言って、先ほど申し上げた警察資源といいますか警察に配分できる人的資源の合理的適用と、それからしなやかな監察、監査を行うためには、まず政府案のようなものをやってみて、その具体的な問題点が出てきたところで修正していくという方向をとるべきです。外部的な委員会を新たにぽんとつくる、ちょっと考えますと完全な外部の方がきちっと監視ができるというふうに見えるんですが、私はむしろ逆で、全く外から対立するものとして締め上げるというような形の情報のとり方といいますか管理の仕方というのは、少なくとも日本的ではないと。  いろんな議論を見ていて思うんですが、選挙で選ばれたシステムで管理するという欧米型のシステムばかりで考えているんですが、二十一世紀警察警察の問題だけじゃないんですが、私は日本独自の法律的な物の考え方というのがもっともっと表に出てこないといけないと思っています。その意味で、この管理制度というのは、やはり一つの特色のある、これをまた発展させてまさにしなやかな監察制度をつくって、日本国民のためになるものをぜひつくっていただきたい。お願いしたいと思います。
  26. 山下英利

    ○山下英利君 ありがとうございました。  さらに次の質問でございますけれども、警察に関する制度設計、これは最終的に警察信頼できるかどうかという点にかかわってくると思っております。国民のための身近な警察、安心して生活ができる、そういった生活面を守ってくれる警察と言われる部分について、この点について、警察信頼できるかどうかという点をこの制度というものに織り込んだ考え方を前田参考人からお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
  27. 前田雅英

    参考人前田雅英君) 私が一番最初に申し上げましたように、犯罪がふえているから警察を強化しろと幾ら言ったって、国民の支持のない警察であれば人がふえたって何の意味もないわけですね。  ただ私、学者としていろんな研究をしている中で痛切に感じるのは、もちろんこの社会警察に対して不満を持たない方はいないはずはありません、どんな社会だってそうです。ただ、相対的にその割合がどの程度かということなんですね。世界的に見て、日本警察信頼度というのは私は高いと思います。非常に身近な経験で言えば、私が警察関係の調査研究なんかをやりまして、警察の要望なんかを地域についてやりますと、一番最初に自由な書き込みで何が返ってくるか。そうすると、まず、うちのそばに交番をつくってください、不安でしようがないんだ、警察をそばに置いてほしいというのが一時期に比べて非常にふえてきている。  確かに、マスコミ情報なんかで警察に対して不満はあるし、不祥事に腹が立ちます。直していただかなきゃ困る。しかし、それは直すべき病変であって、警察を、さっき申し上げた二十六万、全取っかえしなきゃいけないというような議論とは全然つながらない。むしろ私は、まだまだ国民から信頼されている警察なんだから、今のうちにまずいところを直して、もっと信頼の置ける警察に持っていっていただきたい、こう考えます。
  28. 山下英利

    ○山下英利君 まことにありがとうございました。  御意見を伺っていて、今回の政府案というものが警察刷新に対して一歩二歩前進できるものだ、そのような理解をさせていただきました。  私の質問はこれで終わります。ありがとうございました。
  29. 菅川健二

    ○菅川健二君 民主党の菅川健二です。  参考人の四人の皆様方には大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  実は民主党としましても、衆議院の段階におきまして独自案を提出いたしたわけでございます。しかしながら、衆議院におきましては政府案が可決され、そして我々の案は否決になったということで、参議院の段階では現在のところ独自案を出していないわけでございますが、我々が一番問題にいたしておりますのは、何といいましても警察の今日の不祥事というのは、警察をチェックする機能が十分でなかったんではないか、それから苦情処理について、これも十分適正に処理されていなかったんではないかという反省の上に立って、どうやって警察制度機能させていくかということが大きなポイントであったわけでございます。  そこで問題は、先ほど来ございますように、公安委員会機能との関係につながってくるわけでございますが、公安委員会そのものの制度はそれなりの制度としてやはり生かすべきではないかということでございまして、それよりもほかに、別に屋上屋を重ねるとか別の組織を設けるとかということではございませんで、公安委員会そのものの機能を強化していくのが重要ではないかというふうに考えておるわけでございます。  そこで、まず公安委員会の現状につきましては、私も長い間県庁の経験がございますので、その中でも教育委員会にも十年近くおりましたので、大体委員会制度の持つ意味といいますか、そういったものはある程度わかっておるというか、公安委員会制度につきましても、知事部局で私は総務部長等をやっておりましたので、大体どういった機能を果たしておるかということは現状においてはよくわかるわけでございますが、そういった点、久保参考人が言われましたように、正直な話、実際はお飾りのようなものでございまして、むしろ公安委員会が何も指揮管理しない方が警察はうまくいくといいますか、そういった形であったわけでございますが、こんな今のような状況になって、非常に警察不信が大きな問題になっておるときに、公安委員会をどうするのがいいのかということが一番の問われておることではないかと思うわけでございます。  そこで、公安委員会機能、権限につきましては、それなりのことを今度の改正案を見ましても新しく付与されておるわけでございます。しかしながら、それを処理する能力が付与されておるかどうかということになりますと、全くその処理する能力が付与されていない。警察の方がある程度補佐するということについて明確になっておるわけでございますが、警察が幾ら補佐しても公安委員会機能が強化されるというのは必ずしも言えないわけでございまして、情報を全部警察が握って、その警察情報に基づいて公安委員会が判断するということでございますので、警察情報をコントロールすれば公安委員会が全く機能しないという形になるわけでございます。  そこで、私どもの考えとしては、何としても監察、そして苦情処理、それにかかわる部分については独自の公安委員会としての補助職員を持つべきではないかということを主張いたしておるわけでございます。そうすることによって初めて権限と同時に公安委員会としての処理能力がついていくのではないかと思うわけでございます。  この点について、前田参考人小幡参考人、いろいろお話をお聞きいたしましたけれども、再度ちょっとお話をお伺いいたしたいと思います。
  30. 前田雅英

    参考人前田雅英君) 御指摘は非常によくわかりますし、私も基本的には同じ問題があると思っております。  先ほど申し上げましたように、いかに公安委員会機能させるかということで、ここで法律をつくって、抽象的な権限を一つ書き込むことによって具体化していくということ、それから補佐人制度、それだけで一〇〇%うまくいくということではないと思うんです。先ほど申し上げた情報公開とのバランス、組み合わせによるしなやかなシステムというのは、そうやって機能をしなければバッシングを受けるというサンクションがついていなければやはりまずいと思います。  ただ、そのときに、機能させるために、今おっしゃった警察からの情報が限られているからといいますかコントロールされるのでうまく機能しないんじゃないかという御指摘なんですけれども、これを警察がやりますと、これは何らかの形で必ず今のシステムの中では表に出てきてしまう。一〇〇%つるんで隠しおおせるようなものというのはそんなにあり得ないと私は思います。どこかで必ずしっぽが出てくる。出てきたときのダメージ、この間の神奈川県警にしろ何にしろそうなんですが、それはもう反省していただかなきゃ困るし、しているはずなんです。  その中で、ですから公安委員会機能させるために警察の補助委員だからというのは、むしろ警察から情報がとれるから機能するという面の方が大きいと私は考えるんです。ただ、週何回かのあれだけの時間でお飾り的なものだったという面が確かにあったと思うんです。それが急転するかというと、ですから委員会の時間数とかそういうものの工夫とか、実際に機能するような手当てをしていかなきゃいけないというのは御指摘のとおりだと思います。  そのときに、補助する人間とか組織警察外人間に入れかえれば機能するという発想が私はよくわからないんです。情報がきちっと上がっていって、しかも、あとマスコミの仕事でもあり、ほかのところでもあると思うんですが、常にそれを外から見てどういう仕事をしているか、これがチェックされる。これからは情報公開の時代ですから、それはもう避けられないんだと思うんです。  それとの組み合わせで、私は少なくとも一〇〇%すばらしいものにすぐ変わるとは申し上げませんが、今度の改正で一歩も二歩も前進するし、それを、この地行もそうなんですが、さらに前に進めるようにやっていただきたい。少なくとも今回の改正案でかなりよくなるのではないかと期待しているというのが私の考えでございます。ちょっと言葉が足りませんが。
  31. 小幡純子

    参考人小幡純子君) 公安委員会の方に処理する能力が備わっていないとという御指摘かと思います。  まず、警察情報を隠してしまうのではないかという点に関してでございますが、私はこの点は、苦情の申し出を直接公安委員会が受けるということが大きな役割を果たすのではないかと思っております。逆に、苦情処理委員会のようなものを置くよりは直接公安委員会に行くというシステムをつくった方がよろしいのではないか。警察の方がたとえ隠して上げなかったとしても苦情の申し出の方は来てしまうという可能性はございますので、それを使うこと、それと相まつことによって公安委員会というのは機能せざるを得なくなるのではないかという期待をしております。  もちろん、確かに従来必ずしも機能していない、活性化していなかった公安委員会法改正で直ちにすぐ生まれ変わるようになるかというのはなかなか難しいかもしれませんが、これはやはり国民の意識も含めて、公安委員会というのは自分たちのものだ、つまり警察国民の間に入って、むしろ国民の立場において警察の上に立っているんだという意識を国民が持ってどんどん苦情申し出をするということでも構いませんし、国民ともども公安委員会委員の方々にもできれば生まれ変わっていただきたいなというのが私の考えでございます。
  32. 菅川健二

    ○菅川健二君 今の公安委員会機能の強化の問題ですけれども、確かに今一歩前進ということにはなろうかと思いますが、例えば苦情処理につきましても、公安委員会が受けるといいましても、フロントになりますと公安委員がいつもおるわけではございませんので、フロントは全部警察庁で受けるという形になるんじゃないかと思うんです。そうすると、文書で確実に出た場合はそれは処理するということはあるにしても、警察署に持っていって、さあどうだろうといって警察そのものがなかなか持っていかないといいますか、国民としてはなかなか近づきがたいものなんです。しかも、警察にはむしろ秘密にしておきたいという苦情もあると思うんです。したがって、私はやはり必要最小限度の独自の補助組織を持つべきではないかと思うわけでございます。  ただ、お二人の先生方が、独自の補助組織を持つとこれは全く素人ではないかと言われるんですが、これは私の考えではそうじゃございませんで、警察官の御出身の方もたくさんおられても結構ですし、それから行政ということになりますと、警察行政のみならず他の土木行政、企画行政、いろいろ知事部局のほかの、あるいは政府でいえば各省の行政とも密接に結びついておる部門があるわけでございます。そういったところからの役人同士としての人事交流ということもあるわけでございまして、そういった面ではより幅の広い立場から処理ができるというメリットもありますし、またひもつきではございませんので、公安委員の指示というものを、あるいは公安委員会情報というものをきちっと上げられるシステムも十分機能するようになるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  この点につきまして、水かけ論になりますので、私どもの方としては、今の政府案では、一歩前進という面はあるにしても、なかなか機能しないのではないかということを非常に恐れるわけでございます。  それから、前田先生の方から話がございましたけれども、警察増員の問題、この点につきましては、確かにいろいろと犯罪がふえることによる増員というものも当然検討されてしかるべきだと思うわけでございますが、戦後の警察組織流れを見ますと、御案内のように、公安警備というものが戦後混乱期はずっと大きなウエートを占めてきたわけでございまして、現在もなお機動隊が全国に一万人もおるわけでございます。多い少ないのいろいろな御意見はあろうかと思いますが、そういった公安警備につきましてはかなり私は手厚い措置がなされておると。世の中がかなり変わって今安定をして、むしろ国民生活部門についてのあるいは刑事部門についての役割というのはずっとふえておるわけでございます。その役割転換に従って警察組織なり陣容なりを変えていく、そういったことがどちらかといえばややおろそかになっておるのではなかろうかということを考えておるわけでございますが、前田参考人とそれから久保参考人にひとつその点についてどうお考えか、お聞きいたしたいと思います。
  33. 前田雅英

    参考人前田雅英君) 今の公安警察の話の前に一言先生の御指摘は非常にごもっともだと思いますので、ちょっと敷衍させて御説明というか意見を述べさせていただきますと、窓口が警察で苦情が行きにくいとか、それはもう御指摘のとおりだと思います。ほかとの人事交流とかいろいろあるので、だから完全に別個のというんじゃなくて、政府案の中でより具体的なものをどうしていくかということは非常に重要で、ぜひ具体化のレベルで今のような御意見を生かしていただきたいというのが一つ。  公安警察の件ですが、私は御指摘のとおりの面がかなりあると思いますね。ただ、生活安全局が筆頭局になって、そして徐々に徐々に変わってはきている。その中で、こういう動きというのは常にワンテンポ現実からおくれるわけです。御指摘のような声がどんどん強くなって、合理的な範囲で国民の生活に合うように配置を変えていくということが必要だし、私は必ずそうなっていくと思います。ただ、その一万の数を全部なくすわけにはいかないし、それで先ほど申し上げたような課題に日本が取り組めるかといったら、それでは私は足りない。ただ、御指摘のことは非常に大事だと思います。
  34. 久保博司

    参考人久保博司君) まず窓口の問題ですけれども、この前、警察刷新会議のときに、インターネットでたくさん市民の声を集めた。これは、件数は忘れましたが、相当な件数に上ったわけです。それを警察庁で選別して、そしてその中の一部を警察刷新会議に上げたということを私は警察の内部関係者から聞いておりますので、その選択過程は警察庁当局の意向が反映しているということで、必ずしも警察庁でも窓口はいいんじゃないかという考え方は成り立たないんじゃないかと、一言申し上げます。  それから、機動隊の問題ですが、確かに今の機動隊は人数が多いと思います。ただし、機動隊というのはいつも任務があるわけじゃございませんで、何かのときには大勢必要なんですね。でも、平穏時には何人も要らないと、そういうふだんの警察活動とは全く性質が違いますので。じゃ警察人員が足りないから機動隊をなくすかというとそういうわけにもいきませんで、やっぱりある一定程度の、それは全国で一万人必要なのか五千人必要なのかは別としまして、一定程度の規模の機動隊は必要なんです。ただ、今その機動隊が非常に遊んでいる状態がある。なぜそうなのか。一方では人員が足りなくて困っている、一方では何もしなくて毎日練習だけやっている、訓練だけやっている、そういう状況がある。なぜなのか。  これは法律の問題が一つあるわけです。つまり、機動隊が活動するためにはこうこうこういう状況でなければいけないという規則があるわけですね。その規則に縛られて、例えば防犯活動をやりたいけれども動員できないとか、そういう細々とした規則がどうもあるようでございます。細かいことは警察当局の方が詳しいと思いますけれども。  そういうことをもっと改正しまして、機動隊がいろんな活動に参加できる、そういう法制度に持っていくと、現在の機動隊の人員がたとえ全国一万人いても、それをもって人員のむだ遣いではないかということは言えないんだろうと思います。  それからもう一つ増員の問題ですが、確かに今の警察官は非常に、私は日常接触しましてかわいそうなぐらいよく働いているわけですね。いつも携帯電話で連絡をとり合うんですけれども、それでもまだ仕事中で電話に出られないとか、いろんな状況がありまして、一カ月にうちに帰るのは三日とか四日とか、そういう方もおられますし、非常に忙しい、それは確かです。人員不足であることは間違いないです。  ただし、だからその足りない分だけ増員すればいいかということではなくて、非常に今管理部門に人が多過ぎるわけです。この管理部門を半分ぐらいにして、全部現場におろせばどうなるかと。それはそれなりに警察活動はちゃんとやっていけるんです。管理部門を膨らませると、膨らませたそのまた余分な仕事をつくってしまう。管理部門というのはそういう性格なんですね。管理部門が膨れて自分が仕事をつくる、そうすると現場にまた仕事をおろしてくる。つまり、こういう報告をよこせ、こういう報告をよこせというふうに具体的に細かいことを要求してくるわけです。そうすると、最近交番をのぞくとどうなっているかといいますと、いつも机に座って書類を書いているわけですね。これだったら立番であるとか見張りとか、そういうことはできません。巡回連絡もなかなかやる時間がないという、そういう状況であります。  ですから、管理部門を減らす、これが大前提であります。そのためには、警察庁の警察本部に対する関与を減らす、軽くするということが必要です。警察本部の管理部門は何をやっているかというと、かなりの部分警察庁に報告するために書類づくりを一生懸命やっているわけです。その書類づくりをするために今度は交番のお巡りさんにまでも書類をつくらせる、そういうつながりになっていますので、警察庁の警察活動に対する関与を減らしていく、これが基本的に重要なことであります。その上で足りない部分をどんどん増員すればいいと思います。  これは行政改革で公務員をふやしてはいけないということではありませんので、むしろ行政改革の基本は、はしの上げ下げをいろいろ指示するということではなくて、みんな規制してしまう、つまりルールをつくってそれを守らない人を摘発して罰しますよと、それが行政改革の本質だと思うんです。  ですから、警察というのはルールをつくってそのルールを守らない人を摘発するのが仕事なんですから、行政改革だから警察官をもうふやしちゃいけないとか、そういう論理は成り立たないと思います。  以上です。
  35. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) もう持ち時間がなくなりましたが、菅川健二君、いいですか。
  36. 菅川健二

    ○菅川健二君 どうもありがとうございました。
  37. 大森礼子

    ○大森礼子君 公明党の大森礼子です。  参考人皆様、きょうは大変にありがとうございます。  まず最初に、すべての参考人の方に一言ずつとなるかと思いますが、お伺いしたいと思います。  改正案の五十三条の二で警察署協議会が設けられることになりました。住民等の意見警察行政に反映させるためのものですけれども、これをどういうふうにして成功させるかという点について、運営上の留意点といいますか、これを本当によりよい制度とするためにこんなところに注意していったらいいんじゃないかという、このような一口アドバイス的なものをいただければと思います。  前田参考人の方から順次お答えいただければと思います。
  38. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) それじゃ、時間が限られていますので、できるだけ手短によろしくお願いします。  前田参考人からどうぞ。
  39. 前田雅英

    参考人前田雅英君) 先ほどどなたかの御意見でありましたように、防犯協会とかいろいろ今までの既存のものがあるわけですね。それをさらに発展させるために、今の新しい住民運動とかなんとかというものにも少し開くような形で、あと地方自治体との連携、それを広く考えていくべきだと思います。要するに、警察の側から見るとこういう問題になるんですが、自治体の側でも、いろいろな地域にどうやって手を伸ばして、足のついたいろんな施策ができるかというのはいろいろ苦労していますので、連携ということが非常に重要だと思います。  一言で言うとそういうことになると思います。
  40. 小幡純子

    参考人小幡純子君) 私も人選ではないかと思います。  住民の声を代表するということが大切ですが、年齢層でありますとか、あるいは女性の委員を入れるでありますとか、偏ることなく満遍なく住民の声を入れられるように、最近では少年の非行問題も含めまして、それから児童虐待もございますしストーカーもありますし、地域の安全については非常に皆さん熱心に住民がなっておりますので、できるだけそういう声を吸い上げられるような組織にしてほしいと思います。
  41. 久保博司

    参考人久保博司君) 警察署評議会のことでしたか。
  42. 大森礼子

    ○大森礼子君 警察署協議会のことです。
  43. 久保博司

    参考人久保博司君) 先ほど申し上げましたように苦情の窓口はたくさんありまして、ですからそれはもう十分過ぎるぐらいにあって、それを一々警察官が対応したのでは到底本来の仕事ができない、そういう状況に既になってきているわけです。  ですから、警察署評議会というのは、地域住民を代表して、むしろこのサービスはやりますよ、しかしこのサービスはやりませんよということをそこで決めて、その署単位で決めて、それぞれ地域の事情がありますから、それは非常に警察署単位でやるということが重要だと思いますけれども、それを決めて、それを一般にも公表するということが必要だと思います。ただ警察署が内部で、これはやりますよ、これはやりませんよと決めたんではおかしいではないかという必ずそういう声が出ますので、地域住民を代表してそういうことをやっていく、それが一番今重要なことだと思います。
  44. 山田善二郎

    参考人山田善二郎君) お答えいたします。  実は、私たち国民救援会の事務所の近く、港区ですが、労働組合の機関誌をつくっている会社があります。従業員数百名です。そこの会社の幹部が言っておりましたけれども、愛宕警察署は防犯協会に絶対に私たちの会社は入れないと言っていました。つまり、警察署の都合のいい方を防犯協会の中に組み込むわけですね。もしそういう考え方で警察署評議会ですか、これがつくられたとしたならば、これは結局警察に対する翼賛団体、御用団体みたいなものになってしまうんではないか。そういうことの絶対にないようにすることが必要ではないかと思います。これが第一。  第二の問題は、いろいろな苦情や何かがなされていても、今までよくありますけれども、例えば文書で警察に申し入れなどをすると、これを突き返す例があるんですね。例えば、ある弁護士会が人権侵害の疑いがあると警察署に警告の文書を出したところ、郵送で突き返したというようなことがあります。こういう拒絶体質というか、そういうものを謙虚に改めていくことが先決ではないかと思います。二つ目の問題。  三つ目の問題は、そこで議論された内容は議事録などにして具体的に正確に公表していく。これは久保先生と同じ意見ですが、そういうことに特別に力を入れなければ形つくって魂入れずという結果にならないとも限らないと思います。  以上です。
  45. 大森礼子

    ○大森礼子君 ありがとうございました。  次に、改正案の七十八条の二で苦情処理制度ができたわけです。先ほど小幡参考人の方も、こういうことによって公安委員会機能せざるを得なくなるだろうと。こういう効果はあるわけです。  ただ、今回の一連警察不祥事からいろいろ議論が沸き起こりました。これを受けますと、苦情処理というものはどちらかというと、市民に信頼される警察、愛される警察、こちらの方に重点があるのかなという気もするんですね。  例えば、新潟県警ですか、神奈川県警、この問題もこれはトップの不祥事でございました。それは、トップであるからこそ本当にもう警察に対する国民信頼を根底から覆すような大きな衝撃を与えたと。一方で、前田参考人が御指摘になりましたように、本当にこれからの二十一世紀警察行政というのは、治安状況の悪化とか社会変化とか、非常にそのニーズというものが高まってくる。そうしますと、さっき言ったような大きな不祥事というのを本当に根絶していくというこういう強力なシステムが要るのではないかと思うわけなんです。  それで私は、一連一般質疑等でも、問題は、外からわからないという、ここに問題があるわけだから、例えば内部専用の目安箱といいますか、内部の方で告発できるような制度も必要なのではないかと。悪く言うとそれはチクり制度で、かえって警察官の士気を落としてしまうというところもあるかもわかりませんけれども、もっとシビアに考えて、そこまでドラスチックなやり方というのも実は必要ではないのかなとずっと考えてきたわけであります。  ただ、その場合にも、例えば告発先というものを公安委員会にするのかどうかとか、それから、もし告発した場合にも、だれがしたかという、これは秘密性が保たれなくてはいけないし、それを言った者が不利益を受けないようなシステムというものも必要だと思うのですけれども、こういうさらに苦情処理制度等で一歩進んだ制度について何か必要ではないかと私は思うんです。ちょっと時間の関係があってすべての参考人の方にお聞きできないのですが、前田参考人、それから女性であることから小幡参考人、いかがお考えでしょうか。
  46. 前田雅英

    参考人前田雅英君) 短くあれですけれども。  確かに外から見てということだけでは問題点の摘出が足りないという御指摘はそのとおりだと思いますね。ただ、大森先生も御自身のお言葉の中に含ませておられましたように、それによってその組織機能しにくくなるということが強過ぎてもいけないわけで、そういうシステムも私は政策的に十分選択可能だと思いますが、それを具体的に合理的に動かすようなシステムというのはちょっと研究が必要だと。  ただ、それは我々も考えていかなきゃいけないし、警察もやはりそういう御指摘はどこかに置いて考えていかなきゃいけないと。その意味合理性のある御指摘だと思います。ただ、具体案が非常に難しいと思います。
  47. 小幡純子

    参考人小幡純子君) 私も非常に大事な観点だと思います。  ただ、組織内部においてそういう内部告発のようなものをどういうふうに取り上げていくかというのは、必ずしも法律等で明確にしなくても組織内での検討を今後進めていって何かしらの対応も可能ではないかと存じますので、それは継続して、組織内部の問題でございますので、今後の検討課題としてあるのではないかと存じます。
  48. 大森礼子

    ○大森礼子君 確かに難しいし、まずその内部といいますとやはり身内意識というものがあって、身内意識があるから警察も団結してやれるところがありますので。そこで、例えば公安委員会とかそこら辺にそういうことができるのかと。ただ、小幡参考人がおっしゃいましたように、この苦情申し出制度によってここから公安委員会機能せざるを得ないと、まだこういう段階かもわかりませんので、将来の課題だと思います。  次に、前田参考人にお尋ねいたします。  きょうは大事な点を御指摘いただいたと思います。信頼回復のみでなく、二十一世紀警察行政はどうあるべきか、こういう点から考えていかなくてはいけないと。それから、社会変化という点を御指摘になりまして、家庭脆弱化からくる警察関与の増大とかをおっしゃいました。  今、女性が中心になりまして、女性に対する暴力の防止法とかをしています。それから、ストーカー法にもつくるのに関与しました。本当に警察仕事というのが非常にふえてくると思うんですね。だからこそ市民に信頼される警察でなくてはいけないと思うわけであります。  そこで、前田参考人が御指摘になりましたが、捜査のやり方、手間のかかり方、これもだんだん変わってきていると。それで一つ、私は御意見を伺っていて思ったんですけれども、非常に犯罪やり方も違ってきている。私はよく言うんですけれども、便利なものが発明されたら犯罪者もその便利なものを使って犯罪を犯す。  例えば通信傍受法、これ一つの例ですけれども、政府原案は私は反対でした。修正案に関与いたしたわけなんですけれども。こういう便利なものを使って、特に薬物犯罪なんかで使用されて国民の間に薬物が蔓延していく。薬物というものは体に入ると人権の器そのものを壊してしまうという、こういう危機感を持っておりまして、私は実は検事時代から、薬物犯罪対策についてはおとり捜査、司法取引とか通信傍受でも、これはドラスチックにやるべきではないかと思っていた方なんです。ところが、向こうが便利なものを活用すればそれを押さえる捜査手段が要ると思うのですが、こういう議論になったときに、通信傍受でのあの議論をごらんになっておわかりになるように、やはりこれは人権侵害である、通信の秘密を侵害すると。この場合の通信の秘密は犯罪者のものだと思いますけれども、こういう議論になってくる。  そうしますと、二十一世紀警察のあり方からするならば、私は、国民犯罪に対する意識というものも少し変えていかなくてはいけないのではないかと、こういうふうに思うわけです。人権論というのはとても大事な問題ですけれども、ちょっと情緒に流されていく傾向があるのかなと、もうストレートにお尋ねするわけです。  前田参考人はこの点をどのようにお考えでしょうか。
  49. 前田雅英

    参考人前田雅英君) 私も先生の御活躍はよく存じ上げていまして、基本的には同じ方向で、ですから、やっぱり捜査の考え方も変わっていかなきゃいけない。  先ほど日本型と申し上げましたか、犯罪の中には、もうボーダーレスで国際化していく中で日本だけが被疑者の人権というようなことばかり言って、傍受なんというのは世界に出ればごく当たり前のことですね。それをやらない日本というのは異常な国ですね。そういう中で、日本が人権を守ってきたのにはそれなりの歴史があるし、それは日本のよさであるんですが、やはり転換していかなきゃいけないところは転換していかなきゃいけない。  それから、男女共同参画、今度総務庁でやるもの、私が基調報告させていただくんですが、そういう方向でもどんどん犯罪が広がっていく側面、女性に対しては犯罪を広げていく側面。今までは犯罪を狭く解するほど人権的であるという議論ばっかりしてきたのですが、子供の人権を守る、女性の人権を守る、そういう方向警察力を使っていかなきゃいけないという側面はふえてくると思います。その先生の御指摘のとおりだと考えています。
  50. 大森礼子

    ○大森礼子君 また前田参考人に重なるんですが、もう一つお伺いしたいんですけれども、非常に手間がかかるようになったという一つの、犯罪の対応が非常に複雑になるとそれを立証するための証拠も多様になってくるし、収集自体にも非常に労力がかかるようになると思います。  それで、私は常々思っていたんですが、日本刑事司法といいますか、精密司法でございまして、非常に細かいところにまで証拠を要求すると。これは間違いがない裁判をするためには必要なことだと思うのですけれども、しかし、それにこだわると言うと変ですけれども、余りやり過ぎますと非常に労力がかかり過ぎて、そういうことからも、捜査能力が低下してということにもなりかねない。ですから、これは警察だけの問題でもなくて、日本刑事裁判のあり方、精密司法のあり方がこれでいいのかどうか。  それから、刑事裁判での事実認定につきましても、非常に供述調書というのか、この内容を重視する傾向にあると思います。そして、調書というのは手書きで書くという非常に原始的な方法をとっておりまして、ここら辺はやはり大きな視点で考えていかなくてはいけないのではないか。争っていない事件については簡略化するということも必要ではないかと。  こう考えたときに、また、ではそういうものを国民国民性として支持するかどうかという問題もあるのですが、こういう点について前田参考人はどのようにお考えでしょうか。非常に漠然とした質問で申しわけないのですが。
  51. 前田雅英

    参考人前田雅英君) きょうのテーマの関連で申し上げますと、警察官仕事が多過ぎる、出す書類が多過ぎると。この間、たまたまちょっと論文を書く関係で一件書類を全部いただいたんですが、あるハイテク関係事件で、もう膨大な量ですね。物すごい量で、それをつくる警察官の、これは大変だと思います。  それの簡略化というのはどんどん考えていかなきゃいけないし、それからもう一つ、手書き云々というところはまさに御指摘のとおりで、IT化とかOA化とかいいながら、何であんな段階にとどまっているのか。ただ、警察に入っているOA機器の貧弱さですね、その辺の改善というのはぜひこちらでお願いしたい。むだな労力はなるべく省いて、そしてより国民のためになる活動をしていただきたい。  その意味では、検察にもお願いしたいし裁判所にもお願いしたいんですが、やはり今までどおりの緻密な精密司法を一〇〇%維持するだけの余裕のある事件数ではなくなってきている。それを踏まえた合理化というのは、この場だけではなくて、法務委員会などいろんなところで考えていただきたいと、私はもう常々思っております。
  52. 大森礼子

    ○大森礼子君 それでは、時間の関係で、すべての参考人に、もしあればという形でお尋ねいたします。  今回の改正案というのは、警察刷新会議の提言を受けた形でつくられております。その中で、具体的項目二十ぐらい指摘されまして、改正案では七項目について盛り込まれて、あとは運用や組織改革でやっていくことになると。前回質問しましたところ、その運用とかその改革とか、これについても、私としては緊急提言の内容を警察は重く受けとめているなという印象を持ちました。  そこで、しかしこの改正の、もう一つこれを条文として盛り込むべきではなかったかなどという点がございましたら、もしそういう点がございましたら、簡単な一言になると思いますが、言っていただければと思います。そういう御意見がおありの方だけで結構ですが。
  53. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) そういう御注文ですから、御意見のある方。──よろしいですか。
  54. 大森礼子

    ○大森礼子君 わかりました。  あとは、やっぱり運用部分、それから警察内の組織改革の部分が大きいのであろうと、このように思っております。  それでは、あと質問しますと時間がなくなりますので、一分ほど早いのですが、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  55. 富樫練三

    富樫練三君 日本共産党の富樫練三でございます。  きょうは、お忙しいところ、参考人の皆さんありがとうございます。  最初に、外部監察の問題について伺いたいと思いますが、山田参考人に伺います。  先ほど陳述の中で、警察内部の監察、調査では自浄作用は機能しないことが明らかになった以上、警察から独立した監察機関を設立することが市民のための警察を実現する上で必要不可欠であると、こういうふうにおっしゃいました。  そこで伺いたいんですけれども、警察から独立した監察機関という場合に、だれがどういう権限を持ってどういう体制で行うことが考えられるのか、この点もうちょっと御報告いただければと思いますが、よろしくお願いします。
  56. 山田善二郎

    参考人山田善二郎君) お答えいたします。  たしか十月でしたと思いますが、全国のオンブズマンの協議会がありました。そのオンブズマン協議会の新聞記事を私読んだんですが、そこでいろいろ語られたものによりますと、一番たくさん苦情があったのは何かというと、警察の問題についての苦情だそうです。そういうことから私どもは、警察オンブズマン制度というようなものを設けることも一つの方法ではないかというように考えます。  第二の問題は、公安委員会直属の監察機関というものを考えるべきではないかと思います。この場合、公安委員会に監察の権限を与え、その権限に基づいて監察委員などの制度の設立が必要だと思います。そして、その委員公安委員会が任命権を持つこと、警察以外の任命が必要であるというように考えます。つまり、委員警察官ではない別の人たちによって組織されるということであります。  以上でございます。
  57. 富樫練三

    富樫練三君 その場合なんですけれども、今まで衆議院でもこの警察法改正問題については議論されてきたんですけれども、警察組織や業務に精通している必要があるという意見とか、あるいは監察は捜査活動と密接に関連しているから素人にはできないんだと、こういう御意見あるいは主張が、警察庁の長官やあるいは国家公安委員長からもそういう意見が繰り返し出されてまいりました。  警察問題のプロでなければ監察はできないのか、この点について、刷新会議の方々はたしか警察のプロではなかっただろうというふうに思いますけれども、プロでなければ監察はできないというふうに考えられるのかどうか、この点については山田参考人いかがお考えでしょうか。
  58. 山田善二郎

    参考人山田善二郎君) お答えいたします。  この監察の目的というのは、警察が行った行為の有無をはっきりと定めることと、その行為の是非善悪を判断するということではないかと思います。その面で非常に参考になるのは、緒方靖夫氏宅の電話盗聴事件の犯人を検察庁が不起訴にした、それに対して緒方さん御夫妻が東京第一検察審査会に不服を申し立てたわけですが、これを審理した東京第一検察審査会は、その結論として、検察庁が不起訴にしたことは不当である、明らかにあの警察官たちは盗聴をしたと考えられるという結論を下しました。  御承知のように、審査会のメンバーは法律的にも素人であり、警察の捜査についても決して習熟しているというような人たちではありません。そういう人たちが非常に国民の支持を得られるような結論を下しているということは、国民の中には良識がきちっと根づいているということだと思います。私は、これに反対する御意見の持ち主の方々はもっともっと国民の良識を信頼すべきではないか、そういうように考えております。  以上です。
  59. 富樫練三

    富樫練三君 公安委員会も実は警察専門家の集まりではないというふうに思いますけれども、先ほどの陳述の中で、警察から独立して独自の事務局体制を確立した公安委員会というふうに述べられましたけれども、公安委員会警察から独立するという場合に、どういう条件が整えば警察から独立できるというふうにお考えなのか、山田参考人の考え方をもうちょっと詳しく教えていただけますか。
  60. 山田善二郎

    参考人山田善二郎君) お答えいたします。  私たち国民救援会としては、公選制による公安委員を選任するということが一つの大きな今後の方向ではないかと大会でも決定しておりますけれども、同時に、現在、直ちに行うべき問題として次のようなことが考えられます。  第一の問題として、公安委員の選任については国会の承認が必要であるということ。その際、任命をされる予定の方はそこの場で十分に意見を述べ、または質問に答える、そういうことが義務づけられることが最小限の条件だと思います。第二の問題は、その事務局について、現在公安委員会事務局警察が行っておりますが、警察から独立した事務局をつくり、この職員を公安委員会が任命する権限を持つということでございます。第三の問題は、監察権限を公安委員会が持つということなど、この三つの問題が必要最低限の問題ではなかろうかなと考えております。  以上でございます。
  61. 富樫練三

    富樫練三君 もう一点、情報公開の問題について伺いたいと思いますが、今回警察法の改正が出てくる背景には、一連の昨年来の警察の幹部による不祥事があったわけですけれども、国民が共通して感じているのは、警察情報については国民には明らかにされないということだと思うんです。秘密主義が蔓延しているというか、こういうことに対して大変国民が不安に思いつつ、同時にもっと国民に開かれた警察を求めているというふうに思います。  先ほど、国民信頼を回復するためには情報公開は不可欠というふうに山田参考人がおっしゃいましたけれども、この場合に警察情報で公開するものはどういう情報を公開すべきだというふうにお考えなのか、その内容についてもうちょっと詳しく教えていただけますか。
  62. 山田善二郎

    参考人山田善二郎君) お答えいたします。  四つあると思います。  一つは、予算の執行状況であります。先ほど私が陳述の中で申し上げました、例えば長野県の公安泥棒警察官事件では、御本人は県警本部のそこの、行っているけれども遊んでいるようなものだということを言っておりました。信濃毎日が報道したこの記事については、勝手知りたる仕事場でと、彼が日常的に情報活動の対象としていた労働組合や無認可保育園などから泥棒しておったと。一体どこからこの金が出てきた、彼の金が、そういうことは知りたいというのが国民の共通の願いであると思います。  それからもう一つは、警察の配備状況、とりわけ警備警察がどのような形に配備されているかということの問題です。  三つ目は、警察に対する教育の内容でございます。この辺も明らかにしていただきたい。  最後の第四点は、人事情報です。先ほど申しましたように、犯罪に関与したと思われる方が出世してしまうというようなことについては、警察に対する国民の疑惑というのはなかなか消しがたいものがある。それだけに、私は警察の人事問題などは透明にすべきではないかというように考えております。もちろん捜査に関して個人の情報、そういったものが外に漏れるというようなことは、つまりプライバシーに関する問題については開示しない、これは当然のことだと思います。  以上です。
  63. 富樫練三

    富樫練三君 情報公開の場合に個人のプライバシーあるいは犯罪捜査に関する情報、こういう点についてもちろん公開はしないというのは当然だというふうに思いますけれども、このことに関連して、警察情報が包み隠されるということがあるのではないかという点を危惧しているわけです。  今までもこの情報公開については何度か議論もされてきているわけなんですけれども、直接捜査に関する情報あるいは個人のプライバシーの問題、最終的に最後の段階で開示するかしないかをだれが判断するかというところが実は今問われているというふうに思います。  来年の四月から情報公開法が施行されるわけですけれども、この情報公開法の規定によっても情報公開はまだ十分ではないのではないかという点がさまざまな方々から御意見が出されております。  この点に関して、宮城県では今大きな問題になっております。それは、県警本部長の主張では県警が判断するんだと、これに対して県知事の側は最終的には裁判所の判決を信頼すると、こういうふうになっているわけなんですね。ですから、審査請求が出されて、今度の制度でいえば審査会もあるわけですけれども、さらにその上で住民から情報開示の裁判が請求された場合、起こされた場合にどうするか。そのときに、警察本部長の方の意見ではそこに対しても情報を開示しないと、裁判に対して。裁判のときに情報を開示すれば、それは公開の裁判であるから情報そのものが即公開されてしまうんだと、こういうふうに言うわけですけれども、県知事の側は裁判官が判断して当然捜査情報やあるいはプライバシーに関する情報は裁判所で開示しないという判断をするわけだから安心して大丈夫だと、こういうふうに言っているわけなんですね。この点について、今、来年の四月を前にして大変大事な段階に来ているというふうに感じております。  先ほど情報公開の点について触れられました山田参考人、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  64. 山田善二郎

    参考人山田善二郎君) お答えいたします。  宮城県警本部長の考えというのは、私は、裁判所の上に警察を置くという考えではないかと思っております。  先ほど私、陳述の中で申しましたけれども、緒方さんの裁判にしろ、また直方警察スパイ事件にしろ、この裁判についての判決、警察は裁判所の判決を無視しているというのが現状でございます。もしこのような警察情報の公開の判断をすべて任せる、最終判断を任せるということになったならば、警察情報は完全に国民はつんぼ桟敷に置かれるような状態になってしまいます。そういう状態のもとでいったならば、私は来年施行される情報公開法というものの意味は半減以下に減ってしまうのではないかと思います。  いずれにしても、私は、三権分立という民主的な社会において警察が裁判所の判断に従わない、あるいは裁判所の上に君臨するというようなことが許されるということになったならば、日本の国は一体どういうことになるであろうか、法治国家の体をなさなくなるのではなかろうかとさえ考えております。その意味では、警察当局は深く反省すべきではないかと考えております。
  65. 富樫練三

    富樫練三君 もう一点、先ほど情報公開の中で、警察官に対する教育内容についても情報公開対象にすべきだというお話がありましたけれども、この点についてちょっと伺いたいと思うんです。  この間の一連不祥事、例えば埼玉県警、私、埼玉ですので埼玉県警の問題を考えても、あの桶川事件ですけれども、警察官全体の中にもっと人権に対する敏感さというか、そういう点が必要だというふうに大変思いました。  警察官に対する教育の中で、山田参考人は先ほど教育の中身もちゃんと情報公開すべきだというふうにおっしゃいましたけれども、教育の中身というのは一体どういうことが必要だというふうにお考えなのか。憲法、あるいはそういうこともあるわけですから、そういう点でこういう教育が今の警察官には必要だというお考えがもしもございましたら、御意見をお聞かせいただければと思います。
  66. 山田善二郎

    参考人山田善二郎君) お答えいたします。  我が国における人権侵害、とりわけ警察による人権侵害の問題は国連人権委員会においても非常に強く取り上げられて、例えば代用監獄制度の廃止の問題だとか、自白が余りにも多過ぎるではないかというような批判などがなされております。そして、この国連人権委員会が一九九八年十一月五日、審査に基づいた結論として日本政府への勧告を採択しました。この採択の中の第三十二条には次のようなことが書かれております。「委員会は、裁判官、検察官及び行政官に対し、規約上の人権についての教育が何ら用意されていないことに懸念を有する。」と、日本の政府、警察もですね。「委員会は、かかる教育が得られるようにすることを強く勧告する。」と述べています。なお、裁判官に関しては、彼らを規約の規定に習熟させるための司法上の研究会等々も開催されるべきであるということも書いてありますけれども、この国連の政府への勧告を受け入れるということ、そしてこういった国連の人権規約に基づき、また憲法には非常に人権擁護の規定が豊かに盛り込まれておりますが、この精神にのっとって国民に対する人権擁護の観点の教育をもっともっと徹底し、強化していただくことが大事であり、それがまた国際社会にもたえ得る、また評価され得る日本警察制度を樹立していく上でも大事ではなかろうかというように考えております。
  67. 富樫練三

    富樫練三君 ちょっと時間がなくなってまいりましたけれども、最後にもう一点伺っておきたいと思います。  来年度の、新年度の予算について概算要求が各省庁から今出されているわけですけれども、その中で警察庁からは、例えばフランスなどと比較して日本警察官人員は少ないということで、人員増を要求しております。  この人員増の問題について、例えばフランスが例に出されているわけですけれども、山田参考人はどのようにお考えなのか、最後にお聞かせいただければと思います。  山田参考人以外の方々に質問する時間が十分とれなくて、大変失礼かとは思いますけれども、最後にその点、よろしくお願いします。
  68. 山田善二郎

    参考人山田善二郎君) お答えいたします。  外国の例を引用し、参考にするという場合には、総合的に参考にしていくことが必要ではないかと思います、さまざまな観点から。  フランスの警察官の数が日本警察官の人口比例との関係で云々と申しておりますけれども、フランスという国は国境が幾つかの国と接しており、そしてさまざまな国からさまざまな人たちが出入りしている。また、犯罪もそれに対応してさまざまな状況であるでしょう。そういうことから、一方では必要な数としての警察官増員が図られているかもわからないし、そういう社会的な背景等々も考える。  もしそういうことを考えるのであるならば、フランスには警察官の労働組合が組織されている。そして、その労働組合が健全な活動をしているからこそ、警察不祥事などがあったならば、その労働組合によって正しく批判され、改善される。また、警察に対する苦情等々があったならばこれもそうするというようなことを、私はフランスを訪問したときにフランス警察官労働組合の幹部から直接聞いたことがあります。  そのフランスの幹部はパスカルさんという警察労組の書記長ですが、きょう皆様にお配りしてあります「救援情報」の中に、フランスの警察はこういうふうになっているからということを紹介してあります。どうかこの本案の審議の際にはこういうことも審議していただきたいというように考えます。  警察官をふやさなければならないという考えには私は反対でございます。それは、先ほど来議論されておったように、日本の警備公安警察が余りにも多い、何をしているかわからない。この警備公安警察を一定程度削減するだけでも、私は今当局が考えている二千七百七十五名の警察官増員は、これはしなくても十分満たされる、管理部門の重複している人たちも動かすということによって解決できる問題ではなかろうかなと。  今、各地の行政機関当局がさまざまな形で人員削減をしておりますが、その中で警察だけが人員増加するということは、社会的にも多くの国民から支持を受けない、場合によっては批判さえ受けることになるかもと、私は考えております。  以上でございます。
  69. 富樫練三

    富樫練三君 ありがとうございました。終わります。
  70. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 社会民主党の照屋寛徳でございます。  最初に、久保参考人前田参考人にお伺いをいたしますが、まず久保参考人に、参考人が書かれました文芸春秋の論文、それからあらかじめ資料として当委員会でお配りをいただきました新聞への投稿文、それから最近御出版されたんでしょうか、「警察官の「世間」」という本も読ませていただきました。  私は、神奈川県警に始まる一連警察不祥事の続発、それとキャリア制度の問題を参考人御両名にお伺いしたいと思いますが、神奈川県警の問題が起こって、当初、機動隊員らによる暴行事件というのが新聞で報じられた段階で、そう大きな問題にならない段階で、実は社民党は警察庁の幹部を呼んで事件の経緯について調査をしたわけであります。  そのときに私は、このような警察官による不祥事については警察内部でなあなあに事件を処理してしまうことは好ましくない、そして同時に、発生した事件については、これは単に行政罰だけで事を済ませてしまうのじゃなくして、事件の内容によってはしっかり構成要件を吟味して、きちんと犯罪として立件をして処罰すべきは処罰すべきだ、こういうことを強く言ったのであります。  ところが、それがなかなかうまくいかないうちに事が大きくなりまして、元警察本部長の検挙という事態にまで至ったわけですが、この中で、警察は絶対に間違ったことはしない、あるいは間違ったことをしたと絶対に認めない、こういう一種の警察無謬観というんでしょうか、それがどうもあるんじゃないかということ。同時に、やっぱり警察そのものによる自浄能力が今やもう欠如しているのじゃないかというふうに言わざるを得ないわけです。  そういう警察無謬観、あるいは警察の自浄能力の欠如の問題、どこにそれが原因があるのか、そのことと、言われておりますキャリア制度との関係についてどういうふうに考えておられるのか、久保参考人前田参考人に順次お伺いをいたします。
  71. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) 初めに久保参考人の方から。
  72. 久保博司

    参考人久保博司君) まず、不祥事の原因ですけれども、いわゆる間違わない、警察は間違わない、これは警察だけではなくて、日本の官僚制度そのものが絶対に官僚は間違わない。これは天皇制から来ているわけです。天皇の官僚であるところの行政は間違えません。これは戦前はそうでありましたし、また戦後もそのような伝統を受け継いでいるわけです。そこに関連しているのがキャリア制度なんですけれども、特になぜ警察は間違わないか、これは警察だけではなくて検察もそうなんですね。無謬性というのは検察にも警察にも両方ございます。  どうしてそうなのかといいますと、結論から申し上げますと、日本は法治国家ではないということです。つまり、非常に単純に言えば、例えばアメリカのような国では、法に違反していればその法に従って罰する、そのための執行をするのが警察官である、法執行官である、そういう位置づけなんですけれども、日本の場合にはそれだけではなくて、もちろん法にも関係しますけれども、それよりもむしろ警察官はモラルの教師である、モラルを体現している人間である、価値の表明者でもあるわけです。ですから、その警察官不祥事は起こしてはいけないし、また警察活動において間違ってもいけない、そういう神話がずっと続いているわけです。  例えば、先ほど山田参考人から再三共産党宅の傍聴事件が取り上げられましたけれども、このときにも明らかにこれは盗聴はやっているわけです。ただ、ある警察関係者にどうしてそれを認めないのかと尋ねたところ、警察は間違ってはいけないんですと、単純にそのように答えられました。結局そういうことなんです。間違いを認めることはできない、そういう制度になっているということであります。  自浄能力の問題ですが、私はそれほど自浄能力が極端に落ちているとは思いません。むしろ問題なのは、これまでいろいろ不祥事はあったわけですけれども、それは内部で処理されてしまって表に出てこなかった。それが最近では考え方も変わってきまして、特に最近は情報公開というものが表舞台になっていまして、警察官の考え方も徐々に変わってきているわけです。  ですから、あいつの足を引っ張るために内部告発するということだけではなしに、これはやっぱり悪いことだから言わなきゃいけない、そういうことで内部から情報がぽろぽろと流れてきて、そしてそれがマスコミで大きく報道されている、そういう現状があるわけでございます。  それからもう一つは、例えば新潟県警における交通違反もみ消しの問題のように、以前は当たり前だとしてなされたことが今では許されないという、そういう倫理の基準が厳しくなってきている、評価基準が厳しくなっている、そういう要素もあるわけでございます。  ですから、先ほど苦情を外部機関に出すように、そういうシステムにしたらどうかという発言がありましたけれども、苦情というのは内部告発ですね。これについても、内部では内部告発についてはちゃんと処理しています。警察の監察室に行けば、ちゃんとその担当者がおりまして、実際に動くのは公安部の公安刑事が動いて、一カ月ぐらい尾行して、それで摘発するわけなんですけれども、そういうことは実際にやっております。監察だけではなくて広報課にもそういう内部告発を受けるようなそういうポジションがありますので、それは警察官は全部知っておりますので、その必要性があればそういうところに行くことはできるわけです。必ずしも外側に窓口をつくる必要はないんじゃないかと私は考えております。  それはともかくとしまして、ですから、自浄能力が極端に今落ちてしまっているということは言えないと思います。ただ、モラール、いわゆる士気、警察官の士気、これが落ちているということは言えると思います。  昔の、つまり二十年ぐらい前までの警察官というのはもっと公というものを持っていました。公意識ですね。公的に貢献しなきゃいけないんだという意識がありましたけれども、最近はどうも自分の生活、自分のプライベート、そっちの方を優先するような警察官が多くなってきまして、そういう点で職人刑事がいなくなってきている、少なくなってきている、見えなくなってきている、そういうことは言えると思います。そういう点でのモラールの低下というのはあると思います。これは自浄能力とは関係ないと思っております。  キャリア制度の問題ですけれども、先ほど申し上げましたように、キャリア制度というのは戦前からのそういう天皇制官僚の伝統を受け継いでおりますので、間違ってはいけないということが根底にあるわけでございます。  欧米のエリートと日本のキャリアと違うところは、時間がないですから単純に言いますけれども、欧米の場合はいわゆるエリート制でありまして、これはある職能を果たすということを期待されてエリートとして選抜されているわけですね。ですから、その仕事ができない人間は落とされるし、また非エリートであっても能力のある人は引き上げられていく、そういう制度になっておりますけれども、日本のキャリアはこれは身分でありまして、一度その中に入りますと、たとえもう一日でやめたとしても元キャリアでずっとそのキャリアクラブのメンバーになるわけです。どういう仕事をするかではなくてキャリアのメンバーに入ったかどうかがすべてなんです。それがすべて将来を決定づける、そういう点に特徴がありまして、これがいろいろと問題点を引き起こしている、また現場の士気も低下させる一つの原因になっていると。  もう一つつけ加えさせていただければ、警察の場合は、警察官僚は警察官という位置づけになっているわけですね。警察庁にいるときには行政の仕事をしますけれども、警察本部に行きますと警察官として警察活動を実際に指揮するわけです。ところが、実際には自分は下積みの活動をやっておりませんので、現場の状況はわからない。現場の状況がわからないままに指揮をするものだから、現場とはかけ離れた、あるいはあさってを向いたような指揮をする者がたまたま出てきたりしていろいろ現場とそごを来している、そういう問題があります。神奈川にはそういう問題が根っこのところにありますので、特に去年の秋はあちこちでいろんな告発が出てきたと思われます。  以上です。
  73. 前田雅英

    参考人前田雅英君) 私も久保先生の御指摘と基本的には変わらない。自浄能力に関しては、やはり表に出るようになった傾向が非常に強いんだと思います。それ自体はだからある意味でいいことなのかもしれないんですね。  あと、先ほどの議論でありました公安委員会による管理によって、私はですから、国民信頼に足るだけの警察に引き戻すことができるというか、先ほども申し上げたように、今でも絶望的なものだというふうにまでは思われていないと私は考えているんですけれども、ただ、直さなければいけない。それには、先ほどのような政府案みたいなものをつくっていただくことが大事だというふうに考えております。  あと、御質問の中心であるキャリア制度警察腐敗云々ということとどうつながるかということですが、私はそれほど強い因果性があるとは考えていません。確かに、キャリアシステムに問題があって、下の側から見てといいますか、ノンキャリアの人から見て、あんなに早く二課長になってきてとかいろいろあるし、中に問題のあるキャリアの方がいることも事実でしょうが、それと警察不祥事とがかなり論理的な連関性があるかといいますと、私はそれほどシステム的なつながりがあるとは思えないんですね。  あと、キャリアの方々というのは、特にもう今の世代に残っていらっしゃる方というのは大変厳しい競争関係にありまして、その意味不祥事とかトラブルがあればそれだけで負けていくわけですね。そのチェックというのは物すごく厳しいものがあると思います。それからまた、部下からの信頼関係も失っていく人は、見てみますと上には行きませんね。やっぱりチェックされていく。そういう力が私は働いていると思います。  だからといって、今のキャリアシステムが私はそのまま維持されるのがいいと申し上げているわけじゃないんですが、警察一連不祥事の中で大きな原因がキャリアシステムにあるというような議論は、私は、具体的な根拠が示されていませんし、ちょっとした何といいますか、常識論みたいなものといいますか、思いつき論といいますか、そういう感じがしてならないんです。むしろ、これを完全になくしてしまって下から全部上げるというようなシステムにするとまた別の問題が起こってくるかもしれないということだと思いますけれどもね。
  74. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 山田参考人、御意見を述べられる中で、緒方靖夫宅の盗聴事件にお触れになっておりました。この中でも、いわゆる盗聴法の審理の中でもいろいろ問題になりましたけれども、なかなか警察は関与を認めなかったですね。これも一種の警察無謬観に私は根差しているんじゃないかと思いますが、山田参考人のお立場で、こういう現在警察組織の中にある警察無謬観みたいなもの、それをどう克服したらいいのか、そういうもしお考えがありましたら簡潔にお教えいただければありがたいと思います。
  75. 山田善二郎

    参考人山田善二郎君) お答えいたします。  警察無謬観、これを内部から今直ちに改善してもらうということは大変厳しいと思いますが、やはり警察組織の中でいろいろ発生した、また発生してくるであろう警察の誤った事実行為などに対してもっともっと国民の批判を高めていく、そして同時に、そういう問題が発生した場合、国会はもちろん、都道府県の議会などでもそういう問題を真剣に討議して、そして議論して、そして警察の正しいやり方に立ち返っていただくようなそういった議論国民と議会との双方で行われていく、このことが私は非常に大事ではなかろうかなというように考えております。
  76. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 久保参考人にお伺いいたします。  先ほど示しました「警察官の「世間」」という本の中で、「警察権力組織である。警察の暴走を許してはいけない。そのための監視は必要だ。しかし、その監視は、警察不信からくる監視ではなく、よりよい警察を持つための監視でなければならない。」と、こういうふうに記述をしておられます。私はそのとおりだろうと思うんですね。  だから、今一連警察不祥事からこのたびの警察法の一部を改正する法律案の提起に至る過程で、どうも現在の公安委員会がうまく機能していないんじゃないか。警察法で定められている警察を管理するという、この抽象的な規定も問題でしょう。だから、公安委員会の権限を明確化するということも私は大事だろうと思います。  また、参考人が指摘をしておりました人選の問題だとか審議時間の問題だとか事務局の問題とかあろうかと思います。そういう中で、私ども社民党は公安委員会から独立した外部警察監視委員会みたいなもの、その設置が必要ではないかと、こういう問題提起をしているわけであります。したがいまして、外部警察監視組織みたいな、公安委員会からも完全に独立したそういう監視組織みたいなものの設置の必要性についてどうお考えなのか。  あと一点は、本の中で、キャリアと警察組織のことにお触れになりまして、捜査や警備のラインの幹部のポストは地元警察官に譲るべきだ、本部長については、参考人意見は戦後の自治体警察の教訓としてこれは地元に任すのは避けるべきだみたいなふうに私は読んだんですが、その御趣旨をお教えいただければありがたいなと思います。
  77. 久保博司

    参考人久保博司君) まず、監視機関として外部に設けるかどうかという問題ですけれども、結論から申し上げますと、私はその必要性はないと考えます。  と申しますのは、外部監視機関を設けるということは、まず一つは、自分が警察官になったと仮定した場合、非常にそのプライドを傷つけられるという面が一つあります。要するに、それだけ信用されていないのかという反発が非常に強いであろう。もちろん、それはいけない、そういうことではだめだよということは言えますけれども、しかし現実問題としてそういうことになってくると、現場の警察官たちは恐らく非常に反発するであろうということは想像できます。  それから、もし監視機関を持ってそこに調査機能を持たせたとしても、どこまで調査できるか。素人が調査しようとしてもこれは無理な話です。というのは、相手は捜査のプロですから、防ぐのは大得意の得意ですね。ですから、元警察官であるとかそういう捜査のプロを特別に用意して持ってくるとか、そうでもしない限り、素人が調査するということは不可能である。  また、外部であるということで調査に協力はしません。非常に大きな権限を与えて、裁判所の捜査令状みたいなものを持ってそれで捜査に協力すべきだとやれば別問題でしょうけれども、そうでもしない限り、普通のいわゆる監視機関ということでは機能しないんじゃないか。  むしろ、公安委員会外部化して監視機関的な位置づけにしていく、これが重要ではないかと思います。ただ、その場合でも、警察官不祥事を直接公安委員会が調査するということは難しいんじゃなかろうかと私は想像しています。  それから、本部長の問題ですけれども、これは戦後しばらく自治体警察というものがあったわけですけれども、これは地元の有力者と警察本部長が癒着して公正な警察活動が行われなかったという歴史がありますし、それに世界的に見回しても、イギリスの場合でも、例えば全国から警察本部長は公募しましてリストをつくりまして、何人か候補者リストをつくりまして、それを内務大臣に持ち上げて、内務省でそれぞれのメンバーについてどういう人物であるかを調査しまして、そして内務大臣はAさんならAさんがいいですよということで推薦しましてまた警察委員会に戻す、その中から警察委員会がチェックされなかった者だけの中から選ぶ、そういう制度になっていますけれども、これは地元の警察官がそのまま昇進してトップに立つというシステムではない。これはやっぱり地元の有力者と自治体警察が癒着することを避けるということであります。  それから、もう一つこの場合重要なことは、警察本部長は警察官ではなくて警察管理者である、警察管理部門だけに影響力を持つ。警察の運用、警察活動に関してはいわゆる警察部隊、部隊としてその部隊長の下で法執行活動をやっていく。そういう区分けをしていかないとなかなか難しいんじゃないかと思います。もちろん、アメリカの場合には、本部長も警察官の場合もありますし、あるいは私服、警察官でない場合もあります。いろいろなシステムがありますけれども、一長一短はあると思いますけれども、基本的にそうした方が。というのは、この本部長というのはあくまでも、地方の議会ともいろんな交渉がありますし、いろんな交流がありますから、その人が警察活動、法執行活動に直接関与する、口をきけるようなそういう状態になっているといろいろと難しい立場に立たされるんじゃなかろうか、そういうことでそういう考えであります。  以上です。
  78. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 終わります。
  79. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 無所属の会の松岡滿壽男です。  参考人先生方、御苦労さまでございます。  もう最後になりますとほとんど先行の委員の皆さん方が質疑をされておられますので、ちょっと違う角度から御意見を承ってみたいと思っております。  今回、警察刷新会議の答申を待って警察法の改正ということになったわけですが、私ども衆参両院の地方行政警察委員会で答申に盛られた項目についてはほとんど議論をし尽くしているわけです。  こういう刷新会議とか審議会とか私的諮問機関というのをやたらやられるということは、国民の関心を集めるという点、衆知を結集するという点では一つの方法とは思うんですけれども、予算委員会で小渕さんとも意見交換をしたんですが、日本の場合は議院内閣制であります、大統領制ではない、市長や知事や大統領とは仕組みが違うわけですから、もっと議会で議論したことを大切に扱うべきではないかということを申し上げておるんですが、今回の刷新会議そのものの位置づけですね。  我々はいろんな議論をしてきたんですけれども、例えば増員問題については議論をしていなかったわけです。ただ、こういう就職難の時期だから優秀な人材をやはり結集すべきだとか、あるいは女性警察官が八千人しかいませんからもっとそちらをふやすべきだという議論をしたんですけれども、どうもこういう審議会の答申を待って、国会で議論以外のものもこういう形で出してくるという、そのやり方について御意見をそれぞれの参考人から伺ってみたいと思います。
  80. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) それぞれ伺いますか。
  81. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 はい。
  82. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) では、前田参考人からお願いします。
  83. 前田雅英

    参考人前田雅英君) 要するに、国会での議論以上に、以上にという言い方はちょっと不正確かもしれませんが、審議会等の答申を重視するということをどう考えるかということですか。  私などは刑事人間でして、最近の動きで一番注目しているのは、刑事立法が物すごくふえているんですね。今まで刑事立法ができなかったのは、すべて法制審議会というところ、法務省を通して法制審議会というところを通してやって、それによってかなり慎重審議をして法案がなかなかできなかった。ところが、このごろは法制審議会を飛ばしていろんなものをやるとかというような動きが出てきて、むしろ流れとしては国会がイニシアチブをとって動かれている面が非常に強くなったという印象を持っております。  ただ、今回の警察法の問題に関しては、女性の警察官云々というようなこととか、議会の審議よりも刷新会議が重視された面があろうかと思うんですが、そこは十分に勉強していない面があるんですが、ただ、全体の流れとしては私は国会での議論が重視される方向に間違いなく動いているんではないか、これはある意味必然なんではないかと考えております。感想めいたことで恐縮ですが。
  84. 小幡純子

    参考人小幡純子君) 私も前田参考人と同じような感想を最近の傾向としては持っておりまして、議員立法も大変多くなってございますので、まさに国会中心という形で動いてきているのではないかと存じます。  警察刷新会議については、私的諮問機関でございますし、当然法的な拘束力を持つものではございませんので、それで提言されたものが妥当だと国会の方でお考えになれば国会としてそれを入れたような形で法律あるいは予算に組み込むというふうな理解しかできない、そうとしか考えようがないということでございます。
  85. 久保博司

    参考人久保博司君) 審議会を通すやり方というのは基本的には余り好ましいことではありません。と申しますのは、審議会でどのような意見が交わされてどのようなプロセスで結論が出たのかということが見えないということがありますので、できる限り国会で議論をして国会で結論を出していく、そういう原則を維持するのが重要であろうかと思います。  警察刷新会議ですけれども、これはこれで特別な問題がありましたので、こういう審議会、こういうものを設けて審議するということは意味があるだろうと思います。けれども、それを採用するかどうかというのは警察庁の問題でありますので、またそれはそれでいいことだろうと思います。  女性の警察官ですけれども、今まだ八千人、もっともっとふやさなきゃいけないんですけれども、一つは、まだ警察の中は男尊女卑の社会でありまして、せっかく刑事としての資格を取ってもなかなか刑事にさせてもらえない。つまりポストがあかないわけです。というのは、男性のポストはこれだけ、女性のポストはこれだけということでありますので、なかなか優秀な警察官刑事の資格を取っていても実際には刑事に従事できないという、そういう悲劇的な状況がありますので、人数をふやすのも必要ですけれども、それと同時に、もっと職場を女性に開放するような、そういう改正はやっていくべきだろうと思います。これはピントがずれているかもしれませんが。
  86. 山田善二郎

    参考人山田善二郎君) お答えいたします。  私も今、審議会の問題を突如質問されて、どういうようにお答えしていいかよくわからないんですが、どうも、審議会で随分時間をかけて審議した、それほど重要な内容がようやく結論に達して、そして一定の結論が今度議会で議論されると、そうなると、なかなかその議論が慎重に審議されるのではなくて一瀉千里で採決されてしまうという、こういう最近の傾向に私はいささか抵抗を感じているのです。もしそんなことであるならば、審議会制度なんかやめてしまって、そして国会の中で十分に時間をかけて討議していただくことがいいのではなかろうかなというように考えております。  なお、警察刷新会議の問題についても、私的諮問機関であったとはいえ、私はその選任の方法などについては、国政全体にかかわる問題でありますから、もっとすべての党派の意見などを聞いて、そしてその上でこういう人が妥当ではないかというような形で人選をしていくという、そういうことも必要ではなかろうかなというように考えます。  以上でございます。
  87. 松岡滿壽男

    松岡滿壽男君 私は、警察刷新会議の第一回の会合の後の記者会見の議事録を聞かされて実はびっくりしたわけですけれども、これだけ全国民の関心を集め、警察信頼回復のために諮問されたと思っておったんですが、全警察官が総ざんげするような話ではないというのが第一回のコメントと議事録に出ているわけです。警察庁長官はこの委員会で、いや、我々全警察官総ざんげでやらなきゃいかぬということは言われました。だから、そういう方々が刷新会議で提案されたということに対してどうも釈然としない部分がありますし、同時に、かつて警察庁長官を務められた山田英雄さんが、「警察刷新会議に異見あり」というのを文芸春秋の先月号ですか、出しているんです。それで、この中で「いささか思いつき的な提言が目立つのも、そういった専門家抜きの会議運営の弊害ではないでしょうか。こうした限界は有識者の会議にはつきものです。」ということを言っているわけです。  だから、私は、今の我が国における議院内閣制の中でいろいろな今意見がありますけれども、総理大臣は国会で選んでいるわけですから、国会に対して責任を持つというシステムになっておるわけです。前田先生小幡先生は、いろいろ国会の議論中心になってきているんじゃないかといううれしいことをおっしゃっていただきましたけれども、まだまだこういう重要な問題について、例えば各省庁にまたがるものとか、そういうのは縦割り行政の弊害がありますからいいんですけれども、これは警察一本ですから、衆参両院で議論したものをもっと大切にすべきだし、同時に、今回の提言の中で引き続いて、先ほども質疑がありましたが、来年から警察官増員というものがこの刷新会議の答申の中から、日本の場合は警察官一人当たりで五百五十六人見ている、欧米は三百人から四百人だと。だから、せめて五百人ということは、今二十六万人の警察官と事務方を一割増やす、こういう問題が出てきているんです。もう二、三年したら人口減少に転じていくし、経済の活力も非常に落ちてきているという中で、この問題はやっぱり慎重に扱うべきであると思います。  同時に、これは久保先生の御指摘の中に機動隊についての指摘があるんですね、全国で二万人の機動隊。このリンチ事件その他で、犯人は暇だからやったと答えている。最近は、不祥事について警察関係者に理由をただすと、必ずと言っていいほど暇だからと答える。まさに四兆円からの国民の税金を、確かに国民の安全を守るということは一番大切な仕事だと私は思います。だからふやしてはいかぬということじゃないけれども、こういう問題についてもう少しきちっとした対応ができないものだろうかというふうに思うんですが、増員問題につきまして参考人の御見解がございましたら、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
  88. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) それでは、最初に久保参考人からどうぞ。
  89. 久保博司

    参考人久保博司君) 増員には基本的に私は賛成なんです。ただし、何万人増員するかという数字の問題については正確なことはお答えできません。  ただ、増員する前に、例えば機動隊なら機動隊をもっといろんなところに活用できるような制度に改革するということが一つです。ですから、暇だから何かする、おもしろいことでもやろうか、そういう警察官が出てこないような状況にするということが一つ。  それから、先ほど申し上げたように、管理部門を減らして、減らした分をどんどん現場に回す。空き交番の廃止ということは前から言われていたんですけれども、東京都内をよく見て回りますと、空き交番は確かになくなっている。なくなっているのはそこに人員が配置されたからかと申し上げますと、そうじゃなくて、交番そのものを取り壊しているわけです。そういう逆行したことが現実に今進行しているわけです。それだけ管理部門に人がとられてしまっているということで、現場に行かない。  それから、最近巡回連絡なんて、東京都に住んでいたらまず引っ越したとき以外は絶対に来ません。最近、私は引っ越したんですけれども、ただメモがありまして、こういう用紙を書いて交番に届けてください、ただそれだけなんですね。それっきり一度も来ないんです。  そういう状況でどうして町の中の状況が把握できるかということで、今検挙率が落ちていますけれども、それは一つの原因は、要するに状況がわからなくなってきている、お巡りさんが、交番の警察官が町の状況を把握できなくなっている。もちろん、住民も最近は余り協力しなくなっているという状況もありますけれども、一つはやっぱり町の中で警察官の姿が消えてしまってきているということも大きな問題だと思います。ですから、基本的には増員には賛成です。
  90. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) ほかの参考人の皆さんで。
  91. 山田善二郎

    参考人山田善二郎君) 私は、今、久保先生とかなり意見の一致しているところがありますけれども、この警察官増員については私は反対です。  警察白書の十一年度版を見ますと、いろいろな官公庁では財政を節約するために削減している。ところが警察関係の財政はふえているんですね。警察庁の関係が二千五百八十六億円。昨年度に比べて五十七億円増加している。それから、各地方警察関係の予算も増額している。合わせまして、これを国民一人当たりにすると、何と二万九千円のお金を警察が使っているということが警察白書に書かれております。  私は、そういうことを考えますと、すべての官庁それぞれのところで盛んに今人員削減をしているのに、警察だけが予算をふやし、さらに人が余っているというにもかかわらず二千七百七十五名もの警察官増員するということはどうしてもうなずけないのでございます。やはり、今遊んでいるというような部門があるとしたならば、そこをどういうふうにして現実に国民の生命、生活の安全を維持するために活用すべきかと真剣に警察幹部の中で議論をして、検討していただいて、そして適材適所、最も有効な形でその配置を再編成するというようなことを考えていただくことが必要ではなかろうかなと思っております。  以上です。
  92. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) こちらのお二方。
  93. 前田雅英

    参考人前田雅英君) 私は、先ほどもう申し上げたので繰り返しは避けますが、必要な増員はしなければ国民に対しての負託にこたえられないことになると思います。  あと、先ほど久保先生がおっしゃった、交番を取り壊して交番が減っているというのは、事実かどうか私は難しいと思いますね。交番はむしろふえる方向で、警視庁管内でもそうですが、対応していると思います。  それから、巡回連絡の調査研究もやったんですが、一生懸命やって、確かに大きな、東京都内ですとどこまでやり切れているかという問題はありますが、取り組みとしてはかなり前進していると私などは調査結果としては評価しています。  データを書いたものをきょう持ってきていませんけれども、いずれにせよ、ただただふやせばいいということではなくて、不要なものを削った上で本当にニーズのあるものに人を割り当てていくということしかないと思います。  その意味では、私は、先ほど申し上げたように、明らかに犯罪はこれだけふえていて、またそのほかに生安部門の仕事もふえていて、その人員がもっともっとふえないとバランスがとれないんだろうなというのがその数字から出てきていると思います。
  94. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) 小幡参考人はよろしいですか。
  95. 小幡純子

    参考人小幡純子君) 一言だけ。  私も、根本的にはやはり二十一世紀に向けて、今まで警察が民事不介入という形である程度非常に狭く解していたものについても国民が求めているという時代にはなってきているのではないかと思いますので、もちろん再編成しながらの増員というのは国民も容認するのではないかというふうな感想を持っております。
  96. 朝日俊弘

    委員長朝日俊弘君) 以上で参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様一言御礼を申し上げます。  本日は、貴重な御意見を承り、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十二分散会