○
松崎俊久君 確かに青森県は最低レベルであるわけですが、これは何も
大臣の責任だなんて私は全然申し上げていないので、大変なところにお生まれになり、大変なところから政治にお立ちになっているという同情というものを持って申し上げているんです。しかし、
厚生省のやり方いかんではどうにでもなるという実例を
一つ出したいと思うんです。
これは、私、自分自身がいろいろ物事を言う以上、自分がやってみて、それのどこがよかったか悪かったかを
検討しながら、試行錯誤しつつ健康な自治体をつくっていくということをしなければならないと思って今までそういう活動をしてまいりましたが、健康予防医学というものは
個人単位にしなければならないという思想、これが間違いなんですね。そもそもマスから問題を見ていくというやり方になって初めて成功します。それがだんだんマスから
個人へ絞られていくというやり方をしないと間違いを起こすと思うんです。
私は、それと同時に、予防と介護の問題はよく並列的に並べられて論じられるわけですけれ
ども、介護が先行する自治体は必ず滅びます。介護に熱心な自治体というのは大変ジャーナリズムにはもてはやされます。非常に立派な町だというふうに言われます。町長は評判がよくなります。その
うち大赤字を抱えてパンクするというのが大体介護を先行させた自治体の悪い見本であります。
私は、予防なくして介護はあり得ないという予防先行型を大胆に
厚生省がおとりになるべきだと。確かに、介護は一番困っている、あるいは障害のある方
たちを支えていくわけですから、これは最低限どんなことがあってもやらなければならないものはやらなくちゃならぬわけですが、次から次に介護の対象者が出てくるような、これから高齢社会になればそういう事態に必ず落ち込むわけでありますから、ぜひとも
地域ごとに自治体できちんと健康度を診断されて、そこに予防医学の手を差し伸べることが大事だと思います。
例えば、私は
福島県の中で一番平均寿命が悪いところというのをかねがねねらっていました。九十自治体の中で八十九番目だったでしょうか、それから脳卒中は一番多いというどうしようもない町がありました。そこの町がここから脱却するという非常な決意を固めて私と話し合ったのが今から八年前のことであります。私の郷里に近いこともあってそこへ取り組んでみました。細かいことは割愛しますが、とにかくマンパワーをまず整えた。
私は、
医療改革の場合に
看護婦の数が先行しなければならないということを再三強調しましたが、自治体の場合はマンパワー、特に保健婦、栄養士のスタッフを十分にそろえることから出発しませんと必ず失敗します。今、心配しているのは、介護
保険に保健婦の数がどんどんとられて予防を棚上げしている。いかにも介護は熱心にやっているように見える、しかし内容は極めてお粗末、もう将来介護の対象者が二倍、三倍にふえるだろうというような町や村をいっぱい見受けるわけでありますが、保健婦を絶対に介護に回してはなりません。保健婦はどんなことがあってもあくまで予防医学の活動に
専念させることが大事だと思います。
そういうやり方で、私、徹底的に、その周りにボランティアを、毎週土曜日ごとに栄養教育を三年間、百名の家庭の主婦をその周りに置いてマンパワーを整えてみました。そうしましたら、病気は五年間できれいに半減いたしました。
国民健康
保険の税も一人当たり五年間で約二万円、七年間で二万六千円の減税に成功しています。老人人口三四%です。
ですから、私は、こういうやり方を自分でやってみて、そして自治体の長と一緒に力を合わせてやっていくと、何で健康
保険が今こんな赤字を出さなきゃならぬのか、予防にどれほど手抜きしていたかということを本当に痛感します。むしろ憤りを持ってこの事態を眺めているわけであります。こんな赤字は出さなくても、積極的に黒字だって出せるのにというふうに思うわけです。老人人口三四%でも、そして脳卒中が一番県内で多い町でもできるわけです。ところが、この健康
日本21を眺めてみますと、ありきたりの例えば食
生活の
指導なりなんなりというのが細かく書いてはあるんです。だけれ
ども、これでは保健婦は何をやっていいかわかりません。
私は、この町が、山の中で猿やクマが庭先にうろうろしているというふうなことがしょっちゅうあるような町なんですが、ここに手を入れる場合に徹底的に流通機構の調査も行いました。そして、流通機構の調査の中で、どのような食品がどういう経路で入ってくるか、それがどういう値段で売られていくか、それがどのように消費されていくかというような問題もあわせてやりました。
普通ですと塩分を減らしなさい、こういう
指導が先行する。私は塩分を減らしなさいなんということは一言も言いません、塩分は二十グラムとっているところですが。しかし、これは減らせます。それは、ここが非常に貧しく、おかずに
お金が回らず、肉などは食べたことがないというような町であったわけですが、一軒この町にあったぼろぼろの肉屋は現在は鉄筋三階建ての肉屋に変わっております。肉の消費量は三倍、牛乳の消費量も同じく三倍というふうに変えました。
これは、健康
日本21で見ますと、余り肉はとらせないようにしましょう、牛乳は必要ですが総合的にカルシウムをとりましょうというような内容の
指導しかしておりません。こういう
指導はごく標準的な自治体の教科書としては有効ですが、実践的な役には全く立ちません。ここら辺をぜひとも
検討し直してほしいと思うんです。
最後でありますが、実はこの町は、そういう
意味で病気が半分に減り、
国民健康
保険の税金も一人当たり二万六千円の減税が成功したという中で、一番決め手であったのは、これは貧しい町でありますが、町の負担で沖縄に徹底的にこの住民を交流させたわけであります。人口一万の中でここの町は二千七百人が既に沖縄に行っております。約三分の一に近い。この中で体験として学ばせた食
生活というのが見事に生きて、塩分を一回も私は減らせと言わなかったのに、塩分は二十グラムあったのが現在十二グラムに五年間で落ちております。ですから、こういうやり方をした場合に予防というものは効果が上がるわけであります。
ここで私、最後に
厚生大臣にお願いかたが
たちょっとお尋ねしたいことは、私は自分が琉球
大学の医学部の教授だったということで申し上げているのではないんです。今、基地がひしめいている沖縄の、しかも沖縄の男の自殺が
日本一多いという悲惨な
現実を背景にしながら、この沖縄に幸せをもたらすということをバックに置いて、そして東北の農民
たちの健康を増進するということを結びつけた概念を私は十年前から主張してまいりました。両方の県では、東北と沖縄ではこれが大々的に報道されて、NHKな
ども取り上げてくれていますが、も
うちょっと大胆に国土の有効利用ということをお考えいただきたい。
これは国土庁にも、あるいは農水省にも、あるいは沖縄開発庁にも何遍も申し上げたのでありますが、今二万六千円減税できた健康な町に脱皮しつつあり、この町はこの間オーストラリアからも招待を受けて、町長が町づくりの講演をオーストラリアに行ってわざわざしてくるほど国際的にも有名な町に現在なってきたわけでありますが、この町を
一つの実験台にして、私は冬の間沖縄へそっくり老人を移そうと思っています。そして、農作業をやるその準備を今整えているわけであります。
こういうようなことの方がよっぽど安上がりな予防医学の活動になるんですね。冬の間、
大臣の青森県、半年間こたつに老人は入っていますでしょう。トイレと飯を食うときしか出てこない。あれが青森をだめにしているわけでありまして、青森の老
人たちがもしも三カ月間沖縄に滞在して、農作業でもやらせてごらんなさい。すっかり健康を取り戻して、桜咲くころに帰す。
日本は小さな国ですが、南北三千キロにわたって展開している
日本列島の長さというのは世界有数の大国の南北への展開として理解できます。ですから、こういう国土の有効利用というものも健康
日本21の中でぜひ考えられて、私は町と町との話し合いでこれを来年はぜひとも実現するつもりで、もう準備は相当整っております。沖縄に
生活費が落ちます。三カ月、大量の老人が
生活していますと沖縄に
生活費が落ちます。これは沖縄にとって非常にありがたい
お金なんですね。私は、こういう安定した金が沖縄に落ちていくことが望ましいと思っています。
同時に、本土の老
人たちは体をより丈夫な状態にして本土へ帰っていく。しかも、それは国土を有効に利用して、何も寒いときに寒いところにいる必要はないのであって、青森の農村に老
人たちが冬縮こまっている必要はないわけであります。
これを実験的にやってみてかなり成功しておりますので、
厚生省はぜひとも国土の有効利用、しかも予防という視点から、いわゆる長期滞在型保養基地を自治体同士で話し合わせて、東北と沖縄の自治体を組み合わせながら、向こうへ長期滞在型保養基地をつくるというようなところに金を落とす、あるいはそういう補助を出すというようなことがどれほど、何十倍大きく返ってくるかわからないと私は思っておりますので、ぜひこういう面へ
厚生省の目を向けていただきたいというお願いかたがた、こういう考えがどうかということを
厚生大臣に最後にお伺いします。