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参考人(
滝上宗次郎君) 滝上でございます。お招きをいただきまして大変ありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
結論から申し上げれば、
医療法の今回の
改正には反対ということで参ったわけでございます。
理由は、これが間違っていること、またあるいはこんなことをやっていては日本の
社会保障制度はいずれ崩壊するであろうということからであります。
そしてまた、きょう御説明申し上げたいことは何かといいますと、
医療というものが
国民から見ていかにその
制度がわかりにくいかということを御説明したいと思います。効率化というような言葉がございますけれ
ども、どんなことがあってもやはり
国民は
負担をふやしていかざるを得ないわけでございまして、その理解を得るためには、情報開示とともにわかりやすい
制度にしていかなければとても
議論はできないということかと思います。
ですから、私における
抜本改革とは何かといいますと、第一幕は、わかりやすく
医療制度を直すということでございます。第二幕は、
国民的な
議論を行って、どうやって
負担をみんなでしていくのかといった
議論でございます。
お手元に十三ページの
資料をお配りしておりますので、その
資料に基づいてお話し申し上げていきます。
まず一ページ目は、これは共同通信社から全国の地方紙に配信しております「
介護ざっくばらん」という私の連載のコラムの中から持ってきたものでございます。見出しに「海外よりまし
老人医療」と書いてありますように、西澤先生のおっしゃったのと同じことでございます。
それから、信友先生が
疾病構造が変わったと、
慢性疾患になってきたということで
医療制度も変わってくるというようなことがよく言われておりますけれ
ども、全国的にはそうでありましょう。しかし、私は
有料老人ホームの経営者としてお年寄りの
医療というものを常日ごろ見ていることからいいまして、こういう動きには大きく反対するわけでございます。
介護を必要とする方は大変体力が弱い、そして
慢性疾患を持っていらっしゃる、それは当たり前です。しかし、より重要なことは、この
慢性疾患を持っていらっしゃる体力の弱い方が同時に頻繁に急性疾患になると、こういうことであります。そのときに急性疾患をどういうふうに治療するのかということが非常に重要でございまして、今の
医療制度はどんどんお年寄りから急性疾患の治療の場を奪っているというふうに言えるかと思います。
さて、一ページ目の「
介護ざっくばらん」の中で四角に囲ったところをお話し申し上げてまいります。
確かに看護婦さんをふやしていくということは重要でありましょう。三対一は必要です。いわんや二対一でもいいぐらいであります。しかし、なぜ反対せざるを得ないのかといいますと、そこの囲みの中を読ませていただきます。「日本の病院は、一ベッド当たりの看護婦の人数が欧米諸国の半分だ、と有識者は批判しています。」、あちこちの社説にもそんなことが書いてあります。これは実に一面的な批判だと私は思います。「確かに三、四十年前、まだ日本が貧しかったころは、人口十万人当たりの医師と看護婦の数は欧米に比べてとても少なく、
医療には恵まれていませんでした。 今日では、欧米とほぼ肩を並べています。しかし、他国には決してない「社会的入院」のためのベッドが日本には五十万以上もあって、そこに多数の看護婦が働いています。人口当たりのベッド数は欧米の倍もあり、一ベッド当たりで数えれば看護婦の人数が半分となるのです。」。要するに、
医療制度が間違っているために看護婦がきちんと配置できない、それだけのことであります。間違っているのは
制度でございます。
参議院の事務局の方から事前に
資料をいただきました。第百五十回国会
医療法等の一部を
改正する
法律案の
参考資料というものをいただきまして、もうここにもちゃんと書いてあります。九十二ページには人口千人に対する看護婦の人数の国際比較がありますけれ
ども、日本は先進諸国の中で比べまして全く遜色がない、同じ人数の看護婦がいるわけです。しかし、次の次のページ、九十四ページを見ますと、百ベッド当たりの看護婦の職員の数は日本は非常に低い、見劣りするほどひどい。これはもうはっきり言って厚生省の
医療制度が過去失敗に失敗を重ねてきた結果であります。こういう失敗を直さずにどんどんどんどん配置基準をふやしていけば
財政はおかしくなるに決まっている、こういうことであります。
さて、二ページ目をお願いいたします。
社会的入院が五十万人以上と申し上げましたけれ
ども、それは控え目な数でございます。ちょっと出典を書いておりませんけれ
ども、これは私が書いている本の中から、五、六年前に書いた本の九十ページをコピーしてきたものでございます。この
資料は私がつくったものではございませんで、厚生省さんがおつくりになったものであります。一九九四年の九月に
介護保険を何とかつくろうというために「
高齢者介護問題を考える」という冊子でございます。
そこの一ページ、タイトルが傑作でございます、「
高齢者の
生活状況」。どこでお暮らしになっていらっしゃるかです。どこで治療を受けているかではありません。そして、どこでお暮らしになっているかといいますと、施設に百万人、そしてそれが
介護施設では三十万人、何と病院で七十万人です。
生活するところではないところで七十万人もの方が
生活しているわけです。そして、同じ厚生省の
資料で何かといいますと、そういった病院でありますととても高いお金がかかると、こういうことであります。
要するに、安いところで
介護せず高いところで
介護している、しかも
介護施設は
生活の場でありますからゆとりがある。病院の方は、今回の
改正案の中にもありますように、四・二じゃ少ないから六・四にしようと、その程度でございます。安かろう悪かろうという言葉がございますけれ
ども、日本は高かろう悪かろうというところでお年寄りの
生活を支えている、こういうことであります。
今回ここに出るに当たってちょっと少しばかり勉強してきたのでありますけれ
ども、十月三十一日に衆議院で同じ
参考人の
意見がございまして、私はそれを取り寄せまして実に驚きました。それは何かといいますと、
健康保険組合の方がこれに
賛成しているんですね、今回の
法案に。読みましたら、
健保組合の厳しい
財政状況を踏まえというわけです。
保険料率がどんどん上がっていくから食いとめてほしいと、こういうことです。
なぜその
健保組合が七割が
赤字になったのか。
理由は簡単であります。お年寄りの
医療費に多額の拠出をしているからです。しかし実態は、ここに書いてあるように拠出しているものは
医療費ではありません。
介護のための
費用を拠出しているわけです。
要するに、
組合健保というものは、自分たち
組合員から
医療費だよとして集めたものを
介護のために拠出しているわけです。目的外使用です。ですから、
組合健保は
介護のための
費用は出せませんと言って
拠出金を拒否すればいいだけの話です。何のこともありません。それを、その理解が不十分なのかよくわかりませんけれ
ども、どういう政治的構造があるのかわかりませんけれ
ども、
組合健保の
方々が一生懸命
医療費として集めたものを
介護費で使っている、こういうことであります。いかに
国民にお年寄りの
医療の正しい情報が伝わっていないのかということでございます。
さて、三ページ目をお願いいたします。
これは昨年の十月二十三日、亀井発言で大揺れに揺れたころに朝日新聞から私の
意見を出したものであります。見ていただきたいものは左上の
介護保険の収入と支出の項目であります。要するに、支出の方を見ますと、
老人保健施設に六千九百億円、それから療養型病床群に八千百億円出すわけですね。何ということはございません。
介護保険とは何かといえば、
老人医療費のツケを回したということが大きな目的であったということであります。そして、ここは
介護病院と書いてありますけれ
ども、療養型病床群であります。
今回の
医療法の
改正は療養型病床群に分けるということでございますけれ
ども、一体同じ療養型病床群がなぜ
介護保険の方にもあってまた
医療保険の方にもあるのか、全く
国民には理解できません。簡単に言えば、
介護施設を両方で見ている、これだけの話であります。
要するに、今回の
医療法の
改正とは何かといいましたら、社会的入院を法律で容認するという実にばかげた、絶対あってはならない、これをやっちゃったらもう日本の
医療の将来はなくなる、そこまで考えられるような悪法の
改正であります。
四ページ目をお願いいたします。
情報開示が必要だなんと言いながらどこの新聞社かわからないようにしたのは、どこの新聞も同じように書いてありまして、どこをとってきていいかわからなかったので一応新聞社名は隠したと、こういうことでありますけれ
ども、一面にこんなことが載っているということであります。
さて、
診療報酬実質〇・二%引き上げたと、こういう大見出しでございまして、これについてお話し申し上げますと、その一番右下の段に囲みをつけてあります。全体で〇・二%アップと大幅に削られた、報酬自体は一・九%アップだったが薬価が一・七%ダウンしたためだと。だから実質〇・二%だというふうに
政府は発表したわけです。これは果たして本当なのか。
左側に私がつくった
資料を張ってきました。昭和五十六年、一九八一年から
診療報酬の引き上げが難しくなってきたわけです。そのためにどういうふうに厚生省はそれを言い繕ったか、
国民をごまかしたかといいますと、
診療報酬は八・一%引き上げますと、一九八一年のところを見てください、しかし自己
努力で医薬品を六・一%下げますから実質二・〇%の引き上げにすぎないと、こんなふうに言ってきたわけです。過去二十年間ずっとこういう説明をしてきているわけです。今回も、一・九%引き上げるけれ
ども、一・七%引き下げるから、実質は〇・二%なんだと、こういうことであります。
では、一体
薬剤費は減ったのか。こんな勢いで
薬剤費を減らしたわけでございますから、一九八一年に四兆円あった
薬剤費は、じゃ今は三千億円か四千億円しかないのかというと、そうじゃなくて、六兆円か七兆円あるわけです。何も下がっていない、むしろふえている。こういうトリックで
国民をごまかす。それで
診療報酬を引き上げる。引き上げること自体にいい悪いは申しませんけれ
ども、だますということはよくない。
さて、この新聞の一面記事のリードの部分を読みますと、実に茶番劇が書いてあります。上げろ、下げろの大応酬だと書いてあります。三行目になりますと、引き上げを主張した
日本医師会など診療側、強硬に反対した
健康保険組合連合会など支払い側と、要するに
日本医師会と
健保連が大変に争ったということであります。
こういうのを見ると、またわからないわけです。前回の衆議院、十月三十一日で、
健保連の方が今回の
改正に
賛成したといって私は本当に腰が抜けるほどびっくりしたわけでございますけれ
ども、こういう記事を見てもびっくりするわけです。要するに、これは実質〇・二%じゃなくて、もっと大幅な引き下げにもかかわらず〇・二%という、間違ったというか誤解したというか、わざと誤解しているのかわかりませんけれ
ども、そういう了解のもとでやっている、こういうことであります。
本当に
医療というものは茶番でありまして、それが
国民に茶番が真実かのように流されていることが問題であります。これでは
国民のコンセンサスは得られない。
例えば
薬剤費にしてみれば、ちょっと数年前まで一兆二千億円が薬価差益だと言われていたわけです。多分過少申告でしょうと。お医者さんは全国に二十万人いますから、一兆二千億円を二十万人で私は電卓をたたいて割ってみたわけです。そうしましたら六百万円でした。何かおかしいな、六十万の間違いじゃないかなと思って何度も何度も電卓をたたいたんですけれ
ども、一兆二千億円を二十万人で割ると、何と六百万円、一人のお医者さんが薬価差益で六百万円を得ている、こういうことであります。これでは薬漬けがなくなるわけはございませんし、薬害エイズの被害者というものははっきり言って
医療制度の中にあるということしか私には考えられません。その後、薬価差益が減った減ったとか言いますけれ
ども、実態がよくわかっておりません。
さて、五ページ目をお願いいたします。
いかに
医療というものが不透明か、とりわけお年寄りの入院
費用が不透明かというのがこの十一月八日の朝日新聞であります。八人部屋とか十人部屋でこれだけのお金を取られるわけです。地方のことはちょっとわかりませんけれ
ども、関東では大部屋に入りまして大体十五万円から二十万円を超えるお世話料を取られるわけであります。どうなっているかといいますと、もう日本のこういったところは金持ちしか入れない、こういうことでございます。日本の憲法に逆らうような
状況であります。
社会保障制度は金持ちしか使えないようになっている。そして、今回の
介護保険で特別養護
老人ホームにも一割の
負担がついた、こういうことであります。
お年寄りはどういうふうに
生活しているのかということを申し上げますと、例えば年金五万円で暮らしている、年金七万円で暮らしている、そういうお年寄りに聞けばすぐ答えてきます。これには二千五百円使うんだ、新聞の購読で三千二百円使うんだ、食費は大体一万七千円ぐらいでおさめているんだ、そんなふうにお年寄りは
生活しています。あるいは、一日に使うお金は二千五百円以内におさめる、こういうのがお年寄りの
生活です。そういうところに突然一割
負担というものが、二万、三万というのが押しかかってくれば
生活が破綻するのは当たり前であります。何か新しい物を買うには何かほかのものを削らなきゃいけない。そういうお年寄りに対して突然千円単位ではなくて二万、三万の一割
負担を押しつける、こういうことが
介護保険で行われたわけなんですけれ
ども、果たしてよろしいんでしょうかと、こういうことであります。
さて、六ページ目をお願いいたします。
国民に情報が伝わるということが一番重要な
抜本改革の第一幕であるというふうに申し上げてきましたけれ
ども、六ページを見てもそうでございます。
これは有識者会議の報告書が出まして、十月三十一日と十月二十五日の新聞であります。左下に毎日新聞がございまして、十月二十五日には、何と貝塚座長がみずからこうおっしゃったと、厚生省の考えや大蔵省の話を反映しているんだと、こういうことでございます。有識者の会議ではなくて、要するに行政がつくった報告書だ、こういうことであります。そしてまた三十一日の読売新聞では、袖井先生が何とおっしゃったかというと、ここに書いてあるように、省庁が口を挟む場面が多かったと、こういうことであります。
そして、私は首相官邸というホームページでそのやりとりを見ていたんですけれ
ども、こんなことは初めて知ったわけです。首相官邸のホームページに載っている有識者会議の報告書の議事録には厚生省さんのお名前は全然出てこないんです。各
委員の発言しか出てこないんです。情報を流すんだったら正しく流していただきたい。要するに、
国民を惑わすようなことはやめてだきたいということ、真の情報開示とは何かということを御理解いただきたい、こういうことでございます。
七ページ目をお願いいたします。