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参考人(
金本良嗣君) よろしくお願いいたします。
急な
お話であったので十分な準備ができておりませんが、私
自身がこの
法律を読ませていただいて、その感想といったものを
お話しさせていただきたいと思います。
まず、
法案の概括的な
評価については、この
法案は
公共工事執行の
適正化に向けての貴重な一歩であるというふうに考えております。したがいまして、速やかな施行をお願いしたいというふうに思います。ただ、この
法律で
公共工事のいろいろな問題がすべて
解決するというものではございませんということを御理解いただきたいというふうに思います。
上請、丸投げ、
談合といったふうな問題が指摘されておりますが、もう少し
法律的には、よいものを安くということを
納税者の
期待にこたえて進めていく、こういう
目的のためにさらなる
努力が必要だということを指摘させていただきたいと思います。
それで、
法案の全部の問題について触れることは時間的な余裕がなくてできませんが、私が重要と思うところについて
法案の
意義を申し述べさせていただきたいと思います。
まず、この
法案はある
意味では画期的な
法案であるというふうに思っております。
公共工事の問題は
受注者が悪いといったふうな言い方が多いわけですけれ
ども、私は基本的には
公共発注者の側が多くの問題を抱えているということであるというふうに思っております。
公共工事の問題は、
公共発注者の
改善なくしてはできないという
認識に立ってこういう
法律ができたということは、非常に画期的なことだというふうに思っております。
もう
一つ、一般的な
意義として重要なのは、国だけではなくて、
地方自治体を含むすべての
公共発注者について義務づけがなされているということで、往々にして
地方自治体等について問題が指摘されておりますが、こういった問題の
解決に向けての第一歩になるのではないかというふうに考えております。
この
法案の個別の
事項の
意義について、
幾つかの例を取り出して御説明させていただきたいと思います。
まず、多分この
法案で最も重要な要素というのは、
透明性の
向上にかかわることだというふうに思います。
発注見通しとか
入札参加者の比較等々について
情報を
公表するということが、すべての
公共発注者について要求される。これはちょっと見た目には小さいことかと思われますが、長期的にはじわじわときいてくる非常に大きな
転換点になるのではないかという気がいたしております。
なぜかと申しますと、こういう
透明性が
向上しますと、
公共発注者、これには
政治、行政両方含まれるというふうに
認識をしておりますが、これが
選挙民の目にきちんと触れるということになる。こういうことによって、
民主主義の基本的な
構造がうまく働くようになるのではないかというふうに
期待をしております。
もう
一つのポイントとしては、
発注者の
施工体制について、
発注者自身がきちんと
現場の
点検等をしなければならないといった義務づけがなされているということであります。こういった
発注者の責任を明確にするということによって、
発注者の
意識改革が
期待できるのではないかというふうに考えております。
次に、少し
具体例を取り上げまして、こういった
法律の
意味、
意義、そしてこの
法律を超えてしなければならないことといったことを
お話しさせていただきたいと思います。
ここで例として取り上げるのは
上請、丸投げ問題ということであります。最近ではいろんな事例が指摘されておりますが、特に
道路舗装業については、
大手道路舗装業の
受注の約四割ぐらいが
上請に属すると。もともとは
公共の
発注なんだけれ
ども、民間の
企業から
受注をしていると、途中にどこかの会社が絡んでいるというふうなことであります。
道路舗装業について非常に特殊なのは、普通の
建設業と違って
技能者も元請が抱えているという
構造になっております。
したがいまして、
大手が中間の
業者から受けているということは、普通の
建設業の
下請として受けているということではなくて、
技能者も抱えている、全部
自分でできる、通常はしている
企業が途中の
仲介業者を介して受けているといった事情になっております。こういった問題は非常に深刻で、とりあえず最近でも
改善している雰囲気はないということであります。
こういった問題の
構造は、基本的にはお配りしてある
メモに一、二ということで書いてありますが、まず、
公共発注者が低
価格で
工事ができる
業者を
発注の
指名等から排除しているということから起きるわけなんです。
上請する
企業がもともと入っていれば、そういった
企業が当然直接
受注するはずだというわけですが、それを排除して
入札を行っている。そうしますと、
受注した
業者がそれをほかのもっと安い
コストで
施工できる、あるいは
技術力のある
業者に
下請をするということが当然起きるというわけです。こういう問題の根底は、二番目の
ステップにあるのではなくて、一番目の
ステップにあるということを
認識していただきたいと思います。
この一番目の
ステップを
改善せずに二番目の
ステップ、
上請、丸投げ等を禁止するだけだということでは問題の
解決につながらない。もし低
価格で
施工できない
業者が
受注して、その
業者が
自分で
施工しなければならないということになりますと、当然高い
コストでそのまま
工事が
施工される。もっと悪いケースは、
技術力のない
業者が
受注をしてその
業者が
施工をするということになると、
不良工事が起きるということになります。したがいまして、こういう問題の
解決のためには、
最初の
発注の
段階できちんとした
発注が必要だということになります。
この問題で非常に重要なのは、往々にして
工事を分割して
地元中小業者に
発注をするということが多いということであります。そういうものをどこかほかの
企業をたくさん集めてまとめて効率的な
規模にして
工事をするといったことも多いということであります。
もう
一つ、この問題についてつけ加えておきたいのは、こういう問題は
中小と
大手の問題では必ずしもないということです。
中小の中でも
技術力があって
工事ができる
業者と、それをできないけれ
ども受注をできるという
業者といろいろいるということであります。こういった
構造は、
工事施工能力があるこれから伸びたい
企業が伸びられないようにしているといった効果もあるということであります。
こういった問題を考えますと、この
適正化の
促進に関する
法律案の
執行において、単に例えば丸投げ禁止というだけではなくて、もう少し本質を見た運用が望まれるということであろうかと思います。
あと、この
法律案が成立した後に残される課題として
幾つか挙げておきました。まず、基本的には
公共発注者、これは
政治も含めて
改善されなければ本質的な
改善にはならないということであります。
もう
一つは、
発注者自体がよいものを安くという
インセンティブを持つ
仕組みをつくる必要がある。この
法律はそれほど厳しい具体的な細かい
規制をするのではないというわけですが、そういった
規制を上から押しつけるということは必ずしもうまく機能しない。
地方自治体等の
インセンティブが適切なものになるということを通して、みずからの力によって適切なものにしていくという必要があるんだろうというふうに思っております。
もう
一つは、この
法律では既存の
会計法等に手をつけていないということでありますが、
日本の
会計制度、
財政制度あるいは独禁法といったものにも
改善すべき点は残っているんではないかというふうに考えております。非常に厳格な単
年度主義の
制度をとっておりますけれ
ども、
欧米諸国ではもう少し緩やかな
制度をとるということが行われております。何らかの形の
複数年度会計への移行といったこととか、あるいは
会計法、予決令、
地方自治法といったものを弾力化して
総合評価制度あるいはVE、CMといったものをもう少し広く使えるようにするといったことが重要かと思います。
もう
一つ、余り言われていないことですけれ
ども、
日本の
入札の場合は
自動落札主義ということで、
最低価格の人がその
価格で自動的に
受注するということが一般的というか、
制度上そうなっているというふうに聞き交わされております。
欧米諸国を見ておりますと、必ずしもそういうことにはなっていない。
最低価格が決まった後に
最低価格の人と
交渉をして値段を引き下げるとか、あるいは
仕様等について変更の
交渉をするといったことがあるようであります。こういったことがもう少し有効に機能できるような弾力的な
仕組みが必要なのではないかというふうに思っております。
とりあえず、私の
お話は以上でございます。