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堂本暁子君
岡崎トミ子さんがとても大事な指摘をなさってくださったと思いました。というのは、「
男女共同参画基本計画策定に当たっての
基本的な考え方」というのが九月二十六日に出されているのですが、それの
リプロダクティブヘルスのところの一番
最後に、今、岡崎さんが指摘された「リプロダクティブ・ヘルス/ライツのうちのライツの概念については、種々の議論があるため、世論の動向を踏まえた
検討が必要である。」と。私ちょっと気がつきませんで、今改めてまたこれを出して見たらそのとおりに書いてあるのですけれども、これはとても大事な部分だと思っております。
と申しますのは、ライツについてはということは、これは
中絶についてはというのと同義語にここでは解釈されているのではないかと思うんです。プロライフとプロライツの議論、そういうものがあるので、「世論の動向を踏まえ」ということで避けている。しかし、本当の
意味のライツというのは、そういった単に
中絶の是とか非とかいうことよりももっと深いことでございまして、今、
南野先生がおっしゃった、
女性は
最後の
最後まで恐らく自己決定できない、
妊娠した場合、本当に一度は
中絶しようと思っても
最後にやはり産む決心をするというような、だれしもが迷うんだろうと思います。
また
ビデオの話になりますけれども、私も
南野先生と同じで、どうしても、胎児がいっぱいのような
映像というのは、どういう意図でだれがつくったのかと思わざるを得ません。
と申しますのは、私も実はテレビの仕事をしておりましたから、アボーションという映画を少しだけ手伝って、それは、カナダの
女性のディレクターと
女性のカメラマン、録音もすべて
女性のチームが
世界じゅうを歩いて
中絶という映画をつくっていたんですね。それが
日本に来たときにその手伝いをし、それからそれの
日本語版を私は演出してつくり上げたんですけれども、そこにはただのワンカットも胎児などは出てこない。
なぜならば、その必要がないわけなんです。本当に
中絶の悲惨、自己決定の苦しさ、そして
中絶をしてはならないのだと。ならないという
意味は、
中絶をいかに
避妊という形で避けるかとか、それから正しい性のあり方によって
中絶をしなくて済むための啓蒙の映画なんですね。ですから、そのためには胎児を出す必要など全くない。
そこでは、特に中南米で
堕胎罪がある国の
人たちが
中絶をしたために刑務所につながれている絵なども出てくるんですけれども、一番
最後のカットというのは、二百五十ドルの
中絶をするための費用がなかったがゆえに、
自分で自己
中絶をして亡くなったお母さんのお棺をお墓に運ぶ、そして、その
女性の命が二百五十ドルの命であるというのがラストカットなんですが、それがすべてを物語っていたと思います。いかに安い命であるか、
妊娠ということによって一人の
女性が命を落とすということの危険、あるいはそのことの人権と申しますか、そういったことを表現した映画です。
やはりこのライツというのは、別にプロライフ、プロチョイスのそういった
中絶賛成、反対ということの宗教的あるいは倫理的な対立の問題以上に、一人の
女性が
妊娠した場合に、その
女性自身がみずからの命も落とさなければならないような局面が、
日本であろうと、
世界じゅういかに多いか。
今、数字は覚えていませんが、たしか五十万件とかそういった大変大勢の
女性たちがまだ
世界で
妊娠のために命を落としています。それも、わずか二百五十ドルというお金がないがゆえに命を落としている
女性たちがいるということを考えたときに、
日本は一見豊かなようですけれども、やはりこういった
女性の健康と、そして本当の
意味の、深い
意味の
女性の
権利ということが国の中できちっと浸透し、政策化されるなり
行政が
システム化されていないがゆえに、
日本でも大勢の
女性たちがそのために泣いているというのが現実だというふうに私は思っています。
世界に目を向ければもっとそれが強いわけでございまして、ライツを単に「世論の動向を踏まえ」ということでわきに置くということは私は大変間違っているというふうに思うので、岡崎さんがおっしゃってくださったことから今のようなことを改めて、また
ビデオの話があったものですから、私は、
中絶の映画、一時間物なので羽田さんにぜひ見ていただきたいと思いますけれども。
胎児など
一つも必要ない。アイルランドで、やっぱり
中絶が禁止されている国で、
妊娠してしまった女の子が公衆電話のところで、イギリスへ行って
中絶をするということで大きな涙をぽろぽろ流しているアップの絵があるんですが、そういったところこそが本当に、いかに
中絶というか
妊娠すること、そして自己決定の難しさ、すべて表現していたと思いますので、そういう見方をぜひしていただきたいというふうに思います。
ありがとうございました。