○堂本暁子君 百点でないまでも、大変よくおわかりになってくださっていて結構かなと思います。
ただ、
最後に次官がおまとめになった部分、ですから、
女性が決める権利というところだけに特化されがちだと思うんですね。であるがゆえに、むしろそこから先の部分に
厚生省が進んでいないというところが最大の問題だと思っています。
この
行動の基礎という、これはカイロ文書の方ですが、どういうところが今のおまとめだと抜けてしまうかといいますと、「
女性が安全に
妊娠・
出産でき、またカップルが健康な子どもを持てる最善の機会を与えるよう適切なヘルスケア・サービスを利用できる権利が含まれる。」と。先ほどもパブリックサービスとかパブリックヘルスという言葉が出ましたけれども、そういったところになかなかいかない。それから、「リプロダクティブ・ヘルスは、個人の生と個人的人間関係の高揚を
目的とする性に関する健康も含み、単に生殖と
性感染症に関連するカウンセリングとケアにとどまるものではない。」。ですから、人間は動物ではないので、そういった性ということに関しても単に生殖ということではなく、もっと人間関係の高揚にと。ここは後で
文部省にも伺いますが、大変大事な部分だろうというふうに思います。
そういったところがなぜか我が国の
厚生省はずっと抜け落ちてきてしまった。きょうも次官が先ほど二つの相矛盾したことをおっしゃったと私は思っておりますが、リプロダクティブヘルスを
社会的に
浸透させるということを結論でおっしゃいました。それから同時に、これは御答弁の中で何度もおっしゃっていることですが、私は十年ここにいる間じゅういつも
厚生省は同じ答弁しか繰り返さないんです。国民の間での御議論を深めと、これは本当にオウム返しにずっとおっしゃってきた言葉です。
一方で、きょうの一番
最後にお話しになったことの大事な部分と申しますのは、総合的な
施策の
推進というふうにおっしゃいました。この二番目の総合的な
施策の
推進が大事なんですが、特に私が申し上げた
自己決定のところだけではなくて、そこから先のいわゆる公共的なサービス、ヘルスサービスの部分での総合的な
推進をなぜか
厚生省はやらない。なぜやらないかということを質問するのではなくて、きょうは私の方から言わせていただきます。中絶をめぐっての対立があるからです。
きょうも最初の仲道先生の質問も中絶についてでした。そこに関して余りにも気を配り過ぎている。要するに、宗教の対立なんというのは、未来永劫とは申しませんが、洋の東西にかかわらず、これは解決しないのです。宗教であり、それから倫理なんですから。そこに気を配るばかりに国民の中での御議論を深めとか、
社会的に
浸透させと、日本は永久にそれを言っているのかと私はこのごろ思うようになりました。全部議事録をさらったら、ほとんどそういう答弁で終始していると思います。
ですけれども、
北京文書はそういうことを求めているのかといえば、そうではないのです。中絶についても、宗教的な中絶もありますけれども、これは
北京文書ですが、「
妊娠中絶は多数の
女性の生命を脅かし、最も高い危険を被るのが主として最も貧しく最も若い層であることから、深刻な公衆衛生の問題」であると。中絶を宗教的に取り扱うのではなくて、きちっとそうしたことで取り扱うべきだろうというふうに思います。さらに先の方で、「
妊娠中絶への依存を軽減するよう強く求められる。望まない
妊娠の防止は常に最優先
課題」である。我が国においても同じです。「
妊娠中絶の
必要性をなくすためにあらゆる努力がなされなければならない。望まない
妊娠をした
女性には、信頼できる
情報と思いやりのあるカウンセリングが何時でも利用できるようにすべきである。」。このことこそが大変大事なんです。
ところが、その前の入り口のところでもう
厚生省はシャットアウトして、何度私は質問したかわかりません。ですけれども、常に国民の御議論をと。もうこれ以上そのことはいいんですが、要するにそのために何ができないかといいますと、結局、常に
母子保健に終始している。ですから、きょうるるおっしゃったこと、いつもいつも、骨粗鬆症のことからずっとおっしゃいましたけれども、常に
母子保健。行政的なシステムが変わらないということです。
せっかく基本法でもって、日本はナショナルマシーナリーという形で、これから
総理府にはぜひとも伺いたいんですが、二〇〇一年からスタートするにもかかわらず、
厚生省はなぜかもう本当にしつこく、強引に、これは私は日本の
男性と
女性全部にとっての不幸だというふうに思っています。なぜなら、二十一
世紀の健康というのは、
男女がともに今申し上げたような意味で人間として崇高な性の
生活と健康を維持していくことが大事だからなんです。それを、そこの議論のところでシャットアウトしているから
厚生省は先に行かれない。
だから、私はあえて政治家である
政務次官に、これは行政ではできないかもしれませんが、そこのところをきちっとシステムをつくらなければだめですということを申し上げたい。
そうしない限りは、
北京で私どもが国としても合意してきたこと、
藤井局長も一緒にこの間ニューヨークの
女性二〇〇〇年
会議も行かれました。そこでの
成果文書というふうに訳しておりますけれども、そこでも同じように、ICPD、国際人口・開発
会議の
行動計画のさらなる
実施に向けての主要な
行動を行うということを採択しているんです、日本国は、この六月にも。だけれども国内的にはそれに対応していない。これは大きな大きな厚生行政のミスだと思っております。
文部省にも同じようなことを申し上げたいんです。あえて御答弁というふうには思いませんけれども、きょうの質疑を伺っていますと、まるで女の子が悪いような印象をいささか受けるんですが、そうではないと。これは
北京文書ですが、こういうふうに書いています。「若い
男性は、
女性の
自己決定を
尊重し、セクシュアリティーと生殖に関する事柄において
女性と責任を分担するように
教育されていないことが多い。」、このことを改めてくださいということが
北京文書で書いてあります。これはぜひ
文部政務次官には後でゆっくり、きょうは私は時間を持っていませんので、お読みいただきたい、そういう
観点から文部行政を私は見直していただきたい。
「
女性の人権には、強制、差別及び暴力のない性に関する健康及びリプロダクティブ・ヘルスを含む、自らのセクシュアリティに関する事柄を管理し、それらについて自由かつ責任ある決定を行う権利が含まれる。」ということなんです。全人的な、「全面的な敬意を含む、性的関係及び性と生殖に関する事柄における
女性と
男性の平等な関係には、相互の」、ここが一番大事でございます。「
尊重と同意、及び性
行動とその結果に対する責任の共有が必要である。」、これこそが
文部省にやっていただきたいことなんです。
私、文教委員会のときにさんざんこれは質問したことですけれども、テレクラとか
援助交際とかそういった現象ばかりをごらんいただくのではなくて、やはり
子供たちの、男の子も女の子もお互いに相手の体と心と両方を尊敬し大事にするということを、これはまた政治家である次官にぜひともお願いをして、私は次へ行かせていただきます。
労働省については、やはりきょうの御
説明というのはリプロダクティブヘルスではなくて、私はマタニティーヘルス・アンド・ライツだと思います。あくまでも
母性だけでした。しかし、リプロダクティブヘルスの概念は、これは
藤井局長に申し上げるほどのことではないんですけれども、
社会的な安寧ということも入っています。ウエルビーイングが入っています。そして、その中には、例えば
女性の再就職、それから
妊娠、
出産によって昇進、それから給与の問題、そういったことがマイナスなことがないということを保障するというようなこともリプロダクティブヘルスに入っています。
今、私は
北京文書を持ってきてもらって労働の方のところを読んだんですが、例えば「
妊娠中、
出産休業中の
女性又は
出産後に労働市場に再参入する
女性が差別されないよう保障するための効果的な措置を講じること。」、こういうことこそがむしろリプロダクティブヘルスの一部なんです。
労働省にジェンダーとそれから
リプロダクティブヘルス・ライツの
視点から労働行政を見直していただくということが、雇用機会均等法をきちっと
実施するための二十一
世紀の私は労働行政だと思います。
女性の
局長だし、御一緒にこのことにずっと関与してきた仲としては言いにくいんですけれども、やはりそれはどうしても申し上げなければならないというふうに思います。
最後に、
総理府もきょうは
中原次官いらっしゃいますので、あえて言わせていただくんですけれども、きょうずっと経緯を御
説明いただきました。おっしゃるとおりなんです。今のところでは、きょう御
説明いただきましたビジョンの中で、一番このリプロダクティブヘルスについては
総理府は進んだ
考え方を示しています。
ここには、「リプロダクティブ・ヘルスはライフサイクルを通じて個人、特に
女性の健康の
自己決定権を保障する
考え方で、リプロダクティブ・ライツはそれをすべての
人々の基本的人権として位置付ける理念である。」、これはビジョンにそういうふうにお書きになっていますね。
そして、最も大事なことが二つ書いてあります。今、少子化が進行している、それから
不妊に悩む
女性たちがいる、こういった
女性たちに十分にいずれも
リプロダクティブヘルス・ライツが保障されることが大事だということを書いておられます。
私は少子化
対策というのは人口
対策だと思うんですが、そうではなくて、
リプロダクティブヘルス・ライツの政策がきちっと
厚生省で展開されれば、私は少子化は一番早く解決すると思っています。リプロダクティブヘルスの予算はきょう
資料でお出しになったのは一億数千万ですが、一体少子化の
対策は何億あるんですか、もう何百億でしょう。それだけをリプロダクティブヘルスに投入したらば、私はさっき申し上げたような理念のもとでもっと少子化は解決されると思うんです。
このビジョンの一番下にあるのは、「自由な選択によって子どもを産み育て、子どもを持つことが
男女双方の喜びとなるように、」、これは日本で書いたことですね、私はとってもいいと思います。それで、「仕事と
家庭の両立
支援なども含めて、子どもを安心して産み育てられる
社会的・経済的環境を
整備する必要がある。」、これがビジョンの中のリプロダクティブヘルスのところです。
なぜか
プランになって後退し、基本法になって後退し、そしてきょういただいたこの計画に至っては後退というよりも、きょう三つの省、
文部省の言い分、
厚生省の言い分、そして
労働省の言い分、そういったものをみんな配慮なさるから、このビジョンの場合には
行動計画がすかっと来ているわけですね。それこそが日本の少子化を解決し、そして
男女ともにいい
家庭を持ち、そして健全な
社会をつくるためのいいビジョンなんですよ。そのビジョンが各省の政策を気にしながら書くものだから、こんなことになってしまうというふうに私は思います。
やはり、このためにせっかく二〇〇一年から新しくナショナルマシーナリーがスタートされるので、ですので
中原次官に、ぜひともこういった各省の縦割りに
影響されるんではなくて、これが
女性の基本的人権の土台だと思っておりますので、御決意のほどを伺いたいというふうに思います。